[1091] 怪奇 エンコード男 発見!

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1091    2002/05/28.Tue発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 20883部
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【デジクリは言論出版の自由を脅かす「メディア規制三法案」に反対します】

■デジクリトーク
 怪奇 エンコード男 発見!
 モモヨ(リザード)

■Webディレクションの花道(第16回)
 金のハナシはまたあとで
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■デジクリトーク
怪奇 エンコード男 発見!

モモヨ(リザード)
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私の知り合いというか、一時顔を出していたプロジーという会社に、動画のエ
ンコードに、どっぷりはまった男がいた。

一昨年くらいだったか、まだ貧弱なPC環境の時代に、家族のためにビデオCDづ
くりを始めたのをきっかけに、動画のエンコードというか、エンコードそのも
の(?)に熱中しだしたのである。

普通は、我が子の成長記録なんかに撮りだめたビデオライブラリーを整理する
ために安価な編集ソフトを購入。それがきっかけで、プリミエまで行ってしま
う。そんなのが定番だと思うが、この男、珍しいことに編集には、まったく興
味を見せなかった。

当時、ドイツのAISTという会社から、自社のムービーDVという製品の日本版を
扱わないか、そう言ってきたのに、ほとんど相手にせず、「スガハラサン、こ
のアプリで遊んでみてくれますか?」そう言って、私の机の上にそれを放り出
すようにして、自分はせっせとエンコードに熱中していた。

(そのドイツ製のソフトは、ムービーDVとか、DVパックとかいう、どこにでも
ある商品名だが、Xウィンドウを髣髴とさせるヨーロッパ風のユーザーインタ
ーフェースが私は気に入っていた。対象はファミリーユースだと思うが、仕様
はプロ並だった。ただし、日本の事情をまったく考慮していないPAL系のプリ
セットが当然ながら初期値に選ばれており、細かいところをあちこち手直しし
ないと使えないのに閉口したが、中身はかなりのものだった)

しかし、彼は、見向きもしない。

当時、彼が熱中していたのは、借りてきたビデオやDVDの画面をキャプチャー
して、それをそのままビデオCDに焼くことだったのである。言葉でいうと簡単
だが、家庭でテレビを録画するようなのとは、わけが違う。

当時の彼のやり方を紹介しよう。

まずキャプチャーにもともとのプログラムの時間がかかる。ここはVHSなんか
と、なんら変わらない。普通の人間は、あとは観るだけである。しかし、彼の
苦痛、というか喜びというか、生きがいを感じている作業は、その後にある。
そこがミソだ。

ここで、我々のような凡人は、オリジナルビデオを作るために編集したい、な
んていう煩悩にとらわれる。しかし、彼は、そんなことを一顧だにしない。彼
が為すことは、ただ一つ、エンコードなのである。普通のビデオCDにしても、
スーパービデオCDにしても、このままでは焼けない。それに、ファイルの大き
さが尋常ではない。であるからして、それをそれぞれに適した形にし、かつ圧
縮してやらなければならない。それがエンコード。

当時、流行っていたのは、オールインワンダーなどの多機能ビデオカード。実
を言うと、こうしたカードをさしてやれば、それだけでテレビ録画が可能だ。
この手のデバイスは、エンコードしながら録画してくれるものが大半だから、
ビデオテープのような使い勝手が可能である。これが、いわゆるハードウェア
エンコード。使い勝手はいいのだが、画質はちょっと悪い。

一万円ちょっと出せばビデオデッキが買える時代に、わざわざ高い金を払い、
機械と格闘して粗悪な画像に涙するなんてのも、やはり、秋葉系でないと探せ
ない類の人間だろうが、彼に言わせれば、それすらが邪道。やはり、人間が血
と汗と涙で夜を徹してエンコードしていく姿が由緒正しい、というのである。

