音喰らう脳髄[11]犯罪者・星一徹
── モモヨ(リザード) ──

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なんか腑におちない。国会では現在『教育基本法』という法律の審議にかかっているが、ここにきて噴出する学校・教育現場をめぐる種々の問題は、あまりにタイムリーな気がしなくもない。まるで、誰かが絵図を書き、そのシナリオどおりにことが進んでいるような気がしている。

むろん少年少女の自殺を誰かが恣意的に導きえるはずがない。これが意図的であるとすれば、それこそ仮面ライダー顔負けの国際的陰謀団、犯罪組織が背後に存在するしかないわけで、その可能性は稀、というしかない。いや理論的にその可能性があるにしろ、ここで陰謀説を持ち出すのは、やや空想的にすぎる。


しかし、ひるがえって考えてみれば、似たような少年少女の自傷・自殺事件をあげていけば、過去にも相当数ある。枚挙に暇がないほど発生しているわけであって、およそ三十年近く前から相当数の子供達が自ら命を虚しくしている。

このことを私は当時から意識してきた。

メジャーデビューする前、私達が小さなライブを展開している折、私を含めて数十人の東京で活動するバンド群を『東京ロッカーズ』と呼んで他と区別し、一つのムーブメントと見る向きがあり、そうした傾向を鮮明にしようとしてドキュメント映画が作られた。映画『ロッカーズ』がそれである。

この映画は、自死せざるをえない運命に追い込まれた少年少女に捧げられていた。その影響で、私は失われた幼き者達の人数について自覚的だったのだ。

いや、社会問題になっているのは『いじめ』による自殺があったかどうか? だ。そう反問なさる方もあろうが、ひるがえって考えてみて欲しい。少年少女の自死は、本人がぼんやりとした不安としか意識していない場合に関して考えてさえ、実際には『いじめ』が原因と言えなくもない。何らかの環境的事由が彼・彼女を淵に追い込んだのである。

児童虐待の果てに失われた命も同じだ。

加害者が児童を虐待する、これは、いじめであろう。そのうえに、最近の例で言えば、教師が、生徒達を煽ってクラスの一人を虐待し仲間外れにするように誘導している。これは、いまさら言うまでもなく教師のいじめだ。

強きものが弱きものを虐待する。それがいじめである。と、ここで、私は、ふと疑義を覚える。弱き者、生徒や我が子について『よかれと想った』果てにする行動はどうなのか?

例えば、漫画『巨人の星』で、父・一徹が我が子に施した訓練の数々は、どうか?

先日来、報道されている事件の中には「親が子供を殴って逮捕」というような例もある。ニュースキャスターは、眉根をよせて「こんな大犯罪がありました」風に原稿を読んでいた。

が、これだけの情報に顔を歪ませる彼等の心的メカニズムが私には理解できない。私は二児の父だ。だからこそ人ごとではないのである。叱るには、どのような態度が必要か、どうやって子供たちを諭せば良いものか? 逼迫した問題なのである。

星一徹は犯罪者なのか、どうか?
この問題を来週また考えてみたい。

Momoyo The LIZARD
管原保雄
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