[2012] 「写真時代」がくれたもの

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<こういう「びっくり」なら大歓迎>

■デジアナ逆十字固め…[12]
 「写真時代」がくれたもの
 上原ゼンジ

■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト[112]
 FileMaker 8.5登場!!〜その1:概要〜
 茂田カツノリ

■展覧会案内
 JAGDA新人賞受賞作家作品展2006

■イベント案内
 ・イメージを具現化するテクニックやアイデアを学ぼう
 フォトグラファー・所幸則氏を迎えて
 ・AマークプロジェクトxPod Academyセミナー
 第一回「教育/学習用ポッドキャスティングが創る新たな未来」


■デジアナ逆十字固め…[12]
「写真時代」がくれたもの

上原ゼンジ
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私が大学に入った80年代初めというのは雑誌が魅力的だった時代だ。「FOCUS」や「写楽」「Number」「BRUTUS」「CanCam」といった雑誌が創刊された頃でもあるし、「ガロ」や「話の特集」「噂の真相」「本の雑誌」「広告批評」といったサブカルチャー系の雑誌に勢いがあった時期でもある。

そんな中で私が一番好きだったのは、1981年9月に創刊された「写真時代」(白夜書房)だ。創刊から1988年の終刊まで、増刊号も含めてコンプリートで買い続けた熱心な読者だった。

「写真時代」にはいろんな側面があったので、一言でどんな雑誌だったのかを言い表すのは難しい。でも、あえて一言で言うとすれば「エロ雑誌」かな(笑)

当時はビニ本の時代でもあった(と決めつけてしまうと、ビニ本とは何の関わりもなく生きてきた人には迷惑か)。大学の校舎があったのは水道橋。古本屋が密集した地帯だ。その古本屋が次々とビニ本屋へと姿を変えていった頃でもある。

ビニ本というのは「ビニール本」の略。女性のヌードが掲載された写真集を一冊ずつ透明のビニール袋にくるみ、専門の書店で販売していた。当時はヘア解禁とはなっていなかったので、薄いパンティー越しにヘアが透けて見えるという写真が、殿方からの人気を博していた。

また、これとは別に自販機本というものがあり、普通の書店では売っていないようなエロ雑誌が独自のルートで流通していた。そんな状況で登場した「写真時代」は、大手取次を経由し一般書店で販売されるような雑誌であるにも関わらず、ヘアが写った写真が掲載されていたという点で画期的だった。

といっても、これは法律に触れるようなことだったので、編集長の末井昭氏は毎号のように警視庁から呼び出され、始末書を書くハメとなる。

誌名は漢字四文字でちょっと硬めの「写真時代」。表紙にはアイドルの写真を使い、普通の書店で販売されている。しかし、中には当時としては、ひじょうに有り難みのあるものが掲載されている。ということで、雑誌としては成功を納め、全盛期には30万部も売れる雑誌になった。

ただ、そういった実用目的で読者を獲得する一方、荒木経惟、森山大道、倉田精二、赤瀬川原平、木村恒久、高杉弾、南伸坊といった売れ行きにはあまり貢献しなさそうだが、怪しく面白い連載陣を擁する文化的にも価値のある雑誌だった。

まず、荒木さんが同じ雑誌の中で三つも連載をしていたので、そのイメージがすごく強かった。その後、荒木さんがブレークしたのは、やはりこの「写真時代」での末井さんとのタッグが大きかっただろう。

森山さんも創刊から連載を初め「光と影」「仲治への旅」といった写真集の名作が生まれている。アートもエロも思想も無思想も、すべてがごちゃ混ぜになったエネルギッシュな雑誌だった。

私は大学3年の時に赤瀬川さんが先生をしていた美学校に通うことになるが、それは「写真時代」の影響が大きかったと思う。「父が消えた」を尾辻克彦名で執筆し、芥川賞を取ったのが1981年で「写真時代」の創刊と同じ年。「父が消えた」は特に大きなドラマのない不思議な短編だったが、「写真時代」により、アーティストとしての側面を知ることになる。また、美学校に通い出す前年にトマソン観測センターが発足し、トマソンもブレーク寸前だった。

