武&山根の展覧会レビュー 特別編 うわさの靖国神社・遊就館に行く その3/武 盾一郎&山根康弘

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(その1は2044号、その2は2045号に掲載、今回で完結)

日本の自然崇拝、西洋のアニミズム―宗教と文明/非西洋的な宗教理解への誘い●神社とアニミズム

武: 伝統とかいうけど、靖国は明治。
山: そんなに古くはないわな。
武: しかも、日本が本格的に欧米化することを讃えてるんだよ。
山: そういうことなんかねえ。
武: だからさ、岡本太郎が、しゃらくせー! そんな百年程度の浅い歴史じゃなくて数千年前を見ろ! と叫んだんだよ。日本といえば縄文だろ!
山: ははは。しかし古いなー! 誰もシランがな。まあ、じゃあ縄文がなんなんだ、ということをちゃんと見せれんとしょうがないわな。
武: 上尾で馬が祀ってあるけど、明治より古いぞ!
山: 古けりゃいいってもんでもないやろ(笑
武: いやね、良く働く馬を祀ったとか、カエルが神様みたいになってるとか、群馬の赤城だとムカデが神様だし、奈良かどっかの山だとみいさまとかいってヘビが祀られてる。
山: んで?
武: そういう、身近だった生きものやものを、敬いまつる、という感性はとてもよく分かるんだよ。
山: ふむ。
武: それらを「神社」という形にしてるわけだ。神社はもともとは原始信仰を継承してるものなわけでしょう。
山: ふむ。「敬う」というのは大切なことやけど。
武: 靖国神社っていうのは、欧米列強に対抗する近代国家を樹立する為にこしらえたわけだから、神社本来のアニミズム性とはまったく違っちゃうんだよな。
山: ま、全然違ったな。神社とちゃうわな。元々は招魂社と言う名称だったって書いてあったな。その方がわかりやすい。
武: 神社はあっていいんすよ。その土地にまつわるエピソードや生き物や人物が祀られてる。その原始信仰性、アニミズムっていうんかな、と天皇は結びつかないんだよな。
山: そうかもしれんね。
武: 天皇の血は古いっていうけど、俺達だってみーんな大昔から続いてるのよ。
山: そりゃそうや。
武: 現代の天皇に対するイメージってのも、かなり新しいと思うんですよ。
山: そりゃ時代によって変わるやろ。新しいものが全てアカンとは思えん。
武: そうだけど、伝統の顔をしてるのに実は新しい。木目調のビニールマットみたい。
山: ほんまに木目調のビニールマットが嫌なら、そうはならんやろ。時代に適応してるんよ。で、その時代を作ってるのは、自分たちやん。
武: 天皇って、天皇そのものより天皇のイメージなんだろうなあ。
山: 象徴ですから(笑
武: 大変そうだし。辞めちゃえばいいのに。
山: やめれるんやったらやめてんちゃうか(笑


