グラフィック薄氷大魔王[75]Photoshopの表示とナビゲータ
── 吉井 宏 ──

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最近ぜんぜんグラフィックやCG関係のことを書いてないなあ、と。Photoshopの表示関係の小技についていくつか書いておきます。たいしたワザじゃないので当たり前に実践している人も多いと思います。

●画面を回転しながら描く

Painterでは、紙を描きやすい方向に紙を回しながら描くように画面を回せるのが便利(他にもComicStudioやArtRageなども可能)。これに慣れているとPhotoshopに画面回転機能がないことが非常に不便に感じることがある。


そこで、「イメージメニュー→カンバスの回転」の「90°(時計回り/反時計回り)」を使う。つまり、実際に画像自体を回転させてしまうのだ。僕はこれにFキーのショートカットキーを割り当てて(F9とF10)、けっこうグルグル回転させながら描くことが多い。Painterでもほとんど90°単位でしか回さないので(中途半端な角度だと表示が荒くなる)、かなり実用的だ。

ところが、大きな画像の一部を拡大表示して描いているときに「90°」回転すると、その部分が画面から外れてしまうことがある。そんな場合は、全体画像のうち、集中して描きたい部分を矩形選択し、そのまま「新規(画像作成)→ペースト」し、回しながら描いてから「全体を選択→コピー」し、さきほどの全体画像にペーストする。手順通りなら全体画像に選択範囲が残っているので、ピッタリその位置にペーストできる(ただし、レイヤーの状態によっては無理な場合もある)。

●ナビゲータを活用する

数年前まで「ナビゲータ」はほとんど使ってなかったけど、これは非常に便利。上記のように画面から作業箇所が外れた場合でも、ナビゲータを使えばワンタッチで戻せる。

ナビゲータを気に入っている理由のひとつに、気楽にラクガキしてるときなどにショートカットキー、つまり左手を使わずに作業できる点がある。普段、ショートカットを使うのはほとんどが画面のスクロールや拡大縮小なので、この操作がペンだけでできるのは助かる。ショートカットキーを使うために左手をキーボードの乗せた状態というのは、多少なりとも「構えた」状態なのだ。リラックスしたい。

スポイトツールとUNDOをペンのサイドボタンに割り当てた上でナビゲータを活用すれば、描画のほとんどを左手を使わずにできるようになる(ペン後部のテールスイッチに手のひらツールを割り当てても便利)。

ナビゲータウインドウを極端に大きく(画面の半分とか3分の1とか)して使うと、別の利点が見えてくる。『「ウインドウメニュー→アレンジ→○○の新規ウインドウ」で、別ウインドウに全体画像を表示し、拡大画像に作業』と同じことができるのだ。小さめのタブレットを使っている人には超おすすめ。つまり、画面の拡大縮小を繰り返さずに、全体を見ながら大きな筆遣いで描くことができる。

ところで、大きな画像の一部分に集中したいとき、ナビゲータでは全体しか表示できないが、「○○の新規ウインドウ」なら一部分を拡大した上でさらに拡大した別ウインドウで作業できたり、拡大画像と縮小画像を同時に行き来して作業できるのは大きな利点。別画面表示と特大ナビゲータの両方を同時に使えば最強。ある程度広いディスプレイが必須だけど。

●左右反転と「ゆがみ」

絵を描いて、紙の裏から透かして見ると、デッサンやバランスの狂いがよくわかるのは広く知られている。絵具で描いていたときは鏡を利用した。デジタルでは左右反転を使っている(これもFキーを割り当て)。左右反転したままで描き進め、また左右反転して元に戻して手を入れ、左右反転を繰り返して形を完璧に持って行く。

形を整えていくとき便利なのが「フィルタメニュー→ゆがみ」(Painterでは「効果メニュー→KPT Goo」で一応可能だが、イマイチ)。線一本分のデッサンの狂いでも、大胆な形の変更でも、自由自在に画像の形をコントロールできる。特に、左右反転させたまま「ゆがみ」で修正すれば効果絶大。

●画面の余白

Painterでは画面を画像の外までスクロールできるので、隅っこを描くときも画面中央で描くことができる。Photoshopの初期表示ではこれができないが、「F」を押して全画面表示にすれば可能だ。

【吉井 宏/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com

フィギュア制作してるとき、ふと思いついて鏡で左右反転して見てみたら、形の狂いに愕然。入れ込んで作ってるから、客観的に見れなくなってるんだろうな。まあ、左右反転でのデッサンの狂いは、その人固有の目のクセなので他人は気にならないとか、左右反転してもデッサンやバランスが完璧な絵はつまらないという説もあるようだけど。他人の目で見てみたい。

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