[0589] これが視聴率の生きる道-Part2-

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0589   2000/04/24.Mon発行
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 <グラフィックソフトでありながらテキスト記述とは何とまあ>

■デジクリトーク
 これが視聴率の生きる道-Part2-
 神田敏晶

■デジクリトーク
 POV-Rayノススメ
 中山嗣朗 



■デジクリトーク
これが視聴率の生きる道-Part2-

神田敏晶
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KNN神田です。

Macの不調と苦戦しながら書いています。フリーズするとシステムをインスト
ールし なおさないと動かない。しかもメニューバーがでない時もしばしば…。
フリーズしな いことを祈りながら…。先週、お話したように本日は、「これ
が視聴率の生きる道 -Part2-」です。

すべてのメディアやデバイスにIPアドレスをふり、それらの動きをトラッキン
グする というのが一番の視聴率をはかる方法でしょう。しかし、そんな時代
はあと5年もすればやってくることでしょう。

それまでは、インターネット放送の利用が考えられます。それは、EPG(電子
番組ガイド)の利用が一番の近道です。電子番組ガイドをパソコンやその他の
端末に取り込み、テレビ側に反映させるのです。そして見たい番組をチェック
し、毎週、この時間にはこの番組。この番組はいらないから消去。というのを
テレビを見ながら設定できるようにします。そして、視聴結果のログファイル
と共に、何かの端末で局側もしくは第三者機関に返信できるようにすればいい
のです。

TivoやReplyTVがそれに近いことをEPGガイドで、すでに実現しています。パー
ソナルTVのTivoやReplyTVでは、現在電話回線で広告付のEPG情報を送信してい
ます。電話代金が市内フラットレートの米国ならではのサービスです。同様に
WebTVも電話回線がフラットレートだからこそ、日本よりも普及しています。

最近WebTVでは、放送局側にオーサリングツールを提供しはじめました。それ
が「Micorosoft TV」です。放送で関連する番組情報を、電話回線でインター
ネットから取り寄せるのです。それにより放送局側のサーバで用意したテレビ
放送以外のコンテンツを集めることができるのです。
「Micorosoft TV」http://www.microsoft.com/tv

さらにTivoは、番組中にTivoボタンをライセンスしはじめました。これはテレ
ビ番組を見ている時にそのボタンを押すと、関連情報があればTivoが自動的に
ハードディスク上にMPEG2で録画してくれるのです。スタートレックでTivoボ
タンを押すと、グッズ情報からビデオ販売のコマーシャルまでスタートレック
に関する情報が自動録画されていることになります。これはインターネットを
使うのではなく放送番組の自動録画という方法です。

家にかえってテレビをつけると、Tivoのインタフェースが留守電話のようにこ
れらの番組がありますとEPGと共に表示するのです。TivoにはSony、フィリッ
プス、ReplayにはPanasonicがハードウェアをライセンスしていますので、日
本での登場には期待できそうです。

これらのデバイスを持った家庭の視聴状況は一目瞭然ですから、その視聴デー
タは新たな価値を持つでしょう。それは視聴率ではなく、視聴者数だからです。
もしかすると年収や職業、家庭属性を視聴率会社に情報をパーミッションすれ
ば基本のセットトップボックスが無料で配布という戦略も可能でしょう。見た
くない番組は番組表から消去されるので、広告クライアントとしてはとても参
考になることでしょう。

しかし、これは統計的なデータではありませんが、視聴者数のトラッキングが
できる大きなパイを確保できることとなるでしょう。それは、パーソナルTVを
使っている人たちの視聴者数であり、新しいメディアに敏感でテレビを積極的
に見ている人たちの消費行動を、従来のサザエさん、NHKの朝ドラ視聴者層と
比較することができるからです。

さらに、インターネットとそれらの端末が結びつくことによって、次世代のテ
レビとインターネットとの視聴習慣がはかれることとなります。これらは既存
のテレビ視聴率でははかれない分野なので、さらに価値がでることでしょう。
未来のテレビはインターネットとも直結していくからです。

21世紀を境にしてテレビとインターネット放送は、垣根がますます低くなって
いくのです。現在の視聴率調査では、あくまでもテレビだけの放送時間あたり
の視聴率でしかないのです。広告クライアントの欲しいデータは、何人の人が
自分たちのコマーシャルを見てくれたのか、なのです。

SONYのVAIOなどで番組予約をインターネット上でできるようになっていますが、
パソ コンで録画されたテレビを見たいとは思いません。もちろんDVDもです。
確かに閉息された飛行機や新幹線などでDVDを再生するプレイヤーとしてのパソ
コンは意味がありますが、テレビがあるのにわざわざ、パソコンで映画やドラ
マを見ようという気持ちは理解できません。アダルトDVDやニュース番組はちが
うのかもしれませんが…。

