[2030] 若冲と江戸絵画展

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<若冲というタイトルは、客寄せパンダなんだよ>

■武&山根の展覧会レビュー
 「プライス大邸宅 〜お金があれば何でもできる展(とりあえず若冲)」
 若冲と江戸絵画展
 武 盾一郎&山根康弘

■グラフィック薄氷大魔王[64]
 フィギュアの塗装
 吉井 宏

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■武&山根の展覧会レビュー
「プライス大邸宅 〜お金があれば何でもできる展(とりあえず若冲)」
若冲と江戸絵画展

武 盾一郎&山根康弘
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山: どーもー。
武: こんばんわ。なんだか、呑みたくなってきっちゃうなー。
山: あ、僕今ビール買ってきたで。ビール。
武: まじすか? いーなー!
山: ぷはーっっっ うまい!
武: ずるーっ!!
山: なんで? 飲んだらええやんか。
武: はい、持って来ました。焼酎。あー、今日こそ酒を抜いてきれいな身体にしようと思ったノニー。。
山: 一日酒抜いたからってキレイになるわけないやろ。貰い煙草やめるとかな。そのほうがええで(笑)
武: トクトク・・・ングッ、あーうめー!
山: しかし今日も暑かったなー。酒は旨いし。まいったな。蝉時雨がなかなかいいですな〜。
武: 夕涼み 麦焼酎と 蝉の声 詠み人知らず
山: わはは。誰やねん。

●【プライスコレクション 若冲と江戸絵画展】/東京国立博物館

武: ということでね。行ってまいりましたよ!「若冲と江戸絵画展」。暑かったです。東京国立博物館ですね。
< http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=3119
>
山: プライスさんのコレクション展ですな。ってタイトルそのままやけど。しかしけっこう人来てたなあ。なんか、最近行く展示にはお客さん仰山入ってるから、意外とみんな行ってんちゃうの? 絵を見に。
武: ははは。そうかも知れないけど、大メジャー展だからね。
山: そっか。客入ってなかったらそれは問題か。
武: 勝ち組に殺到してるって感じもしなくはないよな。
山: いったいどこの誰が勝ってるんかねー。
武: オシム(笑
山: おお。勝った勝った、、ってようわからんわ(笑

●展示のメインは若冲ではない

武: でさ、まあ、江戸絵画の中心、画壇というかそういうのを観た訳じゃん。
山: そやね。狩野派(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%A9%E9%87%8E%E6%B4%BE)中心やったんかな。

武: 土佐派(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E4%BD%90%E6%B4%BE)とか。現代だと、何になるんかな?

山: うーん、村上隆派(笑)。画壇ちゃうけど。
武: 日展?(笑
山: 国画会とか。和田氏の。(笑
武: ははは。それって沢山人来るのかなあ?
山: そこそこいるんちゃうかなあ。若い人はあんまりいなさそうやけど。
武: で、今こうして江戸時代の画壇展示に若い人も含めて人が一杯観に来る、と。
山: そうなんよな。若い人もけっこうおったな。
武: 絵を描く人が来るなら分るけど、みんなホントーに興味があるんかなあ?
山: 熱心にメモとったり、じーっと見てた人もけっこうおったな。若い人で。芸大の学生か?
武: うん、画学生とか、イラストレーターとかデザイナーとかいったプロのような気もするが。でさ、こういった江戸絵画って俺の場合、なんつーかな、正直コーフンはしないんだよ。
山: ほう。興奮しないんや。
武: なんでだろうなあ、、、なんか、ピシッとし過ぎてるのか、なんなのか、絵を観てなかなか遊べないんですよ。
山: うーん、なんやろな。じゃあ例えば若冲だけの展示やったら?
武: あー、コーフンするだろうなあ。
山: なんで?
武: とある一人を追った展示の方が入り込みやすいのかな。「個」という断片から、世界を観ようとした方が分かりやすいんかも知れないんだよなあ。
山: そうかもなー。展示って、コレクション展とかグループ展とかいろいろあるけど、結局そういうのって的が絞れてるんか絞れてないんか、見てる方はよくわからんようになるんよな。
武: で、コレクターであるプライスのおっさんの目線とか、選ぶ絵画の傾向とかを探れるのかな? って思ったんだけど、それはちと分らなかった。
山: むしろ、絵じゃなくてプライスさんその人を追ってくれてた方がわかりやすかったかもな(笑
武: ははは! それはある! 今回の展示の最大の特徴はガラスを外して生で絵を見せたコーナーがある、というところですよね。つまり「若冲」ではない。若冲というタイトルは、客寄せパンダなんだよ。
山: ほほう。確かに若冲の部屋はすごい混みようやった。

