[1587] 東京拘置所獄中記

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1587    2004/08/30.Mon.14:00発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 18331部
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  <セグウェイに乗った人とオウム事件が同じ釜のメシでいいのか?>

■KNNエンパワーメントコラム 
 東京拘置所獄中記(A)
 神田敏晶

■電網悠語:Ridual開発記編(62) 
 叱る
 三井英樹
 


■KNNエンパワーメントコラム 
東京拘置所獄中記(A)

神田敏晶
───────────────────────────────────
KNN神田です。

オリンピックも終わり金メダリストたちにとっては、忘れられない夏になった
ことだろう。今年はボクにとっても忘れられない夏だった。

オリンピック開幕の3日前、ボクは予定していたアテネの地ではなく、東京地
方検察庁の地に立っていた。

「セグウェイによる公道走行で、押収された物品がなぜ一年も戻ってこないの
か?」の質問に対し、裁判所、検察庁、警視庁のどこの部署からも説明がない
ので、罰金の支払いを拒否していると最終勧告で召集がなされた。

本当の出頭日は7/29(木)であったが、母親の「御通夜」であり、私的な都合
で延期してもらえた。翌週に出頭しようとしたが、検察庁の徴収担当がお盆休
みということで8/10(火)に延期された。担当者の休みによって、いとも簡単
に出頭日が左右されるシステムはいかがなものだろうか? 出頭ということは、
そんなに大したことではないんだなという印象を抱かざるをえない。

●説明がないから、納得できないから、払わないから……

東京地方検察庁の前で、他の職員とは違う、テンガロンハットにピンク色のシ
ャツ男は最初から警備にマークされた。持っているビデオとカメラの撮影を注
意されるが、その装備をしたまま入庁する。テープが回っているかどうかのチ
ェックは特にしないようだ。警備の人たちは何のためにいるんだろう?

「略式命令」というたった三枚の文書でしか、判決結果が知ることができない
のを不服に思い、アポイントを入れた記録課へ向かう。しかし、記録課では、
「この書類しかない」との一点ばり。なぜ、裁判官が判断した「起訴書類」や、
検察庁が判断した「総研書類」を見せてくれないのだろうか? 罪を犯してい
るのならば、その罪をキチンと説明する義務が彼等にはあるはずだ。

「略式起訴」というのが、そういう説明がないものならば完全に検察官の説明
不足である。「簡単に裁判が終わる」というのと、「裁判の内容が説明されな
い」というのでは意味がまったく違う。

日本の犯罪が減らない理由のひとつに、犯罪者に対し、罪を犯したことをキチ
ンと説明していないからであろうと思う。識者によると「交通違反程度に時間
をさいてられないくらいに裁判所は忙しい」というが、検察庁の一般職員の作
業風景は、一般企業と比較すると、非常におっとりしている印象を受けた。

また裁判するのに弁護士が読み込みに一か月も要するというのは、スローライ
フ時代を先取りしているとしか思えない。オウム事件の松本被告も死刑を求刑
されていても、上告しているので、被告人として東京拘置所でボクと同じ釜の
メシを食べることになるのだろうか?

「セグウェイに乗った人とオウム事件が同じ釜のメシでいいのか?」もタイト
ルとしては悪くはない。

せっかくなので検察庁の記録をコピーをもらい、一枚60円で180円を請求され
る。そして、金銭が扱えないので、印紙を買ってこいという。あとで印紙で貼
ればいいのにエレベーターを使って買いにいかされた。印紙売り場はまたのん
びりしていて、さんざん待たされる。領収書をお願いすると印鑑を見失ったら
しく発行できないという。絶句……、先が思いやられた。

記録課で答えがもらえなかったので、約束の13時に徴収担当の窓口に出頭する。
十分に先週休みをとった担当者が登場した。まず、ボクが「なぜ罰金を払わな
いのか?」からの質問となった。「納得がいかないから」と答えると、「裁判
とはそんなもの」の相容れない内容で、延々と徴収担当者とキャッチボールを
くりかえす。

「いつになったら払えるのか?」「日時の問題でなく納得のいく説明があれば
今すぐに払う」と現金50万円を見せる。現金があるのを知ると、いろいろとあ
の手この手で、払わせようとする。

「払わないと大変なことになりますよ…」と脅しまでが登場してきた。そして
最後には「払ってもらわないと私が仕事したことにならない」となんと泣きま
で入りだす。その言葉は役所では通じても、ベンチャー企業経営者にはまった
く通用しない。