美学校と「写真時代」のつながりは強く、「写真時代」で連載をしていた南伸坊、渡辺和博は美学校の先輩。創刊時の編集者森田富生も先輩だし、同級だったウチダ君はその後、白夜書房に入社して「写真時代」編集部に配属される。

当時、「写真時代」の編集者はヌードモデルのカラミ役として登場することが必須だったが、ウチダ君も荒木さんに気に入られ、「白夜の玉三郎」として頻繁に登場することになる。末井さんからは「編集者は脱いでれば間違いない」と言われたそうだが、まあ今の白夜書房とは縁のない特殊な教えと言えそうだ。

すごく猥雑で色んなものが詰まった雑誌だったが、こんな雑誌はもう二度と現れないだろうと思う。一つにはヘアの解禁の問題がある。別に見慣れてしまった現在では何ということはなくなってしまったが、当時はちょっと毛が出たくらいで大騒ぎをするような時代だった。そんな中でエロを追求する創意工夫が面白かったのだが、最早そんな規制もなくなってしまった。

あんまり、あの頃は良かった的な言い方はしたくないが、インターネットを使い、多様化したエロに簡単にアクセスできる現在では、エロを考え、エロで遊ぶような雑誌が持てはやされることはないだろう。ちょっと窮屈だったあの頃の方が、幸せだった気もする。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
「すぐにわかる! 使える!! カラーマネージメントの本〜仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル」(毎日コミュニケーションズ)が発売中。
< http://book.mycom.co.jp/book/4-8399-1937-2/4-8399-1937-2.shtml
>

先週、尾仲浩二さんの写真展に行ってきた。尾仲さんは「写真時代倶楽部」から派生して生まれた「FOTO SESSION '86」に参加していた頃の兄貴分だ。尾仲さんはネガカラーを使い、旅で出会った光景を記録している。懐かしい感じなんだけど、ベタベタしていない。不自然ではないんだけど、わずかにズレてる。モノクロのスタイルで、そのままカラーの表現が出来てしまった希有な例なんじゃないかと思う。
自分で紙焼きまでやっているおかげで、すごく微妙なニュアンスがコントロールされている。オリジナルプリントをわざわざ観に行くに値する写真展だと思う。
・尾仲浩二
< http://onaka.mods.jp/
>
ツァイト・フォト・サロン
< http://www.zeit-foto.com/
>

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■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト[112]
FileMaker 8.5登場!!〜その1:概要〜

茂田カツノリ
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どうも、茂田です。intel Macの快適さにうっとりしてたら、PowerMac G5がスネて壊れました...。

●FileMaker 8.5発表!!

この月曜日(=7月10日)夜、つまり米国東部標準時間の朝イチに、突然発表された「FileMaker Pro 8.5」と「FileMaker Pro Advanced 8.5」。そこでこれから数回、その新機能についてのご紹介をさせていただく。

念のためだが、発表されたのはあくまで米国の英語版であり、日本語版がいつになるかは現時点では不明。

今回はFileMaker 8.5の概要と、一番の目玉機能である「FileMaker Webビューア」についてご紹介しよう。

FileMaker 8.5のMac版は、もちろんintel Mac対応のUniversal Binary版。半月後に開催されるAppleの開発社会議「WWDC」の前に、FileMakerのようなメジャーアプリケーションがUniversal Binary化されたというのは、Macユーザにはうれしい限りだ。

intel Macの速さ、そしてMacBookに代表される各機種のコストパフォーマンスの高さは素晴らしいし、なんつってもWindowsがそこいらのWindowsマシンよりずっと高速に動作するんだから、もう普通のPCなんて買ってる場合じゃない。

・AppleのCM
< http://movies.apple.com/movies/us/apple/getamac_ads2/touche_480x376.mov
>
だからAdobeさんも、もっとUniversal Binary化を急いでほしいなあ。

●8.5日本語版はいつ?

