[1239] インターネットは藪の中

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1239    2003/01/28.Tue発行
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           <ネットは、所詮、ネット>

■デジタルサウンズ研究室
 インターネットは藪の中
 モモヨ

■電網悠語:Ridual開発記編(25)
 道
 三井英樹



■デジタルサウンズ研究室
インターネットは藪の中

モモヨ
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ここ、ニ~三ヶ月、インターネットというものの中に、曖昧な、ぼんやりとし
た予感を抱き、凶兆を見ていたのだが、どうもそれが明確な形をとりつつある。

一月二十五日、インターネットの接続が困難になるという事態が出来した。

原因は明確ではないが、どうも、二年前騒動を起こしたコードレッドに似たワ
ームがあらわれたらしい。狙われたのは今回もウィンドウズ系のサーバーだ。
マイクロソフトのSQLに含まれる脆弱性が狙われたそうな……。

コードレッドの時もアジア圏は甚大な被害を蒙った。当時の調査結果では、
ウィンドウズ系サーバーに依存する場所ほど被害が大きかった、そう記憶して
いる。

今回、韓国は甚大な被害を受けたようだが、これも、やはり、ウィンドウズ依
存率によるものか。当初、韓国の警察当局は、テロとして捜査したようだが、
最新の情報では、さきに書いたようにワームが原因、という論に傾きつつある。

ウィンドウズ依存に比例する被害である、つまり、テロではないとしても、あ
る一日をさかいにネット接続が国家規模で困難になる、という結果だけを眺め
ると、実際、テロとは差がない、というか、テロそのものであるように想うの
は、私だけか……。

以前もあったことだが、こういう事件があると、インターネットショッピング
であるとか、バンキングであるとか、ネットの有用性を発揮する部分のセキュ
リティーが疑われる。これは、どうしようもない。疑われるというか、セキュ
リティーの脆弱性は当然どこかにある、そう考えるのが常識で、デジクリを読
んでいるような方は(私もそうだが)疑った上で、ネットを利用しているはず
である。つまり、ネットは、所詮、ネット。そういう諦念が支配的になってい
る。こうした傾向に、さらに拍車がかかろうというものだ。

一方、テレビコマーシャルなどでは、ブロードバンドという用語が繰り返し使
われている。

こういう状況全体を上からながめると、毎度のことだが、軽い眩暈を感じてし
まう。

インターネット至上主義、というか、得体の知れない用語を免罪符にして景気
の活性化をはかるようなことから、いいかげん、脱して欲しいものだと想う。
経済のシステムにしても同じことが言えるが、物物交換から通貨を採用するに
至った経緯を含めて、基本的なところを再検討しないと、どうにもならないと
想う。

ちなみに、年末から新年にかけて耽溺した、宮城谷昌光作の古代中国モノを読
んでいて面白いと想ったものの一つに、『商』『商人』という言葉がある。

商というのは古代中国の初期王朝の一つだ。先だってコミック化されて流行し
た『封神演義』ホウシンエンギのボスキャラが支配する土地だ。この王は、酒
池肉林の故事などで悪名が高いが、その一方で、貝殻一枚に対して交換しえる
穀物の量を安定させて物流の媒介とする、こうしたシステムを実施した人物で
もある。むろん、一代で通貨制度が確立したわけがないが、とにかく物物交換
から脱却する端緒になった王ではある。

日本では、江戸時代まで、米によって通貨価値を測っていたし、国際政治では、
金本位制というものがあった。しかし、皆さんが承知しているように、現在の
通貨制度、経済は、深く入り組んだ相互依存や反発によって、どうにかこうに
か安定が計られている。いわゆるダイナミックな経済というやつである。こう
なると、私のような門外漢には、何も見えないし、何も言えまい。ひたすら、
専門家の方々に対して、尽力をつくして頂けるようお願いするしかないし、祈
るしかないのである。

経済システムが奇奇怪怪、錯綜としたものであるのは、ともかく、ネット環境
も、実に複雑怪奇なものとなっている。今少し、整理して、すっきりしたいと
想うのは、私だけではないはずだが、本来、錯綜とした蜘蛛の巣をイメージさ
せるが故にWEBと呼ばれる。さすれば今後も混迷の度を深めることは目に見え
ている。私達としては、できる限りそうした暗さを払う努力をするしかない。

