[1070] CGで食べていくということ

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1070    2002/04/17.Wed発行
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 <アドバイスできることは全然なくてごめんなさい>

■デジクリトーク
 なぜに 今のところ どこかに所属することなしに
 なんとか CGで食べて来れているのか?
 中川佳子

■デジクリWEBデザイン研究室
 無意識的ウェブデザイナーの遠吠え・6
 Rey.Hori

■青瓶 2423
 赤い風。
 北澤浩一



■デジクリトーク
なぜに 今のところ どこかに所属することなしに
なんとか CGで食べて来れているのか?

中川佳子
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「CGでご飯を食べてゆくために 必要なお勉強とか志とか 向いてるタイプは
とか なにかアドバイスを」といった課題で書くことになりました。

この手の話は、しゃべる方が後に残らず無責任に済むんですけど、、、それは
それでまずい? かも? 文字で書くと、後に残ってかなり恥ずかしい感じに
なりそうだなあと思いつつ、それに、もともと面白い人間ではないので、面白
い話もできないし、いちど考え出すとどうしようか困って迷ってしまう自分で
あるし。

とりあえず、目の前の問題をひとつずつ解決しながら、たまに、先々を考える
というような、あんまりほめられないような状態で、日々を過ごしている自分
であることを知っているだけに人に物言うのは(特に文字で)難しいですね。

そもそも、私が「なぜに今のところ どこかに所属することなしに なんとか
CGで食べて来れているか」は、説明不可能です。自分でもよくわからないし、
先々どうなるかもわかりません。始めた頃から、今に至るまで、いつでも思っ
ているのは、いったいいつまで仕事としてCG制作に関わっていられるのだろう
か? という思いです。

実際に、経済的に考えた時に、さほどの計画性もなんにもなしに、今まで来た
ような感じもしないではないです。「営業」といえるほどの事をほとんどせず
に、なんとか、お仕事がそれなりに頂けてきた事自体、ただただ、ありがたい
以外のなにものでもありません。

もちろん、それなりに努力してきたといえることはあります。そのこと自体は
非常に常識的なことなのですが、実行するには、それなりにエネルギーが必要
です。とはいえ、特にCGだから、、、ということでもありません。それは、一
旦受けた仕事には、誠心誠意で返すこと。

仕事に関しては(普段の自分の人生には、たいして持ち合わせているとは言い
難いのですが)計画性をちゃんと発揮して、スケジュールに関してトラブルを
起こさないこと。制作前には、とにかく、知らないことは勉強して、こちらか
ら提案できることは提案して、なるべくうまく意志の疎通がはかれるように努
力すること。

これは、一番難しいので、いつもうまくいくとは限りませんが、それなりの成
果はありますし、やらないわけにはいきません。多分、これらを100%成功し
たとはいえないまでも、実行し続けようとしてきたことが、次の仕事につなが
ったのだと思います。

もともと、自分がやりたいと思うようなことだったら、人として常識的に自分
の現状をきちんと客観的に把握して、自分に足りないところを補うためにひた
すら頑張れば、時間が多少かかっても、そこそこにはできるのでは? と思っ
ていたので(思いこみかもしれませんが、そう思っていたのは事実だし、今も
そう思っています)どこかの会社に就職して、中堅のクリエーターだったら頑
張ればなれるかなと思ってました。

大学4年の時に、CGのアニメーションを見て、創ってみたいと思いました。コ
ンピュータを使ってアニメーションや、絵を作れる仕事に就ければいいなあ、
それでそれなりの収入があれば、暮らして行ける。自分で作品を創る余裕もあ
るかもしれない。

とはいえ、そう思った時には、CGの制作会社などまわりに見あたらなかったし、
教えてくれる学校もなくて、とりあえず、ビジュアル系のお勉強をしようと、
デザイン系の専門学校に。そこで、デザインとイラストの基礎を勉強して、イ
ラストレーターの事務所で仕事を始めました。

