[1504] ファイルメーカー Pro 7はスゴいぞ!

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1504    2004/04/08.Thu発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 18976部
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    <コンテンツ制作者の立場はあきれるほどもろい>

■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト 18
 ファイルメーカーPro Ver.7はスゴいぞ!
 茂田カツノリ

■笑わない魚 108
 私はこんな死者になりたい
 永吉克之

■Powerbook Publishing Project 80
 電子出版社は可能か(3)
 8月サンタ



■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト 18
ファイルメーカーPro Ver.7はスゴいぞ!

茂田カツノリ
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僕はいまでこそ、エラそうにコラム書いたり、本を書いたりWeb作ったりして
いるが、20代前半はいわゆるプータローで、生活力のないダメ人間だった。学
歴も中卒だし特筆すべき経験もなく、明確な目標もやる気も体力もなくて、人
生がとてもつまらないものに思えていた。

そんな感じで惰性のまま生きていた23歳くらいのとき、ふと「今やってる仕事
を全力で取り組むことで、何かが変わるのではないか?」と考えた。そして当
時していたウェイターの仕事に真剣に取り組んでみたら、少しずつ世界が変わ
って見えてきた。

・そのころよく聞いてたR.E.M.の「Stand」(歌詞)
http://www.lyricsfreak.com/r/r.e.m./113086.html
あっ、このころはまだマイケル・スタイプさんに毛が....。

その後も紆余曲折あったがツマラナイので省略するとして、40歳を間近にした
現在は家族にも恵まれ、幸福な生活を送っている。振り返ってみると、97年に、
ある人のご尽力によりファイルメーカーProバージョン3.0の本を書かせていた
だいたことが、その後の人生をより良い方向に導いてくれたような気がする。

だからファイルメーカー社には足向けて寝られないのだ。いまはリフォーム中
で寝る向きがかなり限定されるのだが、番町方面にだけは足向けないよう気を
付けてる。

前置きはこのくらいにして、ファイルメーカーProの最新版「Ver.7」について
ご紹介しよう。

ファイルメーカーPro7は、米国ではファイルメーカーDeveloper7とともに3月9
日にすでに発売されており、本稿もこの米国版を使って評価している。日本語
版の発表はまだされていないため、メニューや機能の名称は、英語のまま記述
する。

・米国FileMaker Inc.のサイト(英語)
http://www.filemaker.com/
FileMaker7(英語版)の30日間限定試用版がダウンロード可能。

●データベースというより「簡易アプリケーション開発環境」

ファイルメーカーProの活用範囲というと、顧客名簿とか商品台帳とかを想像
するだろう。しかし実際の利用範囲はもうちょっと広く、この「日刊デジクリ」
の原稿管理から整形までとか、書籍の台割作成、Webページの自動生成など、
およそデジタル系の生産活動すべてにおいて役立つものだ。

ただし前バージョンまでは「テキストフィールドは半角64,000文字まで、ファ
イル全体では約2GBまで」という制約に引っかかってしまうことが多かった。
それがVer.7で「テキストフィールドは2GB、ファイル全体では約8TB(テラバ
イト)」と大幅に拡大された。

たとえばHTMLの自動生成にしても、64KBなんて軽く突破してしまうものだから、
Ver.7での拡大でようやく普通に使えるようになったといえる。

Ver.7で新設された「Containerフィールド」も面白い。旧バージョンの「オブ
ジェクトフィールド」と同等のものだが、画像やサウンドファイルだけでなく、
Excel書類なども取り込めるようになったのだ。ファイルをどんどん放り込ん
でおくという使い方ができ、活用範囲がより広がった。この機能については、
いろいろ新しい使い方ができそうなので、皆さんも考えてみてほしい。

Macユーザにとっては、AppleScriptとの連携に強い点も大きな魅力だ。特にAp
pleScriptのコード自体をファイルメーカーProの計算フィールドで生成できる
点で、応用範囲を広げている(これはVer.7でなくても可)。

