[1890-2] メリークリスマス

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1890-2   2005/12/22.Thu.14:00発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 18245部
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<とてつもない絶望の中にささやかな希望を込めて>

■Otaku ワールドへようこそ![18]
 メリークリスマス
 GrowHair

■Webサイト案内 千都フォントWebサイト
 平野甲賀氏・川畑直道氏による対談連載「描き文字考」を掲載

■展覧会案内
 亀倉雄策 1915-1997 日本デザイン界を牽引したパイオニア
 モーショングラフィックス7
 企画展:「永遠なる薔薇 -石内 都の写真と共に」展


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■Otaku ワールドへようこそ![18]
メリークリスマス

GrowHair
http://bn.dgcr.com/archives/20051222140800.html
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毎年この時期になると悩むことがある。若いころに遡って話を始めないとならないのだが、ちょいと身の上話なんぞ、させて下さい。

10代後半から20代の間ずっと、自分の内部から聞こえてくる声があった。「お前は30歳まで生きられないからな、やりたいことがあったら今のうちにやっとけよ」。何だかよく分からないが、そういうこともあるのかな、と頭の片隅で意識しつつ生きてきた。

実際には何事もなく、拍子抜けの30歳を迎えた。その直後、実は性質の悪い病気に感染していることが判明した。慢性C型肝炎である。中学1年のときに血小板減少性紫斑病というのをやっていて、それでかなりの量の輸血を受けた。

あのころはまだC型肝炎ウィルスHCVというのは発見されておらず、何かありそうだということで非A非Bと呼ばれていたが、チェックのしようもなく、感染血液が使われていた。

この病気は、まったく自覚症状のない潜伏期が10年以上続き、黄疸や疲労感などの症状が現れたときにはもう相当ひどくなっている。私の場合は風邪か何かで不調のときにいちおう検査してみて判明したので、肝硬変に至る手前の線維症の状態であった。自覚症状はないことになっているが、何となく、内部から警告信号が発せられていたものらしい。「やられとるぞ」と。

インターフェロンという薬を数ヶ月にわたり80本注射する治療が施された。発熱、吐き気、脱毛、鬱などの副作用に悩まされたが、これが効いて完全治癒する確率は半々だった。もし効かないと、後は進行を遅らせる治療しか残っていない(10年前の話)。

幸いにも治療は功を奏し、血液1ミリリットル中に数万匹いたHCVはすべて消滅した。

こういう経験をすると、自分は何か大きなものに生かされている、という感覚をもつもののようである。だって、同じ境遇にあった人、おそらく数十万人かそれ以上は肝硬変から肝癌になって死んでいったのである。どうして自分がこっち側に転がることが許されたのか、考えないわけにはいかない。「俺にいったい何をしろと言うのだ」。

考えると心苦しいが、大してできることはない。下妻物語のイチコの台詞ではないが、「返せねえよ、でっかすぎて」。本来は輸血を受けた人は全快したら献血で返すのが筋なのだが、肝炎の場合はそれができない。どうしたもんかと考えたが、私の場合、割と大きめの会社に勤めているので、鼠小僧よろしく給料泥棒を張って、慈善団体に回すぐらいがせいぜいかな。本当はボランティア団体にでも入って労力を提供したほうが貴いような気もするが、今の立場を利用した社会還元のしかたというのも許されるのではないか。

で、毎年この時期に悩むというのはその金額である。相場ってあるのだろうか。もちろんこういうのは気持ちが大事であって、金額の多寡の問題ではない。だけど、自分の生活にとって痛くも痒くもない程度の額を出して、いいことをしたような気分に浸っているというのも、なんか刺さるものを感じるし。

それと。ひところ「世界を100人の村にたとえると」というのが話題になったが、確か大学を出ているのはひとりぐらいではなかったか。世界的にみればほんのひとつまみの最高水準の生活をしている人たちがどれほどの幸福感を味わっているのかと思えば、よその会社よりも給料が安いだの、いい車に乗れないだの、不平不満たらたらというのもどうかと思う。今、自分がここにこうしてあることに感謝の気持ちは忘れたくない。誰に対してというのではなく、みんなに。