学生時代に習った先生に呼ばれて当時から仕事に行ってたので、就職活動をし
たことはありません。なので、学生さんにアドバイスできることは全然なくて、
ごめんなさい。強いて言えば、学生時代に頑張って技術的(一番はっきりアピ
ールできます。もちろんセンスだけでもいいのでしょうが、人によりますが、
レベルを見るのが難しいし好みもあるので)に優れていれば、足がかりにはな
るとは思います。

また可能であれば、最悪、収入にならなくとも、どこかきちんとプロフェッシ
ョナルに仕事をしている環境で、仕事に参加するというのが、仕事とはどうい
うものかを知るには、早道だと思います。その環境での、仕事の方法論が学べ
ます。そこで、頑張ってちゃんと成果をあげれれば、キャリアアップになりま
す。少なくとも、履歴書に参加プロジェクト名が書けます。現状の社会状況で
は、そういうところで、ちゃんと雇われることはなかなか難しいかもしれませ
んが、バイトまたは、、、、ならいけるかもしれません。

イラストの事務所では、色々な絵を描くことになりましたが、その頃はあんま
り好きではなかった建築物のイラストの技術が、後で経済的には非常に助けに
なりました。その時つくづく思ったのは、どんな作業でも(どうせやらないと
いけないことなら)無駄にせずに一生懸命やってきちんと自分の身につければ、
それはどこかで自分を助けてくれるということです。

概念的には以前からわかっているつもりのことでしたが、この時は実感しまし
た。おかげで、CG制作で収入がえられなくても、なんとか先に進むことができ
ました。

結局、自分がものを創りたいと思うとすれば、それは、自分が関心を持ってい
るジャンルに対してだろうし、私の場合は、ファンタジーとサイエンスのどち
らも必要です。といっても混合した世界ではなく、ファンタジーはファンタジ
ー、サイエンスはサイエンスですけど。両方を行き来することで私の中ではバ
ランスが取れそうな気がしています。

何かを創りたいと考えた時に自分がどういうスタンスで、それらに関わりたい
と思うかは、自分で決める以外仕方がないし、といって、まっすぐにその道に
直結した近道があるわけでもなさそうです。もちろん人によっては、初めから
そういう道にたどり着く場合もあるでしょうが、私自身の経験では、今まで、
結構ラッキーな道を進んできたとは思うものの、まっすぐに来たわけでもなけ
れば、未だに初めの目標にたどり着いたかどうかも怪しいものだと思っている
わけです。

さらに言えば、たどり着くべき先も、時々に多少の変化をしながら、そこそこ
の先は見えているものの、当然終点は見えません。それでも、だいたいがそん
なところでやっていければ、私としては、妥当な線ではないかと思っています。

なんだか、書けば書くほど、参考になるような事は書けない気がしてきますが、
CG的向き不向きを云々するより、仕事をきちんとするスタンスがあるかどうか
の方が、現実社会で「できるかどうか」という話では大事だと私は思います。
CGデータの制作という観点からいえば、もちろんコンピュータの前で長時間座
って仕事をすることが苦痛の人には、つらい仕事だろうし、頭と手の両方がバ
ランス良く使える人の方が向いているとは思います。

私は、基本的には3DCGアニメーションの制作をしておりますので、それに関し
て書くと、モデリングでは彫刻家などに必要な空間把握の能力が、アニメーシ
ョンでは動きのシュミレーション能力というのも必要です。

絵を創るという観点では、カラーリングのセンスや、レイアウトのセンス、カ
メラアングル、ライティングのセンス等さまざまです。ひたすらデッサンする
とか、粘土や紙等手近なもので、何か立体物をつくってみるとか、身の回りに
ある物をよく観察するとか、沢山のアニメーション作品や映画を見るとか、あ
らかじめ10秒とか決めて、頭の中で絵を動かしてみるとか etc.etc. きりが
ないなあ。

また、何もない空っぽのコンピュータという箱の中に、一から世界を創って行
くわけですから、自分が創るべき世界に対しての知識も必要です。現実をシミ
ュレーションしているような世界であれば、現実を。空想の産物であっても、
見る側にそれなりに見てもらおうとするならば、前提条件になるそれなりの現
実感が必要でしょう。デザインとは、制約のなかから生まれることの方が一般
的だと思うので、「仕事」と考えれば、主観的集中力と客観性という多面的な
制作スタンス上の切り替えもできないと困ったことになります。