●まつるとアニミズム

山: で、祀るっていうのはどっかに人智を超えたものを感じるから祀る訳やろ。人ではどうしようもないとこ。
武: 日本古来の死生観もあると思うけど、日本の場合、死ぬと神様になるでしょ。それは、縄文の死生観もそうよね。
山: ああ。なるほどな。
武: 誰だって死ねばお星様になる。
山: でもそれやったらお墓でもなんでもいいわけやからね。寺か。神仏混合ってのもやっかいやな。
武: わはは!! 神仏混合、どうする? これこそ、アニミズム的発想と捉えるのんか、政府の横暴と捉えるのか。
山: いや、アニミズムっていうのは僕の捉え方としては、別に何でもありとは思わんけど。
武: そっか。
山: もうちょっと直感的、というかリアルなもんやと思うよ。
武: アニミズムって結局本人が感じ得るものだけど、特に個人的に感じるのに普遍的な所、だよな。
山: 例えば、幽霊を見た。
武: おー。見た人、少ないと思う。けど、感じた人は殆どだと思うの。
山: そのイメージを多くの人が共有する。それはアニミズム的発想やと思うけど。それって何でもありとちゃうからね。「八百万の神」と言うのは、また違う意味ちゃう?
武: だからね、ますます思うのよ。日本にはそもそも、原始信仰・アニミズムが強固にあってさ、仏教が入って来ても、そのやり方で対処する。で、天皇制と言うものを作り上げたけど、アニミズムを基盤とする。
山: なんでも混ぜてまうねんな。
武: だから、神様仏様でオーケイ。みたいな。
山: まあ悪くはないけどな。
武: 例えるとね、日本人は資本主義を習得した原始人。みたいなところはあるんですよ。プリミティブと現代が同居してるっていうか。
山: うーん。そういう考え方はあまり好きやないけど。
武: パソコン上手な原始人。
山: 原始人とちゃうやん(笑
武: どっかが原始人なんですよ。
山: そうかなあ。原始人なんかなあ。西洋の文脈から見ると、ってことかね。
武: で、まつるだけど、お国の為に死んだ方々を一カ所に祀るのだって分る。
山: じゃ、誰がお国の為に死ななかったんや?
武: うむー。そうだのう。過労死だって現代資本主義の戦没者だよ。
山: 過労死神社ってないしな(笑
武: 靖国があるなら、あってもいいぞ。
山: やっぱり祀るっていうのはなにか得体の知れないものに対して行なうことのような気がするんよ。
武: ほう。
山: 例えば人が死んだら神様になる、という考え。それは人が神様になるんではなくて、死、に対する一つの畏怖の念から来てるんとちゃうかな。人は神様にはならんと思うよ。人は人のまんまで。ただ「死」って誰も知らんし。死んだらどうなるかはわからんからね、実際の所。想像なりなんなりはできるけど。
武: そだの……
山: だから、人を祀っているのはどうかなあ、って思うけどな。
武: 死を祀るという事と、死者を讃えるとはちょっと違う、ということかの。
山: そうそう。死んだ人が生前行なった業績に対して碑を建てるとか、それはわからんでもないねんけど。戦争で死んだ人を祀って、人が死んだ、というとてもナイーブな感情を別のモノに変えたらあかんと思う。
武: うーむ、なる程。
山: で、靖国。戦没者を追悼するというのはもちろん悪いことじゃないけど、それはつまり人が死んだ、あるいは死ぬ、ということに対する畏敬、戦争で死んだから英霊になるんじゃなくて、死に対する純粋な気持ちがあればいいと思うねんけど。どうだろ。
武: 死に対して、生者が余計な意味付けをし過ぎると、「死」そのものに対する冒涜になる、と。

●戦争は誰が起こすんだ?

山: そうやな。戦没者が靖国にいたっていいけど。でも、戦争は誰が起こしたんや?
武: どこの戦争のこと? 戊辰戦争?
山: いや、いつの戦争でも。国、か。
武: 卵が先か鶏が先か……どっちもどっちかも知れん。例えば太平洋戦については、日本の言い分はアメリカの経済制裁で苦しんで窮鼠猫を噛む的に真珠湾を攻撃した、と。もっと言えば、日本はハメられた、と。
山: ん? はめられたん?
武: そうよ、先に手を出させたワケですよ。アメリカによって。
山: へー。それって子供の喧嘩と変わらんな。
武: だから、アメリカは公明正大に日本をやっつけられる。遊就館の映画でも言ってたし、展示のベクトルもそうだよ。ふたつの太平洋戦争理由、一つは、欧米に日本自体が追い込まれたから。一つは、ロシアも含む欧米からアジアを解放させるため。当時、アジアは殆ど植民地だったから。
山: で、それはホンマなん?
武: 昔、太平洋戦争中アメリカ制作のプロパガンダ映像を観たことあるんだけど、日本は天皇を中心とした八紘一宇の植民地を広げる為に戦争をやらかした。と解説してた。
山: でもそうやんな。
武: その為にはどんな手段もいとわず、真珠湾に奇襲攻撃をかけた、卑劣な人種である、と。
山: ほんまそうちゃうの。
武: 日本人は首だけになっても向かってくるとかって言ってたよな。ローマ法王(宗教の権威)とヒトラー(独裁政治家)を足したのが昭和天皇ヒロヒトだ、と。
山: こえー! そりゃ真珠湾攻撃にはなんかしら他の理由もあったかもしれんけど、だからと言ってアジアを解放しようとしてる国が解放する国の人たちむやみに殺したり普通せーへんやろ。今のアメリカもそうやけど。
武: そうそう、イラク平和の為にアメリカはイラク人を掃討作戦で殺すでそ。
山: 意味わからんよなー。
武: コワイです。戦争には全ての立場の国に正義がある。だからやっかい。
山: やっぱ、国やな。展示に生麦事件の話があったやろ。イギリス人殺してしもて、ほんなら国が出てきた。すごい軍隊よこして。
武: 薩摩とイギリスの戦争だっけ?
山: そうそう。
武: イギリス勝てない(笑
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%A9%E8%8B%B1%E6%88%A6%E4%BA%89 >
山: それってほんまはあれやん、個人の問題やん。って、殺してしまったから個人の問題では済まされへんけど。
武: まあ、ね。
山: そういう緊迫した状況にのっかって国が出てきたんやろ。
武: きっかけが欲しかったってのはあるのよ。
山: あざとい。
武: それが、国ってもんさよ。先に手を出させる。というか、理由をこじつける。本質的には「のび太のくせに生意気だ!(by ジャイアン)」と同じなんだよ。そんなことで殺されちゃあいけませんよ。

●国ってなんだ?

