[1248] 企業ダントツ化プロジェクト

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1248    2003/02/10.Mon発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 21026部
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  <カタストロフィーの予感が世界一似合うイカシた似非バビロン>

■KNNエンパワーメントコラム
 企業ダントツ化プロジェクト
 神田敏晶   

■NAKED SHORT STORY(THE END)
 バビロン住まいの掟
 神崎詞音





■KNNエンパワーメントコラム
企業ダントツ化プロジェクト

神田敏晶  
───────────────────────────────────
KNN神田です。

最近読んだ本でとても役立っている本がある。

「60分間・企業ダントツ化プロジェクト」
顧客感情をベースにした戦略構築法
神田昌典著 ダイヤモンド社 1600円 ISBN4-478-37421-x

神田昌典氏の著書は、すべて読んでいるが、今回の著書ほど価格パフォーマン
スの高い本はないだろう。アマゾンでの読者の評価も非常に高い。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/447837421X/customer-reviews/ref=cm_cr_dp_2_1/249-7956954-0439515

調子に乗って、25,000円のビデオまで試し買いしてしまった。
http://www.addriver.co.jp/com/zoukyakuvideo.html

試し買いというのは「ビデオの内容に100%感激されなければ、代金は全額お
返しします」があるからだ。ちょっとサイトの作りが? なので、ビデオの評
価は見てからにしたい。が、ボクを「100%感激」させてくれるのかどうかに
とても興味がある。

さて、この神田さんの本はまず、本屋さんのベストセラーコーナーで平積みに
なっている本を手に取り、341~345の5ページだけ見ていただきたい。この5ペ
ージの説明のために340ページが費やされているといっても過言ではない。

今までの氏の本とちがって小売店やコンシューマーを相手にしていなくても、
ベンチャーやサービス産業でもこのチャートでビジネスモデルを分析すること
ができるだろう。もちろん、この「日刊デジクリ」のビジネス(?)も検証し
てみることができるだろう。

商品・製品・サービスなどのビジネスを行う際に、検証すべきことは、いくつ
もあるはずだ。それをいままでは、長年の経営の勘や、ハナの効く能力に長け
ている人などは自然にそのようなスキルを身につけて事業の成否を判断してい
ると思われる。

そして、ボクのようなタイプはそのビジネスが「面白いかどうか」だけで参入
してしまうことが多い。そこでこの神田氏のチャートに自分のビジネスを当て
はめてみると、欠点がよーく見えてくるのである。いままで、ドラッカー本や
コトラー本、ポーター本、MBA本をむさぼるように読んでも今ひとつ見えない
ことが、この「60分間・企業ダントツ化プロジェクト」を読むと自分の腹の中
にに非常にスッキリとおさまった。残念なのはこの軽いタイトルだろう。しか
し、ターゲットとしている経営者には、このようなタイトルのほうが売れると
いうマーケの判断であろう。

KNNも日本で法人化してからあと50日で一期目を終了することとなる。まあ、
今年は世間全般が…なんていってられない。普通の人はあと1ヶ月半しかない
と考えるのだが、ボクの場合はまだ50日もあるといつもポジティブに考える習
性がある。だからこそ、この1ヶ月半で何をやるのかが重要になってくる。

このご時世でも、しっかり儲けてビジネスしている企業などたくさんある。か
つて勝ち組と賞賛された「ユニクロ」や「マクドナルド」でさえ喘いでいるご
時世で、儲かって仕方がない企業が存在しているのが、むずかしいのが現実だ。
アメリカが攻撃を開始したら、日本が朝鮮から攻撃を加えられたら、などいろ
んな意味でビジネスのシュミレーションを行っている経営者はたくさんいるこ
とだろう。

社会の大きな流れを一瞬に手品のように変えることは難しいことだが、この本
ではビジネスで儲けることを繰り返していけば、社会を変えられるチャンスが
あることを示唆してくれている。事業のアイデアなんて実はどこにでも転がっ
ている。自分がそれを見ようとしているかどうかなのかもしれない。

今日、一人で渋谷のパスタレストランにいった。ウエイターが「カウンターの
方でお願いします」という。なぜ、「カウンターへどうぞ」もしくは「カウン
ターは、いかがですか?」「カウンターをご用意させていただきましょうか?」
と言えないのだろう。

