クリエイターとLLPと……[2]LLPの特徴
── 深川正英 ──

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LLP・LLCの税務・会計ガイド―有限責任事業組合・合同会社の活用と経理資金がなくても専門技術やノウハウをもった「人的資源」と、資金や設備のある企業が力を合わせて、新たな事業に取り組みやすくするための「人材集約型」の新しい企業形態。

LLPがこのように言われる理由として、3つの大きな特徴が挙げられます。


1.有限責任制

株式会社や有限会社と同様に、負債を抱えて解散するとしても、出資額を超える責任を負う必要がありません。

フリーランスで仕事をしている人は個人事業という形態が多いですが、個人事業は無限責任なので個人の資産まで差し出す責任があります。

では、いっそのこと設立が簡単になった株式会社にすればいいじゃないかという考えもあるかと思いますが、設立に際しての費用や手続きなどを考えると手軽に立ち上げられるほどでもなく、運営面でもフリーランスの時と同じようにお気軽にはいきません。

そこで、フリーランスの集合体という形でLLPを作れば、もちろん有限責任になりますし、それ以上に個人的に感じるメリットとしては、有限責任制とは関係ないですが、馴染んだ屋号やワークフローやノウハウなどの既に確立している個人の動きを維持したままにすることが出来る点です。さらに、設立の手続きが簡単で費用も少なくて済む、というところも見逃せません。

2.構成員課税

「パススルー」ともいいますが、LLPとしては直接課税はされず、利益を分配した後の出資者のみに直接課税される事になります。

例えば、共同で事業を行なうために複数の企業が集まって合弁会社を作った場合、まず合弁会社で法人税を課され、その後の分配したそれぞれの利益に対しても課税されるという「二重課税」となります。

しかし、LLPの場合、LLP自体には課税されないので二重課税を避けることができます。個人事業主は今まで通り確定申告をし、今まで通り事業税を支払えばいいということです。法人の場合も同様です。

ただし、そのために「LLPは内部留保が出来ない」という大きな制約があります。つまり、その年度に出た利益は遅くともその年度末には全て出資者(=組合員)に分配しなければいけません。

今は利益が出た場合ですが、逆に万が一LLPの事業が赤字になってしまった場合は、その赤字を出資者で振り分けて負担を分散することが出来ることは重要なポイントです。

3.内部自治原則

私はこの特徴に最も惹かれたのですが、運営方針や決め事などをLLP内部の出資者の話し合いで自由に決められるというものです。

特にIT系の業種の場合、日々それこそ刻々と変化していく状況に、スピーディーな対応ができることは大きな武器となるはずですが、LLPではそれが可能になります。

例えば、株式会社では定款や取締役会や株主総会など、運営に関しての意思決定に時間がかかる要素がいくつもありますが、LLPではとにかく出資者同士のコンセスサスさえ取れれば行動に移せるわけですから、スピードだけでなく、かなり柔軟な対応も可能になります。

LLPの内部自治原則にはさらに重要なポイントがあり、利益や損失が出た場合の配分に関しても内部の話し合いで自由に決められます。

LLPは、あくまでも民法組合の特例という組合の一種なのですが、LLP以外の民法組合では損益の分配は出資額に比例することが決められています。

しかし、LLPでは損益の分配でさえも出資者同士の話し合いで自由に決められます。これによって、資金力のある企業だけが大きく利益を得られるのではなく、技術力やノウハウに対しても柔軟に利益を配分でき、共同事業の醍醐味が味わえます。

これらの特徴により、LLPは法人格こそないものの法人のような振る舞いが出来るため、対外的には個人で活動するよりもぐんと信頼性が上がります。これはフリーランスで活動している人にはとても重要なポイントだと思います。

このように良いことづくめのLLPのように見えますが、もちろん問題もあります。デメリットや問題点に関しては後々触れるとして、次回はLLPに向いている業種/業態について具体的な例をあげていきます。

【ふかがわまさひで】
バビル6 LLP(有限責任事業組合)組合員
※バビル6 LLPは日本第一号のLLP(有限責任事業組合)です
< http://www.b6p.jp/
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