Otaku ワールドへようこそ![9]虎穴に入ろう:個撮のすすめ/GrowHair

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きれいな写真を撮りたいと思ったら、技術の研鑽だけでなく、精神的な修養も欠かせない。特にコスプレ写真を専門とするカメコへの道は険しく、人々から笑い物にされても喜んでいられる強靭な精神力が要求される。

技術力と精神力がある程度のレベルに達したら、ぜひチャレンジしてみたいのが個撮(個人撮影)である。4月のことであるが、都内の日本庭園でコスプレ個撮を楽しんできた。そのときのことを振り返りつつ、ノウハウを披瀝したい。


●コスプレイベントの限界

楽して撮るなら、屋内系のコスプレイベントに行くのが一番である。キャラに扮したレイヤー(コスプレイヤー)の大集団と、それを縫って歩き回るほぼ同数のカメコたちという光景は、日常の光景と比べればかなり異様であることは否めないが、みな趣旨を分かって来る人たちばかりなので誰も疑問に思わない。

私の場合は、10代、20代の来場者がほとんどを占める中で、30代を飛び越しての40代なので、多少は自意識に騒ぎ立てられることがあった。しかし、まわりは気にする様子もないので、最近はそんなこと意識にかすりもせず一日過ごせるようになった。

気楽なのはいいけれど、写真の仕上がりとしては、物足りなさを感じる。「イベント会場の様子を記録してきました」以上のメッセージ性に欠けるのである。背景に無関係な人物を入れないようにがんばって撮ったとしても、どうしてもキャラにそぐわない壁や手すりになったりする。ネット上でコスプレ写真のサイトを見て回っていても、写真の背景を見ただけで会場が分かってしまうことが少なくない。

もう少し撮影環境がいいのは、遊園地系のコスプレイベントである。広いので、人口密度が屋内ほどは高くない。また、背景のきれいな撮影ポイントを見つけやすい。よみうりランドは自然がいっぱいだし、いわくありげな古い城門などもある。もっともここは15年ばかり前、当時のフィアンセとデートした思い出の場所でもあり、まさか結婚生活が14か月で破局を迎え、あまつさえこの歳になってからひとりカメラを携えうろうろすることになろうとは想像もつかなかったことで、人生とは異なもんよ、と妙な感慨に耽ってしまう。泣くな。>俺

ワープステーション江戸は、時代劇のロケ用に江戸時代の風景が再現されているので、和装系のコスにぴったりである。犬夜叉、遥かなる時空の中で、戦国無双、などなど。ポティロンの森は、蔦のからまる洋館があったり、錆びた農具が放置(展示?)されていたりして、洋装系に向いている。ハリポタ、アンジェリーク、ファイナルファンタジー、などなど。

遊園地系の場合、一般の来場者と混ざるので、多少は好奇の目に晒される。その点で、屋内系よりは度胸が試される。どうやら、よりよい撮影環境を求めれば求めるほど、そういうことになるらしい。

しかし、その環境にもやがては不自由を感じ始める。最近は人が多くて、背景の処理にやはり悩むのである。ハリポタ合わせで撮っていたら、背景にセーラームーンがいたりする。あれ、あなたもホグワーツ魔法学校の生徒さんでしたか、みたいな。

●虎穴に入ろう

イベントで提供された撮影環境に満足できないならば、自分でロケハン(ロケーションハンティングの略。撮影場所探し)してくるしかない。写真の出来が悪いのを撮影環境のせいにできないくらい、いい環境で撮ってみたい。

というわけで、個撮を企画した。ちょっと古めの話で申し訳ないが、4月のことである。レイヤー2人と私の総勢3名という、実に小規模なものである。レイヤーは、3年来ちょくちょく撮らせてもらっている、柊と深夏。

個撮に至るまでには、イベントに足繁く通って、レイヤーさんと仲良くなっておくのが一般的な道であろう。撮った写真を渡したりして、自分の撮る腕前に納得してもらわないと始まらない。レイヤーさんたちに聞いてみると、カメコの技術レベルには相当のばらつきがあるようで。あんまりひどければ、相手にしてもらえないのは当然。

