カラーマネージメント三角絞め…[23]レンダリングインテントについて/上原ゼンジ

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今回は「相対的な色域を維持」だとか「絶対的な色域を維持」だとかいった、小難しげな用語について説明してみたい。

●4つのレンダリングインテント

たとえばRGBからCMYKへの変換を行なうとする。なるべく色が合うように変換したいわけだが、4色の印刷で再現できる色の範囲はそんなに広くはないので、再現できない色は別の似た色で置き換えなければならない。

しかし、似た色と言っても一種類ではないので、明るさを優先して選ぶのか、彩度を優先するのかといった方法を決めなければならない。この変換する際の色の計算方法をレンダリングインテント(マッチング方法)と呼び、通常4つの方式が用意されている。

◇相対的な色域を維持/Relative colorimetric
◇絶対的な色域を維持/Absolute colorimetric
◇知覚的/Perceptual
◇彩度/Saturation

「Relative」が「相対的な」で「Absolute」が「絶対的な」なので、「colorimetric」が「色域を維持」を意味することになる。「colorimetric」というのは専門的な言葉だが、「測色」の意味で、測色値=CIE LAB値を基準として色のマッチングを図ろうということだ。


色を「絶対的」に合わせようとするとどういうことになるか? 小さいカラースペースから大きなカラースペースに変換する分には問題はないが、逆の場合にはちょっとおかしなことになる。大きなカラースペースから小さなカラースペースへと色を圧縮しなければならないわけだが、内側の色が絶対的に動かないわけだ。ちょっと詰めてくれといっても絶対に動いてくれない。そこで内側の色は合うものの、外側(色域外)の色の配慮がされていないので、階調性に問題が出てくる。

これではちょっと使えないので、「相対的な色域を維持」が登場するわけだが、こちらの方は変換先のカラースペースに相対的に合わせようとする。具体的には白色点を一致させる。たとえばモニタの白というのは「R255/G255/B255」だが、印刷物でいう白は「C0/M0/Y0/K0」の紙白のことだ。この白同士というのは測色値は一致しないが、モニタでの白を印刷物での白と同じと見なそうという考え方だ。

「絶対的な色域を維持」で変換すると、ドキュメント上の白(R255/G255/B255)も白にならずに網点が入ってしまうということになる。絶対的というのは融通の利かない頑固な変換法、相対的というのはもう少しフレキシブルな変換法ということができるだろう。

●色の移動の仕方に違いが

今回もWeb上にサンプル画像をアップしたので、そちらを見て欲しい。
< http://blog.livedoor.jp/zenji1961/ >

図1は「知覚的」で変換、図2は「相対的な色域を維持」でCMYK変換した画像の比較だ。

「えー! こんなに違うっけ?」という反応をした人は実際に変換して比較してみたことがある人だろう。しかし、これだけ差がついたのには秘密がある。元の画像はAdobeRGBなのだが、変換先のプロファイルがJapan Color 2002 Newspaper、つまり色再現域の狭い新聞用のプロファイルだということ。そして、図2の「相対的な色域を維持」で変換した際には「黒点の補正を使用」のチェックをはずしていたためだ。

「相対的な色域を維持」の場合には図のようにシャドウ部がつぶれるなど、階調再現に問題が出る場合があるのだ(これをクリッピングと呼ぶ)。一方「知覚的」の場合にはこの階調再現を重視して、全体的に圧縮するような変換方式になっている。

たとえば運動場に体操の隊形に開いていた子供達が集合するとする。内側の子供達が全然動いてくれないので後ろの生徒が詰められないというのが「絶対的」。後ろの方の生徒だけ少しずつ詰めてくれたのが「相対的」。全生徒が少しずつ詰めた状態が「知覚的」、という感じだ。

生徒の位置というのは絶対的な色を示す。つまり位置が変われば、見た目の色が変わるということ。「相対的」の場合、パッと見の色は変わっていない。ただし、部分的に問題が起きる。対する「知覚的」の場合は全体的に色は変わる。

しかし、色同士の関係は良好で生徒達がケンカをすることもない。階調性が重視される写真の変換には、この「知覚的」が向いているのだが、「相対的な色域を維持」と比べると若干彩度が落ちてしまう。

「相対的な色域を維持」はクリッピングが起こるので使えないのかと言えばそんなことはない。「黒点の補正を使用」をチェックすればいいのだ。これはアドビが開発した第5のインテントとも呼べるもので、これをオンにすることにより、シャドウ部のつぶれも抑止することができる。(図3)

最後の「彩度」というのは彩度を優先した変換方法。鮮やかさは保たれるが、明度が二の次になるので、DTPでは使えない。プレゼンテーション用のグラフィックス等に向いている。

●「黒点の補正を使用」はオンに

通常DTPでの使用に適しているのは「知覚的」か「相対的な色域を維持」だ。現在のCMYK変換でのアドビの推奨設定は「知覚的」。アドビ製のプロファイルとの組み合わせで良好な変換が可能だ。しかし、「黒点の補正を使用」をチェックすることにより、「相対的な色域を維持」の欠点は解消できる。絵柄によって使い分けるといいだろう。

「絶対的な色域を維持」はロゴ等の単色の色合わせに向いている。また、新聞のプルーフを出力する際に紙の色まで含めてシミュレーションしたい場合にも利用できる。

【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com
写真撮影からデザインまでを生業とする。JPCカラーマネージメント委員会副
委員長。MD研究会所属。
「デジタルフォトグラフィー─エキスパートのPhotoshopテクニック」
(Ken Milburn 著/上原ゼンジ監修/オライリー・ジャパン刊)
< http://www.oreilly.co.jp/books/4873112230/ >

「体操のタイケイ」という字を書こうとして迷った。「体系」じゃ変だよな、でも「体型」でもないし、「大系」でもない。子供の頃には音では聞いていても書き取りに出たことはなかった(と思う)。ググってみると「体系」が82件、「体型」が30件。多数決で「体系」にしようかと思ったら、同じような疑問を持った人を見つけ、答えが分かった。ちなみに「隊形」は248件であった。