ゆであがるのに12分ほどかかるらしい。その間に買い物をしにいこうと席を立
とうとすると、「ゆであがっても責任が持てない」という。もちろん、了解の
上だ。12分間もカウンターでジッと待っていられるほど人生は長くない。

口にパスタを運んでいる最中に、空いた皿を下げにくる。手の空いている時に
皿を下げない。呼ばない限り、注文は聞かない。客のそぶりを見ないで、店員
同士でしゃべっている。

客が食事が終わりそうならば、セットのコーヒーを準備できるはずだ。顧客か
らコーヒーを催促されるまで気がつかない…。

レストランでは、これらのサービスレイヤーがわかりやすい。それは、客の席
からサービスが一望できるからだ。従業員の視点からはそれらが見えてこない
ようだ。きっと優秀な企業経営者はこれらがこのレストランのように見えてい
るのだろう。

レストランで売上を伸ばそうとするとどうすればいいのか? 単価をあげる、
客数を伸ばす、リピート率を高める、の掛け算だ。それぞれに現在の店舗、人
員、ブランドでできることはありそうだ。

単価をあげるには、ケーキセット、もしくは付加サービス。ランチタイムに靴
を磨いてくれても、クイックマッサージがあっても嬉しい。それで単価がプラ
ス200円なら大喜びだ。どうせ、従業員があそんでいるなら…。保健所などの
法的な部分のクリアも少々必要だが、抜け道はいくらでもある。

客数を伸ばすなら、一度来た客に喜んでもらえること、メディアに取り上げら
れるような奇想天外ないいサービスを展開する。

リピート率を高めるには、今までのまやかしは通用しない。その顧客が週に何
回、いくらのものを何年にわたって食い続けてくれるのかの「生涯獲得売上」
を算出する必要がある。さらに、一人の客に対していくらまでプロモーション
コストがかけられるのかも計算できるようになる。しかし、プロモーションだ
けでは、真のリピート率にはつながらず、本質的なサービスや製品を顧客が気
にいらなければ何も意味がないのは明白だ。

マクドナルドの値引き、ユニクロの多色化もこのあたりに誤算があったようだ。

さあ、これからますます、先行きが見えにくい時代になるけれども、枝葉に迷
わされずに、やはり王道を行くビジネスを、顧客感情をつかみながら、正々堂
々と歩んでいくしかないようだ。

そうしなければ、今の日本のように、ノイズにふりまわされてしまう。

■さて、ここからはセミナー情報です………………………………………………

2月21日(金)開催の「ブロードバンド時代のWebコミュニティセミナー」にお
いて、司会とコーディネイター役を担当させていただきます。

実際に現場で企業コミュニティサイトを作りあげてきた
コミュニティビジネスの代表者による講演

「ハピタン☆コム」http://www.comiu.com/
「ぱどタウン」http://www.padotown.net/
「関心空間」http://www.kanshin.com/
「Online Community Design News 」http://www.kanshin.jp/portal/ocdn/
「家族愛体感型ゲーム、e-pets」http://www.e-pets.jp/

そして、國領二郎先生をはじめ、キノトロープ生田昌弘氏、マクロメディア社
CTO田中章雄氏らを迎え、現在のIT業界動向を「コミュニティ」をキーワード
にしてさぐる一日となります。交流会もありますので、「ネット・コミュニテ
ィ」に関心のある方はぜひどうぞ!

【タイトル】「ブロードバンド時代のWebコミュニティセミナー」
~企業がWebコミュニティを利用する価値とは何か。そのビジネスモデルは~
【日時】2月21日(金)開演13:15
セミナー13:30~19:00 講師講演・パネルディスカッション
交流会 19:00~21:00 立食交流会
【場所】大手町サンケイプラザ
東京都千代田区大手町1-7-2 TEL.03-3273-2257
http://www.s-plaza.com/outline/map.html
【費用】セミナー8,000円 交流会5,000円
【申し込み】http://www.comiu.com/seminar_form.cgi