「遥かなる時空(とき)の中で3」という乙女系恋愛シミュレーションゲームの有川将臣と源九郎義経のコスをやるという。現代の女子高生の主人公・春日望美が平安京もどきの異世界に龍神の神子として召還され、妖怪変化と戦う八葉に力を与えて京を救うというストーリーである。なので、伝統ある日本的な風景がよい。都内の日本庭園を回ってみた。

イベントで撮る場合はちょっと恥ずかしいのを気にしないという度胸さえあれば何とかなるが、個撮を企画するには、会場の管理者や一般の来場者とのトラブルを回避する細心の気配りが必要になる。自分では単にきれいな写真を撮りたいからという動機のつもりでも、一般の来場者から見ればぎょっとする光景に違いなく、目立ちたがりとか、威嚇的とか、不良の集会のように取られかねない。

人様に迷惑をかけるのはもってのほかだが、そのつもりがなくても通りすがりの人が不安に駆られて通報したりすれば事件になってしまう。下手をして迷惑防止条例みたいなのが適用されると犯罪者にされかねない。新聞の見出しに「都内に仮装ゲリラ」なんて。「犯人には屈折した過去が」とか。ほっとけ。

そういうリスクはあるのだが、虎穴に入らずんば虎児を得ずというたとえもあり、気配りで回避するしかない。

●庭園との交渉

都内に数か所ある日本庭園は東京都が管理していて、撮影のロケ地として使う場合の手続きはどこも同じである。指定のフォームに記入して提出し、許可が下りれば(団体あたり)1時間100円程度の格安料金で使える。その基準だが、公序良俗に反するのは論外としても、どこに線を引くかの判断は各庭園の管理者にゆだねられている。コスプレ個撮はちょうどボーダーライン付近にあるようで、しかも前例があまりなかったようで、判断がまちまちであった。

文化財を主題にした撮影はOKだが、単なる背景として使うのは駄目、というところもあった。背景として使ってもよいが、日本の伝統文化に似つかわしくないのは駄目、というところもあった。ゲームキャラとしての戦国武将ってのはどうなんでしょ? 一般来場者優先の基本線に則り、苦情が出ないよう配慮しさえすればOKというところもあった。ここにしよ。しかも、個人的な利用なら申請の必要はないという。

ただし、月曜にしてくれという。休園日だと思われがちで、来場者が少ないのだという。それはこちらにとっても都合がよい。当然ながら、こういうことは仕事よりも優先順位が上である。

●やはり見世物に

4月18日(月)、清澄庭園にて個撮を決行した。朝9時の開園時刻に集合。管理の方にあいさつして、入場。他の庭園と比較すればやや狭い方だが、個撮のロケ地としては十分すぎるぐらい広い。趣よろしく配された奇岩怪石や、岸から池に張り出した松の枝が日本的な風景を引き立てる。また別の広場では、八重桜が咲き誇る。人はほとんどいない。朝の散歩コースにしていると思しきお年寄りをちらほら見かける程度。

場所が広々としていて、しかも人が少ないのは本当に嬉しい。太陽の位置を考慮して、カメラと被写体の位置関係を自由に設定できるし、撮影距離が十分にとれるので、望遠系のレンズも使える。焦点距離が200mmの望遠レンズを使えば、人物にだけぴたりと焦点を合わせ、背景をきれいにボケさせることができる。これで主題を際立たせる効果が得られる。

昼近くになると、徐々に人が増えてくる。やはり、中には我々の姿に度肝を抜かれて立ちつくす方も。こういうとき、素知らぬ顔を決め込んだりすると不安を煽りかねないので、こちらから声をかけて、少なくとも言葉の通じる相手であることを知らしめ、安心していただく。「どうもお見苦しくてすみません」。するとたいていは「いえいえ、何かと思いまして」と来るので、かくかくしかじかと一通り説明すれば、安心してもらえる。これでこちらも管理者に苦情を持ち込まれたりする心配が解消される。先手必勝。