彼のやり方は、こうだ。

最初の晩は、愛用のシェアウェアエンコーダー、TMPGenc(ティーエムペグエ
ンクと読む)に読み込ませて、大容量ハードディスクに収録した元のデータ
を、ざっとエンコードしてみる。

文章に書くと簡単な作業だが、実際にこの作業に一晩かかる。むろん、これで
終わるはずがない。次に、画面が汚くなるところを手直しする。

例えば、画面全体が同時に変化するような場合、エンコードしきれずブロック
ノイズが発生する。それをさがして補正していくのだ。

むろん、コンシューマーユースのハードウェアエンコーダーでは、そんな芸当
はできない。それが邪道である所以とのことだ。

TMPGencは日本製の優秀なツールで、堀君という若き天才が生みの親。私もよ
く使わせてもらっている。そのあっさりしたユーザーインターフェースからは
思いもよらぬが、世界的にも知られた存在であるだけに、処理を細部に渡って
指定してやることができる。例えば、先ほどのブロックノイズなら、変化を読
み取るキーとなる画面を増やしてやるだけで、かなり軽減する。

しかし、たかが30分のビデオプログラム、日曜ごとのアニメをCDに焼くのに一
週間を費やす、それほどの度量を我々凡人が持ち合わせていないことを彼は最
後まで理解しなかった。……そして、私は、会社から離れ、彼もまた会社を辞
めていった。ために私達の縁も疎遠になっていったのである。

そんな彼とは去年の秋から会っていなかった。

この春、作者の堀君が監修したというTMPGencの解説本が出版されたので、さ
っそく購入してページを繰っていたところ、誌面に彼の名前を見つけた。驚い
たのなんのといって、堀君と新しい会社を作り、そこでTMPGencを売っていた
のである。

三つ子の魂というか何というか、あの怪人がついに会社まで立ち上げたか、そ
う考えると嬉しいような怖いような……、先が楽しみな話ではある。

モモヨ(リザード) 管原保雄
http://www.babylonic.com/
momoyo@babylonic.com

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■Webディレクションの花道(第16回)
金のハナシはまたあとで
-見積、請求-

UZ
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金額交渉に長けた人は、おねだり上手だ。この論法には絶対の自信があるので、
まあ聞いてください。

某ソフトウェアベンダーで、売上の社内記録を毎回更新している女性営業マン
がいた。バリバリのキャリアウーマンというより、どことなくふわりとした、
癒し系の雰囲気をもつ女性である。SEとして毎日サポートの仕事に没頭してい
た時期を経て、メインフレーム用のソフトウェアの営業となったそうだ。

スケジュール取りや交渉など、営業スタイルにも何の焦りもなく、いつも余裕
が感じられるものだった。周囲のSEやアシスタントにも無理な要求はさほど多
くない。

顧客が見積もりを求める理由として、「提供されるべき作業の成果物と、その
内訳を知りたい」という要望があると思う。その際、「これだけの作業で、こ
れくらいの価値があるから、斯く斯く云々な金額です」という正しい説明があ
り、顧客が納得すれば、額面どおり払ってもらえるだろう。しかし顧客は、ど
んな理由があったにせよ、安いにこしたことはない、という思いも持っている。

その人は、性格もあってか、おおらかで、細かいことは気にしない。否、顧客
の気持ちの細部までをしっかり掴み取って的確に反応するからこそ、細かい追
求をすべき部分としない部分をしっかり分けて考えていたのだ。例えば、契約
書や価格交渉においては、詳細な説明資料などはほとんど作成しない。

なぜ、詳細な説明を省くのか。それは彼女の“おねだり上手”の性質にあった
と見たのである。顧客の中に潜んだ「おねだりされたい」気分に、ズバリと訴
えかけることが出来ているからに違いない。それは“工数”などと、あたかも
工場で機械が生み出すがごときの割り出し方とは、全く別方向の交渉術だ。

