[0426] カンツォーネはどこへ行った?

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0426   1999/09/25.Sat発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 14111部
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 <全角の読み心地はいかが?>

●デジクリトーク
 カンツォーネはどこへ行った?
 十河 進

●ニューウェーブ漫才
 e-○○
 T&B(作:PAGOS)

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 パネルトーク「マルチメディア時代の出版の未来」



■デジクリトーク
カンツォーネはどこへ行った?

十河 進
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DG/デジタルグラフィ8号(10月6日発売)で、サイテックス・リーフ・
カンターレというデジタルカメラをテストレポートした。先にボラーレという
デジタルカメラが出ていて、こちらは3ショットタイプのデジタルカメラ。
24×36ミリの大型600万画素CCDを採用し値段は370万円、500
万円というクラスだから、まあ、日本国内で何台売れるかはわからない。完全
な業務用デジタルカメラである。

最初にボラーレが出たときには気づかなかったのだが、次にカンターレが出る
と聞いて「ボラ~レ、カンタ~レ~」と口ずさんでいた。何だ、イタリアの歌
にあったじゃないか、と思ったら、やはりそこからとっているらしい(しかし、
サイテックスはイスラエルの企業だ。イタリア語を使うか? ヘブライ語なら
わかるけど)。

先日、アメリカンヒットチャートの歴史本(1955年から1985年までの
ビルボードのトップ5が出ている本、一時こんな資料本を集めた)をパラパラ
と見ていたら、「ボラーレ」が出ていた。ドメニコ・モドゥーニョが歌って、
アメリカで1位になったという歴史的な曲である。

カンツォーネがアメリカン・ヒットチャートで1位になったのは、後にも先に
もこれ一曲だ。1958年8月18日付けでビルボード1位になり、9月1日
付けで返り咲き4週間1位を守ったというから立派なものである。おまけにグ
ラミー賞で最優秀男性ヴォーカル賞、ソング・オブ・ジ・イヤー、レコード・
オブ・ジ・イヤーに輝いている。同じ年、ドメニコさんは、「チャオ・チャオ
・バンビーナ」もヒットさせた。

ちなみに日本の曲も一曲だけ、アメリカン・ヒットチャートで1位になったこ
とがある。1963年6月15日付けでビルボード1位になり3週間ポジショ
ンを守った。その歌は、もちろん「スキヤキ」、つまり「上を向いて歩こう」
ですね。坂本九が歌った、今やジャパニーズ・スタンダード。ロクスケが作詞
して、ハチダイが作曲し、キュウが歌った。ロクスケは今でも「大往生」を書
いてベストセラーになったりしているが、キュウは1985年8月12日御巣
鷹山に散った。ハチダイは何をしているのだろう?

日本で歌謡曲、フランスでシャンソン、ブラジルでボサノバ、アルゼンチンで
タンゴ、イタリアではカンツォーネである。60年代には、多くのカンツォー
ネが日本でもヒットした。少し前に富士通のタッチおじさんが身をくねらせな
がら「イジレジレバ~ イジッテミレバ~」とCMで歌っていたが、あれも元
の歌は「サンライト・ツイスト」である。

「サンライト・ツイスト」は「太陽の下の18才」(1962年)という映画
の挿入歌で、映画からヒットした曲だ。歌ったのはジャンニ・モランディ。当
時、「レジレジレ~バ~、レジレジ~レバ~」と、小学生の僕は歌っていたが
(そんな風に聴こえたのだ)、確かに「イジッテミレバ~」と聴こえないでも
ない。もっとも今聴くとサビのところは明らかに「ゴー・ゴー・カート」と歌
っていて、原題の「ゴーカート・ツイスト」の意味がある程度わかる。

「太陽の下の18才」はカトリーヌ・スパーク主演の青春バカンスものだった。
公開当時、僕はひとりで映画館には行けない年頃だったが、それでも見たくて
看板を眺めていた記憶がある。夏、海、青春、という話には当時から弱かった
のだ。後年、「青い麦」「赤と青のブルース」「おもいでの夏」「八月の濡れ
た砂」などはマイ・フェイバリット・ムービーになる。

カンツォーネを日本でヒットさせたのはミーナ、ボビー・ソロ、それにジリオ
ラ・チンクェッティなどである。「月影のナポリ」「砂に消えた涙」「ほほに
かかる涙」「君に涙とほほえみを」「夢見る想い」などなど。ミーナは「砂に
消えた涙」「別離」の日本語バージョンまで出している。

カンツォーネと言えばサン・レモ音楽祭だ。日本の歌手もサン・レモ音楽祭に
出場した。出場すること自体が、ある種のステータスだった。サン・レモでグ
ランプリを獲得した曲は、日本でも大々的に取り上げられ(といってもラジオ
の音楽番組くらいだったが)ヒットした。ドメニコさんは5度優勝しイタリア
が生んだ天才ミュージシャンと言われた。

