[1758] デザインと戦略

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1758    2005/05/31.Tue.14:00発行
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           <盛者必衰の理というべきか>          

■電網悠語:Ridual開発記編(96)
 デザインと戦略
 三井英樹

■買い物の王子さま 
 驚きをおすそわけ
 石原 強

■デジタルサウンズ研究室 
 小学校運動会に見る子供社会の音楽享受
 モモヨ(リザード)
 


■電網悠語:Ridual開発記編(96) 
デザインと戦略

三井英樹
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●2001年のインタビュー

「デザイン」に何ができるのかを考える際に、忘れられない言葉がある。日経
BP Strategic Web Design Vol.1で、NTTデータ広報部の井上博之氏が2001年3
月の自社サイトリニューアル時のインターヴューで答えた言葉:

「コンシューマをターゲットにしない同社のような企業が、ビジュアルデ
ザインにこだわったのは何故か。『新卒者のリクルーティングや個人株主
への関心の訴求など、一般の人々に対する関わりも決して避けて通れな
い』(井上氏)なかで『デザインを核としたウェブ戦略により、企業の知
名度とイメージの向上につなげようと考えた』からだ」

「将来像について、井上氏は『機能面を追い続けて陳腐化しやすいサイト
よりも、デザインで最先端を行くサイトを作り続けたい』と語る。そこに
は、『ウェブサイトのデザインやイメージを、テレビコマーシャルやポス
ターなど他のメディアにも展開していく』という次のステージの構想も見
えていた。」

当時、企業サイトの目的は、まだまだ企業側からの情報発信の窓口や、Webサ
イトを持っていなければ恥ずかしいから、という積極的ではないものが大部分
だったと記憶している。しかし、この広報担当者は、もっと違う次元で目的を
持ち、そのために「デザイン」を用いた。

このサイトの特徴は、その当時にFlashにできることを集約したようなサイト
だった。未来的な画像が軽快に動き、画面上にマウスを動かすだけで、少し未
来に行ったような気にさせる作り。最新情報などのテキスト情報は、少なくと
もXMLで管理していて、メンテナンスも容易なのが一目で想像できた。

このインタヴューで語られている言葉の私にとっての要点は、二つ。先ずは、
情報を作り手側からの視点ではなく、受け手がどのように受け取るかを主体に
考えること。そして、エンジニアリング(プログラミング)とデザインという
二つの武器を表裏一体のように活用すること。

●Webサイトは時間とも戦う

企業の「現状」の情報提示を、人はどう受け取り、記憶するのか。テキスト情
報としては同じでも、「演出」一つで重みは変化する。他より重く印象付けら
れた情報は、その受け手の行動に影響を及ぼすだろう。そこが計算されている。

このリニューアルの「効果」を「数字」で示すことは、私にはできないが、予
想として言えることは、一番敏感に反応したのは学生だろう。将来に夢を描く
学生の心を捉え、「訪れるべき企業サイト」として上位に位置付けられていた
ことは想像に難くない。

企業の「現状」の情報提示をする方法に一工夫することで、「将来」を担う人
材を集められたとしたら、このサイトの開発費はその「投資」としては非常に
効率的なものと言えるだろう。このサイトはその後最低でも二回リニューアル
をしている(二年毎のサイクルか?)が、毎回心憎い演出と情報鮮度や演出鮮
度の保ち方が見事だ。

表裏一体の方も、唸らされた。「陳腐化」という言葉が、Webサイトが時間と
も戦っていることを如実に示している。Webサイトはオープンと同時に、様々
な波に飲まれていく。単純な時間経過、見慣れていくことによる情報劣化、見
慣れていくことによる学習効果、時代のトレンドとのズレ、類似デザインサイ
トの出現。

一度良いものをオープンすれば済んでしまうのではない。サイトのオープンは
次のリニューアルの入り口でしかない。そうしたことの対策を考慮しつつ、最
先端を進んでいくのだという覚悟が言葉に表れている。

●日産の「SHIFT_interior」

そうした継続される「戦い」を、デザインを用いて挑戦していると感じさせる
キャンペーンがある。日産の「SHIFT_interior」。
http://www2.nissan.co.jp/EVENT/INTERIOR/shift.html

