Otaku ワールドへようこそ![2]ネオロマンサーの饗宴 声優コンサート「遥か祭」に行く/GrowHair

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人はそこを聖地と呼ぶ。

5,000席の会場を埋め尽す乙女たち。その多くは平安時代の貴族文化をモチーフにした絢爛なる衣装に身をつつむ。颯爽と舞台に登場する殿方を熱く迎え、無上の喜びの色を現す。耳をつんざくばかりの黄色い歓声をもって。

去る3月12、13日、声優コンサート「遥か祭」が横浜で催された。乙女系恋愛シミュレーションゲーム「遥かなる時空(とき)の中で」のキャラクタを演じる声優たちによる、歌と語りのステージである。圧巻は、ヒノエを演じる高橋直純氏の投げキッス。会場内は揺れんばかりの大興奮が駆け巡った。後で聞くと「ときめいて鼻血寸前でした」と言う乙女も。


●乙女系恋愛シミュレーションゲーム

「遥かなる時空の中で」(以下「遥か」と略す)は女性をターゲットにしたコンピュータゲームである。去年の12月に第3作が発売された。カテゴリーとしては乙女系恋愛シミュレーションに属する。特にコーエーが世に送り出した「アンジェリーク」、「金色のコルダ」、および本作はネオロマンス系と称される。

遥かの第1作では、高校生の女の子、元宮あかねが主人公。一陣の疾風により古井戸に引き込まれ、行き着いた先は平安時代に似た異世界「京」。京は荒れており、アクラム率いる鬼の一族によって滅ぼされんとしている。

戦うのは八葉と呼ばれる8人のいい男。侍、鍛冶師見習、治部少丞(文官)、僧侶(法親王)、左近衛府少将(武官)、陰陽師、それと現代から一緒に引っ張り込まれた二人。それぞれに味わいの異なったカッコよさがある。

しかし八葉だけでは力不足で、敵をやっつけてもやっつけても復活してきてしまう。あかねは特別の力をもった龍神の神子として京に召喚されてきたのだ。八葉それぞれの性格に応じて適切な応援をすることにより、パワーアップさせることができ、妖怪変化にとどめを刺せるようになる。京を救った暁には、八葉のうちの一人を現代に連れて帰ることができる。

●女も萌える

キャラクタに萌えるのは男性ばかりかと思えば、さにあらず。女だって萌えるのさ。でも、その萌え方にはちょっと違うところがあるんだな。

男の人って、現実にものごとが思い通りにいかないと、空想で補おうとすることがよくあるみたい。絶対的権力を振るってみたり、イケメンのモテ男君になってみたり。もともとがそうだから、ゲームでも、特殊な戦闘能力を買われて秘密国家機関に抜擢されたり、12人の妹が慕ってきたりというありえない設定をすんなりと受け入れて、感情移入できちゃうらしい。単純なのね。

女はそうはいかない。特殊な能力なんて授かっても嬉しくないの。現実の自分のありのままの姿を見て、すべてを愛してくれる人がひとりいればよいのだ。

八葉が私にやさしくしてくれたり、私にだけ心を打ち明けてくれたりするのは嬉しいんだけど、でも、本当の私を見てくれていないのが分かってしまう。龍神の神子の力があるからなんでしょ。平凡な女の子だったら見向きもしてくれないんでしょ。それを思うと悲しい。

でも、アクラムは違う。「自分が一番優れているから、愚かな人間どもを支配する資格がある」なんてちょっと尊大で冷徹に見えるけど、本当はそうじゃない。もともと西の大陸から来たんだけど、遣唐使が廃止されたおかげで帰れなくなってしまった異国の人なのだ。外見や言葉の違いから迫害されて山に逃れ、夜盗で食いつなぐ以外になかったのだ。

アクラムの言うとおりだ。愚かで冷徹なのは京の人間たちなんだ。アクラムは私の心に通じるものがある。白い仮面を取ったときの、目が純粋だった。ああ、アクラム様。

……というわけで、ファンからの熱い要望に応えて、遥か2では主人公高倉花梨がアクラムとくっつく結末が用意されたのでした。やったぁ♪

人類の存亡なんて、どうでもいいの。あ、もちろんこれは鬼萌え~の私的な思いであって、一般的には八葉みんな、人気ありますです、ハイ。

●ネオロマンサーの層の厚さと思いの熱さ

コーエー主催のネオロマ系のイベントは年に5回ほど催される。今回の遥か祭横浜公演も、いつものように土日それぞれ昼の部と夜の部の2回行われた。いつもと違うのは、テーマが遥かに絞られたこと。それで来場者が減るかと思いきや、逆だった。5,000席×4回のチケットが前売りで完売、当日券が出なかった。