山: それが、国ってもんさよ。政治ってことやんなあ。でも、国ってなんなんや?
武: 国って幻想じゃないですか。マグロは国なんか知らん。渡り鳥も国なんて知らん。
山: ははは。むかでもそうやろな。
武: 越前クラゲも知らん。冥王星が惑星じゃなくなったなんて、冥王星自身が知らん。
山: そりゃそうやな。
武: だから、国なんて誇るより、小さいけれど自分の身体を誇ってあげようよ。そんなに素晴らしいものではないけれど。
山: 自分の体って国やん。
武: わはは! 国か! 俺は内戦だらけの国じゃ! アルコールと肝臓が戦ってるぞ! 肝臓はさしあたって皇軍だの。アルコール賊軍がぞくぞくやってくる。
山: そうそう。みんな内戦で闘ってる。
武: しかし、そのアルコールを運んでるのは、皇軍派の「右手」地方だ。
山: だいたい政府がイカれてたらどうしようもないわな。脳。
武: 右手地方には気をつけろ! テロリストと通じてる。右手をコントロールしてるのは政府だぞ! めちゃくちゃだ!
山: イカれてきたな!
武: 右翼(脳)と左翼(脳)が喧嘩してる!
山: そりゃ飛躍しすぎや(笑)だいたい右翼も左翼も左脳やろ。
武: こうなったら、侵略だ! って、侵略は出来ないがな。山根国右手半島奪取! って出来ません! 閣下!
山: そうやな。侵略できない、っていうのが大事なとこやな。
武: 次は山根国左足だ!
山: 身体は不可侵条約結んでるんよ。立場をよーわかってるんやな。ちゅうかそれしかできへんねんけど。
武: ……只今の検証より、国は物理的一個体にはならないことが分かりました。
山: でもそこに、おっきな一個体を見ることができるんちゃうかな。それを見ることができるのは、歴史ということなんやと思うけど。
武: 歴史をどのように解釈するか、か。
山: だから今、やっぱ考えなあかんねんな。
武: 一方向だけの史観は危険だ、と。
山: 危険やなあ。
武: これから日本はどこへ行く?
山: どこも何も……日本っていう土地柄は大事やけど、国という枠組みはいらんようになってまうんちゃう? 世界の大阪(笑

砂をつかんで立ち上がれ●しめはなぜか故・中島らも氏

武: 中島らもですか。
山: そうなん?
武: 「日本は世界の大阪である、大阪は日本の中の日本だ」と。
山: へー。そんなこと言ってるんや。やばいね。
武: どうしょうもない、って。
山: わはは! あんたやろ!
武: たしかに!
山: もう英霊になってしまいました……(正確には、「英霊」は戦死者の霊をさして言う。ここは流れで……)
武: そうですね。。。
山: 合掌(笑
武: これがオチかい!
山: わはは、けど一回見た方がええよ。遊就館。アメリカ人と韓国人と中国人の友達と一緒に(笑
武: うわー! それいい!
山: で、これからどないしていくねん、と。
武: 坊主頭とはダメだと。
山: あと、でかい顔の人は捕まります。
武: 顔がデカくて共謀罪って、ありか!
山: あり(笑)ってこれは差別やな(笑
武: 差別ですよ。そういえば中島らもが笑いとは「差別」である。と言ってた。
山: はは。そうかもな。
武: 「差別なんすよ、笑いって。」言うのは結構勇気いるぞ。「笑いは、文化なんです!」って言う方が楽だぞ。
山: そうやな。落語なんてヤバいもんな。出てくる人ほとんどちょっと可哀想な人やからな(笑
武: そこを、消しちゃいけない! 辛辣なんですよ! 芸は。
山: そういうとこあるよな。
武: 中島らもに敬礼っ。

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/グラフィックデザイナー兼画家】
・新宿西口地下道段ボールハウス絵画集
< http://cardboard-house-painting.jp/ >
・夢のまほろばユマノ国
< http://uma-kingdom.com/ >
take_junichiro@mac.com

【山根 康弘(やまね やすひろ)/阪神タイガース信者兼画家】
・交換素描
< http://swamp-publication.com/drawing/ >
・SWAMP-PUBLICATION
< http://swamp-publication.com/ >
ymn_yshr@ybb.ne.jp

photo
とほほのほ
中島 らも
双葉社 1995-10
おすすめ平均 star
starたわいないエッセイという程つまらないわけではない
starまた読んでしもた

僕にはわからない 固いおとうふ こらっ 心が雨漏りする日には 中島らものたまらん人々

by G-Tools , 2006/09/22