[1185] 誰かのために生きる

投稿:  著者:  読了時間:24分(本文:約11,900文字)


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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1185    2002/10/25.Fri発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 21521部
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           <翻って我が身を責める>

■映画と本と音楽と… 144
 誰かのために生きる
 十河 進

■金曜ノラネコ便
 愛の通信貧乏脱出大作戦
 須貝 弦

■電網悠語:Ridual開発記編(13)
 オフィス環境/ワークスペース
 三井英樹

■セミナー案内
 iMedio conference 2002「ブロードバンド時代の3D戦略と方向性」



■映画と本と音楽と… 144
誰かのために生きる

十河 進
───────────────────────────────────
●壮烈なほどの家族のモラル

朝日新聞に載った佐藤忠男さんの映画評を読んで涙を誘われた。渋谷のユーロ
スペースで公開されている「酔っぱらった馬の時間」という映画だ。イランと
イラクの国境近くに住むクルド人たちの物語。両親が死に遺された一家の五人
の子供たちが主人公だという。

──長兄が重い病気が進行中の身なので、その治療費を稼ぎ、さらに幼い弟妹
を養うために、12歳の次男は進んで密輸の集団に加わるし、長女は長兄を連れ
て見知らぬ遠くの村に嫁に行こうとする。そんなまだ幼い兄妹が、家族ためな
らどんな苦労もいとわないと結束して困難に立ち向かってゆく。12歳で早くも
家長としての責任感と自覚を持つ次男の言動には凛とした誇りさえただよって、
かわいそうというよりは壮烈なほどの家族のモラルが胸をうつ。立派である。

佐藤さんはそう書く。仕事の都合で時間がうまく折り合わず単館公開の映画は
なかなか見にいけないのだが、強烈に見にいきたくなる映画評だった。70歳を
過ぎても、感動したことを照れずにストレートに書く佐藤さんの剛速球のよう
な骨太の文章は凄い。

僕がこみ上げてくるものを抑えたのは「まだ幼い兄妹が、家族ためならどんな
苦労もいとわないと結束して困難に立ち向かってゆく」という部分だったが、
「12歳で早くも家長としての責任感と自覚を持つ次男の言動には凛とした誇り
さえただよって」というところで堪えきれなくなった。

佐藤さんは「これほど強烈な印象を受ける映画も滅多にない」と、書き起こし
「そこに描かれた少年少女たちの家族愛の強烈さに圧倒されんばかりの感銘を
受けずにはいられないからである」と手放しの誉めようである。

ああ、見にいかねば……

しかし、佐藤さんの文章は、翻って我が身を責める。僕は「家族ためならどん
な苦労もいとわないと困難に立ち向かって」いるか。「家族のためとはいえ、
やってられないよな」と日々ぼやいてはいないか。家族がいなければ、もっと
自分のために自由に生きていけるのではないか、などと終電車の窓に寄りかか
ってつぶやかなかったか。

かつて家族が結束しなければ生きていけなかった頃、日本にも家族愛というも
のが存在した。しかし、生活が豊かになり親に棄てられても何とか子供も生き
ていける社会になったのか、最近はどんどん家族愛などというものは希薄にな
っている。

親は子供を棄て、子供は親を棄てる。「自分のために生きる」ことが奨励され
「夢を追いかけ」たり、「個性を伸ばす」ことがよいことだという価値観が耳
に甘く囁かれる。その結果、いい歳をした中年男が「これからは自分のために
生きる」と宣言する。「組織に縛られている」サラリーマンは最も不幸な存在
だと憐れまれる。自嘲する。

「自由に生きている」人間が最も幸福だという自由至上主義が若者向けテレビ
ドラマなどで描かれ、自分だけは自由に生きようとする若者たちで世の中は溢
れている。社会的責任を放棄して親にパラサイトしたり、フリーターと称して
楽に生きようとする。

だが、「自分のために生きる」とは、一面では様々な責任を放棄することに繋
がる。責任放棄や身勝手な行動のもっともらしい言い訳に使われる。植木等が
逆説的に提起した「ニッポン無責任時代」が本当に到来してしまったのかもし
れない。

自分の立場や責任を自覚し、自分のためではなく「誰かのために」生きている
人を見ると僕は感動する。しかし、最近の人はそんな人を「何を力んでいるの
だろう」とか「無理をしている」「カッコつけてる」「ホントはもっと楽に生
きたいはずだ」などと否定的に見る。「ダメな自分を認めて、がんばらない」
という輩が「ダメ連」などと名乗って徒党を組む時代だ。