ただし、CG制作の場合、状況によっては、一般的な映像制作スタッフの一人分、
またはすべての作業を一人でやることも可能なわけです。どの部分を(または
すべてを)自分がやりたいかによって向き不向きもかなり変わってくるかと思
います。

すべてを一人でする必要もないわけです。今後充実してくると思われるモデリ
ングやアニメーションのライブラリーを駆使して創るとか、人に頼むとかすれ
ば、必要な素養は、デザイナーとしてのコーディネートの力や、通常の映像産
業におけるディレクターとしての力量と同じです。やりたいことがどの部分か
がわかれば、映画等、既存の映像産業における向き不向きに照らせば、もっと
わかりやすいかもしれません。

【なかがわ・よしこ】arian@dream.email.ne.jp
1986年よりNHK特集「驚異の小宇宙 人体1、2、3」プロジェクト参加。
1990年より DIGITALIMAGE展(東京、大阪にて毎年各1回その他各地にて開催)
に出品。
1994年「人体2 脳と心」より「MEMORY」SIGRAPH入選(VIDEO REVIEW収録)。
1993年より「音楽ファンタジー夢」(NHK)にてオリジナルCG作品制作。
2000年連続テレビ小説「オードリー」(NHK)タイトルCG制作。
インターメディウム研究所、武庫川女子大学等 非常勤講師
(株)アイ・コム代表。
TV番組、展示映像、教育用コンテンツ等、CGパートのディレクション及び
アニメーション、イラストレーション制作等 ビジュアルクリエーション全般。
http://www.ne.jp/asahi/arian/image-composer/

▼むりやりお願いしてテキストを書いてもらいました。苦心惨憺だったようで
すね。どうもすみません。誠実さがよくあらわれていると思いました。

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■デジクリWEBデザイン研究室
無意識的ウェブデザイナーの遠吠え・6

Rey.Hori
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連載開始以来「気ぜわしい」と書かなかった回がないほどで、書いている本人
も読んでいる皆さんもイヤんなってしまい、思わずウクレレをかき鳴らしてい
ることと思う。今週は98年からずっと首がつながっている非常勤講師の仕事が
今年も始まる。つまり開講日というものがある週だ。

僕が教えているのは美術短大の選択の講義で、内容はPhotoshop初級編といっ
たところ。去年共学になったばかりなので、受講生はまだ女子のほうが多い。
男女問わず、CGに興味を持ってくれる学生には、講義の枠を越えて例えばHTML
やWEBのことなども教えてやりたいし、使えるヤツがいるならバイトで使いた
いぐらいなのだが、講義時間が限られている上になかなかそういう「食いつい
てくる」学生がいないこともあって、大体は空振りに終わることが多い。

それでもWEBに興味を持っていたり、既に自分のWEBページを持っている学生が
ちらほらいるのは良いことだ。いささか無責任かもしれないが、現時点での
WEBはコンピュータとアカウントがあるなら、他にカネのかかる道具要らずで
始められてプロと勝負できるフィールドだぞ、などと学生を煽っていたりする
(初期投資の大きくなりがちな3DCGやDTV、DTMなどに比べて、ということね)。
その道具をめぐるお話について進展があったので、まずはその報告から。

●「mi(ミミカキエディット)」はエライ

前回、理想のHTMLエディタといったものについて書いたところ、何人かの方か
ら「それならこれが」というお勧めのメールを戴いた。何より反応の素早さに
驚いたわけだが、この場をお借りしてメールを戴いた穂積恵人さん、須永浩正
さん、則包高希さん、そして当WEBデ研長屋の美麗住人の一人でもある北岡久
美子さんにお礼を申し述べさせて戴きたい。ありがとうございました。