昨年のFileMaker 8は、米国で8月29日発表され、日本発売は11月中旬と、2か月半のブランクがあった。今回の米国版リリースでは、「90日以内に発売」とされているので、やっぱり昨年と同じくらいのペースだと思われる。

・FileMaker社のニュースリリース
< http://www.filemaker.co.jp/news/p20060711.html
>

実はあまり大きな声ではいえないが、昨年のFileMaker 8では日本発売の直前に、米国のサイトでダウンロードできるトライアル版に日本語のファイルも含まれるようになり、日本のパソコンにインストールしたら普通に日本語版として使えた、という話がある。

その後、米国で英語版として購入したFileMaker 8にもちゃんと日本語用ファイルが含まれていて、どこで買っても大丈夫という、実にいまの時代にマッチした展開になっていた。

米国ですでに発売されているFileMaker 8.5は僕も購入し使用しているが、現時点では英語版としてしか使えない。これが今後どうなるかはわからないけど、どうせならFileMaker 8と同様になってくれるとうれしい。

FileMaker業界最大のイベント「FileMaker Developer Conference」(以下「DevCon」)が8月14日から開催されるから、何か発表あるとしたらそのときだろうというのが大方の予想だっただけに、この時期の発表はちょっとびっくり。

これは米FileMaker社のアグレッシブな姿勢のあらわれだと思うから、僕はかなりうれしかった。こういう「びっくり」なら大歓迎だし、日本のファイルメーカー社も、ぜひこういう「びっくり」をやってほしいなと思う。

●目玉機能は「FileMaker Webビューア」

FileMaker 8.5の一番の目玉機能は「FileMaker Webビューア」。これはレイアウトモードでWebビューア用の枠を描いたら、そこに指定されたURLのWebページや画像ファイルなどが表示できる、というもの。

いままでも、ローカルの画像ファイルなら所定の形式でのパスを計算フィールドに入れることで表示はできていたが、それをインターネット上のファイルにまで拡張した上で、さらにHTMLなどの表示にまで守備範囲を広げたというものである。

ちなみに画面表示はMac版ならSafari、Windows版ならIEという、OS標準のブラウザエンジンをそのまま使っている模様。その証拠に、たとえば標準ブラウザでmixiにログインしてからFileMaker側でmixiを表示すると、すでにログインされた状態で表示される。

だからFlashやAjaxなどの表示ももちろん可能。Webページ内のリンクやボタン、入力フィールドなどもブラウザと同様に動作する。別ウインドウを開くリンクをクリックした場合は、ブラウザのほうで表示される。

GoogleサーチやGoogle Maps、Wikipediaなどの代表的なサイトについては、リンク先やパラメータ等の情報があらかじめ用意されているので、URLに埋め込まれたパラメータの形式をいちいち調べなくても、すぐに利用できる。

この新機能は、FileMakerの可能性を大きく広げてくれる素晴らしい存在だ。どう使うかについてのアイデアはちょっと秘密だけどね。

●FileMaker 8.5のそのほかの機能は「recrear.jp」でご紹介!

FileMaker 8.5のそのほかの新機能は、僕の所属する有限会社レクレアルのサイトでも少しずつご紹介してゆくので、見てみてほしい。また8.5についてのご質問も受け付けているので、お気軽にお問い合わせください。

・有限会社レクレアル
< http://www.recrear.jp/
>
・FileMaker 8.5新機能へのご質問はこちら
< shigeta@recrear.jp >

※タイトル冒頭に「FileMaker 8.5質問」と書いてください。
※ご質問への回答は、レクレアルのWebサイト、またはデジクリでのみ行ない、個別のご対応は致しません。
※あ、でも個別コンサルティングをご希望されるなら、ぜひお声がけください。
※ご質問なさる方は、必ずお名前を名乗ってください。Webサイトやデジクリ上ではすべて匿名扱いと致しますので(ときどきいるんですよ、いきなり名前も書かずに質問メールしてくる方が....)。

【イベント情報】
▼『Adobe IDEAS 2006』 8月4日(金)13:00〜20:30
< http://www.info-event.jp/adobe/ideas2006/
>
Webデザイン、グラフィックデザイン、映像制作に携わるクリエイターを対象としたイベント。アドビ+マクロメディア統合後、クリエイター向けとしては初のイベントとなる。夜のスペシャルイベントは、なんとTOWA TEIさんがDJだよ〜。

▼『FileMaker Fun Night! AppleStore銀座』 8月26日(土)18:00〜19:00
< http://www.sevensdoor.com/event.html
>
「夏休みデベコン報告Special!」
フロリダで開催のFileMaker Developer Conferenceに参加したsevensdoorメンバーが、帰国直後のレポートを致します。Tipsコーナー、デベコン土産プレゼントなども盛り沢山!