●不幸を受け入れてどう生きていくのか

「ギルバート・グレイプ」(1993)という映画を想い出した。家族が結束しな
ければ生きていけないギリギリのところで暮らしている貧しいクルド人ではな
く、平和で高度に発展した資本主義社会に生きる僕らのような日本人にとって
は、「ギルバート・グレイプ」の主人公の悩みの方が理解できるかもしれない。

「ギルバート・グレイプ」は、後に「タイタニック」で人気者になったレオナ
ルド・ディカプリオが出ているので、改めて評判になったようだが「マイ・ラ
イフ・アズ・ア・ドッグ」(1985)で認められたラッセ・ハルストレム監督が
ハリウッドに渡って初めて作った映画だ。

アメリカの田舎町に住むギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)は、老夫
婦が経営する食料品店で店員をしながら家族を支えている。父親はある日突然、
地下室で首をくくり、そのショックで母親はテレビの前で終日何かを食べるだ
けの存在になり、自分で動けないほどのデブになっている。姉がいて妹がいる。
そして、目を離すとすぐ高いところへ登ろうとする知恵遅れの弟アーニー(レ
オナルド・ディカプリオ)がいる。

どんな映画を作ってもラッセ・ハルストレムのテーマは不変だ。つまり、「不
幸」を描き続けているのである。不幸とは何か、人は不幸にどう立ち向かうの
か、あるいは不幸とどう折り合うのか、不幸を受け入れてどう生きていくのか、
が常に描かれる。

ギルバート・グレイプは不幸である。20代の若者でありながら、もう何年も家
長として家族を支えてきた。彼は母親の食料代を稼がなければならない。手間
のかかる弟を風呂に入れなければならない。そして、食料品を配達する先の人
妻と時々はセックスをしなければならない。その夫の保険業者からは「将来を
考えろ。保険に入れ」と言われ続けなればならない

ある日、叔母とふたりでトレーラーハウスを引いてアメリカ中を旅しながら暮
らしている若い女(ジュリエット・ルイス)が町に現れる。家族に縛られ小さ
な田舎町から出られないギルバートとは逆に、彼女は自由の象徴だ。気が向け
ば、車を動かしてどこへでもいけるのだ。

ギルバートは彼女と恋をする。ギルバートの心の中に抑えこんでいた気持ちが
頭をもたげ始める。不幸な気分を紛らわす効果くらいにはなっていただろう人
妻と別れる。明日は町を出ていくという恋人の言葉に明確な返事ができなかっ
た夜、彼は面倒を見続けてきたアーニーに苛立ち殴ってしまう。彼の中に「も
う家族のためではなく、自分のために生きる」という気持ちが芽生えたのだ。

だが、彼は家族を棄てられない。突然の自殺という形で家族を棄ててしまった
父のようにならないためにも、彼は家族を棄てられない。「僕は町を出られな
い」とギルバートは恋人に宣言し、彼女を椅子に座ったまま動けない母親に会
わせる。町中の笑い者になっているデブの母親を決して恥じてはいないのだと
彼は母親に言う。それは彼の決意でもある。

●自分以外の人間のために生きることの確信

佐藤さんが書いている「酔っぱらった馬の時間」のクルド人の少年少女たちは、
家族が結束し困難に立ち向かうことを露ほども疑っていない。自明の理。当た
り前のこと。重い病気にかかった長兄を救うために犠牲になる、などという意
識はまったくない。家族のために生きることが自分のために生きることなのだ。

自分以外の人間のために生きる──そのことに確信が持てること。何だか、と
ても羨ましい。

しかし、迷うのは人の常だ。辛い、苦しい、逃げ出したい、と泣き言を言いた
くなる。だが、そこで踏みとどまるのはなぜだ。何が人をして踏みとどまらせ
ているのだ。多くの人は、家庭を維持し子供を育て、親の介護をする。税金を
納め、年金を徴収され、自発的に生命保険や火災保険、自動車保険に入る。毎
日、通勤電車に乗って長い時間を費やす。

彼らは、程度の差はあれ「自分以外の人間のために生きて」いる。子供を育て
教育に金をかけ、一人前になるまではと子供たちの成長を夢に見る。寝たきり
の親の介護を放棄することはない。中には家族以外の誰かのために生きている
人もいるかもしれない。