こうした機能を含め、かなり「アプリケーション開発環境」に近いことができ
るから、仕事をより効率化したいという人はぜひ注目してほしい。

●新機能いろいろ

・複数テーブルのサポート
1つのファイル内に複数の「テーブル」を含めることができるようになった。
従来はリレーションをからめたDBを作成すると複数のファイルに分かれること
になって管理が面倒だった。また、1つのDBで複数のウィンドウが開けるよう
にもなった。

・リレーション機能の進化
リレーションの状態がグラフィカルに確認できるようになった。またリレーシ
ョンの条件を、範囲指定、大小関係、一致しない場合といった条件でも指定で
きるようになった。リレーションのキーを計算フィールドにより工夫して生成
してたことを考えると、かなりラクチンになった。

・フィールド移動に使うキーの指定
旧バージョンではTabキーでフィールド移動をしたが、Ver.7ではReturnキー/
Enterキーを設定することが可能になった。これはレイアウトモードの「Field
Behavior」設定によって行なう。

・Script Parameterの設定
ボタンからスクリプトを起動する際に、あらかじめボタンに値を設定しておき、
それをスクリプトに反映させることができるようになった。これによりスクリ
プトがかなり簡略化でき、開発がしやすくなった。

・繰り返し/ポータルの一部のみ表示
繰り返しフィールドやポータルを配置する際、何番目から何番目までを表示す
るといった設定がレイアウトごとに行えるようになった。・式中での値代入
Let関数により実現。計算フィールドに、
Let ( [a = "あいうえお" ; b = "かきくけこ" ]; a & b)
と記述すると、変数aと変数bに値が代入され「あいうえおかきくけこ」という
表示になるという感じだ。これにより、式を短くかつ読みやすくできる。

・文字の色やサイズ等の制御
新設されたText Formatting関数群により制御が可能に。

・新しい関数・スクリプト
関数については、Status関数がGet関数と呼び名が変わったほか、多くの関数
が追加された。スクリプトステップも、新規ウィンドウを開いたり、ウィンド
ウの位置・サイズを数値指定するものなど、多数追加されている。これらにつ
いては、いつの日か出版される拙著「ファイルメーカーPro関数・スクリプト
事典 Ver.7対応版」を参照してほしい(うっ、宣伝...)。

●ぜひDeveloperを買おう

ファイルメーカーProには、普通のもののほかに「Developer」がある。これに
はDBをアプリケーション化する機能があって、ファイルメーカーProをインス
トールしてないマシンでも動作させることができるのだ。

アプリケーション化したファイルは、開発元を明記するなどのいくつかのルー
ルを守ればライセンス費不要のため、特定業種向けの製品を開発して販売し、
ウハウハ儲けようではないか。

関数を自作できる「Custom Function」はDeveloper版のみの機能。作った関数
はDBファイル内に保存され、通常版のファイルメーカーProで開いた際も利用
できる。

そのほかにも、DBの構造を書き出す「Database Design Report機能」、スクリ
プトのデバッグ機能などがあり、Mac版/Windows版ハイブリッドだ。これで米
国では通常版$299に対してDeveloper版$499であり、日本語版の価格差もこの
位と思われるから、実にお得だ。

・Developer版の商品紹介(英語)
http://www.filemaker.com/products/fmd_home.html

●MacOS Classic版はない

かねてから予告されていたとおり、ファイルメーカーPro Ver.7からMac版はMa
cOS X版のみとなり、MacOS Classic版はない。

というわけで、まったくの別ソフトになったといっても過言でないほど機能が
増えたので、いままで使ってなかった人もぜひ触れてみてほしい。仕事の効率
をアップして、浮かせた時間で子育てしませんか?