で、これら皆さんが共通してお勧めツールとして挙げておられたのが上山大輔
氏制作のフリーソフト「mi(ミミカキエディット)」
<http://www.asahi-net.or.jp/~gf6d-kmym/>。

名前は聞いたことがあったものの、その名前の印象がちょっとアレなもので
(笑)今までのところは使わずじまいだったソフトだ。申し合わせたわけでも
ないでしょうに、皆さんが揃ってお勧めになるということは大いに期待アリか
もというわけで早速ダウンロードした次第。折り良く新バージョン(v2.1b13)
が公開されたばかりというのも運がいい。

ファーストインプレッションで言うなら、「mi」はプレーンなテキストエディ
タに徹底的とも思える編集や表示のためのカスタマイズ機能を持たせたもの、
というのが筆者の印象だ。HTML以外にもJavaやCなどの編集に最適化されたモ
ードがデフォルトでも用意されており、更に作者以外の方々の作ったモードフ
ァイルがWEBに登録されているのでこれらを組み込むこともでき(中には聞き
初めの言語用のものとおぼしきものもある)、加えてこれらのファイルは基本
的にテキストファイルなので自分でどんどん手を入れて自分流に作り込むこと
が可能なのだ。

誤解のないように言っておくと、Jedit2にもAppleScriptを使って定形的な入
力や編集機能を自動化する機能はあるのだが、筆者としては「mi」が更にこれ
をわかりやすく且つ操作性を高める方向で搭載しているところがエライと思う
のだ。前回書いたような機能が全て搭載されているわけではないが、このカス
タマイズを徹底的に行うことでかなり近いところまで行けそうである。

ともあれ、使いだして日が浅いので、あれこれ言うにはまだ経験値不足ではあ
る。目下のところIビームカーソルの操作感に若干引っかかるところはあるの
だが(何がどう、と説明しにくいのだが、どこか他のソフトと違う気がする…)、
乗り換えを検討する価値の十分にあるツールという感触なので、しばらく併用
してみたいと思っている。引き続き「それならこっちのほうが」というお勧め
ツールがあればメールを戴けると大変ありがたい。お道具の探求は一生仕事で
ある。

●Netscape最新版が……

一方、恒例のお仕事同時中継報告。前回、脱力の事態について説明したが、あ
れからずっと脱力クラゲ化しているわけには当然いかず、先方ご希望の方向へ
の改修作業を実施した。

元々迷宮化していたメニューを整理する目的で、Flashを使って究極の(?)
整理を行ったのであるが、今回はこれを少しばかり元へ戻す方向に改修した。
Flashメニューでは一発操作で第三階層まで項目を駆け降りることができたの
だが、これを第二階層までにとどめ、そこにノーマルなHTMLページを用意して
第三階層の製品群の説明を読めるようにしたのである。

最初からこの形式にすべきだったのではないかとも思えるほど当然の構造に戻
ったわけであるが、遠回りしてしまったのは、前回も書いた通り当初のデザイ
ン提案時の踏み込みが甘かったせいと言われても仕方がない。

新しい構造では、新規に作った第二階層ページとヘッダ部に新設したナビゲー
ションメニュー(HTMLベース)が新デザインなのだが、公開済みのページへの
違和感のない組み込みが求められたので、念のために展開前に一枚絵としてク
ライアントに了解を求めた。即了承がもらえたため、これらを改めて展開し、
納品して現在はライブアップ待ちというところだ。これを書いている現時点で
は未アップだが、一体何をどう変えたのか、もう少ししてからご覧戴ければと
思う(URLはバックナンバーを見て下され:
http://www.zdnet.co.jp/macwire/0203/26/dc_kenkyusitu.html)。
トップページは殆ど変わったように見えないので念のため。

この改修の中で、一つ困ったことがあった。トップページにFlashメニューが
あって、これを開いて下層へ降りるのだが、下層からトップへ戻った時にメニ
ューを開いた状態で保持して欲しいという要望があったのだ。どのページから
戻って来るかによって、メニューのどの枝を開いた状態にするかは異なるので、
下層から戻る時に変数を使ってJavascriptからFlashメニューのSWFにラベルジ
ャンプをさせて実現することにした。ところがこれがNetscape6.xで動かない
のである。