「最後に、払わないという処分でいいですね?」と確認され、「一日5000円と
して100日間の労役となります」といわれる。ここで徹底的に3か月も戦うゆと
りがなかったので、一週間だけ戦うことにした。「93日分は納得したので、一
週間、拘置所に行きます」と伝えた。担当者にしては満額徴収しないと終わら
ない仕事のようだったが、実際にはこのような支払い方も出来てしまった。

「16:30にこちらから葛飾区の小菅(こすげ)の東京拘置所へバスがいくので
それまでこちらの部屋で待機してください」と最終宣告された。その瞬間から
ボクはスズキやブリと一緒で、一般人→被告人→納付義務者→受刑者と出世し
たようだ。

それから93日分の罰金を納め終わると、自由が拘束された。別室に通され、ト
イレも自販機も、バスが来るまでは徴収担当につきそってもらわないといけな
い。おもしろくなってきたゾ!(この職業はこんな時こそウキウキしてくるか
ら不思議だ)。その間もソーシャルネットワークサイトやblogには携帯で画像
をアップし続ける。

●シャバの最後の夕焼け……

バスの用意ができたらしく、いよいよ出頭となった。担当者が護送官をつれて
くる。なぜか「口のききかたを注意してくださいね」とニヤリと笑ったように
見えた。護送官が僕の手を差し出させ、右手から手錠をかけはじめる。最近の
手錠は、これ以上に締め付けないようにロックできる機能がついていた。実は、
ボクは手錠をかけられるのはこれで二度目になる。

一度目はアメリカのフリーウェーであまりにも運転がへたくそでジャンキーと
勘違いされてサンフランシスコで留置された時だ。あの時は二人の警察のうち、
一人はボクの手に手錠をかけ、もう一人は後ろで銃をかまえボクの頭を狙って
いたので、本当におしっこをちびりそうになった。しかし、尿検査で薬物反応
がなかったのですぐに釈放された。もし、おしっこをちびっていたら尿検査が
危なかったかもしれない。その時も30分くらい本物の犯罪者たちと同室で取り
調べだったので、度胸はそのときについている。

今回はそれから比べると落ち着いてられるものだが、初めての拘置所行きなの
で、ドキドキすることには間違いない。

そもそも、刑務所や拘置所を「行刑施設」といい、刑務所は受刑者を収容し処
遇を行う施設であり、「拘置所」は主として刑事裁判が確定していない未決拘
禁者を収容する施設だそうだ。留置場とは、被疑者を48時間留置し拘留請求が
あった場合に身柄を拘束するための施設だ。

罰金を払わないので受刑者となるが、労役が目的なので「東京拘置所」に行く
こととなったようだ。そのあたりの説明も詳しくなされないので、さらに納得
がいかない。しかし、これからさらに納得がいかないことが続く……。

愛機のGMTマスターIIの替わりに、ヒンヤリとした銀色に輝く手錠を腕に巻い
て、検察庁の裏階段を降りると、灰色のバンがとまっていた。「三列目の最後
部の真ん中にすわりなさい」といわれ、バンの中にはいると後部の奥にはアク
シブドットコムの宇佐美社長の人相を悪くしたようなヒゲの男がいた。ヒゲの
宇佐美さんは、凶悪犯人に見えた。

瞳はまだ若そうであったが、黒のスーツに白い開襟シャツはどうみてもその道
の人だ。そしてボクの横に護送官、そしてその前にまた護送官、その隣に笠智
衆を若くしたおじさんが乗り込む。最前列には女性刑事、そして男性刑事が運
転手だ。ルームミラーにうつる「ゴルゴ13」のような刑事の目が映画に出てく
るゴルゴよりも怖い。

この三人の受刑者を乗せて、夕暮れの地方検察庁から首都高速に乗り、拘置所
へ向かう。夕焼けがキラキラしていて、「シャバの最後の夕焼け」を黙ってみ
ていると何かこみあげてくるものがあった。

渋滞で一時間近くかかって……といってもこの時点から時計がないのと、沈黙
を要求されているので、非常にたいくつで長く感じた。一時間黙っているとい
うのはボクには最も苦行のひとつでもある(笑)。

