Otaku ワールドへようこそ![32] パワフルな喪男たちの風景、あれやこれや/GrowHair

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「喪男(もおとこ)」とは、モテない男のこと。今回は、小ネタ3点盛りで。

●2次元美少女仕様:秋葉原のイタ車

「イタリアの車」ではなくて「痛い車」。で、痛車(いたしゃ)。金曜日の夜11時ごろになると、秋葉原のおでん缶の自販機があるあたりの路上に一台、また一台と集まってきて、両サイドに20台ほどの車列ができる。

その車のイタいことイタいこと。ボディーにアニメキャラのステッカーがでかでかと貼られ、作品の決めゼリフなども付記されている。「かわいいは正義!」(「苺ましまろ」より)、「恥ずかしいセリフ禁止」("ARIA" より)、「次元波動超弦励起縮退半径跳躍重力波超光速航法装備車」(「トップを狙え」より)、などなど。


集まって特に何をするわけでもなく、適当な一台を囲んでだべったり。後方ハッチを開けて、トランクに置いたパソコンで「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンディングテーマを鏡像反転映像で流し、それに合わせて数人でハルヒダンスを踊ったり。通行人に笑われるのは結果であって、目的ではない。その覚悟のよさに感嘆する人もいる。「女の子にモテそうな、高い車が台無しではないか」。そのあたり、オーナーの側の意識はどうなのだろう。

実は知り合いに痛車乗りがいて、このオフ会のことは彼に教えてもらった。知り合ったのは、例によってウチの脳内妻真紅の魔法のおかげによる。私は高校時代、とある私塾に通っていて、大学時代は講師のアルバイトとして雇ってもらっていたが、年に2回の同窓会で会ったのが、この外蛯沢氏(ハンドルネーム)である。学年は20年ばかり下。彼もローゼンメイデンのファンで、一時期は蒼星石のオッドアイに合わせて車幅灯の右側を緑、左側を赤にしていた。車幅灯はあってもなくてもよいものなので、何色にしても法的に問題なかろうと思っていたら、そうでもなかったようで、国家権力に怒られて泣く泣く戻したそうである。

痛車乗りのメンタリティの根底に共通してあるのは、まず車好きであること。オートマ車は珍しい部類で、ほとんどがマニュアルシフトである。中には、車内をロールバーでジャングルジムのように補強してレース仕様にしている車もある。「おむすび」※ がどうしたこうしたと、難しい専門用語を駆使してエンジン談義に花を咲かせている。

※マツダが実用化したロータリーエンジン。おむすび型のローターが繭形のケースに内接して回転することにより、1回転する間に吸気・圧縮・爆発・排気の4工程が、3箇所で並列進行する。

彼らは車を愛している。車を女の子にモテるための、いわゆる「モテツール」として利用しようなどという考えは、車様に失礼である。もし「私と車とどっちが大事なの」と問い詰められれば、一瞬の躊躇もなく「車」と答えそうな連中である。だから、アニメのステッカーを貼ることによってモテツールとして機能しなくなっても、少しも価値が減じることはないのである。

また、車とアニメには「美」という接点がある。車は工業製品であり、アニメはエンターテインメントであり、どちらも伝統的な美術とは一線を画するものでありながら、細部にわたって洗練された職人的なセンスに裏打ちされている。痛車師は、もともとのデザインコンセプトを汲み取った上で、齟齬を来さないようにキャラ絵をはめこみ、全体として、統一感のとれた立体アートに仕上げていく。もちろん、コストもすごくかかる。それがまた「ここまでやったのだ」という形でプライドを支えている。

どこに出しても恥ずかしくない、自慢の痛車を見せ合いっこするオフ会に、秋葉原の夜は更けていくのであった(いや、恥ずかしいんだけども)。

●中野区をオタクサンクチュアリにしよう!

6月4日(日)の夕方、中野サンプラザ前の広場に、20〜30代男性主体の大集団ができていて、ウォーッ、ウォーッと大歓声を上げている。みんなラフな格好で、頭にバンダナを巻いたお兄さんもいて、パワーみなぎり、ノリのよさ抜群。モーニング娘。の親衛隊を「モーヲタ」と呼んだりするが、いかにもモーヲターっとした感じの集団である。

アイドルのコンサートなんだろうけど、外で大騒ぎとは珍しいな、と思って見てみると、騒ぎの中心には選挙カーがあり、中野区長選挙の候補、内野大三郎氏がいる。「みなさんのお気持ちはよぉーく分かりましたぁ!」などの発言に、観衆は両腕を振り上げての大歓声で応じている。えーっと...、選挙演説の聴衆にしては、ちょっと雰囲気違うんですけど。

家に帰って選挙公報を見てみると、内野候補の公約に「東のアキバに対抗し、個性溢れる若者が活気づく西のナカノに!」とある。さらには「マンガの町、アニメの町、ソフトの町、ITの町、西のナカノに!」ともある。え? オタク推進派? ウォーーーーッ!!!