しかし、現代の日本に生きている人間たちだ。どこかで迷う心が生まれること
はあるだろう。寝たきりの親さえいなければ、こんなに手間のかかる子さえい
なければ、と心の中で思うことは誰にもとめられない。それを実行する人も増
えている。毎日のニュースを聞くと、そんな風にも思える。

親の権威が失墜した、家族の絆が失われたと言われて久しい現代の日本である。
そこに生きている人間たちは何が不幸だといって、すべてのことに確信が持て
なくなっていることだろう。「家族ために生きる」ことに確信が持てた時代、
父親は今ほど悩まず迷わなかったはずだ。

「自由に生きる」ことが奨励されながら、一方では家族のモラルのようなもの
は連綿と生き続けている。だから、迷いながらもそれを守り続けなければなら
ない。しかし、そのモラルのようなものは、かつてほど強固ではないから守ら
なくても徹底的に非難されることはないという中途半端さである。

モラルを棄て去ってしまうことが、かえって羨ましがられることもある。たと
えば、中年男たちのこんな会話は珍しいことではない。
──家族は棄てて、もう自分のためだけに生きることにしました。
──それは羨ましい。

しかし、ほとんどの人は迷いながら我慢する。耐える。歯を食いしばる。誰か
のために生きる。

人間には、棄ててはいけない何かがあるのではないか。ギルバート・グレイプ
のように迷いながら、時に「自分のために生きたい」と願いながらも何かを守
って生きていくしかないのではないか。人は「自分のためだけ」に生きること
もできないし、「自分以外の人間のためだけ」に生きることもできないのだと
思う。

【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com
雑誌編集者。トム・ハンクス主演の「ロード・トゥ・パーディション」を見て
きた。「子連れ狼」だという話。確かにストーリーの構造は似ている。ただ、
12歳の長男を演じる少年の回想という構造にした点が素晴らしい。僕が見た時
の観客はほとんどが泣いていた。

ネットギャラリー&オリジナルプリント販売
http://www.genkosha.com/gallery/photo/

フォトテクニックWebSite
http://www.genkosha.co.jp/pt/

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■金曜ノラネコ便
愛の通信貧乏脱出大作戦

須貝 弦
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通信費貧乏である。もう、どの回線にどれくらいの料金を払っているのかもわ
からないくらいに、回線貧乏と言って良い。自分で言っておきながら、そもそ
も細かいところまで料金を計算するつもりがないのだから、仕方がない。とに
かく、無頓着なまま今日まで来てしまった。

まず、インターネット&プロバイダー関連。IIJ4Uとリムネットに契約してお
り、後者ではADSLやドメイン、ホスティングの契約をしているのでかなりの金
額がかかる。しかもADSLは、決して安くはないイーアクセスなのだ。そしてNTT
に払うDSL利用料もある。えーっと、計算してみると……インターネット関係
だけでも20000円も使っているではないか。

そして、電話回線。家の固定電話はインターネット関係の費用に含めたから良
いとして、移動電話関係である。まず、私の場合はそもそも契約回線が多すぎ
るのだ。以前にも「三丁拳銃」なんてことをデジクリの原稿の中に書いたこと
があったと思ったが、今ではなんと四丁拳銃になってしまった。

現在契約しているのは、メインで使っている音声通話用のH"、そしてモバイル
に欠かすことができないAirH"。これでもう2回線。そして家の中で自室用の電
話として使っているNTTドコモのPHS。トドメに、今年の5月に意味もなく買っ
てしまったauの携帯電話である。ね、4回線ある。せっかく今年になって、ほ
とんど使っていなかったアステルのPHSを解約したのに。

で、これらPHSやら携帯やらにいくらくらい使っているのかを計算してみると、
毎月30000円くらい、月によってはそれ以上の金額を払っていることになるの
だ。改めて計算をしてみて、これには私もビックリしたぞ。まぁあまり考えも
せずPHSで長距離の電話をかけたりする私が悪いのだが。

そこで、とにかくリストラ計画である。とくに移動体通信の分野において大胆
な改革が必要と思われる。いちばん最初にカットされるのは、NTTドコモのPHS
だ。これはすでに持ち歩いておらず、「家の中で電波の入りが良い」というこ
とと、「昔の名刺に刷り込んでしまっていて、番号が変わったことをアナウン
スするのが面倒」というふたつの理由で存続していた。これを、とにかく解約
する。