【しげた・かつのり】shigeta@amonita.com
Webプロデューサー/テクニカルライター、あるいはファイルメーカーPro7の
執筆を多数抱えて気が遠くなっているただの凡人。子育てSOHO生活を、心の底
から思いっきり楽しんでる。
リフォームは遅々として進まず、いまだにリビングにふとん敷いて寝る生活で
ある。なんとかGW明けまでには人を招待できる状態にしたいのだが...。

[有限会社アモニータ]http://www.amonita.com/

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■笑わない魚 108
私はこんな死者になりたい

永吉克之
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また今年も、野球のペナントレース開幕と同時に葬式のシーズンが始まった。
暖かい時期に死者を送り出そうというのはネアンデルタール人以来の伝統だ。

しかし私は冠婚葬祭に関わるのが著しく不得手だ。英語で言うと"daikirai"で
ある。煩わしいというのもあるが、それ以上に、もろもろの、実をともなわな
い儀式が無意味に思えてしかたがないのである。無意味なものは好きだが、面
白さを伴わない無意味は無意味だ。

とはいえ結婚式は祭りみたいなものだから無意味な儀式もけっこう。新郎新婦
が喜んでくれるなら、そらぞらしい祝辞も言おう。家は真宗だが、チャペルで
主イエスを讃える賛美歌も歌おう。割りばしを鼻に突っ込んでドジョウすくい
も踊ろう。酒が飲めるのだから何だってやろうじゃないか。

また、これは冠婚葬祭ではないが、大相撲で、勝った力士が懸賞を受け取る際、
左右中の順序で手刀を切ることにどんな意味があるのか日本相撲協会のサイト
を見たが判らない。お相撲さんも「なんで右中左じゃダメなんだろう」なんて
追及はせず、まーこういうもんでごんす、とわけもわからず手刀を切っている
のだろうが、相撲は様式美の世界だから意味なんかどうでもいいのだ。

                 ■

しかし葬式は少し違う。祭や国技や歌舞音曲のように、所作の意味が解らなく
ても楽しめるというものではない。

足の痺れや睡魔に耐えながら、さっぱり意味の解らないお経を延々と聞き続け
ていると、これがいったい何になるのだろうという疑問で頭がいっぱいになる。

自分の父親の葬儀のときですらそう思ったのだから、他の葬儀なら、なおさら
のことである。わざわざ金(香典)を払って不条理な苦痛に耐えることが死者
への手向けになるのだと自らに言い聞かせるしかあるまい。

また弔電も不条理だ。こういう内容にしなければ呪われるとでも思っているの
か、内容はだいたい「ご逝去の報に接し、心から哀悼の意を捧げます」といっ
たようなものばかりで、弔電の一本も打っとかなきゃまずいだろうという気持
ちが手に取るように判る。

そんなもの、式でダラダラと読み上げられて、故人が喜ぶとはどうしても思え
ないのだ。弔電の差出人に各界のお歴々の名前が並んでいたとしても、せいぜ
い身内が「どうだこの人脈のすごさは。俺はな、故人の娘婿の叔父のいとこの
息子なんだ。恐れ入ったか」と自慢できるくらいのものである。

義理で出された弔電を義理で受取って、ありがたそうに読み上げる。不条理だ。
本当に死者を悼む気持ちがあれば、弔電の文言は、在りし日の故人の性格や生
活環境を反映した内容にしたいものである。

「健一、ひとりで逝ってしまったんだな。寂しがり屋のお前には耐えられない
だろう。俺も今すぐそっちに行くからな。もちろんお前の奥さんと子供も連れ
ていくから安心しろ」

                 ■

魂の不滅を信じない人、つまり人間死んだらそれっきり、焼かれて一握の灰以
外はなにも残らない、という考えを奉じておられる人にはナンセンスなことだ
ろうが、自分が死んで霊になって、通夜や葬儀での人々の様子を見ているとこ
ろを想像してみれば、すこーしは死者の気持ちも理解できるかもしれない。

肉親が亡くなると、貧しくてもせめて死出は飾ってやろうと、無理をしてでも
人並みの葬式を出そうとするのが、人情というものである。

しかし虎の子をはたいた葬儀が自分のために行なわれているのを見て「なんだ
この貧相な葬式は。これじゃ近所の笑い者じゃないか。それに誰も泣いてない
というのはどういうことだ。こら、俺の逝去を惜しめ」と、いまや霊となって
も見栄にこだわり続けるなら、その人は当分の間、成仏できないだろう。この
ような、まがい物の死者は悪霊となって霊障をもたらすにちがいない。

