[0472] 強く、誇り高いヒロインたち

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0472   1999/11/20.Sat発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 14449部
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 <おまえはのろまな亀だ>

●デジクリトーク
 強く、誇り高いヒロインたち
 十河 進

●デジクリトーク
 WEBサイト制作奮闘記(その2)
 名刺がわりに、軽く楽しく作ればイ・イ・ノ・ダ。
 イシグロマサハル
  



■デジクリトーク
強く、誇り高いヒロインたち

十河 進
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増村保造という映画監督がいた。1986年11月23日に62歳で死んだ。

同じ日、東京池袋のサンシャイン60で、60階までの階段204段を登る競
争が行われ、170人が参加した。また、茨城県龍ヶ崎市の商店街では市民約
5000人が集まり1時間あまりをかけて、長さ約1500メートルの海苔巻
き寿司を作っていた。

1986年11月23日は、もしかしたら一般市民が「俺たちも何か記録を残
そう」と燃えた日だったのかもしれない。あるいは、87年版ギネスブックの
締め切り日だったとも考えられる。2日早ければ、209年ぶりに大島の三原
山が噴火した日だったが、たとえば三島由紀夫が割腹自殺した日などという記
録に残る日ではなく、フツーの日に彼は死んだ。

増村保造は東京帝国大学法学部で三島由紀夫と同期だった。実際に学生時代か
ら面識があったかどうかは分らないが、1960年、増村は三島を主演に「か
らっ風野郎」という映画を撮っている。ナルシスト三島が初めて主演した映画
である。三島は自ら作詞した歌を劇中で歌い、パセティックに死んでいく。

三島は映画に出ると死にたがった。五社英雄監督の「人斬り」では薩摩の田中
新兵衛に扮して切腹し、自ら監督主演した「憂国」では延々と割腹シーンを描
いた。「豊饒の海」の第2部「奔馬」のラストシーンも割腹で終わる。美学の
人だった。

そんな三島が熱演した「からっ風野郎」だが、増村は「どうしょうもなく下手
だった」というコメントしか残していない。それでも三島の死後、増村はフリ
ーとなってから自主企画のATG(アートシアター・ギルド)映画として三島
由紀夫原作の「音楽」を作っている。

「音楽」は黒沢のり子が主演している。知っている人は知っている、という感
じの女優だ。ああ、と思い出す人もいると思う。ATG映画(芸術的!)でセ
ックスシーンもある映画に女優生命をかけて主演したが、一時的に話題になっ
ただけで消えてしまった女優である。だが、未だにこの映画のポスターがくっ
きりと浮かんでくる。シャドーを基調にした絵柄で、少しエロチックだった。

増村保造は大映の監督だった。「女を描くのに定評がある」とプロフィールな
どには決まり文句のように書かれた。

確かに彼が描くヒロインは力強く魅力的だった。若尾文子(卍、赤い天使)、
緑魔子(大悪党、盲獣)、渥美マリ(でんきくらげ、しびれくらげ)、安田道
代(痴人の愛、セックスチェック・第二の性)、関根恵子(遊び)、大谷直子
(やくざ絶唱)、原田美枝子(大地の子守歌)、梶芽衣子(曽根崎心中)、そ
れぞれの代表作は増村が撮っている。

増村映画の女たちは強い。いや、女だけではない。登場人物たちはパッション
に衝き動かされるように行動し、怒鳴り合うようにしゃべり、自分の気持ちを
ストレートに口にする。セリフは棒読みだ。

常に画面には強い葛藤が存在し、ドラマを次へ次へと引っ張っていく力強いエ
ネルギーが満ち溢れている。情緒的画面ではなく、乾いたストレートな表現と
描写が、ドラマを創りだしていくのだ。