◆“おねだり術”の深い意味

小さい頃、デパートでおもちゃ売り場に行って、もしくはスーパーでお菓子の
売り場に行って、おねだりをしたことがあるだろうか。自分は全くおねだりが
へたくそだった。しまいには「何か欲しいものはないの?」と聞かれる。しか
し、おねだりをする正当な理由がみつからない。どちらかというとおねだりを
しないほうが、“お金のかからない子”“わがままを言わない子”という名誉
を手にできる分、自分にとってメリットが高いと思っていた。

しかしそこは子供、物欲を押さえきれるものでもない。「我慢しなくていいの
よ」といってもらえるまで、我慢している様子をアピールするため、おもちゃ
売り場の前を往復してみたりしたものだ。

そのとき気づけばよかったのは、買ってあげるほうにも、欲があるということ
だ。子供の欲求を満たしてあげたいという素直な感情。または、買ってあげる
ことによって、その関係が強化され、買ってあげた方からの要求も通りやすく
なるという期待。支配欲の変形かもしれない。それを考慮できないで、やみく
もに我慢をしていた自分の子供時代は、今振り返ると人の気持ちを推し量れて
いなかったのだと思う。

時は流れて、見積もりを出すとき。ふと顧客との関係性に、おねだりと同じこ
とがいえるのではないかと気づいた。

「モノそのものの価値ではなく、付加価値によって購入の動機付けをする」
というのは、CRMの発展により見直された、従来の日本の営業スタイルである。
特にソフトウェアやWebページの制作物など、提供するものが複雑なものの場
合、付加価値は一層大きく購入の動機付けに関わってくる。

ビジネスモデルからつっこんだ話しを繰り返し、見えにくいものを苦労して形
にし、結果その使用者は使用の先にあるメリットを見出せるようになる、とい
うような複雑なプロダクトの場合には、顧客との関係性は切り離せない。単に
安くやってくれる制作会社より、仲良くやっていける会社と仕事したいと思う
に決まっている。

その際、構築してきた関係性を全く抜きにしたような制作工程と工数の一覧を
見積もりとして見せられたら、どう考えるだろう。ロボットかなにかと仕事を
していたのか? つれない気分にならないだろうか。

また顧客の要求のまま、値を下げに下げて、我慢を繰り返していたとする。
いつまでも要求してこない制作会社には、顧客だって、メリットが対価分しか
ないような、安物を買ってしまったような気分にならないだろうか。

そこで、流した汗と涙をベールでつつみ、顧客の支配欲という関係性を生かす
べく、交渉する。これだけの対価を払ったという自信を顧客に与えるために、
おねだりするわけである。その際、理由はいらない。欲しいと思っていること
を、素直に伝える。また、くれると思っているということを、素直に訴える。

夜、どこかのお店でなら、おねだりは単なる高級ブランドバッグへの物欲でし
かないが、ソフトウェアにしてもWeb制作にしても、「あなたを信頼してます」
という嘘が通用するほど単純なフィールドではない。真にお互いの信頼関係が
あるからこそ、通じる作戦だと思う。彼女が最も売れる営業ウーマンになった
のは、顧客に潜む本当の感情を読む力があったからだと、思っている。

◆見積もりの種類

Web制作において、金のハナシはいつ、持ち上がるものなのか。見積もりを求
められるタイミングは何通りかある。用途を理解した上で、どのタイミングに
対しても気を抜かずに臨まなければ、ハナシは徐々にこじれて行くだろう。

1)提案前
「ざっくり、いくらぐらいでできるものなんでしょうか」と、よく聞かれる。

ここで価格を述べるのは、かなり厳しい。作業内訳がほとんど予測不可能だ。
必然的に“これはx年x月x日まで有効の”とか“○と×と△をした場合の価格
です”とか、但し書きが多くなる。

