[1950] REPEAT & FADE

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1950    2006/04/04.Tue.14:00発行
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     <同じような繰り返しの中でさえ、同じ年は一度もない>    

■電網悠語:Ridual内面・展開編[109]
 REPEAT & FADE
 三井英樹

■デジクリトーク
 デジタルクリエイター的早起き生活
 八戸 宏
 
■展覧会案内
 最澄と天台の国宝 天台宗開宗一二〇〇年記念特別展
 


■電網悠語:Ridual内面・展開編[109]
REPEAT & FADE

三井英樹
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桜の季節。一年中、桜の樹はあるのに、春だけがそう呼ばれる。ほんの一瞬の
輝きと、それ以外の長い時間。でもその沈黙のときも、緑が深くなり、散って
いきつつつ、表情を変えている。でも、桜の季節は春。

タワワな花の一群を見つめながら、どうしてこんなにきれいだと思うのかと考
える。単純にこの容姿が好きなのだろうか。数日で散っていくのを知っている
からなのか。

後者だとしたら、桜の生態を知っていることが前提になる。他の国のことは余
り知らないが、日本ほど桜を愛でる国はない気がする。だとしたら、日本に暮
らす人と観光で留まる人とでは、桜は見える姿が違うのかもしれない。

終わりのあるモノに対する感慨は、この国には深く馴染んでいる。有終の美へ
の郷愁ともいえる甘酸っぱくも憧れの感覚。終わりがあるからこそ、今を精一
杯生きているモノたちを、輝いているとも言う。

●始まりのあるモノに終わりがある

満開と散り始めが紙一重の違いの花々を見ながら、仕事を思う。仕事をこなす
能力の頂点は衰退の開始点なのだろうか、衰退の下降線を意識しながら仕事を
しているだろうか。

私の決して長くない会社員生活の中での最大の資産は、実は負の遺産だ。DEC
という世界第二位のコンピュータメーカに上り詰め、最大時14万人もの社員を
抱えた企業。それが消えたこと。

今でも尊敬と感謝を持ってしか思い出すことのできない数々の経験と優れた製
品群を持つ会社でさえ、未来永劫続くことはなかった。あっけないくらいに沈
没していった。実際は買収される一年前に辞めたのだけれど、その失望と混乱
は目の当たりにしてきた。

始まりのあるモノに終わりがある。この当たり前の事実を、最初の尊敬する会
社で体験できたことは、これ以上ない学びだった。更に、担当していた業務自
体も、終わりを意識するモノだった。

私の担当は、Internationalization。国際化とも訳すが、最初と最後の文字と
間の字数を組み合わせて、「I18N」と呼んでいた。要は米国製のソフトの多言
語化。日本語化し、漢字のような複数バイト文字を必要とする国に対する対応
の基盤を作り、それを米国開発チームにフィードバックする仕事。

それは自分の仕事をなくすための仕事。全ての米国製ソフトがそのまま日本語
を扱えたら、私は「お役御免」である。私を必要としなくなるために、私は頑
張って仕事をしていた。私が成功するほど失業に近づき、手を抜けば延命だ。

そんなに簡単にI18Nが実現できないと知ってはいたが、終わりを意識すること
は習慣付けられた。会社を去っても、どこかこの習慣は抜けない。今担当して
いる仕事はやがて終わる。きちんと終われるのか。時折自分の中で声がする。

●門出と陳腐化

Webは、そうした意味で天職に近いのだろう。短期間で、その誕生と卒業を経
験できる。終わりの日に備えたことが、かなり近いタイミングで実現する。仕
事の効率とか生産性とかの意味だけでなく、担当者としての「手離れ感覚」と
して、「備え」の意味がかなりリアルな職種だ。

任された仕事の内容を考え、クライアントの担当者に負けないくらいに、それ
に没頭し、手塩にかけて育てる。そして独り立ちさせる。何か問題があっても、
できる限り「親」を呼ばなくても対処できるようにも考える。

