所幸則×MOGRA対談 part.2 トコロさんのホントのトコロ
── 高村征也(MOGRA代表)×所幸則(MOGRA写真部長)×清田直博(MOGRA監督) ──

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CHIAROSCURO 天使に至る系譜サイトに「所幸則×MOGRA対談」part.1がある

●「天使に至る系譜」に至ったいきさつ

高村:天使に至る系譜に至った(笑)いきさつというのは?
所 :いやー。天使に至る、だからもともとは天使ではないんですけどね。ビビットな作風からファンタジーに移るきっかけがあったんです。ファッションビルの広告なんかやってた頃ブルータスから「裸の絶対温度」の依頼がきて、ヌード写真とかには興味なかったんだけど打ち合わせにきてたADに君脱がない? って言ったらいいよ、私の体見てみる? ってすぐ脱いじゃって」
清田:その人すごい男気ありますね!
高村:世の中そういう理解がのある人が多いといいんですけど。
所 :僕の写真はいやらしくならないからね。彼女もぼくの作風がすきだったし、それをわかってたんだと思うよ。そのあたりからファンタジーやりだしったって感じかなあ。それと、もともと指輪物語とか好きでああいう村に住みたいなあってのはあったんですよ。実は指輪物語辞典に推薦文とか書いたりしてて。もう一人は荒俣宏さんだった。でも僕が読んでたのって13年ほど前かなあ、そん時ってぜーんぜん流行ってなかったすから。
清田:かなり先取りですね。
高村:ファンタジーに対してどういう考えをお持ちですか?
所 :発想が自由ですよね、目に見えるものに縛られない。
高村:想像の世界というわけですね。勝手に星に名前つけて結んで物語のっけるみたいな。大昔の人って頭の中がファンタジーだったのかもしれないですね。
所 :子供の頃ってそうですよね。


高村:きっとそうやって遊んでたんですよね。想像力がうみだすおもしろさで。
所 :何もイメージがない時代にファンタジーをつくるのは簡単だとおもいますね。今はファンタジーへの先入観、定義があるから自分で最初から作るのは難しい。
高村:音楽も70年代で出つくしたっていう話あるじゃないですか。昔よりもっと新しい事や概念を打ち出すのは難しいと思います。
清田:やったもん勝ちってのはありますからね。あたらしい価値観をまわりが真似しだすっていうのは凄いことだと思います。
所 :何かに似ることを恐れずにやればいいと思うんですよ。見て聞いたことを自然に吸収して、それが自然に作風に反映されればいい。出つくした、出つくしたって放棄するのはちょっとヨクナイネ。
高村:だから今はそれを繋ぎ合わせるっていうのがスタンダードですよね。
清田:コラボレーション、Wネーム。
高村:やたらめったら「音と映像」とか。
所 :こういう話を大学生のとき聞いたんです、NASAは常に世界一新しいことをしていないといけない。ずっと昔は100人に一人の天才を待つっていうスタンスだったんだけど、今の時代アメリカはそれを待てないから、100人の秀才を集めて一つの答えを出す、それを聞いて僕も同じような事をしてみたんです。優秀なカメラマンを5人集めて、アイデア出し合って撮るっていう。面白かったんだけれど「撮影に5人で来るのか?」と言われて、それはカメラマンの世界では通用しないってわかりました。ハハハッ。
清田:経費5倍ですからね。
高村:バンドもそうですね。大所帯バンドの運営は難しいと思います。
所 :だからソロになっていくケースって多いですよね。
高村:DJ文化の発展も一人でできるってのがかなりポイントだったと思います。だからDJ何某ってのがやたら増えましたね。何でも量産がすぎると安っぽくなるってのはありますけど。
所 :5人チームをやめて東京に出てすぐは2人でやってたんです。
高村:カメラマンユニット。当時としては珍しかったんじゃないんですか?
所 :海外ではピエール&ジルとかいましたけどね。でも、主に絵コンテを僕が描くからシャッターを押すのも僕になっちゃうとか、エアブラシを使いたいけど、相方に遠慮したりで結局分裂。一人でやったとたんにブレイク。カメラマンにはNASA方式は通用しなかったって事ですね。ハハッ。
清田:コラボっていうのは、自分でやりたい事がはっきりしている人同士でないと駄目ですね。
高村:役割分担をしっかりしないとね。
所 :そうだね。
清田:所さんの写真って、カメラマンというよりもっと作家的な印象をうけますね。
所 :最初に頭の中で物語をつくって、モデルに聞かせて撮るんですよ。
高村:なるほど、ストーリーがあるわけですね。
清田:そうして撮った写真の上にCG等で効果をつけていくという。ほんと先駆けですね!
所 :最初はアナログでやりましたね。暗室やエアーブラシ、当時Macも容量ちっちゃくて全然使えなかったから。
高村:そうなんですか。でもアナログからそういう発想をしていく方が、実験的でおもしろかったりするかもしれないですね。デジタルだとコンピュータに頼りすぎるかも。
所 :僕の作業って、デジタルっていってもPCを道具にしてるだけで、やってる事はアナログなんです。PCっていうだけでボタンぽんでしょ!? って人いまだにいますよね。ボタンひとつで簡単にやってると思われたらホント困っちゃうよね。ハハッ。
清田:逆に、PC使うから凄いってのもいるよね。
高村:PCを使える事が凄いのか、その人がやっている事が凄いのかって話ですよね。ギターフレーズにしてもPC使って音のサンプルを組んで、あたかも誰かが弾いてるように聞かせる事が出来ますが、それが出来たからって良い音楽とはかぎらないですからね。それをはき違えると、PCやってんだか音作ってんだか? って話になるわけです。
所 :どういうモノを作るかが問題ですからね。
高村:ホントは作品の過程なんてあんまり関係ないんですよね。
所 :以前、パルコで展覧会をやった時に、3時間で作った作品のポストカード1,800枚売れた事があるんです。思い入れがあったものより、そっちの方が人気があったみたいな。
高村:作品がいいか悪いかは、すべてみる人が決めるわけですからね。
所 :苦しんで時間かければ必ずいい結果になるとはかぎらないからね。
清田:悩んでるってことはイメージがないんですよね。それをやるのに物理的に時間がかかる場合は別ですけど。迷ってばかりで軸がぶれるってことも結構あるし。
所 :展示に関しては軸がぶれるってことはなかったの?
清田:カメラマンが光の台でフィルムをチェックする、あのイメージはすぐ浮かびました。あとはやはり時間的な問題だけですね。
所 :なるほど。
清田:まあ、あんまたいしたことしてないですけどね(笑)それがシンプルでいいかなあ、って。
高村:難しい事しようと思うとろくなことにならないからね。

