[2093] ローレン・バコールの瞳

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<これは演技じゃないぞ、と僕は思う>

■映画と夜と音楽と…[312]
 ローレン・バコールの瞳
 十河 進

■DTPユーザーのためのWeb再入門[9]
 ボックスモデルがDTPアプリケーションにも導入されればいいのに……
 鷹野雅弘

■展覧会案内
 280人のクリエイターによるオリジナル扇子展

■イベント案内
 森田宏幸監督特別講義〜アニメーター、監督に必要なものは何か〜


■映画と夜と音楽と…[312]
ローレン・バコールの瞳

十河 進
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●村上春樹版「グレート・ギャツビィ」が出た

このところまた、村上春樹さんを巡る話題がにぎやかだ。まず、東京でハルキ・ムラカミをテーマにしたシンポジュウムが開催された。世界のハルキ・ムラカミの翻訳者たちも多数参加したらしい。おそらく世界で最も翻訳されている日本の現役小説家は村上さんだろう。多くの国で翻訳され部数もかなり出ているという。

そのシンポジュウムの頃から「次のノーベル文学賞はハルキ・ムラカミだ」という評判が高くなった。実際に有力候補ではあったらしい。だが、ノーベル賞は受賞できず、フランツ・カフカ賞を受賞した。そのプラハでの授賞式で初めて村上さんは共同記者会見を行ない、それが朝日新聞にも大きく報道された。

村上さんは別にマスコミ嫌いというわけではないと思う。僕の友人のカメラマン加藤孝は、昔から何度か村上さんを取材している。中公文庫「中国行きのスロウ・ボート」のカバー裏に載っている村上さんの写真は加藤くんが撮ったものだ。ある雑誌で村上さんの仕事部屋を撮影したときは、オリジナルプリントを見せてもらったこともある。

しかし、朝日新聞に掲載されたフランツ・カフカ賞の授賞式の写真は、村上さんに気を遣ったのか、記者団に答える斜め後ろからの姿しか写っていない。珍しくネクタイをしているようだった。その記事の数週間後、村上春樹訳「グレート・ギャツビー」の書籍広告が掲載された。箱入りの愛蔵版(付録の小冊子が付いている)とペイパーバックサイズの軽装版が出ていた。

「えっ、もう翻訳を出したんだ」と僕は思った。昔から村上さんは「いつか『グレート・ギャツビー』の翻訳を出す」と言っていたから僕は心待ちにしていたのだ。その日の昼休み、僕は書店でその本を買った。もちろん本体2,800円の愛蔵版の方である。夜、僕は野崎孝訳の「偉大なギャツビー」を取り出し、書き出しのフレーズを比較してみた。

先日、朝日新聞が創刊した朝日新書シリーズの第一回配本の中に「村上春樹はくせになる」という本があり、今まで村上さんについての評論などは一切買わなかった僕が珍しく買ってしまい、それなりに面白く読んだ。その本を読んだ効用は、長く読めなかった「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」に興味がわき、二十一年ぶりに箱入りの本を取り出し読み始めたことだった。

1985年の初夏のことだと思う。僕は「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」が出てすぐに買ったのだが、50ページも読み進めなかった。その五年前、「文學界」1980年9月号に「街と、その不確かな壁」という村上さんの小説163枚が載り、それを読もうとした僕はあまりの生硬さ、観念的な会話に閉口して読めなかったのだ。学生が書く習作のような作品だった。

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」はふたつの物語が交互に語られる構造だが、「世界の終わり」と題された物語は「街と、その不確かな壁」をベースにしていたのである。おそらく「街と、その不確かな壁」に感じた幼稚にさえ思える観念性が僕に読み通すことをさせなかったのだろう。

だが、二十一年ぶりに本を開いた僕は、なんとわかりやすい物語だろう、と思った。「ハードボイルド・ワンダーランド」は私立探偵小説的展開を下敷きにしたある種のパロディになっていて僕には馴染みの世界だったし、「世界の終わり」からは深い悲しみと喪失感が伝わってきたのである。

●「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を読む

二十一年ぶりに読み始めた「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」は一週間ほどの通勤時間だけで読み終えてしまった。「ハードボイルド・ワンダーランド」は「私」という一人称で語られるのだが、「私」は何かと映画を話題にする。