日が落ちてから、高速を降りると、すぐに東京拘置所に到着したようだ。ゲー
トがゆっくりと開く。子供やおばさんがいる。たぶんこの拘置所勤務の人の社
宅があるようだ。しばらく進むと今度は5メートル近い塀が見えてきた。いよ
いよこれが拘置所だ。長い塀が続き、途中にシャッターがあった。車がその前
で止まり、しばらくすると、さきほどゲートをあけた係官が走ってきて、腰の
キーを差込みシャッターを上げる。ガラガラとシャッターが重い音を上げる。

埼玉の拘置所から最近、逃げ出した人がいたが、よくやったと思う。東京拘置
所では絶対に無理だろう。映画の「ジュラシックパーク」のゲートに入るよう
な厳重な警戒態勢である。その後、我々のライドしているジープは、ゆるやか
に建物のカーブに沿って降りてゆくと感じたほど。雰囲気は似ている。

無機質な堀の高い建物はまるで要塞のような構造になっていた。B1FかB2Fまで
降りた気がする。すると、またシャッターがあった。それは最後のシャッター
であった。そのシャッターが開くと、中からまるで仮面ライダーのショッカー
か007のスペクターの戦闘員のように刑務官がぞくぞくと湧いて出てきた。彼
らが護送のバンを取り囲むと、ヒゲ宇佐美、ボク、笠智衆の手錠の三人は、表
におろされ、名前を呼ばれてそこで手錠をはずされる。

拘置所の中に入れられると、薄暗い廊下を抜け、すると、これでもかというほ
ど蛍光灯で白く輝くホールに通された。まぶしいくらいに何もかも白い。あち
らこちらに白線がひかれている。その白線に進めといわれ、ヒゲ宇佐美の後に
ボクは続いた……。ボクは「時計じかけのオレンジ」のマルコムのような気分
でその白線の前で急停止した。

……つづく

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■電網悠語:Ridual開発記編(62)
叱る

三井英樹
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最近子育てについて再び考え始めている。電車の中での「事件」が発端だった。

その親子は、一目見たときから、何か違和感を感じた。昔はシルバーシートと
呼ばれていた端っこの一角に、母親二人と子供三人の恐らくは二家族が陣取っ
ていた。電車はガラガラの状態で、別にその時点では迷惑でもなんでもない。
少し声が大きいと感じる程度で、普通の親子連れだったけれど、ただ何となく、
離れていた方がいいな、と直感した。

電車が動き始めて、直感が当たった。子供が走行中の電車の中を行ったり来た
り走り出した。一両分丸々何度も何度も往復する。通る度に、まばらに座って
いる乗客が足をどける。幼稚園生の男の子。真っ直ぐにも走れない。本人に迷
惑をかけているのが分かる年齢ではない。

近くの老夫婦が見かねて、声をかけた。危ないから走らないで。口調も厳しく
ない、おばあちゃんが優しく孫に声をかける感じ。子供は少しシュンとして席
に戻る。途端に驚くべき反応が返って来た。「子供が走りたいんだから、いい
だろう!」と、お母さんらしい女性の怒鳴り声。周りの誰もがギョッとした。

走行中の電車の中を幼稚園生が走り回っているのを見て、注意しない方がおか
しい。声をかけなかった自分を私は少し恥じていたくらいだったが、そのお母
さんは、自分の子供の自由が一番大事だと叫んでいた。

あろうことか、「子供が喜んで走るのは、当たり前だろうが! バ~カ!」と
老婦人に向かって悪態をつく。30台半ばの女性が老婦人に、これほど直接的に
喧嘩を売っているのは初めて見た。目と耳を疑う。「バ~カ!」と、間をおい
て暫く叫び続ける。その声が人もまばらな電車の中に響いている。誰が馬鹿で
あるのか分かっていないのは本人だけだ。

その場のウケだけを至上とするテレビ番組を思い出す。相手の年齢も品格も関
係ない、ただこきおろす口調だけを楽しむ番組を何度か見たことがある。声が
大きいだけでその場を制圧しているような雰囲気もあった。その瞬間は面白い
と感じなくもないが、嫌な後味が残るものだった。言っている内容の正しさを
吟味する間もなく、ただウケさえすれば良い台詞。

叫び続ける母親のそばで、その友人らしい女性が少し苦笑しながら見ている。
さも自分達が正しく、ふざけたことを言う「老害」に制裁を加えているような
ニヒルな笑い。こちらには、制しないこと自体が不思議に映る。

