[0316] 青山あたりで「デジタルアート」を見る

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0316 1999/05/07.Fri発行
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●青山あたりで「デジタルアート」を見る
 金曜日担当:須貝 弦

●特別レポート
 ディジタル・イメージ東京展 公開ディスカッション
 「なぜポリゴン美少女なのか」参加レポート(中編)
 Masamune

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青山あたりで「デジタルアート」を見る
金曜日担当:須貝 弦
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連休を使って名古屋から東京に遊びに来ている知人の女性と、青山で会ったつ
いでに、デジタローグ・ギャラリーとディジタル・イメージ1999東京展の表参
道会場に足を運んだ。

知人の女性はわりとアートなどには興味があるほうで、コンピュータも結構好
きなのだが「デジタルアート」という言葉にはピンと来ない感じのようだった。
しかし、逆にそのような人が「デジタルアート」と名付けられたモノにどうい
う反応を示すのか見てみたい気もしたので、連れていったのだ。

先に行ったのはデジタローグのほう。名古屋出身で、東京の大学に通いふたた
び名古屋に戻ってしまった彼女にとっては、まず神宮前というロケーションが
気に入ったようだ。そして、名古屋にはフロッピーやらT シャツやらミニコミ
やらといった「作品」を置いてあるようなスペースなどはないらしく、「いい
なー」を連発していた。

目をひいたのはやっぱりオリジナルフォントのようで、フロッピーをあれこれ
手に取ってケースの裏の書体見本に見入っていた。また、他のアイコン集やシ
ョートゲームなどを含め、多くの作品がMac用、またはMacで制作されているの
が印象に残ったようで、「Mac欲しいなぁー」などと呟いたりもしていた。

パソコンショップの店頭なんかよりも、デジタローグ・ギャラリーのようなス
ペースのほうが、よっぽどMacのセールスプロモーションになるのではないか、
とも思った。もちろん、ある程度偏った人種に対してではあるが。

私がいちばん惹かれたのは、中ザワヒデキ氏の手書きの本。美術史が書かれて
いるが、最初に印象派について書かれているのに、終わりのほうでスージー甘
金氏に話が行っていたりと、メチャクチャである。

続いて、ディジタル・イメージ東京展の表参道会場。こちらでいちばん面白か
ったのは、Web ブラウザ上で仮想ダイビングができるモノだった。魚をクリッ
クすると名前とカンタンな解説みたいなものが表示されたりして、彼女も楽し
めたようだ。

一方、最近ブームになっている「美少女CG」には、残念ながら(?)強い抵抗
を示した。笹原和也氏の作品を見ながら「こういうの作る人って、昔からこう
いうのばっかりやってたのかなぁ?」などと言っていた。どうも、頭の中では
「美少女CG制作者=ヘンタイ」とい図式ができあがっているらしい。

私は「そういう人と、そうでない人がいると思うけど~」などと、無難な回答
で逃げまくった。石川浩二さんのイラストのような、一見デジタルとはわから
ないモノや、キャラクターモノなどはしげしげと眺めていたが、ストラタチッ
クなCGなどにはあまり興味がなかったようだ。

個人的には、ちょうどデモ中だったEPSONのPM-9000C が気に入った。ドットな
んか見えやしない(まぁそんあにシビアに見てないけど)ビックリの品質では
ある。そばにいた男性の方が「出展されている作家の中にも、これ使って出力
した方いるようですよ」と言っていたのも頷ける。とくに、美少女CG制作者に
は涙モノだろうと、マジで思った。出力が楽しくなるに違いない。

さて、両方を見て回っての彼女の印象は、デジタローグについては「いろいろ
遊べそう」ってことで好評だったが、ディジタル・イメージに関しては「デジ
タルアートって何なの?」って感じで、ちょっとピンと来なかったようだ。

どうやら「デジタル」ってコトバが、ちょっと邪魔をしているらしい。私は、
「デジタルで創作活動をしている作家グループの発表会なワケでさ。そういう
場所を、自分たちで作ることって、とーっても大事なワケよ」とだけ言ってお
いた。