元々、日産はデザインを統括する常務を擁し、デザインとブランドの関係につ
いて、多くのメッセージを発信しているデザイン先進企業でもある。
http://www.nissan-global.com/JP/DESIGN/MESSAGE/NAKAMURA/

「インテリア」をキーワードに展開されているこのキャンペーンは、その名の
通り、車のエンジンに手をかけていない。既存のラインナップに、特注の内装
を施して、車好きの層の心を掴もうとしている。高品質な内装を見ているだけ
で、そろそろ次の車検を意識している私の心は揺れてきている。

エンジン設計部隊を温存し、デザイン設計部隊を活用し、そして工場生産部隊
をフル活用。デザインをエンジニアリングの化粧直しのように考えている人達
からは、決して生まれない発想だと思う。

デザインとエンジニアリングを、表裏一体、あるいは正に車の両輪のように活
用することで、ブランドを高め、常に市場にアピールし続ける体制が存在する。

前出の井上氏の台詞を少し変えてみよう。「機能面を追い続けて陳腐化しやす
い『車』よりも、デザインで最先端を行く『車』を作り続けたい」。日産の経
営陣がこのように考えているかどうかは分からないが、そうであっても不思議
ではない(もっと深いのでしょうが)。

●二元論が崩れる日

デザインが貢献できること。Webサイトで言えば、「使い易さ」。これが徐々
に大きな付加価値と認識されつつある。まだまだ大勢は、お化粧直しや見栄え
のアクセント位にしか思っていない。でも冷静に見渡せば、戦略的なWebサイ
トはやっぱり増えている。

システムにデザインを活用しないことは、野球を投手力だけで勝とうとするの
に似ている。相手打者を封じ込めれば、負けはしない。しかし、それだけの投
手を維持するのは非常に大変なことだ。投・打・守の三つが有効に絡み合って
こそ、チームとして安定した強さを持てる。

デザインが経営戦略と結びついた結果、大きな価値や力が生み出される例が増
えてきた。理系と文系という二元論が崩れていったように、デザイナとエンジ
ニアという二元論が崩れる日も近いのかもしれない。

デザインの価値が徐々に浸透し始める時代、無意味なイサカイの横を、デザイ
ナもエンジニアもマネージャもツールの分野でも、一部の先駆者が「お先に」
と先に進んでいる。そう、未来を見据えて、正に戦略的に。

【みつい・ひでき】 h-mitsui@nri.co.jp / ridual@nri.co.jp
ネスケ8、やはり心が騒ぐ。この世界に導いてくれた恩は忘れない。頑張れ!
・販売窓口(ベクター)
<http://shop.vector.co.jp/service/catalogue/sr042976/>
・Ridual(XMLベースのWebサイト構築ツール)公式サイト
<http://www.ridual.jp/>
・超個人的育児サイト(書籍は絶版中)
<http://homepage3.nifty.com/mitmix/MilkAge/>

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■買い物の王子さま(86) 
驚きをおすそわけ

石原 強
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土曜日の午前中、玄関のチャイムで目覚めました。宅配便が届いたようです。
寝ぼけ眼で荷物を受け取ると、箱には「しらす」と書いてある。送り主は大学
時代からの親しい友人。ネットショッピングの話をしていた時、お気に入りの
「お取り寄せ」があると話していたのを思い出しました。

箱を開けるとシラスが山盛り。「釜上げしらす」「天日干しちりめん」「ちり
めんじゃこ」の3点セットです。ちりめんじゃこは淡いグリーンの「山椒の実」
付き。同封のレシピを参考に、京都名物の「ちりめん山椒」が作れるようにな
っています。

シラスはスーパーで見るものより一匹一匹の身が大きく、淡くピンクがかった
白さが見るからにおいしそう。早速「釜揚げしらす」を一つまみ食べてみる。
ふっくらと柔らかい食感と、塩味なのに甘みすらを感じる繊細な味わいに驚き
ました。今まで食べていたシラスとは全くの別物です。