さらに。私自身のこの一年を振り返ってみると「絶好調」と言ってもよいほどであった。仕事の出来栄えだけはともかく。新鮮な出来事がいろいろあった。神秘主義者ではないのだが、左手の薬指にはめた「誓いの薔薇の指輪」のパワーかいな、とさえ思えてくる。

そんなことをあれやこれやと鑑みて、今年は百万円に決定。月曜の朝、郵便局から赤十字の「海外たすけあい」に振り込んできた。こういうとき、独り身はいい。もし脳内妻ではなく3次元のリアルカミサンがいたら、ひと悶着は避けられなかっただろう。

しかし。こういうことは、どんなに理屈をこねてみても、人に言った瞬間にどうにも偽善っぽくなるのは避けられないもので、やっぱり言うべきではなかったかな、とも思うのだが、まあどう受け取られてもいいやということで。いやらしいついでに本心をもう少し言うと、これを読んだ方々の中に、もし献血や寄付をして下さる方がいたら、私の無力感が少し和らいで嬉しいかな、と。

私なんぞがひとりでじたばたしてみたところで、焼け石に水。世界中で多くの人が直面している貧困、飢餓、病苦、紛争などの苦難がこれっぽっちの貢献でどうにかなるものではない。だけど、そういうのを切り捨てて、各自が競争原理に基づいて自己責任において自分の幸福だけを追求する社会というのも、なんだかむずむずする。凶悪犯罪が目立ち、人々がお互い疑心暗鬼になって暮らす社会というのも、なんだか冷たく暗い。

かといって、みんなが幸せな気持ちでクリスマスを迎えられますように、なんて言ってみたところで、まるっきり現実味のない、絶望的なまでに楽観的な祈りとしか響かない。それでも何かの拍子にせめてほんの一瞬だけでもほっと一息つかせてくれるような空気が世の中を暖めてくれることがあってもいいのではないか、それくらいのささやかな奇跡はあってもいいのではないか、とは思う。

とてつもない絶望の中にささやかな希望を込めて「メリークリスマス」。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
カメコ。テレビ収録はいろいろあったけど、おおむね成功のうちに全日程を終了しました。ロケ地や内容もこちらの希望がほぼ全面的に通った形で。詳しくお伝えするのは来年に...。
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■Webサイト案内 
大日本スクリーン・千都フォントWebサイト 
平野甲賀氏・川畑直道氏による対談連載「描き文字考」を掲載
< http://www.screen.co.jp/ga_product/sento/pro/index.html >
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大日本スクリーン・千都フォントWebサイトにおいて、平野甲賀氏と川畑直道氏による対談連載「描き文字考」を開始した。毎回ゲストを招いての全4回の連載。第1回のゲストは書体設計家・書体史研究家の小宮山博史氏。

「印刷文化のなかで、『描き文字』がどんな使命を背負わされ、どんな役割を果たしてきたのか。また、今日のデジタル環境にどのように受け継がれるべきか、あるいは反面教師としてどう捉えるべきなのか……。いろいろな領域を横断しながら『描き文字』を考えることで、タイポグラフィやデザインの問題を見つめ直してみよう――大袈裟にいえば、この連載がそんな問題提起の場になればいいんじゃないでしょうか」と、進行役の日本近代デザイン史研究家の川畑さん。「描き文字考」序章、第1章を収録、ものすごいボリュームのテキストと図版に圧倒される。

また、博覧強記というより博覧狂気なうんちくと、文字にたいするほとばしる愛情のもと、本邦古今の組版、書物を惜しみなく紹介する府川充男氏による連載「組版今昔」も公開中。次から次と繰り出される貴重なビジュアルと明解な考証の醍醐味にひたる。第1回は「古活字版―幕末」。全3回予定。

さらに、海津ヨシノリ氏の連載「組版外伝」の2回目、「読ませる」文字組みと「注目してもらう」文字組み、も公開中。エディトリアルデザインの王道がページものだとしたら、それと異なる我流の文字組み処理や文字デザインを展開しているデザイナーを「組版外伝系」と呼べるだろう。異端(?)にして実践的、実用的なデザインの世界。全6回予定。