しかし、修学旅行生にはちょっとあせった。どこかの学校の制服を着た生徒が数名、こちらの方へ歩いてくるのが見える。もし何十人も大挙してやってきて、ガイドさんに「右手に見えますのが、.……コスプレでございます」なんてやられては、さすがにいたたまれない。急いでレイヤー二人を隠し、こっちから様子を見に行く。聞いてみると、修学旅行で新潟から来た高校生で、6人ずつの班に分かれて別行動をとっているという。ならば大挙して押し寄せられる心配はない。原宿でもお台場でもなく、日本庭園を選ぶなんて、渋くていいぞ。いいもん見られてよかったね。

それと、意外に多いのが外国人。日本人はディズニーランドへ、外国人は日本庭園へ。文化のすれ違いか。20代と思しき碧眼の女性2人連れから、写真を撮らせてくれないか、と英語で聞かれた。もちろんOKです。聞いてみると、ドイツから観光に来たという。おお、あなた方はラッキー。日本文化の最先端に遭遇することができましたね。一通り英語で説明してあげた。これが今、最もトレンディな遊びで、かくかくしかじか、と。

何だかんだといろいろあって、とても思い出深い撮影会になった。写真の仕上がりにも喜んでいただけた。カメコ冥利に尽きる。

●余談:5,000人の乙女の歓声を聞いてきた

7月9日(土)、10(日)と「ネオロマンスフェスタ8」という声優コンサートが開催された。(株)コーエーが出している3本の乙女系恋愛シミュレーションゲーム「遥かなる時空の中で」、「アンジェリーク」、「金色のコルダ」を総称してネオロマンス系と呼ぶが、そのキャラの声を演じる声優さんたちによる、声のお芝居と歌とトークのイベントである。個撮で遥か3のコスをしてくれた柊、深夏にも会うことができた。

今回は来場者を撮らせてもらうだけでなく、ステージも見てきた。5,000席の会場がほぼ満杯になった中で、男性の観客はおそらく10人に満たなかったのではあるまいか。

すばらしいステージ。すばらしい盛り上がり。舞台と客席と、心がひとつになっている。5,000人の乙女の一斉に立てる黄色い歓声の、なんと耳に心地よいことか。もともと場違いで恐縮な私だったが、ひとり冷めてるのもなおさら目障りかと思い、周囲に合わせて立ち上がり、手拍子。が、いつの間にかノリノリになってて、フリまで見よう見まねで。

う~ん、だけど「愛してるよ」って俺に言われてもなぁ。「おう、俺も愛してるぞ」みたいな。てか、ネオロマンサーの皆さん、ホント、大好きです。

●もひとつ余談:コスプレサミット見てきます

8月7日(日)に「愛・地球博」で世界コスプレサミット2005が開催される。ドイツ、イタリア、スペイン、フランス、アメリカ、中国、日本の7か国を代表するコスプレイヤーが集い、松本零士氏らの審査の下でコスプレ世界一を競うイベント。

日本代表は東、中部、西の3地区で予選が行われ、それぞれの地区の優勝者が「愛・地球博」の本戦に出場できる。東日本地区予選は6月26日(日)に東京ドームシティ内ジオポリスで開催された。

その団体部門の優勝者のひとり、玲羽詩音は犬夜叉の殺生丸のコスでいつも撮らせてもらっているお友達の仲。ずっと以前、世田谷の駒沢公園にて一対一で個撮をしたこともある。子供がいっぱい寄ってきて、楽しかったな。原宿の「橋」にも出没したりして、けっこう有名。

本戦、見てきてレポートする予定。お楽しみにー。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
カメコ。この原稿書いてる7月24日(日)にも柊と深夏に遊んでもらった。秋葉原を回った後、池袋の「太正浪漫堂」(ゲーム「さくら大戦」をテーマにしたお店)、そしてカラオケへ。柊はパワフルで声量豊か、パンチが効いている。深夏は、音大卒だけあって、歌い方が繊細で美しく、また選曲がいい。服やアクセサリのロゴマークはユニバーサルスタジオ? って聞いた私が馬鹿だった。ヴィヴィアンウエストウッドというお嬢様ブランドなんだとか。知らん。カラオケの曲目、思いっきり世代がずれとる私は宇宙戦艦ヤマトとか。彼女ら、まだ生まれてもいないよ。カメコって楽しいなぁ。いやいや、慢心してる場合ではなく、肝心の撮る腕をもっと磨かねば。写真はこちらからどうぞ。
< http://i.am/GrowHair/ >