誰がどう見ても老婦人の方が正論である。子供が倒れて怪我をした時、その母
親は律しなかったことを悔いないだろうか。すりむいた程度なら笑って済ませ
ることもできるだろうが、走行中の電車内である。本人は幼稚園生の筋力しか
ない。本人が望むことがベストではあり得ないし、自己責任を問える年齢でも
ない。その子は、まだまだ沢山の大人たちの助言や叱責の中で学ぶべき年齢だ。

子供が育っていくには、もはや一家族だけで踏ん張ってもどうしようもできな
いところまで来ている。何を薦めるにも禁じるにも、親の影響力は、子供の成
長と共に限りなく小さくなる。「いい子」を育てるには、皆で育てるしか手は
ないと思わされる。けれど、そんな意識が親側に育っていない。

まさに不適切な言葉を叫び続けるその母親を見ながら、その男の子が可哀想で
ならなかった。一見、子供を守っているかのように見えるけれど、全然その子
のためにはなっていない。あの子は、ああした言葉を聴きながら育っていく。

●大人も子どももモラルが低下

「子供本人が望むこと」という言葉が独り歩きしている。私が子供の時、私が
何を思うかが大切にされていたようには思わない。大人がどう育てるかがメイ
ンであり、子供であった私には大きな大きな障害ではあったが、何かしらのモ
ラルを共有しつつ育てられた感覚が存在した。

今は大人側のモラルも低くなっているが、子供に対する意識も変わってしまっ
た。自分のことなんだから、自分のベストは本人が知っている、それを尊重し
ようとする考え方。自分のことを自分が一番分かっていたら、今の社会の歪み
はこんなにも大きくなってはいない。

子供たちは明らかに叱られていない。叱られることに慣れていない。息子や娘
の友達が我家に来たり、電話をかけて来るたびに驚かされる。全然、大人と話
をするという意識が欠けている。最初から「タメグチ」なのから、挨拶をしな
いのから、我家に遊びに来て私と目が合っても姿勢も正さずソファーに寝そ
べっている者まで。電話でも、私が取って「ミツイデス」というと、「ヤマダ
タロウデス」と名乗るだけで、後は「よきにはからえ」と言わんばかりに待っ
ていたりする。大人に対応を考えさせる。歪んだ守られ方をしてきた結果だ。

子供とはいえ、厳しく接するには勇気が要る。自分の子供には怒鳴りつけられ
るが、その友人にそうできるようになったのは息子が小三あたりの時か。挨拶
しない子には、挨拶するまで目を睨みつけて「コンニチハ」と私から言う。電
話で名乗るしか能のない子には、「ミツイデスガ?」と繰り返す。息子を呼ん
で欲しいのなら、そう頼めと言葉に出さずに威圧する。正しく反応するまで繰
り返す。すっかり嫌なオヤジである。今ではキチンと嫌われて、私が近づくと
姿勢を正す。高校生になる前に煙たがられて良かった。

●仕事の現場では新人やエンジニアが……

おかしくなっているのは、子供たちや親だけでもない。新人たちとも話が合わ
ない。全然緊張感なく、新技術を学べるとタカをくくってやって来る新人達の
多いこと。ネットで数文字タイプして submit するだけで分かることを、教え
てくれとやってくる。教えてもらえて当たり前と信じている。私は新人です、
守られて当たり前です、と顔に書いてある。

私はできた新人ではなかったが、配属当時会議のたびに知らない言葉を、一生
懸命こっそりとメモしたものだ。会議が終わるたびに図書室で恥ずかしさを隠
しながら調べものをした。そして次回にもっと多くの宿題を抱えて図書室に向
かった。GoogleもYahoo!もボランティアの辞書作成者もいなかった時代だ。そ
れしかなかったし、それが少しずつ力になってくれた。

新人だけでもない。上級のエンジニアと呼ばれる人達とも感覚が合わない。ク
ライアントの前で、後ろから刺してくるように、ここの色を変えましょうよ、
補色って何だっけとか平気で口にする。こっちとあっちの配置を交換すればき
れいですよ。ここの透明度を下げましょうよ、かっこよくなりますよ。デザイ
ン書を生涯開いたこともない御仁がのたまっている。聞いていて、空いた口が
塞がらない。語る内容の一貫性のなさが、ド素人であることを露呈している。

クライアントの前でDB設計の話をしている時に、SQLって何ですかとか常識を
知らないことを明示したりはしないし、浅はかな知識でヤブヘビな事態を招く
ような言葉も可能な限り避けるのが常だ。しかし、エンジニアがデザインの領
域に踏み込んでくる時の姿勢は、多くが何の緊張感もない。驚くべきことを、
驚くべきタイミングでやってのけてくれる。