【須貝 弦】すがい・げん
私は毎日のアシとしてバイクを使っている。天気が良くて時間に余裕があれば、
打ち合わせや取材にもバイクを使っているので、人によっては「須貝=バイク」
というイメージを抱いているようだ。しかし、以前石川浩二さんの仕事場にバ
イクでお邪魔したときは「バイクでここにきたのはあなたが初めてですよ」と
言われた。自分でも、バイクで移動する編集者なんて珍しいとは思っている。
とはいえ、移動の途中で事故にでも遭って仕事に穴を開けたら大変だ。だから、
ちょっと天気が悪かったり、自分の体調や気分が優れないときなどは、潔く電
車で移動することにしている。
mailto:gsugai@hh.iij4u.or.jp

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■特別レポート
ディジタル・イメージ東京展 公開ディスカッション
「なぜポリゴン美少女なのか」参加レポート(中編)
Masamune
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そこで笹原さんがやおら立ち上がり「やるのか」とジャケットを脱ぎ捨てた!
どうなる! このまま流血沙汰か!?             

…と、思いきや、安斎さんに止められてその場はひとまず納まりました。ひや
ひやさせられますね。こんなディスカッションは初めてです。

気を取り直して、また話は“オタク”に戻り、マイクはソネハチさんに。「ボ
クは別にいいと思うんですよね、オタクってのも。なんか、こう、その道を極
めたような感じで」。ふむ、いろんな捉え方があるものです。“オタク”とい
うのも、漠然としたものですからね。

その後、司会の安斎さんが用意してきた資料のプレゼンへと続きます。これが
実に興味深かった。

まず映ったのは石。やや丸い石が二つ。これに、縦のひっかき線が何本か入っ
ている。

「これは女性の像です」

おおっ!? これが!?
日本出土の1万2千年前くらいの石器だそうです。石にひっかきを入れて、そ
れで髪の毛と腰簑を表現したらしい。

「いうなれば、これが1万2千年前の“完全美少女”なのですっ!」

目からウロコが落ちました!
いや~、あっぱれな想像力です! 古代人。

「壁画などもありますが、これの特筆すべき点は“ポータブル”であることで
す。たぶん、これを身に付けて形見やお守りなどにしていたのでしょう。モバ
イルですね(笑)」場内爆笑。

他の3万年前くらいの壁画や像なども紹介がありました。それからボッティチ
ェリの絵、ミロのビーナス、ハンス=ベルメールの球体関節人形、クリムトの
技法、四谷シモンの人形など。美女-人形系の美術史を俯瞰します。

これらの画像はInternetで収集して来られたとのことですが、四谷シモンやア
ンティークドールといった系統の人形のサイトは実にたくさんあるとのことで、
裾野の広いジャンルであったということを認識されたそうです。

その後、より最近では、異様に誇張されたスタイルのフィギュアなど。さらに
リアルな、人間と見紛うような等身大人形の紹介。そこから、映画「ブレード
ランナー」に見るレプリカント(平たく言えば人造人間)について、等々。

こういった流れを踏まえて、またオリジナリティの話に戻りました。今度はデ
ジタルな作品としてのオリジナリティです。

安斎さんのリードで、「みなさんは作品のデータを出せますか? 配布できま
すか?」という方に話が行きます。後で知ったのですが、安斎さんは「連画」
などの活動と同時に「デジタルアートの著作権」について進歩的な活動をされ
ています。それを知っていればもっと楽しめたでしょうに。不覚です。

まず、日本でもっともポピュラーな3DCGツールであるというShade シリーズで
は、ロックデータ(改変できないデータ形式)が吐けるので、いろいろとデー
タが開示されている、ということが言われました。

やはりこの世界のルーツとしてShade で作られた加藤直之氏の「沈黙の美女」
シリーズを挙げる人が多かったのですが、このデータはロックデータとして
Shade に添付されています。このような作品の配布があったからこそテクニッ
クが広まったのではないか、それが現在に繋がっているのではないかというこ
とが考えられました。

さておき、やはり大半の方はデータは出したくないようです。しかしチュート
リアルなどの仕事では、ある程度のデータは出さざるを得ないのが現実だそう
です。そこはポリゴン数を削ってローポリにしたり、でなくても特徴的なライ
ンで使い回したらわかるように、というのが笹原さん。「それで営利で使われ
なければいいんだけどね、“お金”が絡んでくるとちょっと」と言う話でした。

ソネハチさんはAgosto誌の付録としてデータをまるごと乗せたことがあるので、
その辺どうなのか興味があったのですが、オリジナリティと同様にあまりこだ
わっていないように感じられました。むしろ、配布することで新しい流れに繋
がる、というようなビジョンが感じられました。この辺はまとめにくいのです
が、氏のWeb サイトなどを読んでいただくと何かしら感ずるところがあるので
はないかと思われます。

