[1292] 花しべ そよぐ

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1292    2003/04/15.Tue発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 21004部
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          <出世を望まず、専門を愛す>

■デジタルサウンズ研究室
 花しべ そよぐ
 モモヨ(リザード)

■電網悠語:Ridual開発記編(36)
 儲けられないデザイナは悪いデザイナか
 三井英樹

■Webディレクションの花道:第5回 
 孤独なバランスゲーム~企画と仕様(2)~
 UZ

■セミナー案内
 ディ・ストーム『Swift 3D V.3 スタートアップセミナー』



■デジタルサウンズ研究室
花しべ そよぐ

モモヨ(リザード)
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今年も花の時節が来て去っていった。

国際情勢のきな臭さなどお構いなし。

当然のことながら、ある種暴力的ながらも春は到来する。

そして、気がつくと、知らぬ間に青葉が萌す時節にうつっている。

毎年、花の時期になると、時を同じくして、不幸の知らせが舞込んでくるよう
になったのは、三十歳を過ぎた頃だったろうか。そんな年齢からか、ぽつりぽ
つりと知人、親戚が今生に別れを告げるようになった。

広大な霊園を散策するようになったのは、そうした時節だった。

春の嵐が吹きすさぶ夜が明けるや不幸を告げる電話が鳴る。そんなことにも、
しだいに驚かなくなった。

そして、いつしか、我知らず、年に一度の、桜の開花を、不安を抱きつつも何
か新しいものの始まりのように、訃報を待つようになった。

……そもそも人生のうちで、私たちが桜の開花に出会う機会は、幾度もない。

……そして、今年も、母方の縁戚が一人、また旅立った。

いまや、私も五十に手が届く齢となっている。当然ながら、三十の時よりも、
はるかに、霊園の平和な真昼が身近なものとなっている。理解されるかどうか
知らぬが、私の内部では、今生、いま、ここにいる私と、私が寂滅した後の時
空とが繋がり始めている。桜に例えれば、花や葉ではなく、桜そのもの、木そ
のものが見えてきている。そんな気がしている。

といって、命を軽んじて考えるようになったわけではない。むしろ、固有の生
と、固有の死のありよう、それを重んじるようになったのだ。

今年、縁戚死去の報にふれた時、ちょうど、イラクでの戦乱はピークを迎えて
いた。ニュースを見れば、外部の理不尽なものによって、暴力的に来るべき未
来を奪われる人々が映し出されている。

一方で、桜の花の舞う中で静かに永眠につく魂がある。

「死んじまえば、みなおなじだ」

死は万人に平等である、とか、死ねば、みな同じ……とは、生者である私には、
どうしても思えない。誰か見知らぬ人物の勝手なご都合で、私の生涯が左右さ
れる。それを思うと我慢できない。

如月の望月の頃、花の下にて我しなむ、こう詠じた西行に生臭さを感じてきた
私だが、ふとニュースの向こうに、理想の寂滅?が見えた、そんな気がした。

私も、いつか死ぬべきさだめであれば、花のもと、静かに舞い散る花しべとと
もに、無常の風に吹かれて、今生を去りたい。

桜の向こうに広がる青空に煙になって流れていく。そして風になる。そんなこ
とを思うと、みょうにすがすがしい……。ふとそんな思いにかられたが、その
春がいつ来るか、それは天のみぞ知るところ。

だから人生は面白い。

モモヨ(リザード) 管原保雄
http://www.babylonic.com/

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■電網悠語:Ridual開発記編(36)
儲けられないデザイナは悪いデザイナか

三井英樹 / ※Ridual=XMLベースのWebサイト構築ツール
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Ridualの製品化を考えて市場調査を進めていて、気になる動きを感じてきた。
最近のデザイナに対する要求で、「儲けることができるか」という点への力点
を強く感じる点だ。

自分の技術を高めることと、それで儲けるられることとは少し異なるスキルが
必要だ。自分の技術を適正価格で売る技術。私見ではデザイナと呼ばれる人に
この熟練者は少なく、この技術に長けるようになると肩書きはともかくデザイ
ナではなくっている人が多い気がする。もちろん両立できている人もいて、そ
れはまさに超人の域である。