●生の絵と光の演出

武: ガラスを外して生で観せた、というのはとても良かったんす。じゃあ、その他の殆どの作品群をどーして生で見せてくれないの! って思っちゃったのよ。
山: うん。他のはきっちりガラスの向こうにあったからな。
武: ガラスって透明なもんだけどさ、それが間にあると明らかに「向こう側」にしか感じられなくて、「絵」に辿り着けないんすよ。「資料」に見えちゃうのよ。
山: ま、実際資料やろうけど(笑
武: うーむ。。。確かに。
山: 資料に興奮できないってことはないからな。
武: なる程。。。確かに。
山: 僕は資料に興奮するタイプ(笑)。実は絵を、というか展示を殆ど資料的に見てしまうとこあるんよ。最近はそうでもなくなったんやけど。
武: ふむ。でね、生絵の展示が俺的にはオモロかったのよ。
山: ほう。
武: ガラスを外して見せるだけでなく、光りを変化させて見せてたじゃないですか。当時電気はないから、一日の中で絵は自然光で刻々と変化する。絵は「静止画」だと思いがちだけど、この当時「動画」だったわけですよ。
山: 動画か。
武: 江戸時代「絵」は環境の中の「たたずまい」としてあったんだろうな。屏風とか掛け軸とか。太陽の昇り降り、月の昇り降り満ち欠け、そして、あんどんの光、1秒たりとも同じ条件の光ではない訳でしょう。その仕様にあわせて絵は描かれていた、と。
山: 当時の絵は一つのイリュージョンを作り出す装置やった、ということも考えられるな。
武: 光が落ちて行くとき、黄昏時はなんかグッと来たけどね。
山: いい感じやったね。確かにそこで「一日」を感じた。そやけど途中で真横からの光になったやろ?
武: あー、なんかなってたね。
山: 超劇的な(笑)あんな光、日本にはない(笑)
武: そだねー。せっかく柔らかく変化していく様を見せようとしてたんだからな。
山: どうせやったらもっとリアルに再現してほしかったな。当時の状況をほんまに絵の周りに作ってまうとか。
武: あー、そだねー。
山: 確かに劇的になれば、おお、とか思うかもしらんけどリアルではないわな。
武: あ、今、図録見てるんだけど、
山: ほい。
武: 江戸絵画はどんな光で見るか、見せるかというところで「プライス邸に差し込む光は、アメリカ西海岸に面した芝生方面からの強い光が基本となっている」だって。
山: ん? 西海岸? なんじゃそりゃ! わはは!
武: あの、違和感のあった強烈なライティングはプライス邸の再現なんじゃよ!
山: ・・・どないせいちゅうねん!!!
武: 日本家屋は「闇」なんだけどなー。

●勝手に展覧会のタイトルを考えてみる

武: ちょっと展覧会のタイトル変更してあげないといけないよなあ。「プライスコレクション 江戸絵画 〜若冲もあるよ〜展」とか。
山: やっぱ「プライス 〜アメリカのお金持ちが江戸絵画で遊んでみました〜展」やな。
武: 西海岸の光、バンバン!
山: 欧米かよ!
武: タカアンドトシかよ! じゃあ「江戸絵画 〜アメリカ西海岸のサンサンとした光で見る〜展」かな。
山: ちゃうな。「おしゃまなプライス 江戸絵画大好き!展」やろ。
武: ははは、こんなのは?「プライスおじさん 江戸をカリフォルニア化展〜おまけ若冲〜」。
山: わはは!
武: 英語で笑いなさい。
山: ふぉっふぉっふぉ。
武: 日本語じゃん!
山: そうか。「プライス大邸宅 〜お金があれば何でもできる展(とりあえず若冲)」やな。
武: WAhahahahaha!
山: 欧米かよ!