梶芽衣子と宇崎竜童(初めてサングラスを外して出た)主演の「曾根崎心中」
を見てきた、僕の友人は、その映画をひと言で語った。

「うるさい映画やったあ」

さて、うるさくて登場人物たちの言動にわざとらしさを感じるのに、ドラマの
持つ力に負けて次も見ずにはいられない、そんなテレビドラマを思い出さない
だろうか。

たとえば「スチュワーデス物語」(1983年10月~1984年3月、TB
S系列)、そして1974年「赤い迷路」から始まった「赤い」シリーズ。こ
れらは、大映テレビ室が制作したドラマであり、増村自身もタッチした。

「赤い」シリーズは人気絶頂の山口百恵が出演するのが売り物だったが、百恵
が出たのは6作目までと最後になったシリーズ10作目で、間を水谷豊主演の
ものでつないだりした。ただ、そのドラマのトーンは変わらない。荒唐無稽と
も思える設定が凄かった。

水谷豊がピアニストになったシリーズ。ピアノコンテスト間近なのに殺人の冤
罪で拘置所に入れられた水谷のために、宇津井健は拘置所の中へピアノを持ち
込み練習させる。それを警察に認めさせようとする時の宇津井健は(キャラク
ター的に情緒がからみウェットになるものの)増村的情熱を見せる演技だった。

「スチュワーデス物語」で風間杜夫の教官が「おまえはのろまな亀だ」的なセ
リフを棒読みで怒鳴るようにしゃべり、オーバーアクションで演技する時、テ
レビの狭い画面をはみだすようなドラマのエネルギーを感じなかっただろうか。

それらのドラマーのトーンを創ったのは、間違いなく増村保造だ。大映テレビ
室制作のドラマは、ドラマを前へ前へと進める力を増村的演出から取り入れ、
そこへメロドラマ的ストーリーを注入し、本来ドライであった増村的映像にウ
エットな要素を持ち込み、不思議な非リアリズム空間(というより、ほとんど
シュールレアリズムだ)を作り上げた。

増村保造は、1952年、ローマの国立映画センターに留学をする。1954
年に卒業し、55年に帰国。大映の助監督に復帰し、1957年に監督昇進。
処女作「くちづけ」をつくる。

父親が選挙違反で拘留されている青年と、父親が公金横領で拘留されている娘
が東京拘置所で出会う。娘の母親は結核で入院し、娘はヌードモデルをやりな
がら生活を支えているのだが、その状況は描きようによっては悲惨で救いのな
いものになるのに、野添ひとみのヒロインはまったくめげず卑屈にならず誇り
高く、そしてやさしい。

先輩のモデルから「妾にならないか」と持ちかけられた時も「いくらになるの
かしら」とストレートに聞き返す。親のために自分の体を売るとか犠牲にする
とか、そんな悲壮感もみじめさも嘆きも感じさせない。自己憐憫のなさが、娘
を誇り高く見せる。フェミニズムの闘士にぜひ見てもらいたいヒロイン像だ。

主人公の青年は川口浩。野添ひとみとはその後、結婚し死ぬまで連れ添うこと
になる。この映画でふたりは、初めて出会ったのだろうか。画面からは二人の
瑞々しく息が弾むような高揚感を感じる。いや、増村の処女作の瑞々しさなの
だろう。42年前の作品だが、見事な青春映画です。

ところで13年前に作られた1500メートルの海苔巻きは、その後どうなっ
たんでしょうねぇ。

増村保造の仕事
http://www.rinku.or.jp/susumu/masumura_shigoto.html

からっ風野郎
http://www.rinku.or.jp/susumu/karakkaze.html

【そごう・すすむ】DG@genkosha.co.jp http://www.genkosha.co.jp/dg/
玄光社勤務。現在は季刊DG/デジタルグラフィ編集長。こんな話ばかり書い
ているとオタクみたいですね。もっとも、今や専門家や研究者はみんなオタク
呼ばわりされていますが。

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■デジクリトーク
WEBサイト制作奮闘記(その2)
名刺がわりに、軽く楽しく作ればイ・イ・ノ・ダ。