別に清貧を勧めている訳ではない。デザイナが豊かにあるべきだという論を撤
回する訳でもない。デザイナが儲けるスキルを身につける事自身には大賛成だ。
しかし、何か違和感を感じる。更にデザイナを窮地に追い込んでいる気がする
のだ。

デザイナと一括りに言っても様々な仕事があるだろうが、自分のアイデアを誰
かの賛同を得るために「示す」という行為または業務は共通していると思う。
相手が上司だろうが、クライアントだろうが、中継ぎ業者であろうが、そのよ
うな状況は存在する。その場合、旨く相手に伝える術(すべ)という意味では、
こうしたスキルは必須だろう。しかし、それを金に換えるという、錬金術の域
に関しては少し別分野ではないかと思っている。

金儲けへの接点をなくして職人について議論することは、青臭い理想論のよう
に思われるだろう。特にこの不況期にあっては、金儲けに繋がらない話は議論
の対象にもならないかもしれない。しかし、一緒にサイト構築をする時に、
パートナーに求めるのモノは、金計算の鋭さではなく、「職人的こだわり」で
ある一面は否定できない。デザイン修正をお願いするたびに、それは0.2人月
かかります、と言われたら興ざめだ。チーム内にあっては職人であり、客に対
しては徹底的なセールスマンであることは可能であろうが、それは万人が達せ
られる域ではないかもしれない。

諦めからそう思うのではなく、個人商店ならいざ知らず、ある程度の規模のデ
ザインチームにおいて、分業って何だろうと考えるのである。こだわりを筋と
したデザイナを擁するチームの営業は、その自分達の強みを最大限にアピール
して、売り込むスキルを持つべきだと思う。デザイナが自分の殻の中だけに閉
じこもるのを良しとはしないが、何もかもデザイナに求めるのではなく、分業
をちゃんとやろうよ、と言いたい。

優れたデザイナ、特にWebデザイナに求められる資質は、短期間に揺れ動いて
いる。グラフィックから、情報整理、バックエンド(DB)技術、広告手法、マ
ーケティング、更に経営コンサルに近いものまで。仮にこれらを習得すること
が可能だとして、皆がこれを求めたら、どのデザイナも独立してしまう。そん
な状態が良いのだろうか。そして、そうしたデザイナを擁する企業のお偉方は、
一体何をするのだろう、という疑問に答えが出ない。経営者を代わっても良い
ほどのスキルを要求しているのだから。

デザイナのスキル養成に関する道は幾つも出てきた。しかし、デザイナを擁す
る上司の養成コースの話は余り聞かない。対して、エンジニア集団のマネージ
ャ育成コースはそこそこあるし、通常のビジネスマネージャ育成コースはもっ
とある。デザイナは数が少ないのかもしれないが、適正にスキルを発揮するよ
うにするマネージメント方法論が育っていない。職人気質のデザイナが率いる
一子相伝的小集団時代が長かったせいかもしれない。

しかし、時代はデザインの方に少しは向いている。日産の復活劇にデザインが
どれほど重要だったか等は様々な形で報道されている。デザインを基本路線と
するプロダクションが、ビジネスWebサイトを成功に導いている例も多い。

私の頭の中で、デザイナという社員のポジションについて、ずっとすっきりし
ない状態が続いていたのだが、最近少し納得できる言葉に出会った。日経ビジ
ネス等三誌が合同編集した特集号「情報力を鍛え直す」で、P.F.ドラッガー氏
が「テクノロジスト」という言葉を使っている。

テクノロジストは、単なるホワイトカラーではない。第一の特徴は、「出世を
望まず、専門を愛す」という点。更に、「テクノロジストに通常の管理はいら
ない」、「能力が高く責任感が強くテクノロジストは勤務管理がなくても、働
きに手を抜くことはない」から。「経営者は部下の管理以外に時間を使えるよ
うになる」。

自分の何年か先を考えるとき、これで良いかどうかは置いておいて、なんとな
くしっくり来た。但し、もちろん上記で定義される人種は最近に出てきた新種
ではない。直ぐに頭に浮かぶのは、熟練印刷おじさん達や、油まみれになりな
がらコンマ数ミリの精度のレンズ職人、酒蔵の酒職人...等など、何故か伝統
的な分野。