二度と会うこともないだろうと思いつつ、クライアントに納品する。実は、思
い入れたサイトでは涙腺も緩む。納品後に独りモニターで見つめてたりする。
門出を惜しみつつ祝いつつ。

どんなサイトも同じものは一つもない。でも結構同じようなことをして、開発
をする。手ばかりかかる単純作業も多い。それらを、前作よりもどれだけ減ら
せたかが、毎回のテーマ。

そして晴れの門出の瞬間から、実はそのサイトの陳腐化が始まっている。情報
は、動的な仕組みを入れ込めれば、多少はそのスピードは落とせる。でも、必
要とされる情報の質は日々変わっている。それは構造に関わることなので、防
ぎようがない。

                ***                

桜は既に散り始めている。もう少しその姿をとどめて欲しいと思っても、生き
急ぐように散っていく。でも同時に葉が芽吹く。そして気が付くと、頼りない
緑色が、硬く逞しい夏の葉に変わっている。

同じような繰り返しの中でさえ、同じ年は一度もない。毎年、異なる花が咲き、
異なる葉が茂る。でも遠目には同じ桜の樹。そして、それぞれが独自の桜の樹。
同じ樹も一本もない。

繰り返しは消えていく、たった一度の春を彩る、桜の一房。こんなWeb屋であ
りたい。

ps.
最初のレビューアである妻が一言、「あおくさ~」。
再出発に当たって、かなり気負ってます:-)

【みつい・ひでき】mit_dgcr@yahoo.co.jp / ridual@nri.co.jp
このメルマガを新しい職場、2ndFactoryで読みます。ごひいきに。
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・Ridual(XMLベースのWebサイト構築ツール)公式サイト
<http://www.ridual.jp/>
・超個人的育児サイト(書籍は絶版中)
<http://homepage3.nifty.com/mitmix/MilkAge/>
・Webデザイン エンジニアリング
<http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060309/232107/>

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■デジクリトーク
デジタルクリエイター的早起き生活

八戸 宏
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デジタルクリエイターっていうと、遅寝遅起きっていうイメージがあります。

ミュージシャンとかクリエイターとかいう横文字商売は、夜中でも「おはよう
ございま~す」とか挨拶するし、スタジオ入りは暗くなってからなんていうの
も、ざらにあります。

一度仕事を始めちゃうと、なかなかやめるふんぎりがつかないっていうのも原
因じゃないかと思うのですが、とにかく宵っ張りです。

かくいうこの私、高校を卒業して東京で一人暮らしを初めてからというもの、
自他共に認める遅寝遅起き者でした。写真専門学生だったので、夜中はフィル
ムの現像、写真の焼き付けを毎日の日課としていました。気がつくと空が白み
かけ、暗幕の裾から日が差し込み、写真が真っ黒けという経験も何度か。

そうすると当然、明るくなってから寝るわけで、起きるともう夕方なんてこと
も、一月のうち一度や二度ではありません。

そんな生活が社会人になったからといって、すぐに直るものでもなく、夜は用
もないのに1時や、2時や、3時や、4時まで起きていて、朝は寝過ごし、朝食も
まともに食べずに家を飛び出すという生活が続いていました。

結婚してからも、子供が出来てからも、失業してからも、ぷー(グラフィッカ
ー)やってても、このパターンは変わりません。

●遅寝遅起き者から早起き者へ

そんな生活を続けていた、とある暑い夏の昼下がり。冷房のない部屋で仕事を
していた私は、コンピュータの吹き出す熱気の中、暑さでもうろうとする脳み
そで、ふと考えました。

こんなくそ暑い時は昼寝でもして、朝の涼しいときに仕事をしたら効率よいん
でないかい? 早速実行です。まず、このくそ暑い時はお昼寝、お昼寝ッと。

翌日の朝。ふと目覚めるともうすでに太陽は昇りきり、セミの鳴き声が聞こえ
ます。あっれ~? 確か目覚まし4時半にかけたのに~。

目覚ましはしっかり4時半にセットされていました。しかし、誰かの手によっ
てアラームは止められています。

犯人は誰だ!! この家には私の他にカアチャン、息子A、息子Bしかいません。
まず怪しいのは息子A。こら、息子A。おまえ.....腹出して寝てます。
と、いうことは息子B、おまえだな~。何でおまえは板の間で寝てるの。

