[0481] JPCパブリッシング調査(後編)

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0481   1999/12/02.Thu発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 14552部
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 <なんか寂しくなってくるなあ>

●デジクリトーク
 JPCパブリッシング調査(後編)
 水無月 実

●ニュース
 日刊アスキー Linux Weekly Newsletter発刊

●展覧会案内
 超大型デジタルアートフォーラム 超現実主義2
 
●デジクリトーク
 こんなんで大丈夫か? 日本の印刷業界<その2の1>
 データベースパブリッシングのお寒い現実
 花摘ゆうき



■デジクリトーク
JPCパブリッシング調査(後編)

水無月 実
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JPCパブリッシング調査(前編)では、印刷会社、出版社、デザイン会社、
出力ショップを対象とした「JPCパブリッシング調査」の結果を紹介しまし
た。今回は、その結果を踏まえて、いろいろと考えていきたいと思います。

1.出版・編集分野

この分野は、身近なところにあるデザイン分野でのデジタル化進捗率が大きい
にも関わらず、その影響を受けていません。何と、この分野では、グラフィッ
クス制作の部門でも、この4年間でデジタル化率は45%→54%に成長した
程度、テキストデータにはほとんどデジタル化が見受けられません。

やはり、編集者、筆者の中にはコンピュータを使わない人々が案外多いようで
す。さらに、イラストレーターの中にも「カラーマネージメントが信頼できな
い」「デジタル化の技術には信頼がおけない」という声があります。それが、
デジタル化に踏み込めない第1の理由と思われます。また、出版・編集分野で
も、「DTP制作システムを導入する、しないは、出版コストに影響しない」
という声がありました。これは出版・編集分野の利益構造は売り上げが中心で、
広告掲載からの利益が大きな割合を占めています。それに比べて生産システム
の効率化は2次的要素と見られているようです。

2.デザイン分野

デザイン分野では日本にデジタル化の波が押し寄せたときから、コンピュータ
の利用率が高く、それが今に続いています。そのため、日本語DTPが本格的
に稼働し始めた1995年頃、第1回の「JPCパブリッシング調査」でも、
すでにデザイン分野ではデジタル制作が盛んでした。

さらに、今回の調査では、コンピュータを制作にフル活用しているとの答えが、
61%もありました。この数字は前回に比べ、倍増しています。この分野では
グラフィック・デザインだけなく、編集の要素が大きいエディトリアル・デザ
インにもデジタル化が進捗してきました。デザイン部門ではインターネット、
マルチメディア・タイトルをターゲットにした紙以外のデザイン制作も盛んで、
そこでは主にWindowsシステムが活用されています。

しかし、ここでもデザイン部門から「カラーマッチングが不十分である」とい
う意見が聞かれます。その数字は57%→70%に拡がっています。従来から、
デザイン分野ではカラーマッチングが重視されていましたが、デザイン制作に
コンピュータを本格的に活用するに至って、カラーマッチングの重要性がさら
に大きくなってきたのでしょう。

この4年間を振り返ってみると、コンピュータの処理能力自体は著しく向上し
ましたが、それに比べると、カラーマッチングの能力には顕著な進歩が見られ
ません。そこが不満の声の源泉でしょう。

さらに、日本語フォント技術への不満を表す声もあります。第1回の「JPC
パブリッシング調査」が行われた1995年当時は、日本語DTPの黎明期で
日本語フォントにはいろいろな問題がありました。しかし、「それはそれとし
て」という声があったことも確かです。それがここに至って、「いまだに」と
いう声とともに、日本語フォント技術の進捗状況に関する率直な不満が見られ
ます。

3.出力ショップ分野

出力ショップ部門では、この4年間で印画紙出力の率が減り、フィルム出力の
比率が増加しています。フィルム出力の増加は、日本語DTPでもカラー印刷
物制作の比率が増加してきたことを示しています。最近は、あらゆる情報がカ
ラーで提供されるようになりました。しかし、これらの情報の制作コストは引
き下げられ、さらに安い制作方式が模索されています。