イシグロマサハル
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●やっぱり遅い映像系

ホームページ見てね。何人かに声をかけて見てもらうことにした。

「映像系のホームページは重いですネ」が返事のいくつかにまじっている。重
たくてもいい、を前提にして作ってはいたのだが、トップページの前に軽いペ
ージに分岐できるページを、さらに加えることにした。

つまりShockwave ムービーなしのページに飛べるようにするわけだ。それは単
にサウンドとムービーを外したページが見れるだけのことで、「僕、音楽も作
っちゃうんだゾ!」みたいな部分を削除してしまうのだから、ツマラナイ= 気
が重い! のだが(音楽の勉強をしたわけでもないし、音符も読めない私が、
Macがなければできないのがこのサウンド作りで 「こんな僕でも作曲できちゃ
うじゃん、聞いてみて、どう? 音楽になっている?」って、、、ホームペー
ジとは、そもそもそんなものなのではないか)、、、

ところが、このサウンドを入れたい、が一番やっかいだったのだ。SOUND ファ
イルそのものでは、どうも Dreamweaver には張れないようなのである。

で、Shockwaveムービーにして、音量調整とボタン機能を持たせることにした。
ちょと聞かせるだけでも、意外とファイルサイズが大きくなってしまうのが最
大のネックだ。8bit 11kHz にしてさらにShockwave Audio 圧縮をかける。め
ちゃくちゃサイズが小さくなる。え、と言うほどになってしまうのだ。だがそ
れでも、かなり大きい。

結局それが原因で、重い、なかなか開かない! になってしまうのだ。たかが
100k、200kのサイズでだ。はじめ、内蔵サウンドとして Shockwaveムー
ビーの中に入れ込むようにした。が、それでは当然、音が出るまでにかなり待
たされる。本当はこの方が作るときも楽だし、間違いがないと思うが、、、

ストリーミング(サウンド全体の読み込みを待たずに、再生を開始し、残りの
データをバックグラウンドでダウンロードする)をつい試したくなった。

SoundEdit で Shockwave Audio 圧縮をかけ、外部サウンドにしてみる。Shock
wave の解説本がないために四苦八苦だ。何度、音量の設定(LINGO(DIRECTOR
のプログラム)による設定)をしても中間の音量にならない。作っているとき
は、メモリにデータがあるので、遅延がわからない、等、結局、ホームページ
にアップロードしてみなければならなかった。

音量に関してはうまくいったと思う。が、中間の音量にすると、うちではえら
く小さい音だ。どうも、タワー型の Mac では音が小さいらしい。またWindows
では設定そのものが色々違うみたいだし、やっかいな難問として残る。(中間
の音量とはどのくらいなんだ?)マシーンやOSによって、色が相当違って見
られるのと同様の難問である。

このShockwave Audio ストリーミングにもやっかいな難点があった。とりあえ
ず、3分の1から2分の1程の先読みを設定するのだが、通信回線が混んでい
たりすると、ダウンロードがうまくいかずに、いきなり無音になってしまう。
まるでエラーでも起こしたかのようである。早めに音が出るのはいいのだが、
これではどうしようもない。

ああ、こういうときはどうしたらいいのだ。

かゆいところに手が届く、こんなときは! のTipsはどこにも載ってない。そ
ういえば、以前、ボタンでページがめくれる機能を Shockwaveムービーからは
ずしたのだが、通信回線のスピードのあまりの遅さに起因していたのかもしれ
ない。そのとき、1、2回のクリックは受け付けていたのに、つづけてクリッ
クするとエラーになってしまっていた。

いろいろやった割には酬われないナ!

思っていた以上にガッカリすることの方が多いのだ。

その多くが通信スピードの遅さから来ていることは否めない。そのためにやる
作業のほとんどは、ちっともクリエイティブではないのだ。もう、どつぼにハ
マッタというか、とことんやらないと気が済まない性格というか、、、
だが、もう、いいかげんなところで一度手を休めよう。音楽はMP3とかを調
べてみよう。

●HAPPYで行こう!

