デジアナ逆十字固め…[20]光学レンズ vs 安プラレンズ/上原ゼンジ

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,300文字)


最初に私がトイカメラというものを意識したのは、操上和美さんの写真集「陽と骨」(PARCO出版、1984年)だった。2分冊のうちの1冊がモノクロの写真集で、すべてがトイカメラで撮影されたものだった。当時は今のようなブームはなかったし、情報もなかったから、どんなカメラなのかは全く分からなかった。

自分で想像したのは駄菓子屋さんで売っていそうなもの。「科学と学習」の付録に付いてきそうなもの。という感じで何か具体的なカメラのイメージはなかったが、とにかく本当に子供のオモチャだけど一応写る、というようなものを想像していた。

この度の日本一のオモチャレンズを探す旅というのも、何か具体的なイメージがあるわけではない。ただ、もし本当の安っぽいプラスティックレンズを使って撮影すれば、かなりどうしようもない写真が写せるんじゃないかと思ったからだ。

「あなたは何で、どうしようもない写真を撮るために、わざわざ変なレンズを作ってるわけ?」という疑問を持つ人がいるかもしれないけど、さて何故でしょうか?


私もいっつもこんな変なことをやっているわけではない。というか、けっこう細かい性格なので、フィルム現像の時に付く気泡だとか、紙焼きの時のホコリだとか、ピンぼけだとか、ブレだとかが、割と気になってしまうほうだ。

ところが、このどう転んでもきっちりと撮影することの出来ない安物レンズを使っていると、そういう細かいことは置いといて、ズサンというか大雑把になることが出来る。その辺りが自分にとってはやっていて面白いのだ。

それにこういうことをやっていると、純粋に「あっ、写った!」という、原初的な感動を得ることも出来る。「写真とは何ぞや?」などという理屈の部分から離れて、凝り固まった頭を柔らかくしてくれる効果もある。

人から見れば「何? この写真」と思われるかもしれないが、一応フレアが出過ぎれば、フードを付けたり、軟調過ぎれば絞りを付けたりというコントロールはしているので、最終的には追い求めていたイメージもはっきりしてくるはずだ。

●光学レンズとの対決

私が今まで作ってきたレンズの構造は単純。一枚だけレンズを使って撮影するもので、レンズ構成もへったくれもない。この場合収差が補正しきれずに、軟調な描写となる。これがいわゆる「ベス単のフードはずし」や「レンズベビー」に見られるようなソフトなイメージだ。

つまり別にオモチャレンズを使わなくとも、ちょっと変わった感じに撮影することができる。今まではオモチャレンズにこだわってきたわけだが、もしかしたらちゃんとした光学レンズのほうが、私の好みに合っているという可能性もある。そこで光学レンズを買い、100円レンズの代わりに取り付けて、描写を比較してみることにした。

レンズを購入したのは「ケンコー光学ショップ」の「光学レンズアウトレット」コーナー。
< http://ec1.kenko-web.jp/ >

買ったのは次の2枚のレンズだ。

◇接合レンズ
直径23.5mm、焦点距離53mm、税込み851円

◇非球面レンズ
直径22mm、焦点距離38mm、税込み1,754円

安物プラスティックレンズとの比較で言えば、当然今回買った光学レンズの方が、描写能力で勝る。安プラレンズでは色収差がバッチリ出るが光学レンズでは抑えられている。また、ピントも安プラレンズではどこに合っているのやら、良く分からないが、光学レンズにはきちんとピントのヤマがある。

あとは周縁部の描写だが、安プラレンズの方は何とも形容のしがたいデロデロ感がある。これは普通の光学レンズではありえないものだ。というか、こんなにひどい描写というのは、今までに見たことがない。その一点だけでも今回の実験は大成功だったと言ってもいいだろう(ホント?)。

光学レンズのほうも周縁部の描写には問題があった。特に接合レンズの方は、かなりボケて拡散した感じになった。これは構造上の問題なのか値段の問題なのか分からないが、値段が約2倍の非球面レンズのほうがまともだった。

というか、どちらにしてもあまり大きな破綻はない。まあ普通に売っているカメラのレンズに比べれば、はっきり言ってどうしようもない描写だが、ボケた感じも自然できれい。ソフトフォーカスのフィルターを掛けたような感じでもある。

ただ私的にはソフトフォーカスフィルターというのは、あまり好みではない。ポートレイトの撮影や花の撮影でソフトフォーカスフィルターを掛けるのは、はっきり言って気色悪いと思っている。だからソフトフォーカスフィルターを掛けたようなきれいなボケというのは評価の対象とはならない。それよりも安プラレンズのデロデロ感の方に心は傾く。

ということで、厳正な審査の結果、光学レンズと安プラレンズの戦いは安プラレンズの勝利に終わった。後は安プラレンズを使った、格好いい撮影用レンズを作ること。そしてその使い方を極めることだな。

※写真は「キッチュレンズ工房」にあり
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/ >

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇カラーマネージメント情報室
< http://d.hatena.ne.jp/cmi/ >
◇ZEN STUDIO
< http://www.k5.dion.ne.jp/%7Ecolor/ >

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上原 ゼンジ
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by G-Tools , 2006/09/21