この煽りを受ける形で、出力ショップもフィルム出力が増加したにも関わらず、
平均的に売り上げが芳しくありません。今年にしても、前年度に比べた売上高
は減少しています。イメージセッタ出力が多くなったにも関わらず、出力時の
エラーが少なくなり、もう出力業務を専用の出力ショップに依頼する必要がな
くなったと見る人々もいます。これらの要素が出力ショップの業績不振につな
がっているという分析もあります。

現在、出力ショップには変革が求められています。出力ショップはオンデマン
ド・カラー・プリンタへの関心が高く、オンデマンド・カラー印刷機も含めて、
新しいシステムの導入とそれらを活用した新しいサービスへの展開を指向して
います。また、大判カラー印刷出力への対応も模索しています。

出力ショップ分野には新技術への関心も大きく、CIDフォントの導入率は出
版・編集分野、デザイン分野がともに11%ですが、出力ショップには23%
も導入されています。さらに、PDFの利用率はデザイン部門が35%、出力
ショップでは実に72%にも上ります。

4.印刷・製版分野

印刷・製版分野ではこの4年間で、小規模の会社にもイメージセッタが導入さ
れました。カラーフィルム出力とカラー印刷が業界に定着してきました。デジ
タルシステムを統合した生産体制が確立され、安定したシステム、慣れた生産
体制が望まれています。また、デジタルシステムを活用した着実な生産も行わ
れています。

しかし、新たな生産体制への移行は遅れているようです。これは日々の生産を
安定したシステムでという思いが大きく、リスクを伴う新しい生産システムへ
の移行に踏み切れないからでしょう。印刷・製版分野では着実な進歩は受け入
れるけれど、大きな変革は望まないという風潮があるようです。

生産システムのうち、Macintoshの利用率は64%、Windowsが23%。ソフト
ウェアでも、定番になったQuarkXPressは77%、Adobe Illustratorが89%、
Adobe Photoshop が86%です。ここでも、定番ソフトウェアを始め、データ
入稿率の高いソフトウェアへの対応、生産のためのツールの導入には、積極的
であるという印刷業界の姿が見えます。

しかし、話題となったCTPシステムの新規導入は10%にも及びません。オ
ンデマンドシステム導入も同様で、CIDフォントの導入は14%、PDFの
活用は55%です。これらはいずれも高い数字とは言えません。

【みなつき・みのり】MMinatsuki@aol.com
関西出身のライター。1990年初め頃からDTPの世界に入り、現在は電子
出版、DTP、インターネット、マルチメディアと何でもあり状態。

・わたしも数年前は、DTPにかんする講演をあちこちでやってきた。おもな
論調が「編集者がばかだからデジタル化が遅れているのだ」であったが、いま
になってみると、それは違っていた。もちろん編集者挑発の言は間違いではな
いが。デジタルのワークフローは一編集者がいかにがんばっても達成できるも
のではなく、会社全体で取り組むべきものである。「経営者がばかだからデジ
タル化が遅れている」これが正しい。出版社のデジタル化は他業種に比較して
著しく遅れている。そういう出版社を対象にするセミナーを、JPCで精力的
にやっていきたいと思う。JPCの今後は「教育」に大きなウエイトを置いた
活動になるだろう。かく言うわたしも、JPC副理事長というすごい肩書きを
もらっている。自宅ではトレーナーを着て日がなマックに向かっている冴えな
い毎日だが、時折「おれって、外に出るとすごくエライのだ」と妻相手にいば
ってみせると「はいはい」との反応。「はい」は1回でよろしい。(柴田)

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■ニュース
日刊アスキー Linux Weekly Newsletter発刊
http://www.linux24.com/mailnews/
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<以下主催社情報>

このたび、アスキーでは、1週間分のLinux 関連ニュースを電子メールでお届
けする「日刊アスキー Linux Weekly Newsletter」を創刊することになりまし
た。当ニュースレターでは、1週間のニュースダイジェストのほか、Web サイ
ト「日刊アスキー Linux」の更新情報、Linux 関連雑誌、書籍の最新情報をお
届け致します。もちろん、メールの中から「日刊アスキー Linux」のWeb サイ
トにジャンプして、より詳しい記事をお読みいただけるようになっています。

