Otaku ワールドへようこそ![39]気高く咲いて美しく散る:バラ園でコス撮影
── GrowHair ──

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ベルサイユのばら―完全版 (1)先日、東京近郊にあるバラ園で、「ベルサイユのばら」のコスプレ写真を撮ってきた。
< http://growhair2.web.infoseek.co.jp/Rose061028/Rose061028.html
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前々からこういう場所でこういう写真を撮ってみたくて、夏ごろから具体的に話を進めていたのが、ようやく秋バラのいい時期になって実現に至り、感慨ひとしおである。

●お薦めしたいような、教えたくないような

カメコって、とってもいい趣味なんじゃないかと思うのだが、履歴書の趣味欄に「コスプレ写真撮影」とは書きづらいことを考えると、まだまだ世の中に認知されたとは言いがたい。

これは楽しいよ、と人々にお薦めしたくもあるが、反面、教えたくない気持ちもある。せっかく誰かが苦労して撮影場所を開拓しても、「あの場所はコス撮影OK」といううわさが広まると、後に続く者が続出し、そうこうするうちに、一般の来場者に迷惑をかけたりするトラブルが起き、以降、コス撮影禁止になってしまうということが実際に起きているからだ。

しかし、よくよく考えてみると、それは生半可な知識しかないのに見よう見まねで実行したのがいけないのであって、注意すべき点をあらかじめ知って臨めば、トラブルは事前に回避できたのではないか、とも言える。

……てな葛藤を経て、今回は、バラ園コス撮影のレポートも兼ねて、個撮(個人撮影)のノウハウを気前よく大公開! やるからには細心の注意をもってトラブルを避け、楽しい撮影会にしましょう、との願いをこめて。


●声をかけなきゃ、はじまらない

まず、撮らせていただけるレイヤー(コスプレイヤー)さんを見つけないことには、はじまらない。どこかの会に入会登録して会費を払うと毎月何人か紹介してくれるサービスがあると便利だけど、おそらくないだろう。似て非なるものならありそうだけど。やはり、レイヤーさんと知り合うためには、コスプレイベント以外にない。あ、声優コンサートもあるか。

私は、カメコの列に並んで、誰が撮っても大差ないような記録写真みたいなのを撮るのはあまり楽しめないほうなので、大混雑する屋内系のイベントはなるべく避け、広々とした遊園地系のイベントを主体に参加する。この基準からすると、夏と冬に3日間ずつ開催されるコミケは1日15万人もの来場者でごった返し、撮影環境としては最悪なのだが、しかし、このイベントだけは別である。

コスプレに恋して! Madly in love with cosplay! カリスマコスプレイヤーのなりきり大図鑑コミケのコスプレ広場は、コスプレの見本市のようで、ピンからキリまで出揃うが、ピンのほうは、コスプレに道(萌えの?)を求めるレイヤーが全国から集まる。実際、今回撮らせてもらったレイヤーさんたちとは夏のコミケで知り合っているが、うち一人は広島から来ている。真剣にコスする人たちは、放っているオーラが違うので、そういう人を選んで声をかける。

個撮を申し入れるためには、こっちも撮ることに関して真剣なんだと理解してもらわなくてはならない。聞くところでは、個撮にかこつけたナンパ目的で声をかけてくるカメコもいるそうで。レイヤーも、そういう「うざい」のを相手にしたくないので、撮る心構えと実力をしっかり見ようとしてくる。

写真家やデザイナーなどが自分の作品をまとめたものを「ポートフォリオ」というが、私は、名刺がその役を果たしている。バラ園で撮ったバラのベストショットを全面にカラーで刷り込み、トップに "GrowHair Photo" とタイトルを入れ、隅のほうに連絡先を入れている。受け取った人はたいてい「きれい!」と感心してくれる。これで、撮る腕がアピールできる。

それと、一眼レフは、ほぼ必須。レイヤーはコスチューム制作にすごい費用を投入しているのだから、カメコだって撮影機材はそれなりのものを揃えなくては釣り合いがとれない。それに、コンパクトタイプのデジカメや、レンズ付きフィルム(使いきりカメラ)では、像のサイズとレンズの性能が全然違うので、ファッション雑誌のグラビアページのような写真は撮れないということは、レイヤーたちの間でもよく知られていることである。