【プログラム】
ご挨拶 トッパン・フォームズ株式会社 http://www.toppan-f.co.jp
1.「ユーザーの居場所がコミュニティを創る」上田平元茂
2.「コミュニティにおけるアーキテクチャの設計」前田邦宏
3.「海外最新コミュニティ事情」神田敏晶 
4.「進化するwebコミュニケーション:ブロードバンドがもたらす可能性」田中
 章雄
5.「WEBコミュニティの目指すべきもの」島崎泰造
6.「成功するWEBコミュニケーション」生田昌弘
7.パネルディスカッション「WEBコミュニティは、競合他社に真似のできないビ
 ジネス創出手段か、自社を混乱に落とす危機か」
8.「コミュニティの価値とビジネスモデル」國領二郎

【交流会】19:00~21:00 立食

【講師】
國領二郎 慶応義塾大学ビジネススクール教授(http://www.jkokuryo.com/)
田中章雄 取締役CTO マクロメディア(株)(http://www.macromedia.com/jp/)
生田昌弘 (株)キノトロープ代表(http://www.kinotrope.co.jp/)
上田平元茂 (株)コミュースタイル代表(http://www.comiu-style.com/)
前田邦宏 (株)ユニークアイディ代表(http://www.unique-id.co.jp/)
島崎泰造 ベアーズインターネット(株)代表(http://www.bears.co.jp/)
司会:神田敏晶 KandaNewsNetwaoks.Inc代表(http://www.knn.com/

【主催】
(株)コミュースタイル(http://www.comiu-style.com/
(株)ユニークアイディ(http://www.unique-id.co.jp/
ベアーズインターネット(株)(http://www.bears.co.jp/) (3社共同開催)
【協賛】
トッパン・フォームズ(株)(http://www.toppan-f.co.jp
マクロメディア(株)(http://www.macromedia.com/jp/)

詳細はこちら
http://www.comiu.com/seminar_gaiyo.html

KandaNewsNetwork,Inc. http://www.knn.com/
CEO Toshi Kanda mailto:kanda@knn.com
45-14 Oyama-cho,Shibuya,Tokyo,Japan151-0065
Phone81-3-5465-6555 Fax81-3-5478-8719

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■NAKED SHORT STORY(THE END)
バビロン住まいの掟

神崎詞音
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ここ何年のあいだに、俺の住んでる東京の都心の風景がどんどん変わっていっ
てる。
東京に10年くらいは住んでいたり、勤めていたり、東京を拠点にして何かをし
ている人間なら、まぁ多少気づいてることだと思うけど。
東京は人口が増えつづけてる。
減少し続けてきた東京都民が増加基調になっているのは20年ぶりだそうだ。
理由はバブル崩壊後、天文学的な天井知らずの東京都心の地価が下がり続けて
普通のサラリーマンとかソコソコの資金がある人間なら“都心に住む”ことが
そう非現実的なことじゃなくなったからだ。
バブル崩壊以前の東京の土地の値段は、持てる者には更なる欲望を生み、持た
ない者には静かな諦めを生んだ。

俺は不動産屋だ。
中堅、いやそれ以下かな、新興マンションディベロッパーの企画兼営業マン。
中途採用で、この春で5年目の春を迎える。
この国の景気は最悪で、俺が今の会社に入社してから上向きだ、底を打った、
と色々言われながらも、未来図が見えてきた実感はひとつもない。
だけど俺の今の会社の業績はすこぶる好調だ。少なくとも、今日とか明日とか
のレベルで計るなら、右肩上がりの時代じゃないのに右肩上がりだ。

都心のマンションが売れるのは、ま、単純に、“みんな東京に住みたかった”
ってことなんだろう。
東京都心は何十年もかけて“住民”を、郊外や近県の“環境良好なベッドタウ
ン”という似たような一戸建てがひたすら立ち並ぶのどかで退屈な場所へどん
どん追いやった。
通勤に一時間半、二時間とかけて長年“都心”へと通いつめたリタイア組の年
配者は、住んでこそいなかったけれど、東京のこと、都心の利便性や快適さを
よく知っている。
知っていながらも、東京なんて混雑していて空気が汚くて人の住むところじゃ
ないよ、と嘯きながらどこかで自分の郊外生活を納得させていたのだろう。
だけどいざ、目前に現実に手に入れることができる、夢の世界ではなくなった
実感が、彼らに“都心に住む”動機を与えることに繋がった。