そこから再び、会場からの質問を受け付けます。これまでにもグラビアの話題
が出ていたのですが、実際のグラビアカメラマンの方が質問されていました。
「どんなにいい被写体でも、撮影だけでは“自分の作品”という手応えがいま
ひとつだ。そう思っていたところでVBを見てガツンと来た。そこで早速自分も
3DCGを始めてみたのだが、なかなか思い通りに行かず、すごいストレスがある。
皆さんはその辺どうしてるのか」

なるほど、この分野に限らず、3DCGをやられている皆さんならだれしも感ずる
ところだと思います。壇上の皆さんは「作ってるのは楽しい。ストレスとは感
じない。ただ、〆切が近かったり作業量が膨大だとイヤになることもある」と。

そこから「グラビアっていえばさ、だいたいの雑誌にはグラビアとか乗ってる
もん、やっぱ女性の力は偉大だよねぇ」とか、「巨乳ブーム」とか、そちらの
話に。それと、VRインターフェースと言いますか、手を仮想空間に突っ込んで
直感的にモデリングできるインターフェースの研究などの話も出ました。

それと興味深かったのが「みなさん“理想の女性”を作られてると思うんです
けど、それと“現実の女性”との間にギャップを感じたりはしないのですか」
と言う質問。質問者の実に真剣な表情が印象的でした。

「やっぱり、それとこれとは別」といった回答が多かったのですが、ソネハチ
さん曰く、「昔、好きな子の絵を描いてみて、そしたらギャップに愕然とした
ことがありまして…やっぱり人それぞれ理想とする“原型”みたいなのがそれ
ぞれあって、自分の中で混ざっちゃってるんじゃないですか?」

ちなみにメーテルとか森雪とかスターシャとかお好きだったそうで。今の作風
からはちょっと想像できませんが…。そこでリアル系とデフォルメ系(アニメ
系)との大きな違いである“小鼻”や“笑い皺”の存在を巡ってひとしきり話
を。この辺はキャラクタの表情付けとも関連して難しいところなのですね。

笹原さんは「好みって言うと…実は(SteelHeartのミハル嬢を示して)こうい
う“暴力的なコ”って好みなんですけど、実際そうだったら困るよね」と。場
内笑。「実際つき合うなら優しい子ですね、お母さんのような。あ、また誤解
されるかな?」また場内笑。こういった、現実では難しいようなキャラクター
を作れるのもバーチャルならではの魅力でしょうか。

それぞれの中の“原型”という話からの流れで、改めて冒頭の質問がなされま
す。「美少女のステレオタイプ、というのは言えると思うんですよ。たとえば
みんな目が大きくて。そして、日本の様式化された絵というと浮世絵などがあ
ります。しかし、あれはみんな目が細いんですよね、いつごろから目が大きく
なり始めたのかなぁ、って」

曰く、「目は表情の要であるから大きくしないと生きてこない」という表現と
しての見方からの回答、あるいは生物学的に「このような幼児性(ネオテニー)
というのは本能的情動に訴えかけるからではないか(つまり目が大きいとカワ
イイと感じるから)」という考察、あるいは「美的感覚というのは時代による
ものですから」と言う回答。また、「実際の人間と同じ比率だと目がこわい。
リアルにすればするほど『死体』っぽくなる。死の匂いがしてくる。それゆえ
に大きめにする必要がある」など。興味深い回答が寄せられました。
(つづく)

【Masamune】
3DCG愛好家。小さい頃からNHKの人形劇シリーズとかが好きでよく見ていました。
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ない仕事をもう9年もやっている。知ってもらいたいよな~、こういうサポー
トをする人がいるから会が成り立つことを。5/5の読売新聞に美少女CGブームの
記事が載り、わたしも登場していた。作品はソネハチさん。(柴田)

・アロマキャンドルを貰った。以前からお香が好きで、それも日本の控えめな
ものが好きなのだけど、このアロマキャンドルは強すぎず気持ちいい。仕事中
3時間ほど点火してあとは一日中残り香を楽しむ。こんなことくらいで贅沢な
気持ちになれるんだから私もまだまだだなっ。編集長の新聞よみたいぞぉ~。
今は朝日新聞オンリー。夕刊で夢枕漠さんの陰陽師が読めるぞ。(ハマムラ)

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発行   デジタルクリエイターズ
     <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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