感性という基準では、作品世界にどっぷりと浸りこんでいるレイヤーたちに、カメコはとうてい勝ち目がない。もちろん、カメコだって、レイヤーの嗜好に合わせた作品を見て、どういう世界を表現したいのか、理解に努めるべきなのだが、思い入れの強さではかなわない。勝負になるのは、光の読み方、構図の取り方など、写真撮影のテクニックである。

写真につきものの、絵が平面的に潰れる効果をよく考慮して、背景にモデルを貫く横線(目刺し)、縦線(串刺し)を入れないようにするとか。主題が真ん中にあるだけという、いわゆる「日の丸構図」ばっかりのような単調に陥らないよう工夫するとか。まず花の写真などをたくさん撮って練習したり、私は参加したことがないけど、プロの写真家が指導してくれるモデルポートレート撮影会などに参加してみるのもいいかもしれない。レイヤーさんを個撮にお誘いするのは、それからでも遅くはない。

●ロケハンは面倒な手続きに忍耐

撮影のコンセプトが決まったら、ロケハン(撮影場所探し)である。今回は秋バラの咲き誇るバラ園と決まっていたので、探しやすかった。ネットを検索して、広さやバラの種類や本数を参考にしながら、候補地を絞っておく。コス撮影を許可しているかどうかは、電話で問い合わせる。

それから、実地を見に行く。職員に話を聞いたりしていると、一日に回れるのは2〜3か所がせいぜいである。今回のロケハンには、10月18日(水)に一日会社を休んで行った。ぐずぐずしていると、バラは待ってくれないので。

最初に行ったところは、ほとんど春咲きのバラばかりで、秋はショボかった。二か所目は、広い庭園いっぱいに色とりどりのバラが咲き誇り、ここで撮れるならぜひ撮りたい、と力が入ってきた。ロケハンのときに考慮しておくべきことがもうひとつあって、それは、着替え場所の確保である。実はこれでいつも苦労する。

以前、日本庭園で撮ったときは、職員さんのご厚意で、閉鎖中の入場ゲートのチケット売り場を特別に開けてくれた。が、こういうのは当てにしてはいけない。今回は、周辺が公園で、身障者用トイレがあり、割と広くて、ちゃんと掃除もしてある。ここでいいや。

バラ園としては撮影OKだが、手続き上、人物撮影には市役所の許可をとる必要があるという。まず撮影日を決めておく必要がある。本来は平日がよい。開園していれば、月曜が人が少なくて狙い目である。しかし、都合が合わず、10月28日(土)になった。

10月23日(月)の朝、市役所へ。これで仕事が半日潰れる。撮影許可申請書なるぎょうぎょうしい用紙に記入して提出すると、許可は下りるけど、2日後に許可証を受け取りにもう一回来てくれ、と。「お、お代官さま〜、かんべんしとくんなまし〜」と内心では思いつつも、長いもんには巻かれておくに限る。10月25日(水)の朝、再び市役所へ。いかめしく「市長印」まで入った撮影許可証を恭しく拝受する。「はは〜っ、おありがとうございまする〜」。

●体調を万全に整えて臨む

いやいや、最悪だった。木曜の夜あたりから腹の調子がすこぶる悪く、今にも腹が割れてエイリアンがウキキと飛び出してきそうである。おまけに何だか熱っぽい。が、計ったら最後、急に病人みたくなってしまいそうで、あえて計らない。

金曜の朝、職場が地の果てのように遠く感じられ、休むことに。このところ、どれだけ仕事をないがしろにしてんだ、俺。しかし、広島からレイヤーさんが来てくれる撮影会と駄目サラリーマンのぐうたら仕事とでは重みが全然が違う。趣味でカメコやってるはずなんだけど、時として、責任感のような感覚が伴うことがある。

プロのカメラマンだったら、体調は最悪でも、撮影の仕事に穴を開けるわけにはいかず、這ってでも現場に到着し、不出来ながらも最低限の水準は満たす写真を撮らなくてはならなかったという経験が一度や二度はあるのではないか。個撮ならそれほどのものではないので、最後の最後には、謝って中止するという選択肢が残されている。プロじゃなくて、よかった。金曜日、丸一日寝て過ごしたおかげで、幸い、土曜の朝にはけっこう元気になっていた。助かったー。