●若冲の絵

武: はは、若冲にいってみよか。
山: そうやな。どうやった? たくさんあった訳ではないが。
武: 若冲の連作、「花鳥人物屏風絵」とか「鶴図屏風」、オモロかったねー。
山: どういうとこでおもろかった?
武: まずね、構図なんすよ。主体がボーンと真ん中にいることはまずない。
山: ん? 鶴は真ん中にいたんちゃう?
武: 鶴はね。。。鶴の場合、簡略化のさせ方が凄いですね。一筆でくるんと鶴の身体を描いちゃったりしてるのよ。で、若冲ってどこかユーモラスなんだよね。鳥とか、かわいい。
山: そうやなー。センスええなーって感じやね。
武: うん。絵が「止まってない」感じがするんよ。
山: 動きを感じる絵が多いよな。
武: そうそう。「映像的」なんかな。
山: 若沖は鶏ばっかり見てたせいやろか。鶏止まってないよなー。
武: あと、なんといっても「鳥獣花木図屏風」(http://www.fujitv.co.jp/events/art-net/go/022_large04.html)ですよ! タイルで描いてる。コレ実は若冲が描いたかどうかは正確には分からないらしいんだけど。若冲にしか描けないだろうなあと、思ってしまう。

山: あれは相当いかれた絵やな。当時あんなわけわからんことやる人ってそんなにおらんやろうしな。
武: この世界観はスゴイよね。空中が水面にもなってるし。
山: 若冲って基本的には見て描いてそうやん、本物とはかなり変わってるにしても。しかしあの絵には見て描いた感じはまるでない。完全に空想的。他の絵とは異質なんよな。
武: そうなんだよなー。象、トラ、らくだ、孔雀、麒麟、日本にはいないしね。
山: らくだはいたかもしれん。オランダかどっかから連れてきて。
武: あれ、そうだったけ。。。
山: まあ、ほんまに見たことあるかないかは別として、ちょっと違うねんな。画法が違うからそらそうなんやけど。っちゅうか、あの画法はなんや?
武: タイルにする意味あったのだろうか。。。そこら辺からして意味不明だもんな。
山: 意味・・・なんやろ・・・。わからん(笑
武: 小さいカモ(オシドリ?)が散りばめられていて、これがまたカワイイ。
山: 誰かから依頼があったんちゃうか?
武: そりゃーそうだろう。これだけの大作だもん。
山: ということは、そういう風に描いてくれって言われたわけやんなあ?
武: うーん。図録をみてるけど依頼者とかの情報はないな。
山: かってに描かへんよなあ? こんなん。
武: で、六道を描いてるらしいので仏教? ってことは寺が依頼したのかな?
山: 六道? うーむそうは見えない(笑)動物ばっかり。
武: 地獄道(じごくどう)、餓鬼道(がきどう)、畜生道(ちくしょうどう)修羅道(しゅらどう)、人間道(にんげんどう)、天道(てんどう、天上道、天界道とも)。畜生道の世界を描いたんかな? 鶏ばっか描いてたわけだから動物になりたかったのかも知れないし。畜生道楽園かの。
山: よく言われてるけど、確かにアニメ的、漫画的やね。
武: ただ、若冲の構図ってスタイリッシュじゃん。けど、この絵はかなり野暮ったい構図だよね。
山: そうやな。それこそ動きはまるでない。
武: だから、ホントに若冲か? ってところは多少はある。けどこの絵の世界観はホントにオモロい。ストイックじゃなくて、のびのびしてるんだよなあ。
山: 今見つけたんやけど。
[墨絵のパフォーマンス]「水墨画は中国唐代に発生したが、その草創期の画家王墨(あるいは王コウ)は、酒に酔い、墨をそそぎ散らし、手や頭髪でこすりつけるなど、きわめて乱暴な制作態度をとったという。発祥の原点においてそうであったように、墨と水のたわむれをうながして、偶然的な効果が期待される、本来的に抽象性の高いこの絵画表現は、観客を周囲にはべらせて見守らせながらするパフォーマンスがよく似合うものであった。」……と「伊藤若冲/新潮日本美術文庫」に載ってた。
武: おー、オモロいねーライブペインティングか! しかも酔っぱらって!若冲が日本の模写じゃなくて、中国源流を学ぼうとしたのはそこらへんもあるんかもね。
山: 「若冲は(中略)筆を使う奇異の水墨画法で喝采をあびたものであった。」とあります。
武: 筆を使う奇異の水墨画法ってなんじゃ?
山: 例のあれやろ、菊の絵とか描く時に使ってた技法。なんやった? 展示に書いてた。ああ、筋目描き!
< http://park5.wakwak.com/%7Ebirdy/jakuchu/trip/gallery02.html
>
武: あー! これ!
山: 描く時になんにもないとこからどんどん形になっていく風に見えるらしい。
武: なるほどー、増殖して、立ち現れてくるわけだ。描いてる過程が楽しそうだよな。