景気は悪いし、失業率は年々うなぎ昇りだけど、定年退職を逃げ切ったそうい
う人たちには、世の中全体のムードは実はあんまり関係ない。
口では色々言うものの、ある程度のまとまった一財産があって、後は年金収入
があれば、これからその財産形成をしようかと思っても一寸先は闇、の現役の
世代に比べれば、天と地ほどにもその未来、数年先の未来には差がある。
予定どおりの年金給付、文字通り“老後満喫”そのために長年の退屈でしんど
い通勤時間の埋め合わせでもするかのような、やおらそんな勢いで都心のマン
ション生活を夢見て、物件を探し回る。
その姿は、とても高齢とは呼べない元気さだ。
さすがこの国の金融資産のほとんどを懐に入れてる世代だぜ。

俺はそういう中途半端な富裕層相手に、コンクリートの夢の箱を見せ、住環境
としての都心空間での生活の有利さを語りかける。
実際、俺自身神楽坂で生まれ育ち、今は実家を離れて四谷の賃貸住まいだけど、
東京都心は実は緑が多い。
それは東京の地図を見れば分かることなんだけど、都心5区っていうのは“東
京は人が住むトコじゃない”みたいな言われ方を住むことができなかった人た
ちにされてきたようなフシがあって、まぁ郊外とか近県住まいの主婦層とかの
負け惜しみをカモフラージュしてきた結果、長年、なんか環境最悪みたいにイ
メージ付けされてきたけれど、その実実際、郊外のコミューンに多い未成年の
悪ガキなんかはかえって少ないし、暇を持て余したいい大人が暇をつぶすには
最適なところなんだ。
高齢者にとっては病気になれば大学病院もわんさとあるし、どこへ行くのも30
分もあればOK。
お金さえあれば、東京は本当にいいところ。
そういうのって、きっと彼らにとってはある種の憧れだったんだろう。
趣味だの、文化だの、ゆとりだの、そういうものを実感するのに、モノや人が
あふれビルが立ち並ぶ都会の風景はリンクしていると。
だから、高層マンションが完売する。
よく晴れた日には、高層階の広い窓から遠く富士山や東京を取り囲む山々が見
える。夕暮れ時の都会の上空で繰り広げられるオレンジ色から紫色へのグラデ
ーションの壮大なパノラマ、何度見てもこれは人間には演出できない一大スペ
クタクルだと思う。
高いところに住もうとする人は、金を出してその眺望を買う。

だけどさ。最近感じるんだ。
彼らの窓から見える風景は、彼らを確かに癒すのかもしれないけれど、空に近
い高いところで彼らがながきに渡って支えてきたとされる(単に時代が良かっ
た、運が良かった、てのもあると思う)この国の首都をいくら眺めてみたとこ
ろでさ、それが砂上の楼閣だった、って現実をまた知ることになるだけかもし
れないんだよな、ってこと。
この国はみんな知ってると思うけど、地震国なんだ。
しかも太平洋側、特にこの東京を含む地域から東海道沖にはまちがいなく周期
的に大地震が起こると予測されていて、しかも本当に東京から近い富士山は、
休んでる火山なんだぜ。
で、ディベロッパーはどう対策をうってるのかって、そりゃ耐震構造云々いう
し、実際建築技術ってのは確実に進歩してはいるからさ、一般的には大丈夫、
というか、この建築基準なら安心だぜ、みたいなさ。
高層ビルなんかは通常の建築基準とはそもそも違って、地球の岩盤まで杭を打
ってるわけだし。
だからどうなんだ? と言われても、それ以上のことは言えないよな。
それは経験してみないと、本当は実際にはわからないことなんだ。
そもそも東京の下はどんな活断層があるのかないのか、実は計測そのものが不
可能、という話もある。
俺たちの足の下で、どんな神の計画が進行中なのか、誰にも分からない。