●なんでMOGRAの写真部長に?

所 :単純におもしろそうだなっと。いろんな面白いことやりそうだし。時々カメラマンをめざす18、19の子と話すことがあるけど、なんだか重いんですよね。私はやれると思えるっていう才能がない」
高村:恐怖感と不安が先行して、逆に難しくしてしまってるかもしれないですよね。
清田:所さんのMOGRA参加でモチベーション上がりましたよ。
所 :僕が仕事でポートレートを撮る人っていうのは皆成功してて、自信がある人ばかりですけどね。一瞬でも成功をした人、そういう人と会うとエネルギー感じますよ。
清田:環境って大事ですよね。まわりにそういう人がいてほしい。
高村:逆に、自信ないやつにはついていけないかもしれない。鳥の群の先頭のやつが何時も迷ってたら末端は困りますからね。ふりまわされてどうしていいかわからなくなる。
所 :あ、それわかる。ハハハッ。仕事でクライアントが何をしたいのかはっきりしてないと困る、みたいな。最近のアートディレクターも自信たっぷりにクライアントを押さえ込めないのが多いね。
高村 マチガイない!って言えるのは凄いことですよ。

(まだまだ続くもよう、、、、)

所幸則「天使に至る系譜スペシャルエディション 所幸則 8×10(六つ切)
原版ポジフィルム写真展」
< http://www.mogra-tokyo.jp/gallery_9.html
>
会期:9月18日(月)〜9月30日(土)12:00〜24:00
会場:MOGRA(東京都渋谷区神宮前6-9-6 TEL.03-6277-5530)
・集大成となった写真集「CHIAROSCURO 天使に至る系譜」が本としての美しさを追求し、芸術性の高い仕上がりをめざした。今回は、まさにその場に居合わせた人を引き込む空間世界を作ってみようと思う。8×10(六つ切)のポジを吊るすという普通ではあり得ない見せ方で、光と闇を操り、僕の脳で描かれた映像を透過原稿によりリアルに再現する初の試みです。(所幸則)

photo
CHIAROSCURO 天使に至る系譜
所 幸則
美術出版社 2006-02
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by G-Tools , 2006/09/27