その日の夕飯は、当然シラス尽くしです。「釜上げしらす」はそのままで酒の
肴に。「天日干しちりめん」は冷や奴にのせて熱いごま油と醤油をたらした
「じゃこ豆腐」に。しめは「青じそ&じゃこチャーハン」で満腹。

お店の名前を検索エンジンに入れて、早速アクセスしてみました。和歌山県の
シラス屋さんのサイトです。扱っているのは「しらす」と少し大きめの「かえ
り」。とれたてのイワシの稚魚を釜で炊いて、天日に干した素朴なもの。

「しらすのできるまで」のコーナーには、製造工程ごとに写真とコメントで解
説されています。昔ながらの製造方法へのこだわりと、丁寧な仕事振りが感じ
られます。

---
しらすのなかむらは、「とれたその日のもの」、「地元の海でとれたもの」、
「昔ながらの製法で作り上げたもの」だけをお売りするということを目的に始
めたオンライン・ショップです。オープンして2年、その難しさと直面して参
りました。
---

中でも「釜上げしらす」は、その日に捕れたシラスをその日に発送して翌日に
届くということ。そのかわり、発送できるのは漁のある日のみ。トップページ
にある「しらすカレンダー」では、今月の漁の予定がわかります。

シラス漁の最盛期は5月で、この時期の美味しさは格別とのこと。ならばこの
美味しさを他の人にもおすすめしたいと、魚好きの両親に「おたのしみセット」
を送ることにしました。

商品の発送は、その日の漁の出来次第なので、注文は「予約」というスタイル
です。食べたらきっと驚くぞと、考えるのも「お楽しみ」のうちかもしれませ
ん。

しらすを買ったお店「しらすのなかむら」
<http://www.しらすのなかむら.com/>
<http://www.xn--u8jxag2eta4iocf.com/>

【いしはら・つよし】info@webanalyst.jp
ウェブプロデューサー、ウェブアナリスト
なんだか変なドメインだなと思ったら、日本語.comドメインでした。「ひらが
な」ということもあって、シラス屋さんの雰囲気にあっている気がします。
・ウェブアナ
 http://www.webanalyst.jp/mt/

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■デジタルサウンズ研究室 
小学校運動会に見る子供社会の音楽享受

モモヨ(リザード)
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土曜日に子供達の運動会があった。今年は、どういうわけか、写真をとりため
る広報委員なんてものを仰せつかったので、デジカメのメモリーを整理しなが
ら、あれこれ考えている。

毎年のことだが、運動会は、このところの音楽情況、つうか子供達がどういう
音楽を好んでいるのかを知らしてくれる。歌番組をあまり見ない私にはそこが
楽しい。

去年まではモーニング娘系の曲がプログラムのどこかに入っていた。上級生の
話では、この学校では小学校一年生のダンスは必ずモーニング娘の曲を踊るの
です、ということだ。まさしく都市伝説めいたことをまことしやかに話してく
れる。こういう会話ができるのも、運動会の楽しみの一つである。

小学生である彼らにとって、一年はながい。そうした感受性のもとでは、モー
ニング娘はすでに古典的、イスタブリッシュなものとなってしまっているので
ある。

考えてみれば、ミニモニなどキャラを再構成して、戦略ターゲットを小学生低
学年とした時点で、プロダクションなどの制作側は、それが成功した分だけ、
エントロピーが増大し、いつか、それが「古い」ものとして斬り捨てられるこ
とは、了解していたはずである。

学習雑誌では、多くの場合、アニメやスーパーヒーローもののキャラがメイン
となっているわけだが、そうした仲間にまじってミニモニやモーニング娘は活
躍していたわけである。スーパーヒーローの場合、一年だったり、半年だった
りで、いろいろと子供達の興味を維持するために変貌を繰り返す。しかし、モ
ーニング娘の場合、本来は生身の人間である。誰かが、ヤグチとかのお面をか
ぶったり着ぐるみを着ているわけではないので、毎年、パワーアップした武器
を装着できるわけがない。

そういう点で言えば、人間は不便である。柴田編集長が専門としておられるバ
ーチャルビューティーなら、毎年、なんらかの変容、修飾を改めて登場するこ
とは容易いが、これはこれで大変な手間がかかるのであろう。