最後に残るのはカアチャンです。やはりあいつだったか~。ここは一つ、きっ
ちり怒ってやらないと、一家の主として示しがつきません。

「ね~、カアチャン。もしかして目覚まし時計とか、止めたりしませんでした
か~?」
「さっき、ウ~ンうるせとか言って、自分で止めてたじゃない」

あっれ~。そうなの? 私? そういえば昔から目覚ましが鳴らないことが良
くあったけどあれは、わ・た・し? やはり2時に寝て4時半に起きるのは無謀
であったか。

と、いうことでその日の夜。息子A、息子Bと一緒に布団に入ります。当然、全
然眠れません。

羊が一匹、羊が二匹.......
自転車が一台、自転車が二台.......
眠れません。
百恵ちゃんが一人、百恵ちゃんが二人.........
よけい眠れません。

パイ中間子が、アップクォークと反ダウンクォークで
崩壊モードはミュー粒子とニュートリノ.........
グー。

チュン、チュン。鳥の鳴き声が聞こえます。まだ明け切らない、蒼い空がカー
テンの隙間から見えます。オー、朝だ、朝だ。

カアチャンも、息子Aも、息子Bも静かな寝息......中に約一名、うるさいやつ
もいますが、仲良く寝ています。みんなを起こさないように、静かに部屋を出
て、コップの水を一杯。体にしみわたります。窓を開けると朝の空気が鼻の奥
をくすぐります。

気っ持ちい~。なんか頭がすっきり、さえているような。仕事しよっ、仕事。
お! なんか集中力が。仕事がはかどります。カアチャンが起きてくるまでに、
仕事いっぱい終わっちゃいました。その上、一日が長いんです。午前中だけで、
いつもの一日分の仕事が片付きました。

い・い・か・も・し・れ・な・い。

夏の、日が長いうちは早起きしよ。でも、冬は夜が明けるのも遅いし、朝は寒
いから早起きはしないよね。

と、思っていたのですが、我が家のビデオは録画機能が壊れて使えません。で
ね、私の住んでいるところでは、日曜日の朝5時半から9時半まで息子Aと息子B
の大好きなテレビ番組が切れ間なく続きます。当然、息子Aと息子Bは5時半な
んて時間には起きてきませんので、ビデオに撮っとけと命令します。

誰かがビデオの録画スイッチを入れないといけないんですな。4時半から起き
ている私は、すっかり録画タイマー代わりに使われてしまいます。

季節は流れ、朝はいつまでも暗いまま。窓は凍り付き、外は真っ白な雪景色。
でも、息子Aと息子Bは許してくれません。日曜日の朝、5時半に起きてビデオ
のスイッチを入れる父の姿が郷愁を誘います。

結局、冬の間も5時頃起きる生活が続きました。一度早起きを始めると、なん
だか気持ちよくて、明るくなってから寝ているのがもったいなくなっちゃたん
です。

今ではすっかり早起きものさ。
カアチャンが一言つぶやきます。
「これであんたもジジイの仲間入りね」

【やえ・ひろし】フリーランス。TVCM、TV番組、VP用CG制作。各種写真、ビデ
オ撮影。
<http://www012.upp.so-net.ne.jp/h_yae/>

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■展覧会案内
最澄と天台の国宝 天台宗開宗一二〇〇年記念特別展
<http://event.yomiuri.co.jp/2006/tendai/event.htm>
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会期:3月28日(火)~5月7日(日)9:30~17:00 土日祝は18時まで 金は20時
まで 入館は閉館30分前まで 月休 5/1は開館
会場:東京国立博物館・平成館(東京都台東区上野公園13-9 ハローダイヤル
:03-5777-8600)
観覧料:一般1300円、大高生900円、小中生400円
内容:開宗1200年を記念し、上野・寛永寺の秘仏薬師如来像(重要文化財)を
はじめとする本尊仏の寺外での初公開が実現される。出品総数166件。うち国
宝31件、重要文化財100件。量・質ともに、まさに空前の大展覧会といえる。

