[0421] パソコンとジャズが手をつないでやってきた

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0421   1999/09/18.Sat発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 14018部
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 <青白でも古くなっちゃうのか~>

●デジクリSPECIALコラム
 パソコンとジャズが手をつないでやってきた
 十河 進

●デジクリレポート『デジカメ~買ったから書いちゃうぞ!!』
 その2 楽しく悩んで、いざヨドバシに行く
 服部幸平



■デジクリSPECIALコラム
パソコンとジャズが手をつないでやってきた

十河 進
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「ジャズと自由は手をつないでやってくる」

孤高のピアニスト、セロニアス・モンクのこの言葉を教えてくれたのは、新宿
のジャズ喫茶のマスターだった。1968年の晩秋のこと。

ただし、マスターが話していた相手は僕ではない。マスターの前のカウンター
に座っていたのは、ダッフルコートを着てトランペットケースを脇に抱えた青
年だった。僕より1、2歳年上に見えた。青年の名前はジュン。その後、彼は
大学進学をやめてナホトカ航路でソ連に渡り、シベリア鉄道でモスクワに着き、
初めて女性を知る。さらに北欧へと、青年は荒野をめざす。60年代末の心暖ま
る話である。

今年、特別番組「青年は荒野をめざす'99 」というドキュメンタリー・ドラマ
が放映された。主演は安藤政信と葉月里緒菜だったから見たのだが、見なけれ
ばよかった。

先日、幕張メッセのワールドPCエキスポへいった時、ブルーノート・カフェの
広告が目についた。3日間、女性ミュージシャンの日替わりコンサートがあり、
3000円~4000円で聴けるということで、しばらく看板の前で思案した。

寺井尚子は聴いたことはないが、ケイコ・リーと大西順子はマイ・フェイバリ
ット・ミュージシャンである。大西順子に関しては、リーダーアルバムはすべ
て、サイドに回ったアルバムもほとんど持っていて、大変お世話になっている。

お世話になっているといっても、女性的魅力(ヨーロッパ・ツアーの模様を収
めた「ピアノ、プレイ、ピアノ」のジャケットの彼女の脚はきれいですが)の
ことではなく、彼女のドライブ感あふれるピアノ・プレイに、である。

ダイナミックに低音部分の鍵盤を連打する大西順子のプレイは、前へ前へと進
む疾走感があり、聴いているとじっとしていられなくなるほどだ。ピアノが打
楽器だと、改めて教えてくれる。

1カ月ほど前に、また、出社拒否症ぎみになった(たびたびなるのですが)僕
は、ウォークマン・ミュージックを大西順子の「WOW」と「PIANO,PLAY,PIANO」
にした。通勤電車の中で聴いていると、次第に元気になってくる。「やったろ
うじゃないか、文句のある奴ぁ、表へ出ろ」的雰囲気になる。大西順子のおか
げで、何とか会社通いができている中年サラリーマンもいるのだということを、
彼女は知らないだろうなあ。

余談だが、我が社のあるクラシック・ファンは、通勤音楽をワーグナーにして
いる。ヒットラーとナチスに見るように、ワーグナーは精神を鼓舞してくれる。
「会社でもどこでもいったろうじゃねぇか」的気分になれるのである。音楽的
リポビタンDである。これが、マーラーだったら、通勤電車に飛び込みたくな
る(一時期、僕はマーラーを聴きながら通勤したが、数日でやめた)。

ということで、PCエキスポの会場に入る前から、全く別の世界へ入ってしまっ
た僕は、会場の雰囲気になじめず、うろうろしたあげく、ディジタル・イメー
ジの展覧会が行われていることを思い出した。地図を見ると、イベント・ホー
ルのブルーノート・カフェの脇でやっていることになっている。僕はブルーノ
ート・カフェを指す矢印の方へ向かった。

ブルーノート・カフェへ入った途端、両側から「いらっしゃいませ」と声がし
た。女性が二人、立っているのである。薄暗く照明されたフロアに椅子とテー
ブルがゆったりと配置され、BLUE NOTE TOKYO のロゴがライティングで床に浮
かび上がっている。かっこいい。

まず「場違いな所に入ってしまった」という思いが起こり、次に「しまった、
客じゃないんだということをどう知らせるか」と思案した。迷い込んだ田舎者、
という感じにはなるまいと、田舎者は思うのである。

こういう時は道を訊くに限る。「あのー、ギャラリーにいきたいんですが」と
右側の女性に声を掛けてみた。左側の女性の方が若くてきれいだったのだが、
若くなくて○○○じゃない人の方がなぜか声を掛けやすい。しかし、その人は
ギャラリーを知らなかった。左側の人に確かめてから「2階ですね。まっすぐ
行って入り口を出て階段を昇ってください」と言う。