「金もないのに葬式なんかするな。死んだ人間のために生きている人間の生活
を犠牲にしてどうするんだ。まったく葬式なんてバカなことを始めたのはどこ
のどいつだ、ドイツ人か!」と言うのが、正しい死者のありかたである。

よい死者は、残された者に涙を求めたりはしない。未亡人となった妻が、畳を
掻きむしって泣きわめきながら亡夫の面影を追い求めている姿より、前向きに
「夫のことはもう忘れます。子供はうちが立派に育てますよってに、安っぽい
同情は無用にしとくれやす」という毅然とした姿の方が、どれだけ死者を安心
させることだろう。

それだけではない。真の死者なら、墓すら求めないはずである。墓地・埋葬等
に関する法律施行規則昭和二十三年厚生省令第二十四号によると、遺体は火葬
が義務付けられ、墓地以外の区域に埋葬してはいけないことになっているので、
墓に入れるのは仕方がないが、何百万円もする墓に入れるのも、カマボコ板を
立てただけの墓に入れるのも、家族の世間体の問題で、死者にとっては全く同
じことなのである。

しかし遺骨とは結局、カルシウムやコラーゲン、リンなどのかたまりが焼け残
ったものだから、骨壷なんぞに入れて墓の中に貯蔵しておくなど愚行もはなは
だしい。土に直接埋めて地球の栄養に還元され、草花や木々、あるいはミミズ
の体の一部になることこそ、真の死者が望むことなのである。

【ながよしかつゆき/アーティスト】katz@mvc.biglobe.ne.jp
個展も残すところ、あと二日間。ご来場くださった方々、ありがとうございま
した。期間終了後は巡業先を探すつもりです。作品展の総括は次回。これから
個展をやろうとしている方の役に立ちことが書ければいいのですが。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~work

■個展『特に意味はない』のご案内。
場所:Asian Cafe 伽奈泥庵(大阪市中央区)<http://www.kanadian.org>
会期:開催中~4/10(土)営業時間:11am~11pm(木曜のみ~7pm)
※9日(金)18~21時、10日(土)15~21時は会場にいます。
               
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■Powerbook Publishing Project 80
電子出版社は可能か (3)

8月サンタ
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前回までの内容を簡単にまとめるとこうなる。インターネットを利用して、コ
ンテンツを配信するデジタルな出版社、いわゆるドットコム・パブリッシャー
が成立するには、大きな二つのリスクがあるということだ。

ひとつは『デジタルコンテンツというだけでは売り物にならない』こと。

人は私有可能なものには金を払うが、そうでないものに金を払う価値観はまだ
育っていない。デジタルデータは劣化せずにどこまでも複製・共有が可能で、
故にどんなに素晴らしい、あるいはユニークな、あるいは金のかかったコンテ
ンツ、であっても、複製・共有されてしまったら商品として成立しなくなる。

また、デジタルコンテンツには、デジタル故の絶望的なほどの「賞味期限の短
さ」があるのだが、それは別の回で、あるいは折に触れて、また詳しく解説す
ることになる。

もうひとつはビジネスとしてのリスク。『コンテンツ制作者の立場はあきれる
ほどもろい』。これについて、先週はしょってしまった部分を中心に書いてい
きたい。

●物流は絶対権力

コンテンツは顧客の手に届けられ、代金が回収されなくてはならない。配達す
る「物流」システムと課金の「決済」システムがつながってこそ、顧客を含め
たひとつの輪としてつながり、はじめてビジネスとなる。

だが、インターネットという環境では、誰もが必要としている(金を払わざる
を得ない)接続サービスを提供しているのは、インターネット・サービス・プ
ロバイダ、いわゆるISPだけであり、それゆえにインターネット上のビジネス
に関し、絶対的な権力を形成している。

物流システムが絶対権力を握るのは珍しいことではない。例えば出版界では、
『取次』と呼ばれる出版社と書店を結ぶ問屋が、広い日本にたった二社で、取
引の大半を独占し、書店と出版社の生殺与奪の権力を握っている。取次が扱わ
ない本は書店で売られる本にはならない。書店の品揃えは取次のさじ加減ひと
つで決まる。