値段のことを言うのは野暮かもしれないが、ちなみに、ということで、SS席7,800 円、S席 5,800 円、AA席 4,800 円、A席 3,800 円。決して安くはないのに完売しちゃうところに、ネオロマンサーの層の厚さと思いの熱さが感じられる。ヤフオク(Yahoo! オークション)では、ものすごい値段になっていた。

地方から飛行機や新幹線や夜行バスで来る人たちもいる。4公演を全部見る人たちもいる。この遥か人気は、10月からテレビアニメ版が放送されているのと、12月に出た遥か3の出来がすばらしかったからだと思う。実際、遥か3で泣いたという声を、あっちからもこっちからも聞く。

●すばらしかった公演

さて、前置きが長くなったが、ステージの盛り上がりぶりをレポートしたい。4公演とも、全体の構成は大体同じである。オープニングはまずノリのいい歌から。特に2日目には「うしろ向きじれっ隊」の登場となった。遥か2の村上源氏の貴族「源泉水(みなもとのもとみ)」、僧兵見習「イサト」、東宮「彰紋(あきふみ)」の声をそれぞれ演ずる保志総一郎さん、高橋直純さん、宮田幸季さんのトリオである。昨年12月に結成された。前もってお触れが出ていたわけではないのに、白いハンカチをちゃーんと用意してきた人、多数。じれっ隊のフリには欠かせないアイテムなのである。右手に持って、スナップを利かせて、振るっ、振るっ、振るっ。

続いてライブドラマ。これはもう思いっきり笑って下さい、というノリ。衣装は地味だし、動きもあまりないが、声優さんらしく、あくまでも声で演じる。内容は夢オチだったりベタな駄洒落オチだったりして他愛のないものだが、アドリブをふんだんに交えてとぼけた味を出しているあたりがウケて、会場は爆笑の渦。上手いんだ。

何公演も見る人たちにとっては重複するものもあるが、そこはそれ、来るぞ、来るぞ、と待ち構えていた笑い所がやはりキターという可笑しさがあり、笑えるのである。藤姫役の大谷育江さんの可愛さも大ウケで、会場内から「藤姫、可愛い~~っ」との声援が飛ぶ。

そして、愛の告白。遥か3のキャラが次々と登場し、それぞれの持ち味たっぷりに、主人公「春日望美」(つまりは客席ね)に愛のメッセージを送る。有川将臣、源九郎義経、武蔵坊弁慶、ヒノエ、リズヴァーン、少年白龍。これはたまらん。黄色い声援が飛び交う。「弁慶の名台詞『いけない人ですね』にズキューンと撃たれ、ヒノエのセクシーヴォイスにもやられ、リズの声にもやられて、チビ白龍の可愛さに胸キュンになり、とにかく心臓バクバクで苦しかったですよー」との感想あり。

エンディングの歌は「遼遠の旅路を行け(りょうえんのみちをゆけ)」。二日目は八葉が全員揃っているところが、とてつもなく豪華。会場の盛り上がりもひとしおだった。締めは、各出演者が感想を述べ合うエンディングトークだが、二日目の夜の部では、高橋さんが感極まって涙。全公演を終えて、みんなのノリとか一体感とか、やりとげたとか、そんな感情がぶわっと湧き上がって思わず、……という感じ。つられて貰い泣きする人続出! 舞台上でも川上さんが貰い泣き。

感動感動、で終わるかと思いきや、保志さんが天然パワーで笑いを誘い、宮田さんがこれまたウソ泣きなんてーのを披露して笑いを誘い、なんだかんだで大盛り上がりのうちに終わった。

●蛇足……

興醒めなことは言いたくないんだけど、このコラムが元で万が一にもネオロマンサーたちにご迷惑が及んではいけないと思い、一言。どれどれ、と見にきて下さるのは結構なんですが、マナーだけはぜひ守っていただきたいのです。たま~にいるんですよ、物も言わずにすぅ~っと近づいてきて、パシャッと撮ったらこそこそっと立ち去っていく人。(控えめに言っても)感じ悪いです。ひと言「撮らせていただけますか?」と声を掛けていただければ、たいていOKしてくれます。名刺など渡していただければ、もうジェントルマン級です。よろしくお願いします。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
アイデンティティー拡散サラリーマン、42歳。しかし、乙女心を代弁するのは少々無理があったか。キモかったらすみません。ひとつ白状しちゃうと、当日券のあてが外れて、ステージを見逃した。いつも撮らせてもらっているT.K.さんにお願いして書いてもらったレポートを要約して切り抜け。この場でお礼。このネタ、情報のセグメンテーション化の実例としても、成り行きまかせの人生が天の思し召しで聖地に導かれていく実例としても、とっておきのネタだったわけで。さあ、次回から書くことないぞ。
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