ジリオラ・チンクェッティは16歳の時にサンレモで優勝して、一躍人気歌手
になった。曲は「夢見る想い」である。「ノノレター、ノノレター、ディオメ
ンテェ~」(そう聴こえた)と僕は歌った。その2年後、1966年にはドメ
ニコ・モドゥーニョと組んで歌った「愛は限りなく」で再び優勝する。「愛は
限りなく」を僕は「ディ~オ・コメティア~モ、ウンベルクシケ~ラ~」(そ
う聴こえたのだ)と歌っていた。

イタリアの歌が日本でヒットした背景には、戦後、イタリア映画が多く輸入さ
れていた状況がある(と思う)。ロベルト・ロッセリーニやヴィットリオ・デ
・シーカ、フェデリコ・フェリーニ、ミケランジェロ・アントニオーニ、ルキ
ノ・ヴィスコンティといった巨匠連はもちろん、バレリオ・ズルニーニ、ピエ
トロ・ジェルミといったマイナークラスの監督から今や名前も残っていない監
督の作品まで、イタリア映画は毎月のように公開されていた。

イタリアはカトリックの国で、当時は離婚も避妊も禁じられていた割には(禁
じられていたからこそ?)、官能的な映画やセックスコメディみたいなものが
多くて、イタリア映画=スケベという公式が子供たちの間にはあったように思
う(タイトルも「女王蜂」とか「禁じられた恋の島」とか思わせぶりなのが多
かった)。

また、イタリアの女優は肉感的で、小学生から見るとイヤラシゲーな人(今の
言い方だと「フェロモン女優」か)が多くて、映画の看板を見ても妙に胸が苦
しくなった。肉感的女優代表みたいなソフィア・ローレンの映画からヒットし
た歌は「マンボ・バカン」(「河の女」1955年)「イルカに乗った少年」
(「島の女」1957年)などがある。胸の谷間が眩しかったクラウディア・
カルディナーレ出演の「刑事」(1959年)の挿入歌「死ぬほど愛して」も
大ヒットした。

「死ぬほど愛して」は、「アモ~レ、アモ~レ、アモ~レ~ミーオ」という甘
美なマイナー調のメロディが耳に残る。ある時、同級生が校庭で遊びながら口
ずさんでいたのを覚えている。その同級生は、つい口をついて出た鼻歌を別の
悪ガキに聞きとがめられた。可哀想に前述の公式を当てはめられ「彼はスケベ
である」と烙印を押されてしまった。

確かにカルロ・ルスティケリ(「刑事」「鉄道員」「誘惑されて捨てられて」
「ブーベの恋人」「禁じられた恋の島」など)やニーノ・ロータ(「ジェルソ
ミーナ」「甘い生活」「太陽がいっぱい」など)が作曲する映画音楽は、甘美
で情緒的で体にまとわりつくような(イヤラシゲーな)メロディが多かった。

しかし、カンツォーネはイタリア的脳天気さをうかがわせる陽気な明るいメロ
ディが多かったように思う。あの脳天に突き抜けるような高音で「ナ~ポ~リ
~」などと歌うカンツォーネはどこへ行ったんでしょうね。

【そごう・すすむ】DG@genkosha.co.jp  http://www.genkosha.co.jp/dg/
玄光社勤務。季刊DG(デジタルグラフィ)編集長。DG8号では、600万
画素ワンショットカメラ(370万円)カンターレのレポートは4ページ掲載。
また、600万画素3ショット(500万円)のボラーレで撮った名手・清水
行雄さんのスティルライフ作品をA4サイズで掲載しています。500万円出
すと印刷でここまでいけるのです。清水さんは以前、デザイン誌「アクシス」
の表紙写真を手がけていました。「光の魔術師」と呼ばれています。