私たちが、書店の店頭で手に取ることの出来る本は、流通を支配する取次店に
よってコントロールされているということだ。さらに言えば、その取次のオー
ナーは小学館、講談社、集英社をはじめとする大手出版社である。この話は本
コラムで何度か取り上げてきたが、厳格な事実である。

ただし、インターネットの場合は『物流』とひとくくりに言うことが出来ない。
そのインフラの内容ゆえに、『通信事業者』でもあるからだ。強大すぎる権力
は法によって規制もされ保護もされ、政府によって活動をコントロールされて
いる。

だからISPは出版取次のようには、それを使って商売をするものに対し権力を
振るうことが出来ない。(出版取次は新規参入出版社には、非常に官僚的ない
ろんな規制を課すということをやる。売る側の書店に対してももちろん。)
コンテンツ制作者であれば、これをチャンスととらえることも出来る。もし冒
頭で述べたような、デジタルコンテンツの商品化の難しささえなければ、今頃
世界は変わっていただろう。実際にはコンテンツは流れたが、流した側に代金
は戻ってこなかったというのが現在の状態だ。

●『来月も売り上げが見込める』ということ

ISPは権力を持っているだけではなく、ビジネスとしての基盤も悪くはない。
接続を提供するというサービスの代価を受け取る決済法として、銀行口座から
の自動引き落とし、あるいはクレジットカードの口座からの自動引き落としと
いう、客にとってあまり支払いの実感のわかないシステムが主流である。

毎月の支払いへの心理的抵抗が少ないだけでなく、例えば契約すれば3か月は
抜けられない、やめるための手続きが徹底的に頻雑にしてあるなど、簡単には
サービス解除出来ないしくみが整っているため、一度顧客を獲得してしまえば、
時間軸で見れば安定度はなかなかのものである。

つまり、来月いきなり顧客の大半が逃げ出し、売り上げが十分の一になるとい
うことがない。来月、再来月の入金の見込みが立つ。これがビジネスにとって
は本当に本当に大事なことなのだ。(特に投資家にとって!)

インターネット上での商売、例えばネットショップ、例えばコンテンツ配信サ
ービスは、1クリックで客が移動できるだけに、今日繁盛していても明日繁盛
するかはほとんど読むことが出来ない。売り上げも外部要因で激しく変動する。

ネットショップはまだいい。物販であれば手に取れるパッケージがあるから、
地道に努力を重ねた程度には客が逃げ出すことはない。だが情報サービスは危
険極まりない。『砂上の楼閣』である。100倍の売り上げの伸びもあれば、100
分の1の減少も現実の世界だ。

誰でも一瞬だけならスーパーコンテンツを生み出し、ちょっとばかり稼げるか
もしれない。しかし人間社会は、継続的で毎月のある程度の収入の見込みを前
提としないとまっとうな社会生活は営みにくい。それも本当なら数年、数十年
単位の安定した収入レンジを求めるのが当たり前の考え方というものだろう。

「インターネットで簡単に情報発信! 即ビジネス!」という煽りは非常に危
険なのだ。確かにネットの世界は爆発的な広がりを見せ、新たな勝者もたくさ
ん生んではいるけれど、それ以上に惨敗者も数限りなく生んでいるし、生みつ
つあるし、生みやすくもあると思う。

ネットデビューのコンテンツ発信者が、線香花火のように消えるのが当たり前
という状況は、意識的に変えて行かなくてはならないのだ。それはもっと長い
レンジの視点を意図的にコンテンツ制作者が持っていくということなのだろう。
本稿が目指しているのもまさにそれだ。

●出版社はサービスか?