(例)今週の注目記事
■69台のLinuxマシンによるクラスタ接続
http://www.ascii.co.jp/linux/news/column/article/article328352-000.html?wn
■データベースの常識が変わる! - 新世代データベース「DB2 UDB」ってなんだ。
http://www.ascii.co.jp/linux/business/db2/article/?wn

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■展覧会案内
超大型デジタルアートフォーラム 超現実主義2
http://www.i-love-epson.co.jp/go/event/genjitsu2/top.htm
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<Webサイトから>超精細にして圧倒的な表現世界。精密技術とアートワー
クとの融合。EPSON MAXARTで実現する4人のクリエイターたちの超現実主義、
再び。4人のスーパークリエイターを参加アーチストに迎え、作品をEPSON フ
ォトマッハジェット・カラープリンタ「MAXART PM-9000C/PM-7000C」で出力、
展示いたします。MAXARTならではのダイナミックな表現力を是非この機会にご
覧ください。MAXARTの最大の特徴である写真高画質や精細な表現力、また大判
出力の新たな可能性を体感していただけると思います。

出展アーティストは、勝井三雄、日比野克彦、田島照久、櫃田珠実の各氏。
会期 12月3日(金)~9日(木)11時~20時(3日は19時半)
会場 ラフォーレミュージアム原宿 ~入場無料~
   東京都渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿6階 交通:地下鉄千代田
   線 明治神宮前駅5番出口から1分、JR原宿駅から4分

MAXARTデザインワークセミナーは、東京、大阪で開催するが参加申し込みはす
でに締め切っている。豪華メンバーである。

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■デジクリトーク
こんなんで大丈夫か? 日本の印刷業界<その2の1>
データベースパブリッシングのお寒い現実

花摘ゆうき
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印刷業界で大きくアピールされている、情報サービス・情報加工産業というイ
メージとは裏腹に、こんなんで大丈夫か? 日本の印刷業界! と思ってしま
うような話題を取り上げている。その期待に膨らむ(ホントか?)のシリーズ
第2弾である。今回は、マルチメディアを取り上げていこう。

印刷業界の目論んだマルチメディアビジネスとは?

印刷業界でもマルチメディアを将来の事業展開の一つに大きく掲げてから、す
でにかなりの時間が過ぎたようだ。そして今年もいつの間にか年末が近づいて
きている。さて、それでは印刷会社が展開してきたマルチメディアビジネスは、
果たして成功しているのだろうか?

印刷会社が目論むようなマルチメディアビジネスの在り方としては、どっかの
大手印刷会社がいっていた、ワンソースマルチユースを核にマルチメディアビ
ジネスを、将来の最も重要な事業として見据え展開させてゆく方針を出してい
たが、こうした商業印刷物用のデータを利用するといったビジネススタンスが
基本となるのだろう。

つまり、カタログや事典など商業印刷物や出版物などで構築した、文字や画像
のデータベースを基に、「それじゃ今度はCD-ROMやDVDベースのマル
チメディアカタログを制作しませんか~」とか「DVDの百科事典を作りまし
ょう!」と提案したり、「WEBでのカタログ展開も考えられますよん!」と
いった調子で制作物を展開させてゆこうという考えであるわけだ。

印刷会社では過去、印刷物の制作過程で作られる画像データやテキスト、図版
類のデータを2次利用出来るように、デジタル化に励んできた。これには多く
の印刷会社が取組み、結果として現在はDTP制作がごく当たり前の制作手段
となっている。こうしたデータがふんだんにアーカイブされているわけだ。そ
れが印刷会社の強みともされてもいる。

大手印刷会社がよく新聞などに掲載しているデータベースカタログシステムが
あるが、このシステムの顧客としては事務機器、住宅設備などの定番商品とい
われる比較的サイクルが長い商品展開をするメーカーが多い。こうしたメーカ
ーのカタログデータは受注生産を繰り返す間、保管されてきている。データベ
ースカタログシステムに利用するにはもってこいのデータと考えることは、割
合容易に出来るっていうものだ。