そこで「いやー、こんなところは馴れているんだぜ。青山のブルーノートにも
何度もいってるしな。時間があれば、コーヒーでも飲んでいくところだけど、
ギャラリーにいかなきゃならないんでね」という言葉を態度で示しながら(誰
も見てなかったけど)、だだっ広い体育館のようなフロアを斜めに横切った。
横切る途中にチラッと正面を見るとステージがあり、あそこで大西順子がピア
ノを弾くのか、としばし足を止めた。

もうすぐ、入り口だ(僕は逆から入ったので。それにしても遠かった)と思っ
た時に、脇から現れた女性に「ありがとうございました」と言われた。これで、
けっこうこたえたのだが、さらに追い打ちをかけられたのは入り口を出てホッ
とした途端、黒ずくめで髭を生やした如何にもブルーノート東京の支配人然と
した男性に深々と頭を下げられたことである。

昔のブルーノート東京は、村上春樹にエッセイで「家畜列車のようなジャズク
ラブ」と書かれるくらい狭かった。去年の暮れに引っ越しをして広くなり、通
路もゆったり、トイレも広くなった。入り口と出口を分け、支払いのシステム
も完璧になった。新しくなってから、今年、2度、ジャズ・ライブを聴きにい
った。

音楽は生がいい。どんな音楽も二度と同じ演奏はできないが、特にジャズはイ
ンプロビゼーション(いわゆるアドリブ)の音楽だから、ライブの魅力は大き
い。しかし、ブルーノート東京は海外ミュージシャンの場合、ミュージック・
チャージだけで8000円+税が基本だ。それに飲み食いすれば、最低でも1万円
はかかる。だから、本当は通いたいのだが、厳選してどうしても聴きたいミュ
ージシャンだけにしている。

ブルーノート東京に行ってみると、ジャズファンとオシャレスポットファンが
いるような気がする。もちろんオシャレスポットファンで熱烈なジャズファン
もいるだろう。ブルーノート東京で感心するのは、昔からスチューデント割引
があり貧乏でジャズ好きな若者をサポートしていることだ。立ち見だが半額で
一流ジャズメンのライブが聴ける。

ひと月ほど前、初めて六本木のスイートベイジルへジャッキー・マクリーン・
クィンテットを聴きにいった。友人夫妻など5人である。奥さんたちが先に行
っていい場所のテーブルをとっておいたが、6人テーブルで一人分あいていた。

開演間際、一人の男性が入ってきて相席になった。その男性は座ると何も注文
せず、文字ばかりの音楽雑誌を取り出して読み始め、演奏が始まると身を乗り
出して聴き入り、ステージが終わると同時に席を立った。軟弱にワインなど飲
んでいた我々は恥じ入ったものである。あれこそ「ジャズ好きの通」である。
ジャズがオシャレである、などという共同幻想に浸っている部分がおまえには
なかったか、と彼の姿は僕に迫る。

さて、幕張メッセの会場とは全く異質なオシャレスポットを抜けて、ディジタ
ル・イメージの展覧会にたどりついたのだが、そこもなかなかオシャレな空間
でありました。

【そごう・すすむ】DG@genkosha.co.jp
玄光社入社以来、8ミリ映画誌、カメラ誌、ビデオ誌を経て月刊コマーシャル
・フォト副編集長をつとめ、現在は季刊DG(デジタルグラフィ)編集長。幕張
メッセは広すぎて、何だか疲れてしまいました。

・ディジタルイメージの受付では、ブルーノートへの道順をたくさんの人に聞
かれた。会期中のお客さんは約1万人、そのうちブルーノートはどこだ?と聞
く人は5000人いた。(ウソ)(柴田)

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■デジクリレポート『デジカメ~買ったから書いちゃうぞ!!』
その2 楽しく悩んで、いざヨドバシに行く

服部幸平
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さてさて、『禁断の実』を食べる事を決心した。しかし、うれし&困った事に
『禁断の実』は1個じゃあない。各社それぞれが「イシイよ~。食べてみな
よぉ~「と、それこそ美味、お買得、趣味趣向をこらしてくれている。

も~う、ホッペタが落っこちて、坂道をコロコロと転がっていってしまいそう
なほどの『実』もある。

でも.........................高い。

だいたい、世の中『買う!』と決め、カタログとニラメッコしている時が最高
の『至福の時』だったりする。
「これにぃ、しようかなぁあああ??」
「いや、こっちかなぁあああ???」

