デジアナ逆十字固め…[24]魚眼カメラ(データ転送機能付き)
── 上原ゼンジ ──

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100円ショップやホームセンターで買い求めたレンズや鏡筒用の素材は、一式宝箱の中に収まっている。その中にはまだ実験に使っていないものや、買ったはいいものの絶対に使いそうもないものまで色々入っている。

その中でも気になっていたのはドアスコープだ。近所のサティのアイディア商品祭で買っておいたのだが、どう工作すればいいものかちょっと分からなかったのだ。私はレンズに対して深い知識があって工作しているわけではなく、交換レンズをはずした一眼レフのボディ前に工作用のレンズをかざし、ファインダーでピントがあえばオーケーというやり方をしている。

ところがこのドアスコープの場合はどうやってもピントが合わない。それで、うっちゃっておいたのだ。

あっ、今唐突に気づいた! 魚眼レンズというのは35ミリ換算で言えば、6ミリから16ミリぐらいのレンズのことだよな。だとしたら光が撮像素子に到達する前に合焦しちゃうんだから、ミラーアップして撮像素子に近づけない限り、ピントが合うわけないんだ。なるほどな、この実験をやって俺は着実に賢くなってるな。ちょっとドアスコープをうっちゃってる間にアルジャーノン並みの進化を遂げていたようだ。


ただ、ちょっと実験に行き詰まっていたので専門家の意見を聞いてみることにした。現役でデジタルカメラの開発に携わっている人だ。まず、どうやってドアスコープを使った工作をすればいいのか。

 ドアスコープの場合、人が直接覗くことを想定していますから、
 対応する側は簡単に考えれば無限遠に合わせたレンズを
 フィルム側におく必要があります。ですので単レンズでも同様に
 無限遠に合うようにレンズをおいて置けば合う計算です。
 ただし、この場合はドアスコープの視野に制限されますので
 けられが激しく生じるかもしれません。

やっぱりもう一枚レンズを組み合わせる必要があるんだな。まあ、なんとか工作することが出来そうだ。あともう一点。今まで作ってきた蛇腹レンズのような方法で広角レンズは作れないのだろうか? ということ。これに対しては、

 広角か否かはフィルム(CCD)からレンズまでの距離とレンズから
 被写体までの距離の比(つまり倍率)で決まりますから、簡単な
 レンズで行うならフィルムの近くにレンズを置くしかないでしょう。

やっぱりそうだったんだな。ということは現在使ってる安物プラスチックレンズはレンズマウントのあたりでちょうどピントが合うから、素人の工作としては、このあたりが限界ということだろう。

●魚眼レンズの工作開始

ということで、まず無限遠のあたりにレンズを置き、その前にドアスコープを付けなくてはならない。今まではレンズを一枚しか使ってなかったから工作はそんなに大変ではなかったが、また緻密なレンズ設計をゼロから始めなくてはならないということか……。

本格的な設計を始める前にコンパクトデジカメのCOOLPIX5000のレンズの前にドアスコープをつけてみた。一眼レフのレンズをはずした状態とは違い、今度はちゃんと写った。

では、工作開始。黒い段ボールを切って筒状にする。その筒に穴を開けたフタを貼り付け、穴にドアスコープを差し込めば完成。10分もかからなかった。さっそく試写してみる。

けっこうけられる。「けられる」というのは、画面の周縁部が切れてしまうことだが、黒い画面の中に丸い画像が写っていて、それがかなり小さい。このCOOLPIX5000はコンパクトデジカメとは言っても、それなりにレンズが大きい。一方ドアスコープの方はレンズ径が8mmぐらいしかないから、ちょっとつりあいがとれないのだ。

それにピントもうまく合わず、どうにもシャッキリしない。ドアスコープとレンズの距離を詰めていたら生レンズに金属製のドアスコープがキッスしてしまった。レンズには保護フィルターがかかっていないので、慎重に扱わなければいけない。しかし、ズーミングのボタンを押したら、今度はレンズが繰り出してきて、ディープキスをしてしまった。幸いキスマークは付かなかったが、ちょっと気が萎える……。

CASIO デジタルカメラ EX-Z1000 EXILIM ZOOM何かこのカメラとはあまり相性がよくないかもしれないな。いきなりディープキスを迫る暴れん坊とは、ちょっとお付き合いはさせたくない。ということで今度は、おばあちゃんのCASIO EXILIMを借りてくる。

こっちはレンズ径が小さいからドアスコープにも合うかなと思ったのだが、このEXILIMというのはパワーをオンにするとレンズが三段式に繰り出し、お休みの際にはお家の中に引っ込んで、窓も閉じてしまう方式だ。これはちょっと工作しにくい。

自動的にパワーオフになって突如引っ込んでしまったりするので、ドアスコープが窓に挟まってしまうなんていうこともありそうだ。ぶっ壊しておばあちゃんを泣かせるわけにもいかんしな……。

さてどうしてくれようかと思案していると、携帯電話が目にはいった。カメラのレンズ部分にドアスコープを当ててみる……。おお、ピッタリではないか。携帯のレンズは小さいので、ドアスコープでもカバーできるサイズだ。早速設計にとりかかり、徹夜の末ついに完成させたのが、以下の「魚眼カメラ」だ。

< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/
>
(写真掲載は、19日の16時以降になります)

「ロモグラフィー・フィッシュアイ」も目じゃないな。というのはこの魚眼カメラには様々なオプション機能が付いているからだ。ロモの写真って現像してスキャニングしなきゃネットに公開できないんでしょ。こっちはネットに画像を直接アップすることもできるわ、計算はできるわ、ゲームはできるわ、もう大変なもんだよ。しかも原価380円。携帯のキーホルダーにしてもオシャレなんじゃない。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
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< http://community.imaging-park.jp/
>

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