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■展覧会案内
亀倉雄策 1915-1997 日本デザイン界を牽引したパイオニア
< http://www.dnp.co.jp/gallery/ggg/ >
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会期:1月11日(水)~1月31日(火)10:00~19:00 土18時 日祝休
会場:銀座グラフィックギャラリー(東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F TEL.03-3571-5206)
内容:日本デザイン界とともに歩んだ亀倉雄策は、東京オリンピックや大阪万国博覧会のポスターを手がけた日本を代表するグラフィックデザイナーです。戦前は写真界・デザイン界の梁山泊「日本工房」で活躍し、戦後は数々のポスターやロゴマーク等で国際的に高い評価を受け、また日本宣伝美術会(日宣美)や日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA) の創設に尽力するなど、日本デザイン界の中心として活動し続けました。彼の足跡は、そのまま日本デザイン界の歩みと重なります。本展は、未公開の戦前作品を含む約170点を通じて、亀倉雄策の足跡をたどる本格的な回顧展となります。(サイトより)

・ギャラリートーク:
「バウハウスへの憧れ――亀倉雄策と新建築工芸学院」
出演:川畑直道(デザイナー)+梅宮弘光(神戸大学助教授/日本近代建築史)
日時:1月19日(木)18:30~20:00 先着70名 入場無料
会場:DNP銀座ビル5F 
参加申し込み:TEL.03-3571-5206

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■展覧会案内
モーショングラフィックス7
石浦克(TGB design.)、AC部 、エンライトメント、グルーヴィジョンズ、
タナカカツキ、辻川幸一郎、森野和馬
< http://www.recruit.co.jp/GG/exhibition/2006/g8_0601.html >
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会期:1月10日(火)~2月3日(金)11:00~19:00 土日祝休 水20:30
会場:クリエイションギャラリーG8(東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル 1F TEL.03-3575-6918)
内容:「動くグラフィック」をテーマに、箭内道彦氏(風とロック クリエイティブディレクター)をキュレーターとして、いま活躍中の作家7組を紹介する展覧会。展覧会のためにオリジナルで制作した7組による新作映像とこれまでの映像作品を展示する。オープニングパーティーは1月10日(火)19:00~。

・トークショー 第175回クリエイティブサロン
日時:1月18日(水)19:00~20:30
入場無料、要予約(TEL.03-3575-6918)
ゲスト:石浦克(TGB design.)ヒロ杉山(エンライトメント)伊藤弘(グルーヴィジョンズ)森野和馬、箭内道彦
・第176回クリエイティブサロン
日時:1月25日(水)19:00~20:30
入場無料、要予約(TEL.03-3575-6918)
ゲスト:AC部、タナカカツキ、辻川幸一郎、箭内道彦

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■展覧会案内
企画展:「永遠なる薔薇 -石内 都の写真と共に」展
< http://www.shiseido.co.jp/house-of-shiseido/html/exhibition.htm >
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会期:12月7日(水)~1月29日(日)11:00~19:00 月休
会場:ハウス オブ シセイドウ(東京都中央区銀座7-5-5 資生堂本社ビル TEL.03-3571-0401)
内容:資生堂は、一世紀も前から薔薇の魅力に注目し、時と共に変化する美意識を重ね合わせ、女性美を創り上げてきました。本展では、薔薇の魅力を、日本を代表する写真家、石内 都(いしうち みやこ)の初の薔薇の作品と共にご覧いただきます。(サイトより)

<応募受付中のプレゼント>
Web Designing 2006年1月号 本誌1888号(12/25締切)

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発行   デジタルクリエイターズ < http://www.dgcr.com/ >

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デスク     濱村和恵 < zacke@days-i.com >
アソシエーツ  神田敏晶 < kanda@knn.com >
リニューアル  8月サンタ < santa8@mac.com >
アシスト    鴨田麻衣子< mairry@mac.com >

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