デジタルサウンズ研究室 インスパイアーされたネコ/モモヨ(リザード)

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随分前から騒動になっていたので皆さんすでにご存知だろうが、今回は、エイベックスの『のまネコ』騒ぎについて考えてみたい。

エイベックスがある外国の楽曲を国内で売る際に、いわゆる《空耳》、つまり日本人の言語感覚をもって勝手に聞き違える歌詞を動画で表現し、これをテレビで流した。この、動画の際にモナーに似たネコを登場させた。この猫が、のまネコなのだそうで、エイベックスは、そのキャラ商品の展開を考えているという。ちなみに、モナーというのは、2チャンネルで頻繁につかわれるアスキーアートで、「おまえモナー」といって人をコバカにしたような、見ていると頭に来るような、それでいて憎めないあのネコのような生き物である。

最初、テレビで問題の『のまネコ』を見たとき、「ふーん、電車男につづいて、ついにモナーも商品化か……」 正直、そう思った一方、昔、某玩具メーカーとの間でもめたギコ猫の商品化事件を思い出し、少し不安になった。ギコ猫騒動というのは、暴言を吐くかわいい猫キャラ、ギコ猫が売られようとした問題のことで、商品化するとすれば、モナー同様のアスキーアートである、ギコ猫に関わるキャラの著作権が問題になる。


こうした経緯から、某玩具メーカーは、ギコ猫を自社の商品として商標登録し、著作権を主張しようとした。それが大問題に発展したのである。四年ほど前の話だ。この時は、ネット側の猛反対に某玩具メーカーがたじろいでいる間にメーカーの経営が悪化し、立ち消えになったのであった。

今回は、テレビでどうどうと放映しているのだから、そうした問題もクリアにしているのだろう、私は、勝手にそう思っていた。しかし、これは私の思い込みであった。世間が選挙で熱狂する裏側で、2ちゃんでは、たいへんな騒動になっていたのである。エイベックスは、当該のキャラを『のまネコ』として、自社オリジナルとして商標登録し、グッズ販売をするという。当然、この同社の態度は、ネット上で大騒動に発展した。

これまで、その問題に対してエイベックスは、幾度かコメントを出しているが、その中のひとつ「のまネコは、モナーにインスパイアされてできた」というコメントはネット上で嘲笑を浴びつづけている。

インスパイア……便利な言葉である。なにしろ、一方のモナーはアスキーアートだから、隙間があちこちにあいている。その隙間を繋いで、一つのキャラとして自社のオリジナルキャラにした、そういうことをインスパイアというのかどうか、私には判断できない。モナーにインスパイアされて、カブトムシか何かのAAを描き、それを元にキャラを立てるならインスパイアといってもいいだろうが、モナーの隙間をつないだだけでインスパイアというのは異常としか思えない。

そうした感想は、ともかく、今回、遅ればせながらこのことにコメントしたのは、一つの証言としてである。先に記したとおりに、最初に流れた当該の動画で、私は、モナー以外のキャラを思い浮かべなかった。モナーの顔、モナー独自の動作をしていたし、先に述べたように私はギコ猫騒動を懸念すらした。このことは、きちんと言っておきたい。

この問題は、ある公共のソフト資産、例えばフリーなツール類、オープンなデザインパーツや音源が、資本主義的な身勝手な論理での侵略の前に、どのような抵抗が可能か、それを予言する事件である。

役所や著作権信託する協会に、先に提出した方、先に認定された方に著作権が生ずるわけでは、ない。そのことを私達は、きちんと知っておくべきである。著作権というものは、じつは、その基本法において、作品が生み落とされた時点で発生する。そして、モナーは、私達、ネットワーク上の者なら皆が知っている存在であり、その状況証言、証拠は至る所にある。

音楽でのインスパイアは、キーやアレンジ等を少し変えれば見えにくくなる。それで指摘されないできたのかもしれないが今回のキャラは違う。映像というのは怖いもので、その問題点が顕になってしまうのだ。

いずれにしても、インスパイアという語のつかい方、エイベックスに再考を求めたい。

モモヨ(リザード)管原保雄
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