そして、家から外に電話をかけるのに「スグ近くにあるから」といってPHSを
使わない。なるべく固定電話をかけるように心がけ、というかメールで済む用
事は全部メールにしてしまう。携帯電話も、なるべく受け専用という気持ちで
いることにする。こちらからの発信は、極力避ける(どうやって避けるんだろ
うか……)。

そもそもなんでPHSと携帯を併用しているのかという、基本的な疑問は自分で
も解消されないままだが……強いて言えばプライベートと業務を分けたかった
んだよね。でもauの携帯、自室では極めて入りが悪いんだよなぁ。ま、NTTド
コモを解約するだけでもそこそこ圧縮されるはずである。許せドコモ。
 
そしてインターネット関係では、やはりADSLをより安いDSL事業者に乗り換え
るということだろうか。安いって言ったらYahoo!BBか。でもADSLを乗り換え
るのも、手続きでトラブルがあったりするとアナログ56kで使わなくてはいけ
ない期間が発生してしまう可能性があり、それが面倒というか心配というか。

――そんなことをウダウダと考えていたら、知人からメールが来た。
「携帯電話を解約してきました。気持ちいい!」
いまどき、なんと勇気のある行動だろうか。

今週の画像:意味も無く買ってしまった携帯電話
http://www.macforest.com/dgcr/021024.html

【すがい・げん】sugai@macforest.com
みのもんたは大嫌いなんです、とくに理由は無いけど。

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■電網悠語:Ridual開発記編(13)
オフィス環境/ワークスペース

三井英樹 / ※Ridual=XMLベースのWebサイト構築ツール
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自宅から車で30分圏内にズーラシアという広大な動物園がある。敷地面積約
53.3(現在は28.9)ヘクタール、展示動物約60種500点。日本最大級の動物園。

動物園の情報をこまめに見ている訳ではなくても、最近の動物園は昔と少し違
うことには気が付く。昔の動物園は、絵に書いたような檻の中に動物が寂しく
たたずむというイメージ。地面はセメントで、いかにもゴミは洗い流しやすそ
うだが、当の動物にはアカギレが痛そうなもの。ところがここは違う、たぶん
ここだけでなく新し目の動物園は変わってきているようだ。それは、目的が変
化して来ているからだろう。ズーラシアは明記している、「種の保存を行って
いくことを目的のひとつ」にしていると。

「展示動物○点」という言い方に少し戸惑いはあるが、動物がただ見られれば
良いという発想から、活き活きと「居る」状態にする方向に向いている。そし
て、それは希少動物だけに限らず。陳列されていれば良い訳ではない、その動
物らしさが必要だし、それが見たいし、見せたい。その為には人間が見えない
死角も用意するし、首だけ突っ込んで見るようなドームも用意する。

動物でさえこうなのだ。ましてや人間をや。正しいデザインができる人間は、
かなり希少な存在だ。そうした種は積極的に何かしなければ絶滅するかもしれ
ない。そうした能力には、発揮するのに相応しい環境というものがあるのかも
しれない。

私はいわゆるデザイナー風のオフィスで仕事をしたことがない。どの会社でも
決まりきった形の面白みのない机と椅子が与えられる。そして、一定期間ごと
にモラルとか風紀とかいう名で、一流のデザイナーは一流のビジネスマンでな
いといけない、とルールが強化される。問題を物質的オフィス環境だけでなく、
その空気にまで広げて、「ワークスペース」と呼ぶが、何かが違うと思ってい
る。

Web Designing 8月号で、「Webデザイナーのワークスペース」の特集をしてい
た。目を引いたのが京都西陣町家スタジオ。古い商家に伝統とハイテクとを融
合させようとする試み。和室も良いけれど、庭も良い。あんな環境の中に置か
れたら、どんな発想が出てくるのだろう。色々と想像しながら写真を見つめた。
いわゆる刺激が欲しくて渋谷等へ集まる傾向もある。好き嫌いに関わらず最近
のスピード感あふれるFlashサイトなんかは、やはりどこか疾走感のある街で
作るべきものかもしれない。やはり環境の意味は大きいだろう。

ネットバブル時代は豪勢なデザインオフィスを色々な雑誌で見かけたが、最近
は余り見なくなった。「贅沢だ」という風潮もあるように思う。でも、備えて
いる天分やタレントを活かし切らずに、デザイナーを囲うのはもっと「贅沢」
で、もったいない。

