Otaku ワールドへようこそ![7]手には銃、心は童心: サバゲに入門/GrowHair

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ポスン、ポスン、ポスン、と銃をぶっ放してきた。直径6mmのプラスチックの弾を空気の力で打ち出すトイガン(おもちゃの拳銃)である。

敵味方に分かれてフィールドを動き回り、敵を見つけたら銃撃戦を交わすサバイバルゲーム、通称サバゲ。人から誘われたのをきっかけに、6月中旬の週末、試しにと行ってみた。まるで実地に戦闘に赴いたような緊張感と恐怖感があり、いつの間にか真剣になっている自分がいた。

生まれてこの方40年以上、サバゲとはまったく接点のない暮らしをしてきたが、つい最近になって、ひょんなところでつながりができた。4月のある日、仕事帰りに居酒屋で飲んでいて、サバゲのチームとたまたま隣り合わせ、たちまち意気投合。チームリーダーがサバゲを熱く語るのを聞いて面白そうだと思い、ちょうど6月に初心者と女性を対象にした講習会があるというので、行ってみる気になったのである。そういう面白い出会いのある居酒屋とは、他でもない、秋葉原にあってメイドさんのいるお店である。濃ゆい人たちが集まるのだ。


●秋葉原でハシゴ

4月22日(金)、腹心の部下である雨続(あめつぐ)君と一緒に仕事で外出だった。仕事もさることながら、オタ知識でもいつも頼りにしている。が、彼は秋葉原にはずっと昔に一度行ったきりだとういう。外出や人ごみが嫌いなのだ。オタクらしいと言えるが、秋葉原はメッカなので一度は巡礼を経験しておかなくてはいけない。「いいから来い」と引っ張っていった。

閉店間際の「アニメイト」を足早に回り、「がしゃぽん会館」、コスチュームのお店「コスパ」を経て、メイド喫茶 "Cure Maid Cafe" へ。紅茶をいただく。

続いて、メイド居酒屋「ひよこ家」へ。ここで一杯飲みつつ、晩飯。カウンター席だった。我々の左側に2人、右後ろのテーブル席に4人というグループがいた。挟み撃ちに合って何となく言葉を交わすようになり、気がついてみるとひとつのグループにまとまっていた。

彼らはサバゲのチームだった。アメフラシ氏率いる「ジャコランタン」。雨続君は趣味でライトノベルのようなものを書き、ホームページに載せている。その中で、サバゲを題材に扱ったこともあるといい、アメフラシ氏とすっかり話が合っていた。拳銃の名前だか何だか、私のとんとあずかり知らぬ専門用語が飛び交っていた。

では、もう一軒、メイドさんのいるお店に行きましょう、ということになり、8人でメイドバー "JAM" へ。真夜中近くまで飲んで、盛り上がっていた。

●サバゲとは

サバイバルゲームとは、おもちゃの銃を持って定められたフィールド内を動き回り、撃ち合いをするゲームである。語弊があるかもしれないが、端的に言って戦争ごっこである。

フィールドにはアウトドアとインドアがある。アウトドアは原野山林である。インドアは、木造で簡易的に作られた市街地である。道は迷路のように曲がりくねり、駅があったりバーがあったり民家があったりする。

2チームに分かれて勝敗を競うのが基本的な形。バリエーションとして、3チームに分かれる「三つ巴戦」や、自分以外は全員敵として、ひとりだけが勝ち残るまで続ける「バトルロワイヤル」という形態もある。

基本的には、被弾した者がゲームから抜けていく。撃ったのが敵でも味方でも自分でも、また、物に当たって反射してきた弾でも、装備に当たったり服にかすったりしただけでも、被弾は被弾。自己申告制なので、被弾した者は大きな声で「ヒット」と宣言し、速やかにフィールド外に出る。

勝敗のつけ方にもいろいろあるが、一方のチームが全滅するまで戦う「全滅戦」と、各軍の陣地に旗を置き、自軍の旗を守りつつ敵軍の旗を取れば勝ちという「フラッグ戦」に分けられる。フラッグ戦の亜流には、丸腰の人間が旗の代わりを務める「人間フラッグ戦」というのもある。