たとえばさ、運良く自分の住んでるマンションの駆体そのものは残っても、中
身がだからって大丈夫ってことではないし、今の東京でそんな未曾有の災害が
起これば、間違いなく下界は地獄絵図に満ち溢れるに決まってる。
どんな頑丈な建物だってその影響がまったくないと保証できるわけないんだ。
そういうのって、ディベロッパーだって百も承知の上で、そういうことは“た
ぶんないだろう”って前提で、客に物件を勧めてる。
人間生きてれば想定されるリスクなんて、腐るほどある。
明日なんかの突発事故で死ぬかもしれない。
そう、自然災害になんて遭わなくたって、別に今の時代他の理由、代表的で身
近なのが失業だけど、金稼げなくなったらやばいんだ。
それは都会ではとたんに生きてく条件を失うことに直結する。
失業ってもんを恐れない世代、つまりもう働かなくても生きていける世代の人
たちが元気いっぱい生きがいを求める姿が、時々いびつな今のこの国のおかし
さを浮き彫りにして見せてくれる。

まぁそんな明日をも知れぬ経済状況のそれに比べれば自然災害の確率なんてな
ぁ・・・っていう、曖昧なところで、生き残らなきゃいけない企業の中で朝か
ら晩まで働き詰めの俺たちの世代は、マンションや高層ビルをばんばん建てて
は売りさばいてるんだ。
立ち止まったら、そこで企業は死ぬしかないからね。
どんな業態にも資本主義の世の中ではリスクは当然つきものだし、始めから成
功が約束されている事業なんて、本当はひとつもない。
個人の単位でももちろんそうだし、それは企業だろうと国だろうと実は同じ。
この国では未だに寄らば大樹的発想は、なんだかんだいって根強い。
で、始末の悪いことに、なんとなく規模が大きくなってくると、ヘンな安心感
持っちゃうんだよな。ただ感覚が麻痺してるだけなのかもしれないのに。

俺が最近感じるのは、次々と東京に新たに出現する背の高いビル群は、確かに
東京に新たな付加価値を生み出す要素の一つになる可能性もあるけれど、ある
種の最後のやけくその打ち上げ花火みたいなものになる確率もまったくないわ
けじゃなくて、だからさ、ヘンな話誰もが後悔しない人生を送るべきだな、っ
て思う。
俺にマンション勧められて買ってくれた顧客は、今のところ、まぁまぁ都会暮
らしを満喫できて、どうやら満足してるらしい。
そう、その“満足”を誤解しないでいてくれればいいんだけどね。
俺が提供している満足ってのは、今、この瞬間瞬間の充足感であって、未来永
劫の安泰とか、永遠の幸福感なんかじゃない。
もちろん、そんなことは言わないけどね。
未来に継続を約束された幸福感なんて、たとえ全世界を手に入れたっておそら
く実感できないさ。

そういう俺は、何を未来図として描くのかっていえば、そうだな、東京は俺が
生まれて育った街だしな、どんな惨事が起ころうと。たとえばテロの標的にな
るかもしれないし、大地震が起こるかもしれない、だけどトンズラする予定は
今のところないぜ。
今や東京はカタストロフィーの予感が世界一似合うイカシた似非バビロンに成
長したし、俺はこの目で見届けたいんだ。
俺が住んでる四谷からほど近い千鳥ケ淵には、もうすぐ満開の桜で埋め尽くさ
れる美しい春がやってくる。
都会の桜はもの悲しくて、騒がしい往来の中を静かに俺たちを見張っている。
街がどう変化していくのか、散ってはまた春に蘇り、その語らない記憶を留め
るかのように、毎年毎年、同じことを繰り返す。
俺もあの桜みたいなもんさ。
誰かに大袈裟に語ることなんてきっとしないけど、ずっと憶えていたいからね。
形あるものが、確かに形となって、そこにあった。ということ。
それは東京に住む、住みつづける掟みたいなもんさ。


++++++++都市再生、都市再生、と、呪文のように我が国の総理が時々
++++++++口にしておりますが、東京は今未曾有の高層ビルの建築ラッ
++++++++シュ。今年は次々にそれらが竣工する予定のようです。今や
++++++++高層ビルなんてもんは珍しいものでもなんでもありません。
++++++++私は新しく東京に登場する近代的な建造物のよそよそしさも
++++++++嫌いではありませんが、個人的には築年数はいったい・・?
++++++++と思わされるようなオンボロビルも好きだったりします。
++++++++東京がどこかイビツなところを残したカッコ悪さを払拭でき
++++++++ずにいつづける限り、やっぱりけっこう愛着を持ちつづける
++++++++ことができそうです。