あまりヘタなことを言いたくない場合、次の手を使うのはどうだろうか。
・妥当な他顧客への見積もり実績を、事例紹介とともに提出
 実例なので、自社ケースと比較しやすく、また別モノとして見てもらえる。
・上限の金額を出し、実際に提供できる作業内容を別紙で説明
 低く出すとアウトだが、高く出して「うぇ」と引かれるのを防ぐために、
 サービス内容を具体例にそって解説した資料を提出。
・オプションをたくさんならべる
 MAXで出すインパクトが憚られる場合、見積もり上の金額としては“ページ
 制作費用”のように、項目を単数で記載しておき、オプションで“企画す
 る場合”“Flashを使う場合”とつらつら重ねておく。

2)プレゼン時
プレゼンした内容を構築するのにいくらかかるかを出す。

プレゼンも何回か行なう場合があるが、コンテンツやスケジュールの大枠、プ
ロジェクト体制までをも盛り込むような詳細プレゼンの段階には、見積もりは
必須だ。

もちろん、大枠を提示する際には詳細の見通しがたっていないと出せない。お
のずと見積もり的にもヘビーな作業になってくる。但し項目は大枠で出すのが
鉄則だと思われる。確定するのは仕様検討後だからだ。

金額面が仕様に影響するのは、この段階である。プレゼンが通ったタイミング
で、「ありがとうございます! では、最後にご確認ですが...」くらいに、

予算についてはきちんと確認しておくのがよいと思う。このタイミングで予算
について確定しておいてもらわないと、通って喜んだはいいが、作業の終了間
際に「話が違う!」ということになりかねない。

3)仕様決定時
制作に入る直前での見積もり。

これが実質上の請求金額と見てよいと思う。顧客的なリミットもこの段階であ
り、この時点の見積もりが稟議を終われば、制作フェーズにゴーがかかるとい
うわけだ。

この段階で、仕様決定に加わった実作業者の意見を反映できると、見積もりを
起こすプロデューサー的には責任分散できてラクだと思う。せめて、各作業者
に了解を取った上で提出したほうがいい。金額は営業だけが知っていればいい
というのは、いまやナンセンスだ。

4)精算見積もり
構築後に提出する、実際の金額の見積もり。

精算見積もりというのは、建築用語らしい。自分はDTP関係の会社で使われて
いたのを聞いた(DTPご出身の方、一般的に使っていますか?)。

DTPの場合は、見込みの外注費や部数による印刷代、紙代などを細かく算出し
直したものと言えそうだ。確かに、仕様決めの段階では確定していない要素を、
確定した後に顧客に報告し了解を得るのは、必要な作業である。この考え方は
Webにも非常にマッチするように思う。工程によって細分化される作業を最終
的にまとめ、請求額として起こすのだ。

◆制作者も見積もりを

毎日見積もり作りに追われているマネージャーがいた。社内の見積もりルール
で、詳細な工数表に基づいて計算し割り出さなければならないのだ。構築ペー
ジ数、コンテンツの構築負荷のレベル、システム構築にかかる時間と各人員の
レベルまで、すべてを見通しながら起こさなければならない。自ら制作作業を
しながら、深夜におよぶ見積もり作り。悲惨なほど時間がかかっていた。

この状況を脱する理想的な方法としては、「作業者自身が、価格を設定する」
ことである。デザインの仕様が決まったら、それがいくらの対価を求められる
ものなのか、各人に出してもらうのである。

制作者には、自分の成果物が一般にいくらで売れるものなのか、知っている人
が少ない。金の話を気にしだすと何も作れなくなる、という考えも一方にある。
しかし、作った本人がいくらで売りたい、という意志は必ずあるだろう。いく
らでもいいから売って欲しい、という場合、営業が高い値段をつけたばかりに
却下されて、作りたいものが作れなかった、というのは、経験を求める若い制
作者にとっては悲劇だ。

また制作者と顧客との温度差を埋めるためにも、制作者の生の声を見積もりに
載せることは効果があるのではないかと思える。これだけ力を入れました、と
いう制作側の心意気を見せておくのだ。