銃はプラスチック製のおもちゃだが、見かけはかなり本格的である。拳銃(ハンドガン)と機関銃(マシンガン)がある。圧縮空気の力でプラスチックの弾が発射される。弾はBB弾と呼ばれ、直径6mm、重さ0.2gのものが一般的である。この重さの場合、初速が秒速100m以内でなくてはいけないという、1ジュール規定がある。また、屋外戦用には、環境に配慮して、バクテリアや紫外線によって分解されるバイオ弾もある。

目に当たると危険なので、ゴーグルは必須。また、長袖の服や手袋もほぼ必須。必須ではないけれど、あった方がいいとされるのが、迷彩服や黒づくめなどの軍装。敵に見つかりづらいという実用の意味もあるが、サバゲへの意気込みを示し、緊張感のある気分を高めるという効果もある。なりきるにはまず形から。言わばコスプレである。ウケ狙いで、ウエスタン調のカウボーイになってみたり、ビジネススーツのサラリーマンになってみたり、というのもアリだ。やっぱコスプレだ。

●サバゲの精神はアブナくないのか?

サバゲの歴史はけっこう長く、過去に流行り廃りの波が何度かあったようである。読者の方々の中にも、「昔やったなー。実は今も押入れの奥に黒光りするのが一丁眠っているのだ」なんて御仁がおられるかもしれない。しかし、一般的にはまだまだ陽の当たらないジャンルのようである。

もちろん悪事を企んでいるわけではないので、楽しさが分かり合える者どうしが集まって、人知れず活動する、という形態に問題はない。だけど、格好が格好なだけに、サバゲにはいろいろなイメージを抱かれそうである。

ひとつは鬼ごっこやかくれんぼや雪合戦といった子供の遊びの延長。「いい歳こいた大人が一体何をやっておるんじゃい、成長せんかい!」なイメージ。確かに、しょせんはおもちゃの銃を撃ち合う遊びである。真剣になればなるほど、どこかに滑稽さがつきまとうのは避けられない。が、真剣になるからこそ面白いのだ、というジレンマがある。上級者ともなれば、筋骨隆々として、構えがきれいで、動きが素早くきびきびしている。厳しい鍛錬の賜物なのだろうと思わせる。

ある種の空虚感が漂うのはサバゲに限ったことではない。単に「好きだから」という理由で、実用的には何の役にも立たないことに心血を注ぎ、知識を蓄え、技を磨いて、道を究めんとしてきた、おバカな俺たち、そんな馬鹿馬鹿しさを自虐的に笑ってしまおう、というのはオタク全般の底流をなすメンタリティなのかもしれない。

今回手ほどきを授けて下さったインストラクターの方々は、サバゲが楽しくて仕方がないという感じが顔に現れていて、子供のように無邪気そうにも見えた。が、教え方には気配りがいっぱいで、雑談も楽しく、どちらかというと、頼れる兄貴という印象がまさった。聞くところでは、普段は真面目な態度で仕事に臨み、世間的には相当立派な地位をお持ちの方もいらっしゃるとか。社会人としての責務はしっかりと果たしつつ、たまには童心に返って心の荷を降ろすというバランス感覚がいい。

もうひとつ、心配なのが、現実の戦争と重なり合うイメージである。現実には世界のどこかで国どうし、民族どうしが反目しあい、しょっちゅう武力衝突が起きている。それは残虐な殺し合いにほかならない。それをあたかもカッコいいことのように礼賛し、模倣するのは、いかがなものか。その精神、アブナくないのか?