ということで、とても短い間でしたが、今回を持ちまして私のNAKED SHORT
STORYは最終回となりました。
お付き合いくださいまして有難うございました。
最初はこのコーナーをいただいた時、身辺雑記のコラムのようなものを書いて
みたりしたんですけど、なんかしっくりいかず、そこへ私の良き師の助言によ
り、一遍一遍を読み切りの物語仕立てにして、そこにコメントをつけてみては
どうか、ということで、こういう作り話シリーズが始まったわけです。
デジクリご購読の皆様に読んでいただく物語として、どんな心のランドスケー
プをご用意させていただこうかと、毎回足りない頭を使ってまいりましたが、
結局のところ、どの物語の主人公も好き勝手に私の思惑とは結果違う方向に走
っていくのが、書いている本人としては楽しかったです。
まぁ人生も仕事も自分の思惑どおりにいかない物語のようなもの。
でも自分のココロの中にまず物語を描かなければ、何も“カタチとなって実現”
はしないのですが。
最後にこういう機会を与えてくださったデジクリさんに、感謝です。
皆様お元気で。

【神崎詞音】 http://210.150.171.169/droo-d/-sion/
作詞家。露崎春女(現:Lyrico)KAZAMIなどの実力派ディーヴァから、アニメ、
ゲーム音楽まで、多岐ジャンルに渡り作品を提供。

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■編集後記(2/10)
・今日のコラムに反応。よくいく書店のレジは「●●円からお預かりします」
と言う。本を袋に入れてこっちに渡しながら「お品物でございます」と言う。
なんて間抜けな店員教育だと思う。チェーン店すべてがこんな対応なのかな。
史上最低のかけ声「いらっしゃいませこんにちわ」よりはマシかもしれないが、
もっと言葉を大事にしろって。たまに出ていって眺める都心の高層ビル群には、
たしかにやけっぱちの気分が感じられる。わたしの生きている間のカタストロ
フィーを、ひそかに期待してしまうのだ。関係者には申し訳ないけれど。明日
でまた一つ歳をとる。うんざりため息の出る中途半端な年齢だ。  (柴田)

・毎日上海話を書いている。ネタ探さなくて良いので楽なのだが、食傷気味。
なので今日は別日記。木曜日の夜にいきなり東京行き決定。仕事の関係で無理
そうだったのにいきなり穴が空く。LAN接続できるホテルを探し当日予約。写
真を楽しむ生活誌の情報整理のため、前々からファイルメーカーを使いたいと
思っていたので、Santa8氏に突撃アポ。これだけ長い間連載してもらっている
のに会うのは初めて。結構イメージ通りの人だったけれど、Santa8さんの持つ
私のイメージは違っていたそうだ。読者さんたちの持つイメージもこういう感
じなのかな。数日前に神田さんから夜中に電話が入り、今から来いと言われた。
読者さんたちと宴会をしていて私の名前が出たそうだ。終電も終わっている時
間で無理だと断ってしまった。顔つぶしちゃってすみません~。せめて前日ま
でにっ。にしても、良すぎるイメージを植え付けちゃいやん。人前に出られな
くなる~。突撃アポにも関わらず、Santa8さんは優しくしてくれはって、充実
した会談の上、雑誌カメラマンの女性にも紹介してもらい、楽しい時間が過ご
せた。やるぜファイルメーカーでの情報整理!       (hammer.mule)
・先週でJules Yoshiyuki Tajima氏、今週で神崎詞音氏の連載が終了。ありが
とうございました。また機会があればお願いします!

<応募受付中のプレゼント>
 濱村デスクの上海土産 1245号。

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発行   デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/>;

編集長     柴田忠男 <mailto:tdo@green.ocn.ne.jp>
デスク     濱村和恵 <mailto:zacke@days-i.com>
アソシエーツ  神田敏晶 <mailto:kanda@knn.com>
アシスト    島田敬子 <mailto:keiko@days-i.com>

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