Otaku ワールドへようこそ![10]頂点を極める:世界コスプレサミット
── GrowHair ──

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「世界コスプレサミット2005」を観てきた。このイベントは8月7日(日)に愛・地球博会場内のEXPOドームで開催されたもので、ドイツ、イタリア、スペイン、フランス、アメリカ、中国、日本の7か国を代表するコスプレイヤーが集い、松本零士氏らの審査の下でコスプレ世界一を競った。

個人部門の優勝はデビルマンのシレーヌに扮したイタリアのジョルジアが、グループ部門の優勝は東京ミュウミュウのキャラクタに扮したフランスの3人組のチームが獲得した。また、総合優勝国はイタリアに輝いた。

このサミットは2003年から開催されて三回目になるが、今回はコスプレをテーマにしたイベントとしては異例の規模となった。万博会場内にイルミネーションきらびやかなステージが用意され、3,000席の客席が満席となった。ステージ前の招待席には100人あまりのコスプレイヤーが集まり、盛り上がりに華を添えてくれた。


参加各国の出場者は見事に作り込まれたコスチュームを美しく着こなし、パフォーマンスも歌唱力、日本語力、踊りの上手さなど、それぞれの特技が生かされて見応えがあった。日本の漫画やアニメが世界の国々に知れわたっているというだけでなく、ファンの人たちの並々ならぬ熱の入れように驚きと感動の連続であった。この模様は翌朝のテレビニュースでも全国放送された。

個人的には、以前からちょくちょく撮らせてもらっていた詩音(しおん)が東日本のグループ部門で犬夜叉の殺生丸に扮して出場するので、楽しみにしていた。また、イタリアのカリスマコスプレイヤーのフランチェスカ・ダニが初来日するので、見てみたかった。

詩音は3年ほど前から撮らせてもらっており、メールをやりとりして近況を知らせあったりする、お友達の仲である。性別は長いこと謎だったのだが、あるイベントで男子更衣室に入っていくのをたまたま目撃して判明した。以前はセフィロスと名乗っていたが、コスチュームは一貫して犬夜叉の殺生丸だった。それが、徐々に徐々にグレードアップして今に至っているのである。

今回のコスプレサミットは、個人部門10人、グループ部門10組が出場している。海外が6か国、日本は東、中部、西の3地区とネット選考から予選を勝ち抜いてきた代表者たちである。東日本地区予選は6月26日(日)に東京ドームシティ内ジオポリスで開催され、グループ部門で犬夜叉の主人公犬夜叉に扮する奥棲たくみと、敵対する兄貴殺生丸に扮する玲羽詩音からなる「チーム・わんわん」が優勝した。

4日後にそれを知らせるメールが詩音から届いたのだが、私は間抜けなことに、どれほどのことなのかピンときていなかった。何しろそのメールは私の海外出張のことが主な話題で、末尾に「思い出したついでに」ぐらいの調子でさらっと書いていたのである。「そうそう、先日コスプレサミットの予選を通過できたので、8月に愛地球博の本戦にいってきます。今から楽しみです♪」。大物である。これに出場したら、テレビで全国放送されるであろうというのに、全然びびっていない。そんな大きな大会だと後から知って、こっちがびびった。

7月25日になってやっと「遅ればせながらおめでとう」メールを送ったら、5分後に返事が来た、「舞台ではチャンバラを盛り込んだ寸劇をやる予定なので期待していてくださいね」。いいなあ、この落ち着きっぷり。

●ぼろぼろだった、こっちの舞台裏

ところで、こっちの舞台裏は大変で、土壇場の準備と立て続けの不運で、ひどいことになっていた。

大手旅行会社の企画したコスプレサミットツアーに申し込んだのだが、これが最小催行人数に至らなくて消滅してしまった。需要がなかったとは思えず、宣伝が足りなかったのでは? ツアーに組み込まれているはずだった万博入場券とサミット入場整理券は無料で送ってもらえたので、得したと言えばそうなのだが、往復の足は自分で何とかせねば。当日の新幹線で行き、夜行の快速列車「ムーンライトながら」で帰ってくることにした。全車指定席なので、予約をとる。月曜の早朝に東京に到着し、それから一旦帰って、仕事に向かう予定。

詩音からは、動画を撮ってくれと頼まれた。私は動画を撮れるカメラを持ってないので、本人から借りることに。ところが、どうしても手渡してもらう時間が取れない。仕方がないから、当日直前に渡してもらおうということにしていたら、前日に現地入りした詩音から昼ごろメールが来て、持ってくるのを忘れたという。

動画のことはあきらめると言うが、せっかくなので、急遽、ヨドバシカメラへ行って、動画も撮れるというコンパクトデジカメを買った。1GBメモリも2枚追加して。日曜当日、行きの新幹線で初めて箱を開けて、取り扱い説明書を読む。げげっ、充電しないとダメなの? 10:16amに名古屋に着いたら漫画喫茶を見つけて、充電。

そこで気がついた。一眼レフ用に買っていったポジフィルムが間違っている。35mm判のつもりでブローニ判を買っていた。いつもは5本あるいは10本セットで買うのだが、今回は20本セットで買ったために慣れていなかった。

正午過ぎに出て、名古屋駅前のビックカメラで正しいフィルムを買ってから会場へ向かう。電車でデジカメ試し撮り。先頭車両から前方を見て動画を撮ってみたり。2:00pmにちょっと遅れて会場入り、整理券を入場券に引き換え。

4:30pmの開場まではドームの外で一般コスプレイヤーを撮る。このときはいつも通り一眼レフの方を使い、新しいデジカメは尻のポケットに入れていた。胸のポケットは、手帳、ボールペン、レンズのキャップ、自分の名刺、もらった名刺ですでにぱんぱんだったので。