運動会が終わってから、うちの子供達は、ファイナルファンタジーXとX2を引
っ張り出してきて遊んでいるが、ユウナだってティーダだって、その後を継ぐ
者に恵まれていない。だいぶ、前にアナウンスされたのだが、ニューヒーロー、
ヒロインは、ショートムービーだけが公開されている。そう簡単に代替わりは
出来ないようである。

毎年、装いを新たにして登場する東映のスーパーヒーローだが、こうしたシリ
ーズの運用には、人知れぬ苦労やノウハウの蓄積があるのだろう。伝統という
一言では言い表せぬものが、そこにはありそうだ。無常を重ねることで常住
となす、というのは尋常ならぬことである、などとつい大げさな物思いに飛翔
してしまうが、それほどのものでないのは言うまでもない。

そうそう、先の運動会だが、モーニング娘の代りに、今年初めて採用されたの
は、大塚愛である。盛者必衰の理というべきか。

モモヨ(リザード) 管原保雄
<http://www.babylonic.com/>


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■編集後記(5/31)
・近所に「つるかめランド」という名の大衆浴場ならぬ、食品専門のスーパー
マーケットが誕生した。スーパーやホームセンターのチラシを見るのが好きな
わたしである。実際に出動もする。昨日は小雨の中、洗剤とカルピスを買いに
行かされた。で、つるかめだが、ここのチラシはなかなか情報が多くて楽しい。
食品の原産地が表記してあるのだ。甘塩筋子はアラスカ、子持ちカレイもアラ
スカ、ボイルずわいがにはロシア、サーモン切り身はチリ、牛バラ肉鉄板焼き
用はオーストラリア、刺身用有頭甘エビはグリーンランド、まあこのへんは予
想できる。若鶏もも肉はブラジル、南瓜はメキシコ、ちょっと意外。鉢鮪赤身
は大西洋産、なんじゃこれは。そして、意外や意外なのが、特大真鯵開き99円
はなんとオランダ産だ。鯵の開きとオランダはにわかに結びつかない。そのう
ち現物を見に行こうと思う。歳とったら、魚の干物がうまい海のそばの町で、
山からわき出るうまい水が飲めるようなところで暮らしたいと夢みていたが、
どうやら終の棲家は荒川沿いで、水はまずくて、うまい特産品はなにもない、
とりたてて特徴もない町になりそうだ。でも、最近知ってうれしかったのは、
水道料金が埼玉県南部で一番安く、なんと20年住んでいた浦和の半額だったと
いうこと。井戸も使っているようなので、そんなにまずい水ではないかもしれ
ないがマンションの貯水槽経由の水は飲めたもんじゃない。安いんだからいい
けど。今日はつるかめのチラシが入っているかな?        (柴田)

・大阪は好きだけど、大阪を綺麗だと思ったことはなくて、どうして市は美化
につとめないでハコモノばかり作るんだろうと思っていたら、市役所職員の70
%以上が市外の人と知り納得した。住んでいる人のための整備ってあんまりな
いもの。交通局庁舎として立派な建物ができたけれど、改札から地上まではエ
スカレーターすらなく、車椅子の人が困っている駅だってある。車道は整備さ
れているけれど、歩道はでこぼこでママチャリでも走れないところがある一方、
毎年掘り起こされては埋められるところがある。緑が少なく、街灯のない場所
だってある。図書館だって人口のわりに少ないと思うし、その他の文化的な施
設も少ないと思う。企業主導の劇場はバブルがはじけてつぶれていく一方だか
ら、市に期待していたけれど厳しそうだ。京都や奈良が古都で、神戸は外国の
香り。大阪は商人の街だけど、文化的な香りがしないとつまんなくなると思う。
やっと景気が回復してきたけれど、いったんひっこめた文化事業をすぐに再開
する企業は少ないだろう。最近の大阪市役所関連のニュースには頭が痛いけれ
ど、表に出るだけいいんじゃないかな。大阪市問題を扱った番組には職員から
のメールが届くから、良心的な人だっているんだなと。なので良くなることを
期待している。/とは書きつつ、次に住むなら市外がいいなぁと考えているの
だが。                         (hammer.mule)

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
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