自分の知らないものに畏敬の念を覚えない者は、無防備でそのフィールドに入
ってきて、無神経な言葉を吐く。それがどんなに場違いなものかは、その道
に生きている者にしか見えない。本人は気が付けない。新参者が新しい何かを
手に入れるのは、周りの雰囲気を見て反省し学ぶか、叱責されてその身に刻み
つけるかしかないように思う。厳しい言葉もない、誰かが優しく教えてくれる
環境を望んでも駄目だ。そして、こういった話には、年齢は関係ない。相手が
幼稚園生だろうが、エンジニアだろうが、高級官僚だろうが、通る道は同じだ。

Web屋に求められる資質を問われると、「好奇心」という答えがよく返って来
る。広辞苑によると好奇心とは「未知の事柄に対する興味」とある。Web屋に
は、興味だけでなく姿勢も求められている。未知の事柄に対する姿勢。知らな
いことを知ることの喜びが、知っていることの多さを誇っている状態よりも大
きい事を知って行動できること。その意味では、知っていることがいかに少な
いかを知っているかが好奇心の強さを示すものと言っても良い。

そして、もちろん現実は違う。知っていることがいかに少ないかを知っている
者は、往々にして博学だ。よくそんなことを知っているなと感心する。何にで
も興味を示しアンテナを張って生きてきた結果が「実」となってそこにある。

好奇心旺盛な者達が集う場で、プロジェクトを進めると、そこは必然的に学び
舎になる。様々なアンテナが張り巡らされた場で、様々な視点と分析とが行き
かう。一つのプロジェクトが終わるとき、多くのメンバが必ず多くのそれまで
未知の知識を吸収している。その知ること自体を喜べる者たちばかりである。
活気に満ち溢れない訳がない。

大手のシステムインテグレータがWebデザイン誌で取上げられないのは、この
雰囲気の温度差が原因かもしれない。DBは知らないことがない、という高みの
立場から進めるプロジェクトと、人間って面白いよねと小さなことにも感動し
て学び進むプロジェクト。そもそも向いている方向が異なっている。でも、こ
れから必要とされるWebプロジェクトは両面を兼ね備えたものだ。それがユー
ザビリティの先にあるものだと読んでいる。

●答えは「教育」にある

子供の躾から、新人やエンジニアに至るまで、すべての原因を「過保護」のよ
うな言葉に押し付けたくはないし、原因探しにも実はあまり関心はない。今ど
うすれば良いかに興味がある。どうすれば、好奇心が増幅できるのか。対象は、
自分を含めたできる限り多くの人達。答えは「教育」にあるはずだ。

子供が「やりたい事だけ」や「やれる事だけ」をやらせるのではない。子供が
「吸収できそうな事柄」もやらせてみるのを教育と呼ぶ気がしている。そして、
その方法は甘い道だけじゃない。叱ったり嫌われたりする道も通る。そして、
その教えるという行為自体も、親から子への一方向ではない。双方向に互いに
学びあう。登場人物と学ぶべき対象によって、その場を「家庭」と呼んだり、
「職場」と呼んだりする。

子供に色々と教えつつ、自分の無知さも自覚する。息子に何かを教えながら、
横で広辞苑を引いたりする。父親が調べ物をするのを、息子は興味深く見つめ
る。職場でも、知らない言葉メモは実は今でも続けている。知らないことに出
会わない日がない。何かを教える立場に立つことも増えたけれど、それは自分
が知りたいから。矛盾めいているけれど、一番効率の良い学習方法は教えるこ
とだから(by ワインバーグ)。

学校でも優等生で来たわけでもない、勉強が好きなタイプでもない。そんな私
が41歳になっても、知る喜びが膨らんでいる。新しい考え方に出会えるプロ
ジェクトでは声を弾ませて、疲れも忘れて議論している。Webという「機会」
が与えられていることに心から感謝している。

電車の中で注意した人を攻撃する親に守られた、あの男の子は、いつ電車の中
で走らないべきだと知るのだろう。その日が大怪我をする前に来て欲しいと願
うし、それまでに変な守られ方をしたおかげで知れなかった事柄ができるだけ
少なくあることを祈る。叱られることが、学ぶチャンスであることに、いつか
気付くだろうか。