●展覧会のコンセプトは?

山: うーん。若沖はやっぱり好きな作家やから、ほんまはもっと言えそうなんやけどなー。なんかあんまり。。
武: 若冲に絞って言及出来ない展示だったからね。
山: これにはさっきの客寄せパンダとちゃうけど(若冲を冠にして集客しないと)お金の問題とかもあるんやろうしな。やっぱりプライスさんその人にもう少し絞れる展示やったら良かってんけど。
武: そうだよなあ。ちょっと広く見せ過ぎたんかのー
山: 例えば、プライスが何を考えているか、でええんよ。なんでおまえはそんなに江戸絵画集めたんや? そこを知らせてほしい! というか展示で見せてほしい!
武: そういうのあるなあ。
山: お前の家の光なんて知るかい! うちの光でも見せたろか?
武: わはは! 俺の家は風通しいいよ。
山: うちの光では人来んわな。。。
武: ブツが陳列してあったけど「人」が見えてこなかった展示ではあったよな。博物館的に江戸絵画を知る、という展示だったのかの。
山: ってか、博物館やん!

【プライスコレクション 「若冲と江戸絵画」展】/東京国立博物館
< http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=3119
>
会期:2006年7月4日(火)〜8月27日(日)
会場:東京国立博物館 平成館(上野公園)
時間:9:30〜17:00(毎週金曜日は20:00まで、土・日・祝日は18:00まで開館。入館は閉館の30分前まで)
料金:一般1,300円、大学生・高校生900円、中学生以下無料
交通:JR上野駅公園口・鶯谷駅より徒歩10分/東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分

巡回
●京都国立近代美術館 平成18年9月23日(土)〜11月5日(日)
< http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2006/349.html
>
●九州国立博物館 平成19年 1月1日(月)〜2月25日(日)
< http://www.kyuhaku.com/pr/exhibition/exhibition_top.html
>
●愛知県美術館 平成19年 4月13日(金)〜6月10日(日)
< http://www-art.aac.pref.aichi.jp/
>

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/開店休業グラフィックデザイナー兼画家】
・新宿西口地下道段ボールハウス絵画集
< http://cardboard-house-painting.jp/
>
・夢のまほろばユマノ国
< http://uma-kingdom.com/
>
mail: take_junichiro@mac.com
【山根 康弘(やまね やすひろ)/阪神タイガース信者兼画家】・交換素描
< http://swamp-publication.com/drawing/
>
・SWAMP-PUBLICATION
< http://swamp-publication.com/
>
mail: ymn_yshr@ybb.ne.jp