現在、アメリカではyahoo!Broadcastなどにより、300Kクラスの映像コンテン
ツがガンガン送られててくるようになりました。そのためのデータセンターな
どの施設型のインフラは急ピッチで進行しています。実際に300Kでフルスクリ
ーン拡大された映画は、パソコンでも十分にストリーミングで楽しめます。

しかし、やはり手持ちぶさたなのです。やはりパソコンはアクティブなメディ
アです。見ているだけではつまらないのです。反対にテレビはパッシブなメデ
ィアです。できる限り、じっとして見ていたいのです。

アメリカのTV-CFで連呼されるURLには、思わずTVからアクセスできればどれだ
け便利かとおもいます。そこで気に入れば自分のパソコンに知らせるなどの連
係がで きれば、さらにインターネットとテレビは近いものになります。

日本ではごく一部の広告主を除いて、URLの先までTV側が責任を持てないとの
ことで、URL広告の自主規制があるようですが、これはTV離れを起こさせない
ための手法と思えて仕方がありません。日本でもEC関連のスポンサーが増えて
くると、こんな事をいってる余裕はなくなってきます。テレビ広告をささえて
いるのがインターネットカンパニーという時代が日本にもやってくるからです。

デジタルTVで、帯域やチャネル数が拡大されてもそれをいかしたコンテンツは
それほど急速に登場するとは思えません。HDTVが業界でいくら普及したとして
も、民間でHDTVで見たいコンテンツが存在していません。HDTVならではの革命
が必要なのです。モノクロがカラーになった時のような革命がない限り、HDTV
モニタに買い替えようとは思いません。

そのひとつの解決方法は、プラズマ方式のうす型巨大HDTVモニタでしょう。ア
メリカのリビングルームには巨大な湾曲したブラウン管の超大形テレビや、プ
ロジェクションタイプのテレビがホームシアターとして鎮座しています。その
画質が確実に進化するならば、HDTVの画質が問われるモニタを買い替えようと
するでしょう。しかし、それはさらに時間はかかります。放送局がデジタル化
したとしても、コンスーマーでの買い替えニーズはまだありません。

むしろ、インターネットのEPGプログラムとの併用のほうがはやいでしょう。
受信アンテナはBSもCSで統合されたり、CATVやケーブルモデム、DSLモデムな
どとの融合で、テレビの視聴そのものが大きくかわるでしょう。そのうちテレ
ビでフリーダイヤルを告知した瞬間、連係したパソコンのブラウザの自動入力
機能がコミュニケートし、必要な情報を取り寄せ、パソコンの受信簿に保管し
ておくといった事が可能になるでしょう。その情報をPalmやPocketPCで呼び出
し、モニタですぐ確認も可能でしょう。

そんなテレビとインターネットがハイブリッドに共存する時代にあったモニタ
における視聴率という分野が必要に感じました。モニタは今、ゲームをしてい
るのか? インターネットを表示しているのか? ドラマを見ている? 映画
をみている? 時計がわりになっているのか? です。もしかすると犬が見て
いるだけなのかもしれないからです。

The smallest digital TV station in the world
KandaNewsNetwork http://www.knn.com
Toshi Kanda mailto:knn@rr.iij4u.or.jp

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■デジクリトーク
POV-Rayノススメ

中山嗣朗 
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POV-Rayはレイトレーシングのレンダラーです。
http://www.povray.org
数年前まで日本ではほとんど知られていなかったのですが、何冊か本が出たり
雑誌に紹介される機会も増え、最近はずいぶんと認知度が増したようです。で
も、まだ御存知ない方も多いと思いますので簡単に御紹介したいと思います。

POV-Rayの主な特徴はというと、
1.フリーソフトである。
アメリカのコンピュサーブを中心に8~9年ほど前に生まれた英語ソフトです。
現在の最新は Ver3.1g
2.多機能である。
ラジオシティ、自由度の高いテクスチャ、メタボール、非常に多彩なプリミ
ティブ、大気や霧の表現、等々
3.モデラーがない。
テキスト記述タイプです。Windows版やMac版では高性能のテキストエディタ
が付属していて、レンダリング画像の表示もできますが、元来はテキストフ
ァイルを読みこんで画像ファイルを出力するタイプのものです。
4.OSを選ばない。
Windows 95/98/NT、Macintosh、Linux、SunOS、Dos、Amiga等ソースが公開さ
れているので、コンパイルし直せる環境があれば大抵のOSに対応可能です。
5.記述言語が強力。
if~else や whileなどの制御構造、ローカル変数、配列、引数呼出しのでき
るマクロ、さらに各種の数学関数が装備されているのでほとんどプログラミ
ング言語並みの事ができます。