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■ニューウェーブ漫才
e-○○

T&B            作:PAGOS(mailto:pagos1@mail.goo.ne.jp)
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B e-oneにとうとう東京地裁が販売禁止の仮処分を出しましたねぇ。
T アップルコンピュータが、iMacの工業デザインを模倣したとして提訴
  してた件ね。
B 発表会の時に「今後もSOTECは、世界を困惑させるようなコンピュー
  タを作りたい」と言ってただけに残念だよね。
T 間違ってるよっ。「世界をワクワクさせる」って言ってたんだよ。
B でも最初っからiMacとの類似は認めてたんでしょう?
T 顧問弁護士と相談した結果大丈夫だって発表会で言ったってことは類似の
  心配をしてたことを自分で認めてることだもんなぁ。
B 相談したのが横山弁護士だったのがマズかったよねぇ。
T ウソつけっ。SOTECの顧問弁護士の名前なんてどこにも出てないよ。
B 透けとるんのもマズかったんだろ?
T スケルトンだろ。最近はトランスルーセントとも言うけど、何でも半透明
  にすりゃいいもんとちゃうでしょ。
B そうそう、e-oneとかねぇ。
T その話をしてんだよ!!
B あとiBookとかねぇ。
T あれはオリジナルだからいいんだよっ。Appleと言えば、WORLD
  PC EXPOでASCII24編集部が敢行したベンチマークテストっ
  てのがヒドい話だよなぁ。
B せっかくテストしたのに思ったより遅かったって皆が怒ったからねぇ。
T 違うよっ。後ろに一般客が並んでる中、展示品にベンチマークテスト用の
  ソフトを勝手にインストールして、その場でテストを実施したやつだよ。
B プリインストールしとけって言うんだよね。
T そういう話じゃないだろっ。
B でも、3日前から徹夜で並んでたんだろぅ?
T 並んでないよっ。並んだとしてもいいわけないだろ!!
B 抗議されたんでしたっけ?
T アップルから抗議されてたけど、それに対して250万読者が知りたい記
  事を書くためにやったと堂々と言い訳した編集部は、常識ハズれてるとい
  うか、どないしようもないよなぁ。
B じゃあ1万4000人の読者が知りたがってると言ってデジクリ編集部が
  柴田さんを東芝製OSなのか、ディジタル・イメージ・ギャラリーin
  WORLD PC EXPOで調べた件もヤバかったんじゃないの?
T 誰もそんなこと調べてないよっ!!
B クロスバイクオプションソフトが追加インストールされてたらしい…。
T なんのことなんだよ。
B ついでにhammer.muleも機械かどうか調べたんだろ?
T 調べてないよっ。
B 朝方調子悪いのはやっぱり初号機によくある初期トラブルだったらしいね。
T もういいよ…。
B 話を戻しますがe-oneの名前と関連するけど、e-なんとかって最近多
  いですよねぇ。
T 確かにちょっと思い出すだけで、IBMのe- Businessとかから
  始まり、e-MoneyやHONDAなんかもe-TECHとか言ってる…。
B ヒサヤ大黒堂のe-不思議膏とかね。
T ないよっ!!
B 話題になった米国オンラインオークションのeBayとかもeだねぇ。
T 腎臓に高値がついたやつね…。
B 膵臓と争ったんだろう?
T そんな話はないよ。もともと臓器のオークションは禁止にしてたってこと
  だけど、eBay側も気付かない間に進行してたそうな…。
B 小牧ジャンクションは通行禁止じゃないんだろう?
T わけわかんないよ。しかし、出生前の赤ん坊とかもオークションで出たら
  しいから世も末だな…。
B 犬の赤ちゃんとかもあったんだろ?
T それは普通だろう。
B 神田さんの赤ジャケットとかもあったのかなぁ?
T 知らないよ…。
B もったいないことしたなぁ。
T 何がなんだよ…。

【参考】
・e-one発表、顧問弁護士と相談済み
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/990719/sotec.htm

・東京地方裁判所、ソーテックに対して仮処分を決定
http://www.zdnet.co.jp/macwire/9909/20/n_eone.html

・記事削除についてのお知らせとお詫び
 “WORLD PC EXPO開幕--
 注目のiBookとPower Mac G4のベンチマークテストを敢行”を削除
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/1999/0917/topi16.html

・eBayオークションで腎臓に570万ドル
http://www.zdnet.co.jp/news/9909/03/b_0902_13.html

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■セミナー案内
パネルトーク「マルチメディア時代の出版の未来」
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日時  9月28日(火)午後6時開場 6時半開演
会場  ドーンセンター(大阪府立女性総合センター) 大会議室
    TEL.(06)6910-8500[京阪・地下鉄谷町線 天満橋下車]
主催  アミ編集者学校
参加費 1000円
パネラー
   ・松本 功
    ひつじ書房代表。言語学関連の専門書、学術書を主に発行。
    出版の未来に向けてさまざまな試みを行っている。

   ・湯浅 俊彦
    出版メディア研究所。旭屋書店外商部勤務。日本出版学会会員。
    現在は、電子出版、出版の未来が、研究テーマ。

申込先 アミ編集者学校事務局
    井上はねこ haneko@osk.3web.ne.jp まで

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■編集後記(9/25)
・ある公募を案内しようと思って応募要項をまとめていたら、「尚、応募作品
の権利は◯◯◯(柴田注:主催者)に帰属します」とある。せっかくまとめた
テキストもごみ箱行きだ。よくもまあこういう無神経な応募要項をつくるもの
だ。最近はCG関係の公募も多いが、けっこう杜撰な(著作権などを無知な)
応募要項が多く、主催者にずいぶん問い合わせしたものだが、ほとんど回答は
ない。いままでのは捨ててしまったが、今度あやしい公募内容集をデジクリで
公開しようかと思う。この号はメイン部分を全角で組んでみた。わたしは読み
やすいと思うけれど、読者のみなさんはどう思います? (柴田)

・ねむ。眠いぞ~。行こうと思っていたお芝居行けなかったぞ~。先にチケッ
トを押さえないといけないお芝居はつらいなぁ。ライブなんかだと、あまり完
売しないようなものばかりに行っているので、当日の予定で飛び込みできるの
だけれど。 ある日からある日までのメールの返答を全くしていなかったこと
に気付く…。ぎゃあ~。お返事もう少し待って! (hammer.mule)

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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