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■グラフィック薄氷大魔王[64]
フィギュアの塗装

吉井 宏
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ワンフェス(ガレージキットの祭典「ワンダーフェスティバル2006夏」海洋堂主催)に行ってきた。入場制限がかかるほどの混雑だったけど、初めて行った一年前とは微妙にちがった印象。前回はその造形のすごさと情熱に単純に圧倒させられたが、今回は技法の難易度や造形材料について多少は知っているので、もうちょっと突っ込んだ部分まで冷静に観察することができた。そうなると、やはり形そのものの出来や、造形の詰めや仕上げ具合がとても気になってくる。すごいものはすごいが、すごくないものはすごくないのであった。

ところで、ある展覧会用のアクセサリーとして小さなフィギュアを作った(9月まで公開しません)。キーホルダーか根付けのようにぶら下げるもの。以前にCGで作ったキャラクターを元にしたのだが、今回よくわかったのは、CGそのままの形をフィギュアにしてもあまりおもしろくない、ということ。同じ形でも仕上がりサイズの大小によって微妙にデフォルメしなくてはいけないようだ。作ったのは6.5cm程度なので、CGのオリジナルよりもかなり丸っこくデフォルメしてみた。

とりあえず三つだけレジン複製して二つ塗って仕上げることに。何がつらいってやっぱり塗装が一番大変。手塗りなので一個塗るのに何時間もかかる。とてもめんどくさい。最初はボディを二色で迷彩的塗り分けをしようと思ったのだが、あまりの面倒さに途中までやりかけて断念。マジに1個に丸一日かかってしまいそうだった(目はクロマテックで作ったので楽だったけど)。なにかいい方法を見つけないと販売用に何十個の量産なんかとてもじゃないけど無理。

Webで調べてみると、中国の工場では銅製の型を当ててエアブラシを吹くようだ。日本のソフビ工場などでも金属製の型を当ててエアブラシ。色数分の金型が必要なため、めちゃめちゃコストがかかるようだ。他にはパッド印刷(タンポ印刷)という方法があるらしい。うちにあるいろんなフィギュアをルーペで観察すると、多くのソフビが「型とエアブラシ」の方法で塗ってあるようだ。

ということは、原型を元に型を作ってエアブラシ吹けばいいんだな。試してみる。シリコーンで作れないかと思ったけど、塗り分けラインを正確に切り抜けないしミスった場合に修正が不可能。じゃあ、パテではどうか。ポリエステルパテは強度が足りないっぽいので、まずエポキシパテで作ってみた。原型(元の原型じゃなくて複製だけど)にワセリンを塗りたくった上にエポパテを盛って待つこと数時間。見事に原型に接着されてしまった。取れない〜。

どうにかバリバリと剥がし、次はポリパテ。こちらはうまくいった。でもやはりもろい。補強にエポパテを盛り付けてる最中に割れてしまった。もう一度ポリパテで作り直して、今度は注意深くエポパテを盛り付けて補強。塗り分けラインをデザインナイフやヤスリで削り出し、なんとか完成。

で、禁断のエアブラシを買ってきた。なぜ禁断かというと以前書いたように「部屋中に塗料とシンナーをまき散らす野蛮(笑)な道具」だと思うから。しかし、ここまできて引き返せるか〜。うまくいくかテストしてみた。地色を塗った上に型を当てて固定し、エアブラシで一色目を吹き付け。うまくいった。二番目の型を当てて二色目を吹く。こちらは塗料が濃すぎてツブツブ状になってしまい、ちょっと失敗。

でも、中国の工場で塗装したような、ちょっと柔らかい境界線で美しい塗り分けができた。こりゃあイイ!! これなら量産も苦にならない。型を作るのは時間がかかるけど、一旦作ってしまえばややこしい迷彩模様のキャラクターだって量産可能!