【しげた・かつのり】shigeta@amonita.com
Webコンサルタント/プランナー & FileMakerデータベースデザイナー。3月に産まれたわが第3子はすくすくと成長し、ニコニコと愛想を振りまいて僕の親バカをどんどん助長してくれている。ああ、赤ん坊ってカワイイなあ。

[有限会社アモニータ(Web制作/プランニング/出版プロデュース)]
< http://www.amonita.com/
>
[有限会社レクレアル(FileMakerソリューション開発)]
< http://www.recrear.jp/
>
[Max_blog —“インターネット拾いモノ”でも執筆中]
< http://www.maxwald.co.jp/
>
[mixi —“永吉克之Fan☆Club”コミュニティ]
< http://mixi.jp/view_community.pl?id=94983
>

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■展覧会案内
JAGDA新人賞受賞作家作品展2006
< http://www.jagda.org/news.html#200604-24
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会期:7月10日(月)〜7月20日(木)9:00〜17:15 土日祝休 最終日15:00
会場:平和紙業(株)大阪本店 ペーパーボイス大阪(大阪市中央区南船場2-3-23/TEL.06-6262-4540)
内容:毎年、JAGDA会員作品集「Graphic Design in Japan」出品者の中から、39歳以下の新鮮かつ作品の質の高いデザイナーに「JAGDA新人賞」が贈られています。24回目となる今回は対象者129名の中から、菊地敦己氏、関本明子氏、高井薫氏が選ばれました。新世代を担う3氏の受賞作および近作をポスター・小型グラフィックを中心にご紹介します。

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■セミナー案内
Creator's Forum 2006 Vol.134
イメージを具現化するテクニックやアイデアを学ぼう
フォトグラファー・所幸則氏を迎えて
< http://www.crv.ne.jp/skillup/seminar/884.cfm
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134回目を迎える今回は、「FOCUS」や「Number」の表紙をはじめとした雑誌や国内外の広告を数多く手がける、日本を代表するフォトグラファー所幸則氏が登場!!
日時:7月26日(水)19:00〜21:00(開場18:30)
会場:C&R社 PEC セミナールーム(東京都千代田区麹町二丁目10番9号C&Rグループビル)
参加料:3,500円(税込)作品集「天使に至る系譜」(定価8,820円)+参加料の場合11,000円(税込)ここだと写真集お得です!

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■セミナー案内
AマークプロジェクトxPod Academyセミナー
第一回「教育/学習用ポッドキャスティングが創る新たな未来」
< http://podacademy.jp/seminar/
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<主催者情報>

日時:8月1日(火)19:00〜21:00/セミナー 21:00〜22:30/レセプション
会場:先端ナレッジフィールド・AKIBA 3Dシアター(JR秋葉原駅前UDX 4階)
定員:100名
参加費:事前申込み5,000円、当日6,000円(共にレセプション参加費込み)
主催:キャスタリア株式会社(旧ポッドアカデミー有限会社)
協力:アップルコンピュータ、MACPOWER
協賛:ノースウエスト航空、(株)新産業文化創出研究所