それが無理ならば、見積もりに詳細を記載するのではなく、別途それぞれの成
果物が出来上がるまでの工程表、作業表を提出するのはどうだろう。顧客はど
ういうことが行なわれたのでこの価格になったのか、ということが知りたいは
ずだ。それを見積もりに逐一記載してしまうと、工程を誤った際、方法のみ方
向転換した場合に、つじつまが合わない。それは頻繁に起こることであって、
たやすく想定できないものだ。

工程表ならば、最終的な目的地が明記されている。目的に合わせて価格を設定
し、その間の作業に関しては企画段階での見込みで枠を設定しておくというの
がよのではないだろうか。見積もり書は当然、ただ単に顧客が価格を把握する
ためのみではなく、顧客の社内で予算をどのように使うか、ひいてはそのプロ
ダクトにどれくらいの期待をかけているかという、会社の経営会議でもみくち
ゃにされるほど重要な書類だ。そこに、行なうかどうかわからない工程を記載
してしまうよりも、目的物をしっかり明記するだけのほうが、お互いに安全と
いえないであろうか。

◆価格設定の理想

昇給の交渉の際などにも言えることであるが、そうはいっても相場がわからな
いとどれほど要求してよいか、わからない。

メシが食えればいくらでも、という気前のよい状況であれば、時価でよいのか
もしれないが、価格は業界に波及する。そこそこ名の知れた一社が価格を破壊
すれば、小規模な制作会社の何社かは、潰れてしまうかもしれないのだ。自分
の名誉のためばかかりと、あまり軽はずみな行動を取るべきではないのかも。

こればっかりは、そう明らかになるものでもないので、相場に関しては、経験
を積むか参考になる雑誌でも眺めるしかないのだろう。傾向としては、企画や
ディレクションは時間単位の単価が高く、コーディングや画像加工などは低め。
チーフ格と作業者格の違いがある。いずれの作業も、時間では万までいくか、
いかないかという単位が多そう。

システムの構築時に使われる、工数見積もりについて、Web制作に置き換えた
場合、個人的に反対したい考え方がある。いずれも、工数単位の説明が実体と
異なってくるため、顧客に非常に説明しにくいのだ。

・企画費、ディレクション費、デザイン費を時間単位で割り出す

成果物単位でカウントするべきものだと思う。個人によっても、そのプロジェ
クトの規模によっても、大きくことなるからだ。

一定時間については、確かに必須の時間である。しかしアイディアの場合、1
時間でひらめく場合もあれば、10時間でもどうにもならない時もある。クリエ
イティブはそういった緊張感を常に背負って、質の向上を求めていくべきもの
だと思う。ディレクション費を節約するために、とっとと終わらせてさっさと
帰れなどと会社を追い出されてはたまらない。だったら徹夜してでもよいもの
を作りたいと思う。

・デザイン費とコーディング費を同じカウントにする

コーディングには明らかなノウハウがある。デザインには、明らかなノウハウ
にあたるレベルを越すと、そこからはアイディアの問題だ。コーディングは、
仕様が決まった時点で社内でどれくらいの工数が掛かりそうか、見通せるよう
にしておくべきである。しかしデザイン費はそんな簡単に割り切れるものでは
ないだろう。

もちろん、同じと考えるようになった背景には、デザインがコーディングの効
率に直結するものであるとか、デザインはテンプレート化できるものであると
かいう理由があるだろう。しかしクリエイティブを重視するのならば、同じ作
業者だったとしても、デザインには成果物の単位で価格設定したいものだ。

・ドキュメント制作費を工数で割り出す

どんなドキュメントでも、一から作成する時には異常に時間がかかる。ある程
度、応用できる雛型が完成すれば、次からは10分の1の時間で済むかもしれな
い。ノウハウがモノをいう成果物であるから、単純に工数計算すれば、一回目
の値段と二回目の値段が変わってきてしまう。雛型開発時の苦労を回収するた
め、初回からずっと同じ価格で、提供するべきだろう。