でも多分、ドラッガー氏の言っているテクノロジストは、IT分野の旗手たちに
焦点があっていて、現時点身についている技術にこだわらずに最新最良の技術
を追い求めていける人達のことだろう。常に最新情報にアンテナを張り、与え
られた課題に最良の「解」を提供することに全力を注ぎたい人達。

IT不況が続くおかげで、モティベーション(動機付け)という分野にも注目が
集まっている。どうすれば、「やる気」がでるのか。上司も部下も未来に希望
を抱けない。それなしに続けられる生産活動のアウトプットの品質に問題が出
る。品質に問題のある製品は市場に受け入れられない。更に業績が悪化する。
更に明るい未来を想えない。...こうした悪循環を絶つために、経営層として
何が出来るのか。出世を望まない人種に、今までの人参ぶら下げ作戦は通用し
ない。

時代は、デザイナに更に何かを求める時代から、デザイナを活用する人達に何
かを求める時代へと移行している。もはや「僕ぁ、デザイン分からないんだよ
ね」なんて悠長に言っている時代ではない。自分の手駒の力をどこまで引き出
せるか、それが手腕と言うものだ。

私の感覚では、デザイナに求められる能力は、そうした自分の「親」を見定め
る力だと思う。自分が「親」になる能力は、そうした気質のある人の分野だろ
う。見定める力が育てば、進む道を決断する「勇気」が次に必要なモノかもし
れない。

もちろん問題はデザイナだけではない、Webは様々な分野で「中抜け」を誘発
している。おかげで様々な「新人類」が誕生している。Flashのようなデザイ
ナとエンジニアの直系子孫をどうハンドリングする。今までのマネージメント
手法では舵取りができないのは見えてきている。

私の結論はいつも、「人」に帰着する。自分達の才を最大限引き出せる職場で
働きたい。それは自分が経営者でない限り、そういった上司とがっぷり四つに
組んで進みたいということを意味する。「儲けられないデザイナ」の良し悪し
を品定めするだけの上司は要らない。「儲けられないデザイナ」で如何に儲け
るかを立案できる上司が必要だ。もちろん、デザイナもオンブに抱っこではな
くて。

ref:
・デザインの時代(読売/2002.12)
  http://adv.yomiuri.co.jp/ojo/02number/200212/12toku1.html
・ブランド確立にデザインが大きく関与(2002.11.12)
  http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/mech/216453

PR:只今、実質200ページ保存可能(lib/spの中参照)

【みつい・ひでき】 h-mitsui@nri.co.jp / info@ridual.jp
・何が辛いのか。今回の戦争によって失ったものは何か。多分今後誰も「正義」
 という言葉を使えなくなったこと。もはや誰が言っても嘘臭い。そんな状況
 は前からあったが、まだ「正義」を信じていた。正義は死に、都合だけが生
 き残った。
・確かに独裁者は表舞台からは引きずり落とされた。しかし、こんなのではな
 い方法で出来たかもしれない。そんなのを考えるのは甘ちゃんか。白い肌が
 微妙に高揚した赤ら顔で戦績を語る某要人。その笑顔の背後に数千人の犠牲
 者がいる。その憎しみはいつ消える。

・Ridual(XMLベースのWebサイト構築ツール)公式サイト
 http://www.ridual.jp/

・超個人的育児サイト(書籍は絶版中)
http://member.nifty.ne.jp/mit/MilkAge/

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■Webディレクションの花道:第5回 
孤独なバランスゲーム~企画と仕様(2)~
http://www.zdnet.co.jp/macwire/0304/14/cj00_degicri.html
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Webサイトの企画を作るとき、最も不安になることは「これは実現可能なもの
なのか」ということだ。ネットニュースでは大々的に取り上げられるので、
一般化していない技術もつい、できそうな気がしてくる。いくらでも大きなモ
チが描けてしまうのだ。(UZ)
▼ZDNet Mac「Webの鉄人」との連携企画。デジクリに連載されたものの再掲載
である。毎回ランキングトップをとる人気コラム。