内容:「学び系ポッドキャスティングポータルサイト」Pod academyは先端ナレッジフィールドとのコラボレーションによるセミナー「AマークプロジェクトxPod Academy」を開催します。
第一回の今回は「教育/学習用ポッドキャスティングが創る新たな未来」と題して日本で初めてのポッドキャスティングと教育/学習用途のセミナーとなります。特に昨年iPodを新入生全員に無料配布し、世界中で話題になった米国デューク大学のザッカリー・ポーグ氏をゲストに招き、導入に至った経緯、スキームや生徒の使用例などを紹介してもらいます。この画期的プロジェクトを成功させたその裏側は多く日本の学校のみならず、企業などにおいても参考になるはずです。セミナーは後日ポッドキャスティングで配信いたします。
セミナー終了後は会場を隣にある今東京でもっとも新しく、斬新なレストランダイニング「東京フードシアター」に移し、レセプションが行われます。参加者の方々にはゲストとのより身近な交流を図っていただけます。

●プログラム
19:00〜19:05 開会挨拶
中村伊知哉氏 キャスタリア(株)顧問、スタンフォード日本センター研究所所長
19:05〜19:20 Keynote「広がるiPodの未来」
アップルコンピュータ
19:20〜19:50 「携帯端末(ハンドヘルドデバイス)で学習するということ」
橋本大也氏 (株)データセクション代表取締役、メタキャスト(株)COO&取締役、アルファブロガー
19:50〜20:20 「海外におけるポッドキャスト最新事例紹介」
山脇智志氏 キャスタリア(株)代表取締役
20:20〜20:50 「デューク大学におけるポッドキャスト」
Zachary Pogue氏 Duke University, Jenkins Collaboratory
20:50〜21:00 ディスカッション
21:05〜22:30 レセプション

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■編集後記(7/13)
・一番近くの図書館分館に本を返しに行ったついでに、書棚をざっと見たら村上龍「半島を出よ」上下巻が揃っていたのでチャンスとばかりに借りた。2巻で3,700円もするのだから、もともと買う気はなくいずれブックオフか図書館でと思っていた物件である。2巻で1,650枚だという相当な長編であるが、わずか3日間で読み終えた。わたしは悪い読者である。ほとんどを斜め読みしたのであった。もちろん、最初のうちはしっかり字面を追っていたが、いま読んでいる部分がストーリーの展開にどういう関わりをもつのだろうかとフト疑問を持ったら、なにも忠実に読まなくてもいいんだという気分になったのだ。それはまちがいではなかった。丹念に描き込まれた登場人物のディテールは、たとえば北朝鮮軍人の生い立ちや、社会から拒否された若者たちのやってきたことなど、読んでいて楽しいものでなく、斜めに読んでもストーリーに影響しなかった。話はそれほど複雑ではない。500人近い北朝鮮特殊部隊が福岡市の中心部を制圧する。迎合せざるを得ない福岡市。うろたえて何も主体的な行動を起こせない政府。そんなとき、イシハラという自称詩人のカリスマリーダーのもとに集まった社会不適応の若者のグループが「ここでぼくちゃんたちは宣言しよう。こいつらは敵なんだ」と行動を起こし、侵略軍を殲滅する画期的な方法を考えつく。おもしろくなるのは下巻の中頃からだ。陳腐な表現だが、手に汗握る、ハラハラドキドキの連続、この奇抜な作戦は成功するのか? もう斜めで読んでいる場合ではない。じつに楽しめるぞ。村上ファンでないけど、読んでみようかという方には、全体の3/4の斜め読みをオススメする。(柴田)

・往復5時間かけての出張。緑に囲まれた、のどかな場所。緑の香りがして空気がおいしい。電車の中の乗客の行動スピードも比較的のんびりしている。ある会社の社長さんインタビューのためだったのだが、凄いことをしている企業なのに、社員さんたちは大らかでゆとりがある。笑い声が聞こえる。ピリピリした空気がなく、一人当たりのスペースが広い。海外の優良企業を思い出した。会社の業績が良いから大らかなのかと最初思ったが、そうではなさそうだ。歩いて主要な場所に行ける市内が好きなんだが、車必須とはいえ、ああいう暮らしの方が贅沢で幸せなんじゃないかなぁなんてふと思ったり。インタビューを終えてから、大阪に近づいていくと建物が増え緑が減る。スピード感も戻ってくる。何事もなかったように普段通りに仕事をするのだが、目に焼きついた緑が時々思いだされて辛いような、幸せなような。(hammer.mule)