◆お互いの自信のために

見積もりは業界や企業内の慣わしというのが大きく出る部分である。さらに、
契約という文化が定着していない制作会社(旧DTP)では、見積もりが制作会
社の生きる道を決める、重要な唯一の書類。慎重になるあまり、どうしても後
手、奥手になりがちで、チャレンジングな姿勢を取りにくい。

しかし、おねだりにおける正当性をもって、堂々と渡り歩きたいものだ。自分
が顧客だったら、いい洋服にはそれなりの値段を払っても惜しくない。また、
いい洋服はバーゲンで買うより定価で、きちんと接客を受けながら買うほうが、
その価値を理解でき、また大事にしようと思うものではないだろうか。

価値は、自分で高めていかねばいけない。自分に自信があり、価値を自覚して
いれば、それは受け手にも通じているはずだ。見積もりは制作者にとって、成
果に対する自信の根拠を、あからさまに指摘する怖い作業でもあるし、目に見
える結果として主張する場でもある。

“経験”と“勘”を積み、相場や価格感を知っていく一方、感情の機微(それ
は自分の感情さえも)を掴み、消化し、表現していくことを心掛けたい。世間
と自己の両面から裏付けのある、恥ずかしくない交渉ができるようにしたいと
思う。

【uz】ur7y-skkb@asahi-net.or.jp
某コンピューターパッケージベンダー勤務を経て、現在はWeb系ライター、
Webサイト構築業務に携わる。「映画を研究する人々のためのサイトUrban
Cinema Squad もよろしく。
http://www.u-c-s.org/

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■編集後記(5/28)
・「もういてもたってもいられません」という神田さんと違って、W杯サッカ
ーには興奮できないわたしであった。なんか未曾有の大トラブルが起きるんじ
ゃないかとY2K以来のシンパイである(本気で不安)。また、テレビのばかな
報道、というかばかな芸能人がギャーギャーと騒ぎ立てる番組が毎日続くだろ
うか。巨人戦でさえ、やかましい解説に絶叫アナでうんざりしているのだから、
その何倍もの規模のばかな状況を考えるとゾッとする。スポーツ報道にばかな
芸能人を使うな! 当たって欲しくない予想だが、日本は予選で敗退するので
はないか、当たるといいなと思う予想は、カメルーンの優勝だ。  (柴田)

・自転車通勤をはじめて数日、目の中に虫が飛び込んできた。サングラスを買
わねばなるまい。思ったより汗をかくので、通勤用のドライシャツやパンツが
必要。日焼け止めと手袋もいるし、走行距離や速度をはかるスピードメーター
も欲しい。いつかは月までの距離に到達するかも。夜間走行での安全のため、
ライトをつけようと算段し、ショップに行った。たくさんの種類があり目移り
する。赤や白、点滅するもの、5つほどのライトが順に点灯していくものなど。
「この順に点灯するやつ、ええやん」「…トラック野郎みたい」「…いまちょ
っとだけ、トラック野郎が装飾する理由がわかったわ」 で、地味めのものを
買ったが、それでも実際に暗闇で点けてみると恥ずかしい。安全のため、安全
のため、と呪文のように唱えながら、トラック野郎を止めてくれた友人に感謝。
第一、続くかどうかわからないので、まだママチャリ通勤なのさ。ママチャリ
にスピードメーター? 荷物はたくさん運べるぞ。でも坂道多いし、スピード
出ないから、いい自転車欲しい~。いやー、インドアな自分がここまではまる
とは。夏冬なら挫折してたと思う。ほんと今はいい季節だ。(hammer.mule)
http://www.hoops.ne.jp/~japgun/  自転車通勤で行こう! ふむふむ。

http://www.dgcr.com/fps2001/cgi-bin/video/enq.cgi?id=dgcr  アンケート
「デジタルイメージギャラリー2002」が今なら当たります。詳細は1081号を。
http://www.dgcr.com/present/index5.html

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発行   デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 

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 担当:濱村和恵
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