私は職場の席が嫌いだ。特にこのRidualの仕事をし始めてから、自宅のほうが
余程効率が良いことを実感している。悶々と考える作業には私の会社の席は余
りに、思考が中断させられる要素が多い。勿論それに助けられる時もあるし、
相談相手が必要な時もある。しかし、自宅のほうが私には合う。会社に行く理
由は、行かねばならないからであり、プリンタとネットと会議室が揃っている
からだけである。

根本的に、Webに生き甲斐を感じているものは、働きたいんだと思う。家庭も
省みず情報発信してきた者も多い。四六時中、当のクライアント以上に、その
サイトのことばかり考えている知人はゴロゴロしている。もしも快適な空間が
与えられたなら、もっともっと働く用意があるのではないだろうか。会社に行
くのではない、働きに行く。そんな環境が欲しい。

米国のエンジニア部隊に混ぜてもらったとき、そこでは一人に与えられている
ブースは四畳半以上。体育館のようなオフィスにそんなブースが、上から見る
と蜂の巣のように並んでいる。その中は完全にその住人の個人部屋。3メート
ルを超える風船人形が飾られるブースから、小さな人形の山にキーボードが隠
れてしまうようブースまで様々だった(勿論ちょっとしたアクセサリが大勢で
過激なのは少数派)。さすがに女性ヌードポスターはない。それには、男性ヌ
ードポスターで応戦した女性が居たためという逸話も聞かされた。正当な理由
で幾人かでも嫌悪感を持つモノは避ける。だからタバコも全面禁止。しかも、
日本のように深夜になるとこっそり吸うようなこともない。集中できる快適さ。
隣人と折合いがつき、その人が一番パフォーマンスを発揮できる環境は、最終
的には会社のためなんじゃないかと思う。

ガンダムに囲まれてパフォーマンス上げる者も入るだろうし、すっきり整理整
頓の中でバリバリに頑張れる者もいるだろう。その差は、ビジネスマンらしい
かの差ではなく、個性の差の話なんじゃないだろうか。そして、「へぇー、ガ
ンダムに囲まれている方がはかどるんだ…」なんて相手を容認していくことは、
デザインの幅を広げることにも無縁じゃない。

Webの環境は、見る側の環境も劇的に変わっている。パソコンだけを考えてい
ればよかった時代は遥か彼方だ。自分達が作ったページがどんな環境で見られ
ているのか見極められるものなのかすら怪しい。開発環境の変化も劇的だ。か
つてこんなスピードで技術が投入され過去への互換性も無視して大衆に広まっ
ているものってあるんだろうか。まさにドッグイヤー。なのに、作る側の働く
「環境」は昔ながらだ。誤解も恐れずに想像すると、これは管理者側の怠慢だ。

プログラム開発では、機能などによって分けたモジュール(部品)を最終的な
実行可能な状態に束ねることを「ビルド」と呼ぶ。いかにモジュールの性能が
良くても、ビルド時に正しくそれを束ねず、古いものを束ねてしまったら、最
終成果物は意図しないものになる。だからエンジニアは履歴管理等を基本とす
るし、ビルド環境は真っ先に整える。今、Webの世界での個々人の働きはまさ
にこのモジュールだ。個々のモジュールがいかに良くても、最終成果物を出す
ビルド時に問題があれば悲しい結果が待っている。オフィス環境やそれを含め
た社風やモラルは、このビルド環境にあたる。

動物ですら、定型の檻に入れて悦に入る時代は終わろうとしている。人間もそ
ろそろ個性に合わせたワークスタイルで勝負する、勝負させる時代になってき
ても良いだろう。

ちなみに、Ridualはリモート開発で行った。横浜市内に二カ所と高知、計三ヶ
所。全員が顔を合わせたことは数回。それぞれが自分の意志で決めたオフィス
環境ではないが、自分のワガママが一番言いやすい環境だとは言える。原則週
一回、開発リーダーとだけ顔を合わせる。しかしそれ以外はmailのみ。私が電
話嫌いなので電話も殆どしない。意思の疎通が完全であったかというとNO。ス
トレスがなかったかというとNO。しかし、品質は予想を超えて良い。私の中で
は、今までのベストワークだし、一番疎遠にしてベストチームだと心から思っ
ている。互いのアウトプット以外の拘束をできる限り排除したのが一因だ……
と思っている。

ref)
・よこはま動物園ズーラシアホームページ
http://www.city.yokohama.jp/me/ygf/zoorasia/
・Web Designing 8月号
http://book.mycom.co.jp/wd/bn/200208.html
・京都西陣町家スタジオ(写真がないので伝わらないのが口惜しい!)
http://www.nishi-jin.net/
・スチールケース(ショールームに行っただけですが色々考えさせられました)
http://www.steelcase.co.jp/jp/
http://www.steelcase.co.jp/jp/knowhow/papers.asp