5:00pmに会場へ入り、デジカメを取り出してみると、あ~れ~~~、液晶が割れてた。動作しない。どうにもならぬ。動画はあきらめるしかない。さっき詩音に電話して「動画撮るよ」って言っちゃったというのに。あー。

フィルムカメラで撮ったけど、遠いし、暗いし、難しい条件。増感現像するつもりでISO感度値を上げて撮った。けど、まるで自信なし。後日、仕上がりを見たら、いちおう撮れてはいたが、被写体が豆粒のように小さく、いまひとつであった。カメコの仕事、ぼろぼろ。

●ハイレベルな他国出場者のパフォーマンス

こっちのドタバタとは裏腹に、ステージの方はすばらしかった。声優の古谷徹氏の司会が、他の方では絶対にこうはいくまいと思えるほどの適役で、最後まで元気いっぱいに盛り上げてくれた。機会あるごとに、かつて手がけたいろいろなキャラの声になってみせたりしてくれた。篠原ともえ氏とのコンビも、いい掛け合いになった。

審査員は松本零士氏(漫画家)、影山ヒロノブ氏(歌手)、一本木蛮氏(漫画家)、高柳明史氏(テレビ愛知)、永井伸氏(名古屋モード学園)の5名。一本木氏はみずから「うる星やつら」のラムちゃんのコスでがんばっていた。

各出場者のパフォーマンスはどれも見事で、驚嘆に値する。遠く海外から日本の漫画・アニメにかける情熱のものすごさがよく伝わってきた。あの衣装作りとパフォーマンスの練習に、いったいどれだけのエネルギーを注いだのだろう。それ以前に、膨大な時間をかけて日本の漫画やアニメを研究してきたに違いない。最新情報を押さえているし、萌えどころを外していないのである。

特に印象的だったところ。イタリア個人部門、デビルマンのシレーヌに扮するジョルジア。真っ白なでっかい翼に度肝抜かれた。バックライトに映えて、ものすごくきれい。アメリカ個人部門、神無月の巫女のミヤコに扮するハニーバニー。黒人のコスプレイヤー。ものすごい歌唱力。

アメリカのグループ部門、ローゼンメイデンの真紅、翠星石、蒼星石。個人的に大好きな作品だから嬉しいというのは置いといても、比較的新しくてまだまだマイナーな感じのこの作品が登場するとは思っていなかったので、びっくり。実に流暢な日本語でコントをやってくれて、びっくり。翠星石の声質と性格が本物そっくりで、びっくり。

中国のグループ部門、サムライスピリッツ。見事な毛筆の「侍魂」の横断幕を背に、巫女の舞い。それが本格的で、またきつい表情がよく、張り詰めた空気を演出。フランスグループ部門、東京ミュウミュウ。可愛らしくてお色気たっぷりな振りつけ。萌え×3=萌え~萌え~萌え~。

中部地区グループ部門、ルパン3世。チーム名は中村藩。子供2人のちょろちょろした動きが可愛い。見られていることを楽しんで演じている。子供の口パクに親の台詞も息が合っている。

イタリアグループ部門、ソウルキャリバー2。ついにフランチェスカを見ることができた。遠目にだが。あとの2人、エレナとエミリアは姉妹。3人とも体が柔軟で、ポーズがすごくきれい。一糸乱れぬ動きもお見事。

東日本グループ部門、犬夜叉。犬夜叉と殺生丸の大立ち回り。他が無難なアニソンが多かったのに対し、寸劇で対抗してくれたのは新鮮。早口の台詞がすらすらと出てくるあたり、全然緊張してないし、よく練習しているなあ。

●競争よりも共感

コスプレの心は、キャラへの愛。キャラにとことん惚れ込み、好きで好きでたまらないから、自分がなりきりたくて、ここまでやっちゃいました、というのが正しいあり方というものである。作品を鑑賞して感動しただけではどうにも止まらず、多大な時間とエネルギーを注ぎ込むことによって、キャラへの愛の証を立て、自分自身を納得させる。勝った負けたはどうでもいい。だけど、そのがんばりを人に見てもらい、評価される機会があるというのは、いいものである。今回のコスプレサミットの意義としては、競争よりも共感という意味の方が大きかったように思う。

審査結果発表の前に、エヴァンゲリオンのオープニングテーマ「残酷な天使のテーゼ」を出場者が代わる代わる7か国語で歌うパフォーマンスがあった。そのときの歌唱指導を努めたドイツ在住のオペラ歌手田辺とおる氏の言葉が印象に残った。

今までも日本の文化に興味を示すヨーロッパ人はたくさんいたけど、それは向こうから見てエキゾチックでものめずらしいからだった。だけど、日本の漫画やアニメに対する見方はそうではない。日本の作品のすばらしさに心酔し、そういう作品を生み出した国として、日本にあこがれの感情を抱いているのだ、と。海外からそういうふうに見てくれていることを知るのは、我々にとっても感動的なことである。

遠く離れた海外にも、我々と同じ思いを共有する人たちがいることをお互いに理解しあえたのがこのサミットであったと思う。

世界コスプレサミット2005 公式サイト
< http://www.tv-aichi.co.jp/cosplay2005/index.html
>
フランチェスカ・ダニのサイト
< http://www.francescadani.com/
>

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
国際親善カメコ。夏コミ<夏のコミケ:8月12日(金)~14日(日)>の初日、コスプレ広場にフランチェスカとジョルジアが来ていて、間近で撮らせてもらうことができた。その上、英語でちょっとだけお話しできた。お二人からいただいた名刺は宝物です。
< http://i.am/GrowHair/
>