・天台声明公演
出演:天台宗東京教区
日時:4月7日(金)18:30~19:30 本館前(雨天時は屋内)
「声明」(しょうみょう)とは、仏教の儀式において、経文などに節をつけて
唱える読経の一方法であり、一種の宗教声楽である。
聴講無料(ただし、当日の入館料は必要)

・記念講演会「近江歴史塾・司馬遼太郎が見た比叡山の魅力」
日時:4月13日(木)13:00受付、13:30~ 平成館大講堂
日時:4月28日(金)17:30受付、18:00~ 平成館大講堂
作家司馬遼太郎の代表作の一つである紀行『街道をゆく』。「街道をゆく 16
叡山の諸道」を案内した講師が、当時の様子を写した貴重なカラースライドを
用い、同作家の偉業やユーモアあふれるその人柄、また、比叡山の魅力につい
て語る。
定員380名(先着順)
聴講無料(ただし、特別展「最澄と天台の国宝」の当日の観覧券が必要)


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■編集後記(4/4)
・ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさん(ケニア共和国副環境相)
の提唱する「もったいない」運動は、本当は日本人がやるべきだったと思うけ
ど、やはりこういうのも外国人に「発見」されて世界中に拡がって、日本にも
影響を与える「外圧」スタイルのほうが効果的か。いや、意外に盲点だったか
もしれない。「もったいない」という言葉に、3Rの精神がこめられているとい
うマータイさんの発見は。いうまでもないが、3Rとは消費削減(Reduce)、再
使用(Reuse)、資源再利用(Recycle)のことである。そこでにわかに注目さ
れはじめたのが風呂敷である。こういう動きにすばしっこく対応したのが、リ
クルートのクリエイションギャラリーG8である。昨日から、30人のクリエイタ
ーが創り出す現代のフロシキ「FUROSHIKI」展を開催している。リクルートで
は団扇や手提げ紙袋にデザインするという試みもやっているので、またかい、
今度は正方形の布にデザインするのね、って感じもして斬新な企画とは思えな
いが意義あることではあろう(って、ほめてるのか、けなしているのか?)。
「もったいない」場面には、つい最近遭遇した。先日の居酒屋での「飲み放題
宴会」である。ずいぶんたくさんの食べ残しがあるではないか。じつにもった
いない。しかし、料理はまずくはないがうまくはなかった。居酒屋でも一品ず
つ注文するスタイルなら、まず大量の食べ残しは発生しない。しかし安価なコ
ースとなるとそうはいかないようだ。以前、ちょっと高い料理屋でサービスラ
ンチ食べながら会合をもったとき、女性たちは残ったものを包んでもらってい
た。「これ主人の夕食ね」なんて言ってたが、ほほえましく感じたものだ。安
い居酒屋での食べ残しをもったいないと感じるわたしは、もしかしたらおばさ
んなのかもしれない。                     (柴田)

・親が心配してメールをしてきた。病院に行かなくて良いのか、骨にヒビなど
は入っていないのか。そういえば骨折やヒビってやったことないなぁと。経験
者の弟に聞く。何日経っても痛みが治まらず、何が何でも病院に行きたいと思
うのが骨折やヒビだと教えてもらう。ローキックよりも痛くないなら大丈夫だ
ろう、ま、これぐらいの痛みなんて平気、なんて思っていたら翌朝に腰の調子
がおかしい。痛みをかばって寝ていたら、左足が麻痺。正座してしびれている
のに似ている。慌てて、ソフトストレッチ。起き上がることはできたが、腰を
曲げると固まる。ぴきーん、という音が聞こえるような感じ。なかなか戻せな
い。泥棒になったみたいに抜き足差し足。スロー、ソフト、サイレントの3Sを
テーマに過ごす羽目に。注意一秒、ですな。        (hammer.mule)

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発行   デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
リニューアル  8月サンタ
アシスト    鴨田麻衣子

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