【みつい・ひでき】 h-mitsui@nri.co.jp / info@ridual.jp
日本初のXML専業企業のインフォテリアにお伺いさせて頂いたとき、オフィス
を見て息を呑んだ。見渡す限りアーロンチェア。エンジニア集団にして、この
椅子。ワークスペース戦略を感じる。 http://www.infoteria.com/

・Ridual(XMLベースのWebサイト構築ツール)公式サイト
http://www.ridual.jp/
・超個人的育児サイト(書籍は絶版中)
http://member.nifty.ne.jp/mit/MilkAge/index.html

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■セミナー案内
iMedio conference 2002「ブロードバンド時代の3D戦略と方向性」
http://www.imedio.or.jp/conference2002/
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ブロードバンド時代におけるWeb3D戦略と、Web3Dビジネスの今後の方向性を、
セーバー株式会社の水越順也氏が解説する。Web3Dデザイナーをはじめ、Web3D
制作へ業務展開を考える方々必見!のセッション。

今業界で話題沸騰中の「Web3D」。国内の大手企業サイトでも続々とWeb3Dを使
ったサイトが増えている。セーバー株式会社は、業界の中でもいち早くWeb3D
に特化した制作体制のCGプロダクションを持ち、国内で最初にWeb3Dコンテン
ツをビジネスとして稼動させた。水越順也氏は、CGチームを統括するとともに、
Web3D技術とそのコンテンツの普及に取り組むかたわら、3DCG専門誌での執筆
活動や講演活動を行い、2001年にはWeb3Dビジネスに取り組むプロダクション
とWebリッチメディ・フォーラムを設立。
現在は営業企画としてWeb3Dを中心としたリッチメディアコンテンツ(ソリュ
ーション)の企画提案を担当し、表現手段としての3Dを超えた価値を追求して
いる。
http://www.saver.ne.jp/ セーバー株式会社
http://www.w3d-j.com/ Webリッチメディ・フォーラム

講演日時:11月8日(金)午後1:00~午後2:00(60分)
講演者:セーバー株式会社 水越順也氏
費用:1,000円(税込み

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■編集後記(10/25)
・「職業欄はエスパー」「造形集団海洋堂の発想」なんてのが、最近読んだ本
のなかでは、面白かった。前者は、スプーン曲げの清田益章、UFOを呼ぶ秋山
眞人、ダウジングの堤祐司という、ビジュアル的はとっても怪しげな人物を8
年間追いかけたドキュメンタリーだ。こんなしつこい取材者も珍しいのだが、
最後の最後まで、否定か受容かの判断ができない。読者の私は受容する。彼ら
はイカサマ師ではなく明らかにエスパーだ。しかも底抜けの優しい人物だ(清
田はちょっと違うけど)。そして限りなく孤独だ。胸が痛む。(柴田)

・島田氏のマシンの調子が悪い。修理騒ぎがあってすぐ、新しいパソコンを買
いに行った。詳しい人についてきてもらい、DOS/Vショップで組み立て。現在
の最上級CPU、グラフィックカード、Firewire、3年保証などをつけてもらって
も10万程度。モニタはその人のツテで、21インチCRTが4万。余計なアプリが入
っていなくてすっきり。処理スピードの早いこと早いこと。おすすめのフリー
ウェアまで教えてもらう。詳しい人がいるとありがたいなぁ。(hammer.mule)
http://donutp.com/  タブブラウザのドーナツP。便利っ
http://www.asahi-net.or.jp/~vr4m-ikw/  定番の窓の手

<応募受付中のプレゼント>
 「Adobe Photoshop7.0 プロフェッショナル
 カラーマネージメント・レタッチ・出力講座」1174号。

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発行   デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
アシスト    島田敬子 

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