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■セミナー案内
ディ・ストーム『Swift 3D V.3 スタートアップセミナー』
http://www.dstorm.co.jp/event/DSP_SwiftLaunch/
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<主催者情報>

4月4日より発売中のDTP/Webデザイナー向け三次元アニメーションソフト
『Swift 3D V.3 日本語版』のお披露目となるスタートアップセミナーを、下
記の通り開催します。

Swift 3Dは、三次元アプリケーションを初めてご使用になる方でも簡単に立体
的なコンテンツを作成することができるソフトウェアです。
作成したアニメーションをMacromedia Flash (SWF), Adobe Illustrator
(AI, EPS)形式など、軽量でスケーラブルなベクターイメージに書き出すこと
ができるのが最大の特徴です。

ゲストにはこちらのMLチャット対談でもお馴染みのまつむら まきお氏とサブ
リン氏をお迎えし、Swift 3D V.3 の運用例を、さまざまな角度から紹介しま
す。ゲストのお二人の熱いトークバトルにもご期待ください。

日時:4月23日(水)開場13:30、開始14:00、終了17:15(予定)
※入場無料、事前登録制
開場:日本ヒューレット・パッカード株式会社
   市ヶ谷事業所2Fセミナールーム
定員:80名(定員になり次第受付終了)

主催:株式会社ディ・ストーム
協力:日本ヒューレット・パッカード株式会社

問い合わせ先:株式会社ディ・ストーム セールス&マーケティング部
http://www.dstorm.co.jp/
mailto:sales@dstorm.co.jp
Tel.03-5570-8722

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■編集後記(4/15)
・角川書店「怪」14号を読んでいる。毎回発行日がずれこみ、マイナーな体裁
で、いつまで保つか心配だったが、11号からB6判をA5判に替え、組版もきれい
になった。この号も発行が遅れたが、「怪」が妖怪映画をプロデュースするこ
とになったからトいいわけしている。新生角川大映が「妖怪大戦争」をリメー
クするというのだ。水木しげる、荒俣宏、京極夏彦、宮部みゆきのとぼけた座
談会(いいテンポだ)でその内幕が語られていて面白い。企画はこの4人に任
されたようで、まさに子供にオモチャを与えてしまったという感じ。思いっき
り馬鹿馬鹿しいのができそうな雰囲気で、これは楽しめそうな事件だ。(柴田)

・入所説明会に行ってきた。デジクリはその施設の運営協力団体として入所す
る。団体PRをするように言われていたので、柴田さんに原稿を書いてもらい、
読み上げてきた。あー、緊張。持ち時間を知らされていなかったので、長く話
してしまった。普通に入所する企業さんたちの部屋割り当て抽選会なんかもあ
ったのだが、横文字の社名だらけで、日本語の社名って目立っていいかもねと。
いくつかの団体に挨拶もしてきた。仲良くしてやってください~。その後、所
長さんたちと今後の話をしていたのだが、面接で厳しかった人がとっても優し
い人だったり、真面目そうな人が実はごっついディープな人だったり。この施
設ってめっちゃ楽しそう! ここにいるだけで、何かを得られそうな、面白い
人がたくさん出入りしそうな感じ。デジクリとしては何ができるのか模索中。
いいアイデアや企画があれば、面白い人、凄い人をご存知の方は、ぜひご一報
ください。自薦他薦問いません。よろしくお願いします。  (hammer.mule)
http://www.ogimachi.info/  扇町ミュージアムスクエアの次はここかも~

<応募受付中のプレゼント>
 Web Designing 2003年4月号 1282号。
 ホームページをお手軽に作って10倍楽しむ本 1283号。
 「素材辞典イメージブック6」「素材辞典イメージブック7」 1284号。

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発行   デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/>;

編集長     柴田忠男 <mailto:tdo@green.ocn.ne.jp>
デスク     濱村和恵 <mailto:zacke@days-i.com>
アソシエーツ  神田敏晶 <mailto:kanda@knn.com>
アシスト    島田敬子 <mailto:keiko@days-i.com>
リニューアル  8月サンタ <mailto:santa@londontown.to>

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