さらに、余談。

物々交換にしても、いわゆる現在の経済システムというものは、二者の間での
相互流通が初めにありき、ということで理論が構築されているはず。拙劣なグ
ローバリズムの問題点はここにある。敵を殲滅することばかり考えていると、
経済システムの基本原則を破壊することになると想うのだが、如何なものか?
……が、答えは藪の中である。古来、藪といえば、藪蕎麦は別として、一般に
はヘボとかヤボということを意味する接頭語である。藪医者などという使われ
方をしたりする。その藪が、いまの大国の政治を動かしているのだから、どう
にも、いただけない。

モモヨ(リザード)管原保雄
http://www.babylonic.com/

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■電網悠語:Ridual開発記編(25)


三井英樹 / ※Ridual=XMLベースのWebサイト構築ツール
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青森市から竜飛岬に向かって1/3程度(青森市寄り)の所にある村がある。妻
の実家があり年に一度程度そこを訪ねる。目の前が湾に面し、後ろは少しの田
畑を経て山々。陽は山側に沈むので日の暮れは早い。養殖だけど採れたてのホ
タテに醤油をかけてただ焼いて喰らうと生きていることを感謝したくなる。自
分の故郷よりも好きになってきている村である。

その田畑の真ん中を整備された道が伸びている。まだ竜飛岬まで全てが整って
いる訳ではないが、今までの海岸沿いの道に比べたら雲泥の差の運転し易い道
ができつつある。行く度に整備されている部分が延びる。青森空港から実家ま
では年々楽になっている。

その道を想い出して考えた。田畑を貫く新しい道なので、当然ながら脇には余
り店がまだない。店は従来の海岸沿いのクネクネした道沿いにある。これまた
当然ながらクネクネした道は生活の基盤であり、それぞれの村や町に必要な様
々な店が並ぶ。新道路が出来るまで、それらの店は、その地域にとってなくて
はならない存在であり、多少の不便があっても利用者から不満という形にはな
らなかったであろう。先にある竜飛岬やねぶた祭りへの観光客もそれなり足を
止めるに違いない。それが、店の品揃えもたたずまいも何も変化しないのに、
新道路ができることで何かが変わっていく。

まずは観光客か。クネクネ道を行くドライバにとっては一息入れたくなる場所
が、その村のあたりだった。それが綺麗な整備された道になると、その村の辺
りでは一息いれなくなる。立ち寄らない。素通りする。もちろん立ち寄るには
その新道路からいったん降りてクネクネ道に入らなければ立ち寄ることもでき
ない。だから多くのドライバは素通りしたことすら意識しないだろう。

そしてご近所さん。遠くまで行くのが億劫だったが故に、近所で済ませていた
用件もあるだろう。それが出向く苦労が減ったなら、より派手やかな品揃えの
豊富な町に足が向くのは避けられない。偶然かもしれないが、近所の店が混ん
でいるのを見たことがない。

店自体は何も変わらない。変わらずにその地域の必要性を満たしている。ある
意味で絶対的な価値に変化はない。しかし道が整うにつれ、相対的に価値が下
がってくる。比較されるのは町中の大きな店である。今までは「競合」ですら
なかった異次元の相手であろう。そうこうしているうちに不動だったはずのそ
の店の絶対的価値さえ下がって行く気がする。しかも、その店にとって、その
道は「敵」ではなく、自分達の生活を豊かにするものでもある。物の仕入れか
ら情報の入手まで恩恵を受ける場面は多々あるだろう。

生活に根ざすモノの店はまだ良い。観光客等を相手にしている店は、その「素
通りしたことすら気がつかない」客にアピールしなければならない。いきおい
新道路に広告を立てる。

どこかで見た風景である。ネットが生まれてから、猫も杓子もホームページを
作らなければ存在自体がなくなると必死になっていた頃のこのWeb業界である。

どちらが深刻な問題なのかはよく分からない。そこそこの歴史と実績のある企
業であるなら急激な津波に呑まれることはないだろう。しかし個人商店は一夏
で空家同然になる。そうした店の企業努力は凄まじい。

青森の話ではないが、オフィスの周りにも車の移動パン屋さん等が増えてきて
いる。どう見てもそれまでパン焼きオーブンの前にしかいた事がないだろうオ
ジさんが、一生懸命味をアピールしている。今までの自分のポストなんて関係
ない。生き残るための可能性があるなら何でもしなくてはならない。客扱いの
下手なオジさん販売員に出会うと、勝手に色々と物語を想像して、勝手に胸が
痛くなる。