いわゆる紙の出版社から紙を取ってしまったらどうやって生きていくのか、と
いうのが電子出版社のコンセプトの核を成す部分である。

コンテンツ単体で魅力がなくても、他の商材と合わせることで魅力を引き出せ
る場合がある。私有の喜びが薄れた部分をお得なサービス感で埋めるという手
法である。

実は現在、ネットでの情報発信はすべてこの方向へ向かっている。携帯電話の
課金コンテンツなどは代表的な例だ。つまり、ISPに隷属するサービスとして
、ISPの付加価値としてネットコンテンツは商売として成立、重宝されている
のである。

これは市場が生み出した一つの解でもあるが、これが良い状態といえるだろう
か。次週はそのあたりを突っ込んでいく。

【8月サンタ】santa8@mac.com
LondonとLyallとLeCarreを愛する35歳元書店員。某超大手取次社員の経験アリ。
・今週は「世の中に無料のビットなし」ということで、常時接続と固定料金の
意味は違うということも書こうと考えていた。インターネットは水道みたいな
もので、常時パイプがつながっているという意味の「常時接続」と、利用料金
がパケットをいくら送受信しても同じという「固定料金」の意味は当然違うし、
その「常時接続」「固定料金」をいいことに、全員の利用者が一斉に限界まで
利用すればパンクするということと、ISP収益の構造を書いていきたかった。
だが、いつもお世話になっているISP歴まもなく10年の軽井沢インターネット
さんに電話をしてみたら、全てのビットに課金出来るというのはコスト的に実
現していないだけでなく、想像以上に規制と投資がヘンな方向に働いている、
ややこしい世界だったので、また次回以降に書きます。今回ISPは健全という
風に書いたが、それは客の銀行口座を握っているという意味でしかないです。
・そのとき教わった、独立系ISPとして誇り高く生き残っているIIJの社長の話。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NCC/INTERVIEW/20040407/142540/index.shtml
<応募受付中のプレゼント>
Web Site Design vol.10 1497号
グラフィックデザイナーズ年鑑2004-2005 1498号
CG&映像クリエイターズ年鑑2004-2005 1498号
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■編集後記(4/8)
・「ウルトラQ」が復活した。38年前のTBS系「ウルトラQ」は全話、リアルタ
イムで見た覚えがある。今度はテレビ東京系で水曜日の午前1時放映という、
もう何年もテレビを見たことのない時間帯なので(というより、起きていない)
当然、録画しておいた。懐かしいテイストだ。とても新しく作られたものと思
えないくらい、古い感覚だ。設定も役者たちの演技も古くさい。38年前の雰囲
気を再現しようとしているかのようだ。旧作は「ガラダマ」というタイトル。
熊谷ダムに落ちた隕石から怪物が現れる。一の谷博士(江川宇礼雄)が、あっ
さりと「我々人類より遙かに優れた頭脳と文明を持つ遊星人が地球侵略のため
に送り込んできたロボットだ」と断じる。絵に描いたようなわかりやすい博士
であった。その前に、三国山脈弓ガ谷に落ちてきた石のような物体が怪物を操
縦する怪電波を発していることがわかり、それに電波遮蔽網をかぶせることで、
怪物ガラモンはコントロールを失い倒れ伏す、というストーリーであった。と
いうことを覚えていたわけではない。小学館文庫「ウルトラQ」全7巻(昭和59
~60年)があるから見直しただけだ。いま思うと「ウルトラQ」は相当ちゃっ
ちいのだが、21世紀の「ウルトラQ」もかなりチープだ。ガラモンと家庭用ペ
ットロボットを絡ませた再来襲ストーリーだが、今度は電波遮蔽網ではなく電
波遮蔽の粉をかけるというお笑い。草刈正雄の怪演、主人公ペアのとくに男の
かっこ悪さ、午前1時のテレビ映画にふさわしいかもしれない。わたしは旧作
での江戸川由利子役、桜井浩子の大ファンであったのだ。(柴田)

・生まれてはじめて湯灌の儀式に出た。最期にゆっくりお風呂に入ってから、
ということは少ない。だから体をきれいにし、お化粧をしたり、白装束に草履
や脚絆、手甲などを整える儀式に参加できて本当に嬉しかった。リンスしてく
れたり、爪まで切ってくれる。あって欲しくはないけれど、もしそういうこと
になった時、湯灌の儀式のことが頭によぎってもらえたら。 (hammer.mule)
http://www.yukan.co.jp/yukansetumei.html  湯灌
http://www4.ocn.ne.jp/~akisosai/yukan/  Q&A

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発行   デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
リニューアル  8月サンタ
アシスト    鴨田麻衣子

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