それにしても、あれだけの大応援団をどうやって動員したのだろう? ネットのどこかでお祭りになっているわけでもなさそうだし。その週の金曜、中野駅前で演説する内野氏を見つけたので聞いてみると、あれはたまたま元モー娘。の安倍なつみのコンサートがあって、集まった人たちに中野サンプラザの取り壊し計画反対を訴えたら反応してくれたのだそうで。なーんだ。ほとんどの人が区外からでは、票田になってないやんけ。

結果、現職が当選し、内野氏は5人の候補中3位であった。善戦したと言えよう。思うに、政策にもっとインパクトのある具体案が盛り込まれているとよかったのではなかろうか。今回の争点のひとつに「警察学校跡地をどうするか」があったが、例えば、メイド&コスプレ喫茶センターなんて、どうだろう。メイド喫茶も、ビクトリア調の重厚な感覚から、メイドさんとゲームのようなライトな感覚まで、様々なコンセプトのお店を取り揃え、コスプレ喫茶も、例えば池袋の「太正浪漫堂」が「サクラ大戦」をテーマにしているように、一作品一店舗で軒を連ねさせる。中野区をオタクサンクチュアリに指定し、オタクの繁殖を促そう! どうでしょ?

この際だから、オタクで政党を結成してみるのもよかろう。「萌平党(ほ〜へ〜とう:萌え平和党)」なんて、どうだろう。スローガンは、「オタクによる世界制服のときが来た!」。猫耳派だのメガネっ娘派だの、派閥ができそうな気がしなくもないが。いずれにせよ、オタクが政治勢力として台頭してくるのも時間の問題だろう。

●喪のすごい電波の共振:「メカビ」の打ち上げ

もし関係者が見て青ざめているといけないので、最初に断っておきますけど、裏話を暴露するようなことは書きませんので、ご安心下さい。それ以外の読者の皆様、すみません、焦点はずした描写を想像で補完してください。

去年の3月末からデジクリに定期的に書くようになって早々、「やっぱ書けん、降りよう」と思うことがあった。その頃発刊された2冊の本に、私が練っていた構想を包含して、さらにその上の上の上を行くぐらいのことがすでに書かれていたからである。どちらも、思想史の知識に裏打ちされた深い洞察が、力強い文章で表現されている。「逆立ちしても、かなわん」。

その本とは、本田透氏の「電波男」('05年3月)と堀田純司氏の「萌え萌えジャパン」(同年4月)である。今、考えてみると、そういう時期だったのかもしれない。オタクとは元来、なりふり構わず好きな趣味に没入する人たちであって、世間からどう見られようと無関心の気構えでよいのだが、時勢はオタクに冷たく、凶悪事件のスケープゴートにされたり、漫画やアニメやゲームの表現に規制の網が強化されたりするに至っては、自己弁護しないわけにはいかなかった。

一方、一般人の側からしても、オタクは犯罪予備軍や珍獣というレッテルでは片付けきれない何かを感じてはいたようである。両者の橋渡しとして、オタクの実態やメンタリティを一般人に分かる言葉で表現したものを、時代が欲していたのだと思う。

この強力な2人がスーパーバイザーとなってオタク文化を掘り下げる内容で、この6月に講談社から発刊されたムックが「メカビ」(メカと美少女)である。デジクリ2002号(6/29)の後記に柴田氏が書いている通り、活字がぎっしり、男たちがぞろぞろ。麻生太郎外務大臣が「ローゼンメイデン疑惑」を追及される直撃対談、読売、朝日、毎日のオタク記者の鼎談、養老孟司氏の「オタク解剖学」、森永卓郎氏の「オタク擁護論」、ビジュアル系バンド "Malice Mizer(マリスミゼル)" から独立してアニメの主題歌を手がけるGacktの語り、若手論客による「萌えの定義」など、オタク文化が遺憾なく論じ倒されている。