・・・・・・・・初めてだと、どうしてもグチが多くなる、若くないなア、ヤダナア! 
ということで、グチはもうこの辺にして、HAPPY にまとめたい。

ホームページを開くのは簡単だし、自分のショーウィンドウをキレイに飾るの
に、HTMLに精通する必要がないことも分かった。

マックを前にして1時間も教えてあげれば、その人はきっと、それなりのいい
ホームページを作れるようになるだろう。あと1、2年もすれば光通信が普通
になるだろうし、今、自分のホームページを作るのに早すぎることは決してな
い。細部にこだわらなければ、ホームページ作成は超カンタンだ。

ハハハ、気が楽になった。

名刺がわりに、軽く楽しく作ればイ・イ・ノ・ダ。

作品を順にお見せするだけのホームページだが、興味のある方は、ぜひご覧く
ださい。まだまだ発展途上国、気軽に作ろう! Simple is BEST ! だ。

http://www.ne.jp/asahi/m/skystone/

<TAKE-OFF>をクリックすると、最初つくった重たいページ、ブラウザのメモ
リサイズを上げておかないとシステムエラーにみまわれるかもしれない。私と
してはこちらのサイドを見て欲しいのだが、、、

また、作品を1点1点見せるページはだいたい20k前後、モデムスピード28.
8キロビット/秒で6秒、ISDN64で3秒が目安だ。おおよそのダウンロ
ード時間はDreamweaver のウインドウ上に表示される。参考にしたい方はぜひ
<TAKE-OFF>サイドへどうぞ!

そのうちまた、変更するなり、新しいページを付け加えるだろう。軽く、楽し
くやろう! ちょっとした実験なんかもやっちゃうかもしれない、、、(実は
今回、もうやっているのだ。preview 予告で、ウインドウを広げないと中が見
れないページを作ってみたのだ。クリスマスプレゼントをこんなふうに隠した
らおもしろいんじゃないか、見たい人は包みをあけてみる、とか思ってネ!

【いしぐろ・まさはる】
早稲田大学演劇専攻課程卒。東京写真専門学院卒。カメラマン、デザイナー、
オーサリングディレクター。NikonSalon、KODAK PHOTO SALOで写真展。横浜相
鉄ギャラリーにてグループ展「THINK」開催。ディジタル・イメージ会員。

・皆さん、イシグロさんのサイトに行って感想メールを出しましょう!(柴田)

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■編集後記(11/20)
・娘が、また見ちゃったと報告に来た。夜中の12時にあるところを車で通り
かかったら、反対車線に事故かなんかで3人ばかり人が立っていて、そのまわ
りに20人くらいの黒服の人達がいたという。運転席の友人に「葬式帰りに事
故かな、あんなにたくさん」と言ったが、友人は「なにそれ?」と話がかみあ
わないので、ふっとふりかえると3人の姿しかなかったという。真夜中に葬式
帰りもないもんで、ああまたかと思ったが、こわくもなんともなかったとか。
わたしには残念ながら(さいわい?)そんなものは見えないが、見えちゃうの
もめんどうだなあと思う。ともかく知らんぷりしていなさい、なにも感情移入
しちちゃだめだよ、と注意しておいたが、冬の怪談の一席。    (柴田)

・チボマットとカヒミカリィとUAを買った。ボニーピンクは悩んだけれど、
今回はお財布の中身が淋しかったので見送ることにした。何故か女性ボーカル
ばかり。これらの音で仕事による拘束時間が楽になり、はかどる。経費だよ、
こりゃ。気分良く仕事できるけど、冷え込んできたので夜中の作業は辛くなる
なぁ。徹夜な皆さま、お互いがんばりましょ~! (hammer.mule)

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■ 日刊デジクリは投げ銭システム推進準備委員会の趣旨に賛同します ■
http://www.shohyo.co.jp/nagesen/ <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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発行   デジタルクリエイターズ
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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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