【みつい・ひでき】 h-mitsui@nri.co.jp / ridual@nri.co.jp
中一の息子の靴のサイズは、27.5cm。すでに私より1cm大きい。背丈はあと10
センチで抜かされる。威圧が効くのはあと少しの間だけだ。

・Ridual(XMLベースのWebサイト構築ツール)公式サイト
 http://www.ridual.jp/
・超個人的育児サイト(書籍は絶版中)
 http://homepage3.nifty.com/mitmix/MilkAge/
 

<応募受付中のプレゼント>
 デジタル一眼レフ 実践ガイドブック #1584号(9/1締切)
 デジタル一眼レフ 実践ガイドブック 姉妹誌「写真を楽しむ生活」#444号
 (9/1締切)

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■編集後記(8/30)
・神田さん、またやってくれましたね……。最初の日の続きは今週中に掲載で
きるでしょう。
・初めてヤフーオークションに参加した。ここまで至るには長い道のりが必要
だった。まず「ヤフオクで儲ける100のルール」なる本を買って読んだが、ペ
ーパードライバーのわたしはよく分からない。その次は「Yahoo!オークション
で儲ける!4年で5000万を稼いだ男が語るヤフオクのすべて」なる本を読む。
これは同人誌を転売して大もうけした人のサクセスストーリー(?)で、ほと
んど役に立たなかった。で、しばらく放置していたが、引っ越して半年以上経
過したにもかかわらず、家の中の段ボールが一向に減らないと妻が怒り出した
ので、本気で雑誌や書籍、コミックの処分をしなければならなくなった。また、
参考書を買う。懲りない人である。朝日新聞社の「ネットオークション」電話
サポート付き500円というやつ。これに従い、いろいろな手続きを済ませる。
けっこう時間がかかった。そして、先週末にトップバッターとして30年も前の
ノンフィクションシリーズ書籍24冊を一挙に出品した。日曜日の23時頃が締切
だったが、15時ごろはまだ1件も入札がなく、こりゃ流れるかなと思っていた。
終了時間まで起きているわけはなく、結果は今朝ヤフオクから来たメールで確
認した。最高の値をつけたのが1900円、みんなこれくらい行けば大喜びだがそ
うはいかない。期待の半分くらいだった。これからは、毎週50冊以上投入しな
いと、年内に段ボールがなくならない計算である。それでも無理かも。撮影や
ら解説書きやら、忙しくなる。まあ、それは面白い作業ではある。 (柴田)

・「Virtual Beauty Expo 2004 Osaka」が終わった。来場してくださった方々、
ありがとうございました。iMedio川合さんの「メイキングが見たい」に唸る。
あの美少女達がどう作られるのか、どんなソフトを使っているのかを見せられ
たら、また違った印象になったかもしれない。あの美少女達の肌の下は、ワイ
ヤーフレームやポリゴン。よくあんなめんどくさくて難しい工程をと感動する。
そして苦労話や出展者達の受賞歴や著書などプロフィールをつけられたら、CG
に興味のない人をひきつけられたのではないか。解説のコーナーがあったら興
味深いものになったかも。動画が欲しいと出展者のひとりに話したら「動画を
作るようになったら趣味の域じゃなくなりますね。費用や手間はかかってしま
うし、出展者の中には実際に仕事として動画をやっている人もいるから、時間
を割くのは難しいでしょうし」とのこと。「CGを見る土壌は、まだ育ってない
ですね。漫画的なキャラクターは一般の人に受け入れられないし、リアルキャ
ラクターは写真と比べられてしまうし。」いま当たり前になった「デジタルで
クリエイト」ってのも、受け入れられるまでに時間かかったもんねぇ。DTPな
んて悪って感じだったし。「リアルの場合は、できあがったものをスタイリッ
シュに見せるためデザイナーとコラボできたらと思いますし、動画の場合は、
動画のできる人とコラボしたいと思いますね。でもそうなるとやっぱり個人の
趣味の域じゃなくなってくる。今回もっと大きく出力したいと思った人もいた
でしょうが、大きく出力しようとしたら出力費がね……。関西じゃCGを勉強し
てもあまりニーズがなくて仕事に結びつかないから作り手は少ないし、勉強会
もないし。」そう言いつつ、皆さん情熱をかけて今日も美少女を作り続けてい
るのであった。                     (hammer.mule)

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
リニューアル  8月サンタ
アシスト    鴨田麻衣子

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