その後、詳しい人に「プラ板をヒートバキュームで曲げてマスクに使う方法」「ラテックスを厚く塗って切り抜く方法」なども教えてもらった。またいろいろ試してみるつもり。

【吉井 宏/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com
初めての3DCGキャラクターアニメーション仕事がリテイクも含めてほぼ終了。約15分75カットにくらべりゃ、前に作るぞと言ってたオリジナルアニメ15秒なんか、まったく屁みたいなもんだ〜! と思ってしまいそうになるけど、やっぱこういう大変な作業ってのは、気合いと締切なしに完成させるのは無理ということがよくわかりました。

HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://graphic.pastel.co.jp/yoshii/
>


<応募受付中のプレゼント>
Web Designing 2006年9月号 本誌2027号(8/27締切)
< https://bn.dgcr.com/archives/20060818140100.html
>

<所幸則写真展「天使に至る系譜」開催中!>
< https://bn.dgcr.com/archives/20060816130000.html
>

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■編集後記(8/23)
・たまにテレビ放映の映画を録画することがある。かつてWOWOWを入れていた頃は、B級SF映画を中心にやたらと録画しまくったものだが、引っ越しの時にそのビデオテープはほとんど捨てた。憑きものが落ちた感じで、WOWOWもやめてしまった。今では娘がレンタルしてきたDVDをたまに見るか、テレビ録画を見るといった程度だ。先日「妖怪大戦争」が放映されたので、待ってましたとばかり録画した。雑誌「」がさかんに記事にするので(といっても、年に何回出るか分からない雑誌だが)じつは期待していた。しかも、その19号なんて18号の半分くらいしかページがない「妖怪大戦争公式ガイド」になっていて(角川映画の自社宣伝媒体だ)、京極夏彦荒俣宏三池崇史監督ら3人のキーマン(というか責任者)が自画自賛大会をやっているのである。「『ロードオブ・ザ・リング』と同じ土俵にあがるわけですから」(三池)なんて、映画を見たあとで読んだら噴飯物のセリフも。さよう、これは久しぶりに怒りを覚える超駄作、大バカ映画、歴史に残る珍作であった。制作費13億円の超大作特撮巨編、史上最高の「妖怪映画」なんて宣伝に踊らされて、映画館に行かなくてよかった。映画館は苦手だから行かないわたしだが、この映画は行こうかなと思ったくらい期待は大きかったのだ(わたしもヘンな大人だ)。しかしなー、これはひどい。こんな雑で、説明不足で、退屈で、安っぽく、テンポの悪い映画も珍しい。妖怪スネコスリはチープなぬいぐるみだし、主人公をいじめるガキどもは学芸会以下の芝居だし、メカはちゃちだし、肝心のストーリーは超つまらないし、これは誰に見せようとして作った映画なんだよ。もちろん大人の鑑賞には耐えない。子ども向けか、いや子どもだましか。監督はともかく(水木大先生もともかく)、京極夏彦、荒俣宏は本気でよくできた映画だと思っているのだろうか。映画をなめるんじゃねえ、と言いたい。(柴田)

・語り尽くした話。Web制作業界に就職を考えているのに、就職が決まらないという人たちがいると聞き、希望条件が厳しすぎるんじゃないか? という流れになった。どこも人手不足だし、新人でもない人たちなら引く手あまただろう。派遣の人なんて、エクセルとワードの簡単な講習を受けただけで制作会社に放り込まれ、周りに聞きながら成長していると聞く。でもって、そのまだ使えない人たちに制作会社が払う金額(制作会社が派遣会社に払う金額)よりも、多くのフリーの人の方が(経費のぞいて)時給換算したら少ないんだよね〜という話に。やっぱり定収入か? とここまでは良かった。一人が、個人商店のをギャラ5万で受けてしまい〜と言い出したので、「あかん、あかん、5万の仕事でも、500万の仕事でも、手間はあんまり変わらへんで〜。」と話した。実際に組む前にすることは同じ。規模の大小でもちろん変わってくるけれど、最低限することは一緒なのだ。第一、5万なんて一日で飛んじゃうし。「でも予算ないって言うし、可哀想かなぁって。」うん、私も以前は騙された(笑)。そういう人でもちゃんとした車に乗って、5万以上の服を着てるって、単にサイト制作にかけるお金が5万ってだけだよと話す。逆に5万でやらせようとする人に限って、あとのフォローが大変だったりこじれたりするからあかんで〜と「経験から」話した。そうか、まだそういうことで悩む人たちがいるのか。こういうところは、この業界変わってないんだなぁ。(hammer.mule)
https://bn.dgcr.com/archives/20060821175846.html
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