しかしだ。こうしたデータが実際に、有機的に2次利用されているかといえば、
これがどうも怪しいものだったりするというのだ。じゃ、どういうこと? っ
てなるのだが、実は舞台裏では画像はMOに蓄えられているが、テキストはま
た別のCTSシステムというものに入っていたり、マークや図版についてはデ
ータが完全に保管されてなかったりと、けっこうバラバラに存在しているもの
らしい。

データベースパブリッシングという手法が昨今ではもてはやされているが、ペ
ージレイアウトにあるデータは、お互いにリンクされていない状態で保管され
てきたということなのだ。

もっと分かりやすくいえば、「えーと○○印刷さん、98年版のこのカタログ
のね、120ページと320ページのこの画像5点を流用したいのね。あとス
ペック部分もね」な~んていわれようもんなら、最悪の場合は数あるMOの山
の中から画像5点を探さなきゃならないし、スペック部分のデータなんかCT
Sにちゃんと残ってたっけ? もしかして、レイアウトデータから拾わなきゃ
いけないのかしら? てな具合になってしまうわけである。

大手印刷会社の内部事情だってこんなもんである。「いや~、画像だけはね、
保管されてたんだけどね、なんてたってただ年版別にMOに保管されてるだけ
だしねえ」なんていうのがあれば、「やっと画像データベースが出来たんだけ
ど、まだまだ別々だもの。結局は作り直さなきゃーね」なんていったりしてい
るのが多かったりするのだから、手工業的な部分がまだまだ少なくなっていか
ないのだ。

そのうえ制作コストは発生してしまうし、制作したカタログのデバッグ作業な
んかもう、それこそ地獄ものだろう。表と裏はこ~んな具合に違っていたりし
ているのだ。データベースパブリッシングがその名の通りに、キッチリといっ
ている会社は、一体どのくらいあるのだろう。なんか寂しくなってくるなあ。

【はなつみ・ゆうき】HAG03100@nifty.ne.jp
突如として現れる、ゲリラ的デジタルライター。印刷会社にいたこともあるが、
現在はフリーで、コンテンツ関係の制作などを手がけている。年齢、性別など
は不詳。

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■編集後記(12/02)
・デジクリも号数を見ると481である。年内に500となる。部数もいつの
まにか14500を超えていた。年内に20000となる(といいな)。いま
までわたしが手がけたマガジンで最高部数である。意外な人から「読んでいま
すよ」と言われ、犬や娘の情報が筒抜けなのに驚く(自分で書いてるのに)。
「ただで読ませてもらってすいません」って声も多いが、そんなときは「では
書く側にまわってみませんか」とお誘いする。一方通行ではないマガジンにな
りたいと思う。気持ちのいいコミュニティでありたいと思う(たとえば、もう
すぐ200名を超える所帯となるアーティスト団体「ディジタル・イメージ」
なんて居心地はすごくいいんですよ)。仲よきことは美しきかな。(柴田)

・教祖って、信者に心の底から敬ってもらえていいよな。丁寧に扱ってもらえ
るだろうし、労力も金銭も惜しげなく出してもらえる。こりゃ、部下が動かな
いと嘆く社長さんたちには羨ましい存在かも。お金の集まる所には、いろんな
ものが集まってくる。救われた人も多いんだろう。どんな優れた教えなのかも
知らないから書いちゃいけないんだけど、素直な気持ちとして人の人生や命を
扱うのって、背負うのって、精神的に大変なのによく活動する気になったもの
だと思ってしまった。いくらお金積まれても出来ないよ。私にそんなカリスマ
性はないって? わはは。なくて良かった。そういやここ数年、カリスマとい
う言葉の意味が軽くなっちゃいましたね~。流行語らしいし。過去絶対的な意
見を持って存在していたカリスマ。これからカリスマの最上級、比較級が出て
くるのでしょうか。ミニカリスマ、中カリスマ、超カリスマ。(hammer.mule)

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■ 日刊デジクリは投げ銭システム推進準備委員会の趣旨に賛同します ■
http://www.shohyo.co.jp/nagesen/ <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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発行   デジタルクリエイターズ
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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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 担当:濱村和恵
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