 といったところでしょうか。

特に3.~5.は密接な関係があって、OSに依存しない→グラフィック環境に頼ら
ない→テキスト記述式→記述言語が強力になっていく。

という経緯で発展をしてきたわけなのです。今時、3Dでモノがぐりぐり動かせ
る時代に、グラフィックソフトでありながらテキスト記述とは何とまあ時代錯
誤なと思われがちですが、むしろこういう時代だからこそ、このようなソフト
は貴重だと私は感じています。

いずれにせよ、良くも悪くもこの点が最近の3DCGソフトと決定的に異なってい
る点で、理系技術系のユーザの支持を多く集めているのもそのためです。

2.で多機能であると書きました。インストールすると「こんな機能が欲しいと
いう機能のほとんどは既に実装済みである」とメッセージが表示されるほどで
す。全部の機能を使いこなしている人はいるのか疑わしくなります。さらにマ
クロを利用したユーザによる機能拡張も頻繁に行われていて、レンズフレアや
樹木生成、銀河系の背景作成など全てマクロで実装されています。

また、ユーザがソースを改良するいわゆる非公式パッチ版の開発も盛んです。
昨年末にそれらのパッチを集大成したMegaPOVと呼ばれるバージョンが公開さ
れましたが、光子マッピングや等値面オブジェクト、モーションブラー、各種
ポストプロセスと言った公式版も真っ青の驚嘆すべき内容が盛りこまれていま
した。(現在これらの成果を公式版に取り入れるべく作業中です)

このように、ユーザが研究成果を積極的にフィードバックすることによって進
化し続けているのが現在のPOV-Rayの姿です。いまも独自のニュースサーバー
news.povray.org を拠点に日夜活発な議論が交わされています。

では、日本ではどうでしょうか。実は英語ソフトであることが日本のユーザに
とって最大の障壁になっています。マニュアルは6メガを越え、印刷すれば500
ページを下ることはないでしょう。

あまりにも大部なため日本語への翻訳は非常に困難で、事実最新バージョンの
日本語訳はありません。ただ幸いなことに、最近は優れた解説書が何冊も店頭
に並ぶようになりました。そのおかげで、ずいぶん事情は好転してきています。

私は2年前からPOV-Ray関連のニュースサイトを開いていますが、ここにきて日
本の情報が格段に増えてきました。日々ユーザが増えつつあるという手応えを
感じています。POV-Rayのウェブリングも1年ほどの間に60サイトほどに成長
してきました。世界的規模から見ればまだまだですが、海外のPOVユーザの目
が日本に向いてきているのも事実です。

いままで、ともすれば無料ソフトという眼でしか見られることが多く、安かろ
う悪かろうのイメージが強かったPOV-Rayですが、徐々にその真価を認めらて
きているのは非常に嬉しいことです。今後ますますこの傾向は強まることでし
ょう。どうぞ、みなさんも機会があればぜひ一度お試し下さい。

では、Happy Tracing!

【なかやま・しろう】1956年生まれ。80年北海道大学理学部数学科卒業。93年
より(株)サピエンスにてデザインソフトの開発に携わる。2000年3月に栃木
県にて個展。ステレオグラム、アルゴリズミックアート等プログラミングを通
じてCGに関わってきたが、最近はPOV-Rayによる3D作品の制作と同ソフトの普
及に努めている。ディジタル・イメージ会員。
http://www.koganet.ne.jp/~sylow/pov/

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■編集後記(4/24)
・昨日は第3回目の建築業者側の説明会。近隣対策専門の仲介業者が仕切って
いるから、とってもあぶない。プロとアマのたたかいだ。海千山千対赤ん坊み
たいなもんだ。結局は「工事協定書を締結する」というところまではウンと言
わせたが、「協議中は工事に着工しない」という前提を拒否するので、延々と
やりあって時間切れ。持ち帰って協議しろ、と押し込んで終わる。11階から9
階に設計変更の回答があったが、まだまだ問題は山積み。疲れる。(柴田)

・最近帰宅が終電ばかりだ。自宅で仕事をしているので、終電というのは、人
と会うからなのだが、普段ひととあまり会う機会のとれない私は、ちょっと疲
れ気味。東京から来た知り合いを案内して見た、造幣局の通り抜けの桜はとっ
ても綺麗だった。関山の重たさが好き。桜の散る時の、花びらの嵐の中に立つ
と嫌なことも忘れられる。いい季節ですなぁ。      (hammer.mule)
http://www.mint.go.jp/ ←造幣局

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■ 日刊デジクリは投げ銭システム推進準備委員会の趣旨に賛同します ■
http://www.nagesen.gr.jp/  <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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