●気分よく撮影

公園・庭園などは、時間が遅くなればなるほど来場者が増えてくる。撮るのは午前中が勝負だ。9:00amの入場開始前に準備しておけるよう、8:30amに集合。レイヤーさんたちが持ってきた荷物の量がものすごい。ドレスのスカートをふくらませるために下に穿くパニエには、円形の芯が3段通せるように作ってあり、半円状にして持ってきた芯を通してつなげていくと、鳥かごのようなものが出来上がっていく。

バラ園の職員の方が出てきて、トイレで着替えるのではあんまりだから、こちらをどうぞ、と場所を提供してくれた。展示ルームのついたての陰で、いつもは職員の昼食に利用している場所だそうである。この日は、終日空けてくれた。わ、ありがとうございますー。そこまでしていただいて本当に恐縮ですー。

天気は上々。晴れときどき曇り。バラの開花状況は70%程度だが、秋はこれがピークである。来場者も、まだまばら。絶好の撮影環境である。

いくら許可が取ってあるといったって、一般の来場者が優先という原則には変わりはなく、撮る側と撮られる側とでお互いの後ろに注意して、通る人がいれば、よけて道を空ける。一般の来場者から苦情が出たら、即撮影は中止となり、次回はなくなるので、神経を遣う。眺めてる人からは、不審の念をいだかれないよう、聞かれなくても説明してみたり。

しかし、この日の来場者はみんな協力的な方ばかりで、救われる思いだった。まるで天国の下見に来たかのような温厚なお年寄りが多かった。思わぬ光景の出現にびっくりしつつも大変喜んでくれて、遊園地のアトラクションのような状態になっていた。「何の撮影ですか?」とずいぶん聞かれたが、「個人的な趣味の撮影です」という答えにみんな意外そうだった。雑誌か何かの撮影だと思ったのだろう。「冥土の土産に」と言って写真を撮っていったおじいさんがいた。いつの日か、写真を片手に、安らかに旅立って行かれることでしょう。実に楽しく撮影でき、写真の仕上がりも上々だったが、反省点も多々ある。

まずは、写真を失敗しては申し訳が立たないので、オーソドックスな記念写真のようなのを主体に撮ったのだが、それだけではちょっと物足りなかったか。もっと芝居っ気たっぷりにシーンを作ってみたり、光を効果的に使ってみたりと、演出をきかせても面白かったかもしれない。例によって二重露光を駆使してみたが、ちょっと効果がかかりすぎて、わざとらしくなってしまったか。背景側にピントを合わせたショットは露出を1.5段ばかり絞ったほうがいいのだが、そこまで余裕がなかった。いやいや、次回はデジカメで撮って、フォトショップでの合成に挑戦してみるべきか。春には蔓バラが咲くので、その時期にまたやりましょうという話になっている。今から楽しみである。

ところで、帰ってシャワーを浴びていると、額のあたりがひりひりする。日焼けだ。金曜に会社休んでるのに、月曜に日焼けして出社って……。まずいなぁ。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
カメコ。乗り物のアナウンスを英語でもやってくれるのはいいんだけど。ゆりかもめ、子音が続くところに余計な母音が入っているのが、聞いててつらい。山手線、個々の母音子音の発音は完璧なんだけど、文全体のイントネーションのつけ方がたどたどしい。単語単語で語尾を上げたりせず、強勢のあるなしをもっと極端につけて、リズミカルにやってほしい。臨海線、逆に、日本語部分をつっかえずにやっと言えた感じがほほえましい。羽田空港リムジンバス、非常に美しいクィーンズイングリッシュでよいのだけれど、バスのアナウンスが英国女王のように格調高いのが、もうおかしくておかしくて。東海道新幹線も英国調だけど、自然な調子がよい。東京メトロは流暢なアメリカ調で、なかなかよい。英語なんてどこ吹く風と一切やらない私鉄がいちばん落ち着く。
< http://www.geocities.jp/layerphotos/
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