そしてそういう場合、得てして『最新型』にまず目がいくってもんです。

『やっぱりオーバー200万画素しかないでしょううっっっっ!!』(夢見くん)
「いやいや、予算が、、、、」(現実くん)
『貴様!だきょうおっっっっ~~~~~~~~する気かっ!!』(夢見くん)
「しかし、、、、、、何ぶん、、、」(現実くん)
『本心を言えよぉお。欲しいくせにぃ~~。200万画素ぉおお~』(夢見くん)

画素の次は、『単焦点レンズ』なのか? それとも『ズームレンズ』なのか?
これでも大きく選択肢が変わってくる。ズームは確かに便利。逆に単焦点は機
能的に簡単&軽量&安い。つまり、すべてが相反する。市場の人気は、明らか
に『ズーム』に移っているように見えた。

「でも、やっぱ『単焦点』かな~。安いし、軽いし、機動性が」(現実くん)
『ズゥウウウウウ~~~~~ムなんだよぉおおおおお!!!!』(夢見くん)
「だけど、、、、、、重いよ。ズームは、、、、」(現実くん)
『ズゥウウウウウ~~~~~ムなんだよぉおおおおお!!!!』(夢見くん)
「........................」(現実くん)

散々悩んで(でも、本人は楽しくて仕方ない)、候補には2つがあがった。
*オリンパス『CAMEDIA /C-2000 Zoom』
*ニコン  『COOLPIX 950』

そして、重さと機動性で第一候補はオリンパスにする。ニコンは、、、、、、
重い。そして、ちょっとデカイ。どちらも市場で人気、実力ともナンバーワン
を競り合っているライバル機種だ。雑誌での評価も高い。比較もされる。

とりあえず、ワクワクした気分のまま、数日後に再度ヨドバシカメラに出向い
た。店頭でデモ機をいじくりまくる。触って触って触りまくる。そしてにわか
仕込みの知識でもって、店員さんに質問を繰り返す...........っが!

話はメモリーデータをパソコンへ『転送』する話題になった。
「機種はなんですか?」
『マックです。』
「New G3ですか?」
『ニュー、って?』
「いや、ほらスケルトンのやつです」
『違いますよ。パワーマック。7300の166。CPUはG3だけど』
「あ..............そう..........ですかぁ...........」

おいおい、なんなんだよ。何なの?その奥歯にものが詰まったような言い方。
マックだよ。パワーマックだよ。それがどうかしたのかぁ?
いや~~~~~~~~な感じ、、、、、、。

「USBじゃあ、ないですよね~、当然、、、、」

SCSIだよ。スカジィイイイイイイイ。最初から。俺が付けたんじゃあないんだ
よ。最初から付いていたんだよ。だから何なんだよぉ~。知らないよお、そん
なの。

「いや~、マックで..........。しかもSCSIっていうのが.............」

だから、なんなんだよぉおおおおおおおおおっぉおおお!!!!!
早く言えよぉおおおおぉっっっっっっ!!!!!!!

【はっとり・こうへい】イラストレーター。ディジタルイメージ会員。
前回の連載から再び登場。もう『デジクリ』に記事を書くことはないと思って
たのに......。(ブツブツ)でも、何だかんだと言って、楽しんで書いていた
りする。ちなみに今ハマッテいる愛読書は『湾岸MIDNIGHT』。これはコミック
界の白眉だっっっ!!! いいぞ! 楠みちはる!! 15巻はいつ発売だ?
待ってるぞ~~~~~~!!

http://www.asahi-net.or.jp/~pg9k-httr/
pg9k-httr@asahi-net.or.jp

・やたら叫んでいる作家さんではある。普段はおとなしいけどなあ。(柴田)

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■編集後記(9/18)
・昨日はあやまったから、その前か。早乙女貢と早乙女勝元をとり違えていた。
指摘してくれた読書人も一度間違えたことがあるという。オレンジ色のニクイ
やつ(古い!)っていおうか、32ミリもの束をもち、全身みかん色の超文庫本
サイズの「日本のみなさんさようなら」(リリー・フランキー)が重版してい
た。この映画評論モドキがとても面白い。「映画を見てボクが何を考えたか」
を綴ったもので、映画評論と勘違いされては迷惑だ、という。見開き1話、ど
こから見ても楽しい。偏見がヨイ。ナンシー関もすごいが、この男の視点もユ
ニークである。しかし、ちょっと前の日本の映画って恥ずかしいぞ。(柴田)

・ペンネームはOKだけど、メールアドレスがない=連絡ができないというのが、
いけないそうだ。なるほど。 励ましのメールをいただく。嬉しい~。音楽の
ことを書いてくださる方や、最近の後記が短いですね、という方も。ここを読
んでくださっているんですね。ありがとうございます! (hammer.mule)

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デスク     濱村和恵 
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