実はMac版のIE5.0でも動かないのだが、これはもうあきらめている。悲しいけ
れど、Mac版のIEだけだから、という理由で通せなくもない。ところが
Netscape最新版である6.xがMac・Win全滅となると場合によってはツライ。色
々試したり調べたりしたところ、Macromediaのサイトに
(以下カギカッコ内引用):

(Netscape6では)「FSCommandアクションを利用してJavaScriptへコマンドを
送ることは出来ません。また、逆にJavaScriptでFlash Playerを操作すること
も出来ません。」
http://www.macromedia.com/jp/support/flash/ts/documents/fl0249.html

……と書いてあるではないか。なんだそりわ。別の意味で脱力である。せっか
く6.2で見直しかけているNetscapeなのに。それでいいと思っているのかぁあ
ああ! という大声を誰に向って叫べばいいのかわからない。どこでもいいか
ら早く何とかしてくれぃ、という気分である。僕などよりもっと困ってる人が
多いんじゃないかしらん。

件のサイトについては、現在この問題に関してクライアントにご容赦のお願い
中である(改修によってメニューの階層が浅くなったので、多分了承してもら
えそうな感触アリ)。ヘンなエラーとかにならないのがめっけもんである。そ
れに、カッコ悪い方法で良ければ解決策もあるにはある(どんな方法か、考え
てみて下さいな)。

さて6回に渡って気ぜわしくお伝えして来たこのコラムであるが、何やら当WEB
デ研長屋を改装するらしいという大家さんからのお達示があった。どんなこと
になるのやら、シモジモの店子にはわからないのであるが、引越し荷物を敷居
と一緒に胴ぐくりしないように気を付けつつ、この改装を無事生き延びること
ができたら、という前提付きで次回またお目にかかりたい。まずはここまでご
覧戴けた感謝を込めた3分間の土下座とともに、次回方面へと続くのやらどう
やら。

本名、堀内営【ほりうちまもる】 '63年 大阪生まれ。'97年8月より、フリー
ランスとして三次元CGやHTMLコーディングを中心に制作活動中。'98年4月より
横浜美術短期大学非常勤講師。……宣伝を2つ。筆者のミニ個展というか、西
麻布某所に作品5点の大版プリントを展示中。詳しくは筆者のサイトをご覧下
さい。そして、筆者自身は今回初の不参加となってしまうものの、GW恒例のデ
ィジタル・イメージ展も開催準備中。詳しくはディジタル・イメージのサイト
をご覧下さい
http://www.digitalimage.org/topnews/news_2002tokyo.html)。
どちらも一杯のお運びをお願い致しまする。

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■青瓶 2423

北澤浩一
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赤い風。




■ 十河さんの影響か、チャンドラーの短編集をぱらぱら捲っていた。
 稲葉明雄さんの訳になる。
 まちがえて探偵になってしまったような、フィリップ・マーロウが登場する。
初期のものではやや若い。
 設定ではどうなっているのか確かめていないが、マーロウという男は結構お
坊ちゃまであって、中産階級の育ちのよさがそこかしこに見られる。
 これでは母性本能をくすぐるだろう、というような会話などもあり、女性フ
ァンも多かった。例えばこういう場面。

--

 彼女はうつろな眼を私にむけて、蜘蛛の巣を払うような手つきをした。
「そうよ。あの――わたし、急いでいるのよ。だから――」
 私は動かなかった。エレベーターの前に立ちはだかっていた。おたがいに睨
みあっているうちに、彼女の顔がだんだん紅くなってきた。
「そんな格好で外にでないほうがいい」と私はいった。
「まあ、なんてことを――」
(レイモンド・チャンドラー「赤い風」:稲葉明雄訳:創元推理文庫:111頁)