暴露しないとは言ったものの、どうしても蓋を押さえきれない裏話をひとつ。実は私も、というかデジクリも、間接的に一枚噛んでいるという自慢話。デジクリ1909号(2/3)で、昨年末のコミケで見つけた同人誌「萌法(ほうほう)序説」を紹介した。著者の竹林賢三氏は、私大に通う学生で、「萌え」を研究テーマにしている。メカビの編集人、松下友一氏がこれを読んで、竹林氏に原稿を依頼したのである。メカビでは想田充氏の名で、若手論客として「萌えの定義」について語っている。竹林氏には、上昇気流に乗っかって、今後も活躍することを期待したい。

さて、7月1日(土)の公開打ち上げだが、100人以上集まって、ロフトプラスワンは満杯になった。男性ばかりだろうとの予想にたがわず、ほとんどが20代後半から30代前半に見える男性で、女性の姿は2人しか見かけなかった。今回深く考えさせられたのは、喪男についてである。

開場前、地下2階に通じる狭くて蒸し暑い階段に並んで待つ男たちの列からは、不思議と「男性」という気配が全く漂ってこない。あたかも壁に向かって只管打坐する禅僧が、人の気配を殺して石のようになっているがごとし。小さな活字を一心不乱に追っていたりする。きっと女性の目からは路傍の石ころにしか映らないことだろう。

イベント中の挙手調査により、30%以上が童貞であることが判明。オタク伝承に「30歳まで童貞でいると、魔法が使えるようになる」というのがある。実際この域に達した人はそうそういないだろうと思っていたのだが、実はうじゃうじゃいるという現実を目の当たりにして、まるでツチノコの群れに遭遇したかのように感じられた。人類は男女不干渉で絶滅する?

私の小さい頃は、女性に理想の結婚相手のタイプを聞くと、判で押したように皆、「真面目な人」と言った。現在は価値観もずいぶん変わったもので、風俗遊びもしない品行方正な青年がどれほどの人気かというと、爬虫類以下である。試しに、後で知り合いの女性に「デスノートのLは童貞で逝ったのか?」と聞いてみたところ、「Lは年齢も経歴も不詳ですし、恋愛にも女性にも特には興味なさそうですが、嗜みとして済ませていると思うので、童貞とは思えません」という答えであった。童貞は気持ち悪い、好みのキャラがそれでは許せない、という心理の表れと読み取れる。

童貞の派生概念に「素人童貞」や「セカンド童貞」がある。素人童貞とは風俗店などでお金と引き換えにしか経験がないことで、セカンド童貞とは最後にいたしてから長い年月が経っていることをいう。これらも含めた広義の童貞を保つことは、妄想力を培うために重要なファクターであるとする説もある。まあ、喪男であれば、喪失の機会なんて山篭りしているのと同じ程度にしか訪れないので、特にがんばらなくても行けるのだが。
セカンド童貞歴も10年を過ぎた頃には、魔法が使えるといった特典にあずかれたりしないだろうか。それを阻止したい政府は秘密組織から女性工作員を送って誘惑しようとするが、気づかずにすれ違い……みたいな。

メカビの打ち上げは、童貞とその亜種たちが集い、喪のパワーを炸裂させたイベントだったと言えよう。寄稿者たちが登壇してのトークは熱く、深く、可笑しくて、割れんばかりの拍手が、来場者たちの満足度を物語っていた。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
カメコ。夏はイベント目白押し。コスプレサミット、コミケ、TBSアニメフェスタ。コスプレサミットは、今年から外務省が後援、晴れて国の公式行事として(?)、世界のコスプレイヤーをお招きできる。ウェブサイトには、4月28日(金)に秋葉原で麻生外務大臣が行なった演説の内容が掲載されている。イラクの給水車には日の丸の代わりにキャプテン翼の絵が掲げられたそうで、外務省のサイトで詳細を読んで感動した。/お台場の花火はレインボーブリッジの下で見てみよう。鳴き龍と同じ原理で、橋と水面との間に定常波ができて、「ぴょぴょぴょぴょ...」と間抜けな余韻が聞ける。虹龍?
< http://www.tv-aichi.co.jp/cosplay2006/ > コスプレサミット 2006
< http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/renraku_j_0412a.html >
キャプテン翼大作戦


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メカビ Vol.01
本田 透 堀田 純司
講談社 2006-06-02
おすすめ平均 star
starローゼン疑惑に答えるというわりには・・・
starこれはありがちなオタ・萌え陶酔本ではない
star先生が、

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by G-Tools , 2006/07/20