同時に自分はそれほど必死かと自問する。IT不況は厳然たる事実だけれど、も
しかしたら、自分達の知らないうちに少し離れた場所に大きな道が出来ていた
りしないだろうか。今までやってきたことに自負を持って頑固に既存の仕事の
やり方にしがみついてはいないだろうか。今何か手を打たないと存在自体が消
え去るような状況になってはいないだろうか。

IT業界にいる訳だから、単純に道沿いに広告を立てれば良いと言う訳には行か
ない。販売員のように街頭に出て行ってもしょうがない。IT屋として踏ん張る
しかない。パン屋さんだって、そのパンが売れる味があるから街頭に出る意味
がある。私(達)が売っているのは技術である。

いつまでも今までのスタイルを通せばよいという状況のほうが珍しいのだろう。
立ち止まっていて存続できる方が異常なのだ。この業界に迫りくる新道路は、
回線の太さであるかもしれないし、新しいデバイスかもしれない。新しいユー
ザかもしれない。指をくわえて脇道にたたずんでいては駄目だ。いつの世も必
死で先に進んで行った者が輝いてきたのだと思う。厳しい時代こそITやWebが
意味ある働きをするものを作り出したい。それでこそ技術だろう。

少し話がずれるが、(北国の)農業は厳しい。春から育てた稲が、夏のほぼ決
まった一週間の日照時間と気温が狂うだけで収穫が壊滅的な打撃を受ける。そ
の話を聞いた時、サイトを作りこんだ後、先方の一言でひっくり返るのが史上
最大の悲劇のように錯覚していた自分が恥ずかしくなった。実をつけぬ穂が晩
夏の風にそよいでいるのを、深いシワを刻んだ義父が哀しそうに見つめている。
こういった年季を私はこの業界で刻むことができるのだろうか。泣き言を言っ
ていられないと思わされる。

【みつい・ひでき】 h-mitsui@nri.co.jp / info@ridual.jp
彼の相撲が好きな訳ではなかったけれど、貴乃花の引退はインパクトが大きい。
そして何よりも真似の出来ない生き方だと特集を読んでいて思わされる。ヒー
ルの印象が付きまとったけれど、妬みだったのかもしれない。更に自分よりも
年下の横綱の引退というのが、なんだかショック。

・Ridual(XMLベースのWebサイト構築ツール)公式サイト
http://www.ridual.jp/

・超個人的育児サイト(書籍は絶版中)
http://member.nifty.ne.jp/mit/MilkAge/

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■編集後記(1/28)
・我が家には「ざしきわらし」がいる。いや、いた、と言った方がいいかも。
一階の仕事部屋や洗面所にいるとき、誰もいないはずの二階に人の気配を感ず
ることがある。それは日中のことで、夜間にはそんなことはない。とくに妻が
たびたび経験する。「さっき上にいた?」「いない。部屋で仕事してたじゃな
いか」なんて会話がある。娘も前からそのことに気がついており「あいつ」と
呼んでいる。家族はそれを不思議がるが、こわがるわけでもない。面白がって
いるくらいだ。というわけで、福の神の「ざしきわらし」説があったが、最近
は「貧乏神」に代わったのではないかといわれている。みかけは「ののちゃん」
家にいる貧乏神みたいなあいつである。いや、ほんまの話でっせ。 (柴田)

・上海から帰国。出国前の後記で「パスポートとお金さえあれば」と書いた。
訂正する。国際電話のできる携帯電話と充電器、モデムにノートパソコン、パ
スポートとお金があれば、だ。詳しくは後日。上海は都会だし、と中国という
国をなめていた。ツアーだから、と安心していた。飛行機が飛ばず、帰国が一
日延びてしまった。日本に連絡しようとしても、なかなか連絡できず。ひとり
帰国しようにも団体ビザなので出国できず。トラブル自体は面白いのだが、仕
事が絡んでくると喜んでばかりはいられない。あーあ。   (hammer.mule)

<応募受付中のプレゼント>
 Web Designing 2003年2月号 1231号。
 ファイルメーカーPro Webデータベース講座 1236号。

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デスク     濱村和恵 
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