--
 
■ この女は事件の鍵を握る厄介な御婦人なのだが、初対面の会話がこうなる。
 ワーナー・ブラザーズ風に言えば、ここはケーリー・グラントが仕立ての良
いスーツを着て女性を睨みつけている、といった絵であろうか。
 女性が何かうっすらとした目的を持っている時、無意味な言葉を発すること
はままある。この誘い水のかけ方など、青山辺りで遊んでいた女子大生の熟し
た方でも、そう旨くはいえない。

 チャンドラーの小説には車が多く登場する。
 デューゼンバークとか、ロールスのシルバー・レース。マーロウ本人が乗っ
ていたのが確かクライスラーだったように記憶している。
 アメリカという国では、乗っている車によってその階層(クラス)が判別さ
れるという風習があった。
 同じエンジン・ボディの組み合わせでも、細部の仕上げによって、これは大
都市のインテリ層に評判が良い車。これは黒人、あるいはヒスパニック系が好
む車にと明白に区別できた。ボディ・カラーなどもそうである。
 70年代始め、オイルショック辺りまでは、そうした車による一定の判別は比
較的容易だったように思う。
 小林章太郎さんがエディターだったころの二玄社、CGのアメ車特集を眺める
と、横に立つモデルの肌色でそれが分かるのだ。
 マーロウが活躍する時代では、黒人が車に乗ることはまだできなかった。そ
うした記述は記憶にない。



■ 久しぶりに読み返したマーロウものは、それが短編ということもあり、粗
雑な魅力に溢れ若々しかった。
 特有のワイズ・クラックもそれほどでもない。
 チャンドラーはまちがえて小説家になってしまったような人だった。
 その本質は詩人であり、一歩間違えるとただの感傷に流れるところを、かろ
うじて踏みとどまっているところに絶妙な味わいがあった。
 チャンドラーに影響を受けた作家は多いが、乾きすぎていたり、女性のあし
らいが下手だったり、読むに耐えない下手な警句を連発したり、この世界を後
からなぞるのも至難である。

「二日酔いの原因はアルコールとは限らない。私の場合は女だったこともある」

「大いなる眠り」の中の一節であるが、今の私はこういうのをソラで言える。
 安いスコッチが半分になってしまった。

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北澤 浩一:kitazawa@kitazawa-office.com
「Give A Whisle」http://www.kitazawa-office.com/
デザイナ・コピーライター
写真家ともいう。

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■編集後記(4/17)
・きゅうりの乱切りにみょうがのざく切りをまぜて塩をふってポリ袋にいれて
冷蔵庫で半日、これが毎晩わたしのビールのおともになる。ひとりできゅうり
2本食べてしまうこともあり、あきれた妻からキリギリスとかカブトムシとか
呼ばれる。ビールは外で飲む分にはいくらでもいけるのだが、家では350mlを
2本、これを越すと翌日不調という経験は何度も。安上がりだわい。(柴田)

・編集長に「CMに出ている子に似ている」とずいぶん前に言われてから、ショ
ックでいまだに頭の中ループ中。いえ、相手はモデルさんなんですけどね、売
り出し中の。おこがましいって気もするんですが、なんていうか、あんなにオ
リエンタルなのか?ぜ、ぜったい髪の毛切ってやる(シウバ調に。ガウガウ)。
ヴィダルサスーンのショートヘアなんていいな。でもあれはモデルがいいから
であって、似合うだろうか。うーん、顔をすげかえた想像ができないっ。私っ
てどんな顔だっけ? 思い切ってベリーショートなんてどうだろ。そういやア
ネッサのCM、どこかで見たことある顔だと思ったら吹石一恵じゃないの。可愛
いよねぇ。あ、ついでに打ち合わせ用のスーツも欲しいな、春物の。最近スー
ツ着てないからパンプスもいるな。はい、忙しくなるとぉ~ (hammer.mule)
http://www.vidaljapan.com/  ヴィダルサスーン
http://www.VidalSassoon.com/  ヴィダルサスーン、ワールド。
http://www.shiseido.co.jp/anessa/ アネッサ。好きよ、このCM

・テライユキのタイピングソフト、プレゼント実施中。応募を待つ!!!
http://www.dgcr.com/present/index2.html

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発行   デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 

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