サバゲに興じる人たちは一般人からそういうふうに見られがちであることを重々承知していて、心を痛めている。サバゲは紳士のスポーツであることを盛んに強調し、一般の人々に無用の誤解や恐怖感を与えないよう、気配りに努めている。

実践練習では、早々と被弾してフィールドを出てきた人たちどうしで雑談に花が咲くのだが、「やられる前に3人殺してきた」みたいな言い方は、上級者からたしなめられた。「そういう物騒な物言いは控えなさい」と。「殺す」の「死ぬ」のという表現は、野球や将棋でも使うけれど、サバゲで使うと比喩になってない。

●サバゲの手ほどきを受ける

前置きが長くなったが、そういう経緯で、6月11日(土)、サバゲの講習会に参加してきた。

朝8時に新宿で待ち合わせ、雨続君と一緒にアメフラシ氏の車に乗せてもらって中央高速を一路西へ。10時の会場集合に程よく間に合った。会場は八王子の北西部の山あいにある屋内フィールド "I.B.F." である。がっしりした鉄骨の巨大コンテナのような建物内に、木造の市街地が作られている。元は鉄工所だった跡形がそこここに残っている。

私の格好は戦闘地よりも秋葉原でよく見かけそうな、いつもの。一応長袖のネルシャツ。装具一式はアメフラシ氏から貸してもらった。拳銃はフルオート M93R(ってよく分かっていない)。雨続君は折り目跡もばりっとした迷彩服。自前で新調してきた。やるじゃん。アメフラシ氏は、カウボーイスタイルに、米軍の礼服、戦闘服と3着用意して達人ぶりを見せつけ、女性陣から人気を博していた。

集まったのは約30人。うち20人が初心者、また、9人は女性である。講義を授けて下さるのはオーナーの山田氏。始めは銃の扱い方や安全のためのルールなどの講習。それからフィールドに入り、交代で的を撃ってみる。テーブルの上に、ブックエンドのようにL字型をした金属性の的が立ててあり、いいところに当たるとキンと音がして倒れる。じっくりと狙って引金を引けば大体当たる、という感触がつかめてきた。構え方などを直してもらうと、よく当たるようになってきた。

次に、早撃ち勝抜き戦。1対1の対戦で、各自の前方に置かれた5つの的を10発以内の弾でより早く倒した方が勝ちというルール。私は雨続君が対戦相手で1 回戦敗退。マガジンを装填し、撃てる体勢に入るまでの動きの俊敏さで負けた感じ。

昼食は各自そこいらへんで。アメフラシ氏がカップラーメン等を持参、バーナーでお湯を沸かしてくれた。アウトドア気分が盛り上がる。

午後はいよいよグループ対戦のゲーム。赤チームと黄色チームに分かれ、両手両足背中にチームカラーのテープを貼る。約10人対10人で、反対側の入口からフィールドに入り、7分間、対戦する。これを、チームを組み替えたりしながら、何度も何度も繰り返す。

間抜けな頓死を喫することもたびたびあり、その度ごとに何かを学んだ。例えば、最初はおっかなびっくりで進んで行くのに、ひとたび味方がやられるのを目にした途端についカッとなり、敵前に踊り出て乱射してしまったりする。結果は自分がやられるだけ。そうやって1人ずつやられていくぐらいなら、最初から塊で移動した方がまだ勝ち目がある。

こういうことをひとつひとつ体で覚え込んで基本の形が身につけば、次にはチームとしての人員配置など、作戦を立てたりして、より深い楽しみ方ができるのだと思った。1日ではその域までは行けなかったが。

夕方6時。全員集まってあいさつして、お開き。体力気力を使い果たし、存分に楽しめた。アメフラシ氏、山田氏ほか、スタッフにはこんな面白い世界の扉を開いていただいたことに感謝している。

●付記:関連サイト

- メイド喫茶 "Cure Maid Cafe"
< http://www.curemaid.jp/ >

- メイド居酒屋「ひよこ家」
< http://www.hiyokoya.net/ >

- メイドバー "JAM"
< http://jam-akiba.com/ >

- サバゲのインドアフィールド I.B.F.
< http://ibf8.web.infoseek.co.jp/ >

- アメフラシ氏のホームページ
< http://home.catv.ne.jp/dd/syusuke/ >

- 雨続君のホームページ
< http://ametsugu.net/ >

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
ハードボイルドな中年男。拳銃を片手にすっ、ぴたっ、すっ、ぴたっと素早い身のこなし。獲物を狙う目は野獣そのもの。...の域までは、なかなか。筋肉痛以外の後遺症として、新宿歩くにも背後が気になって仕方がない。壁際をさささささっ。ゴキブリか、俺は。
< http://i.am/GrowHair/ >