村上さんは早稲田大学の卒論を映画をテーマにしたと聞いていたので、かなりな映画好きだろうと思っていたが、他の小説ではそんなに映画のタイトルを出してはこない。近作「アフターダーク」でゴダールの「アルファビル」を重要なモチーフに使い、ゴダールへの偏愛をうかがわせたのが珍しいくらいだった。

しかし、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」には、「ワーロック」のヘンリー・フォンダについての言及やジョン・フォードに関する記述などが頻出する。

ある章のタイトルの中に「ベン・ジョンソン」の名が出てきたときには黒人ランナーの方を連想したのだが、読むとジョン・フォード映画で脇役としてよく登場したベン・ジョンソンだった。暗闇の中で崖をよじ登りながら「私」は案内役の娘とこんな会話を交わす。

「ベン・ジョンソンのことを考えていいかな?」と私は訊ねてみた。
「ペン・ジョンソン?」
「ジョン・フォードの古い映画に出てくる乗馬のうまい俳優さ。すごくきれいに馬に乗るんだ」

そんな会話を読みながら、「私」の映画ファンぶりに僕は子供っぽいこだわりのようなものを感じ(人のことは言えませんが)、ほほえましく思った。だいたい「ワーロック」のヘンリー・フォンダを出してくるのは相当にマニアックだと思う。

「ワーロック」は僕も大好きな西部劇だが、ヘンリー・フォンダは複雑な役で善人なのか悪人なのかわからない。相棒のアンソニー・クィンもいい味を出すが一種の悪役だ。真の主人公は、悪党面のリチャード・ウィドマークだと僕は思う。誰が主役かよくわからない映画なのである。

さて、7章のタイトルは「ハードボイルド・ワンダーランド(頭骨、ローレン・バコール、図書館)」となっていて、ローレン・バコールがどう出てくるか楽しみに読んでいたら、こんな文章が出てきた。

──ヴィデオ・テープでハンフリー・ボガートの『キー・ラーゴ』を観た。私は『キー・ラーゴ』のローレン・バコールが大好きだった。『三つ数えろ』のバコールももちろん良いが、『キー・ラーゴ』の彼女には何かしら他の作品には見られない特殊な要素が加わっているように私には思える。それがいったい何であるのかをたしかめるために私は何度も『キー・ラーゴ』を観ているのだが、正確な答はまだ出ていない。それはあるいは人間存在を単純化するために必要な寓話性のようなものかもしれない。

●映画は男女の関係性さえ映し出す

「キー・ラーゴ」(1948年)はシチュエーション・ドラマである。ギャングたちに支配された海辺の小さなホテルでの人間の行動を描いた物語で、ベースになったのは舞台劇だ。それを監督のジョン・ヒューストンがリチャード・ブルックスと共に脚色した。

第二次大戦が終わって数年、フランク・マクラウド(ハンフリー・ボガート)は戦死した戦友の父と妻が営んでいるフロリダのキー・ラーゴという小島のホテルにやってくる。だが、そのホテルにはキューバへ追放されていたギャングのロッコが手下と情婦を連れ釣り客を装って宿泊していた。

フランクは戦友の父と妻に引き留められ泊まることになるが、ロッコたちは、その夜にやってくる取引相手を待っている。しかし、逃亡したインディアンを探しにやってきた保安官補に正体を見破られたロッコが保安官補を殺したため、ロッコは正体を現しフランクたちを人質にしてホテルに立て籠もる。その夜、ハリケーンがやってくる…

フランクの戦友の妻ノーラを演じたのが、実生活ではハンフリー・ボガートの妻だったローレン・バコールである。「脱出」(1945年)で出会ったふたりはハンフリー・ボガートの離婚を待って結婚。四十五歳と二十歳だった。「三つ数えろ」(1946年)「潜行者」(1947年)と共演作が続き「キー・ラーゴ」はふたりが一緒に出演した最後の作品になった。

まだ二十代半ばにもなっていないローレン・バコールだが、夫の戦死を受け止め車椅子の義父を守り、夫の戦友だった男に好意を寄せていく若い未亡人を印象的に演じている。「ザ・ルック」と呼ばれた上目遣いの魅力的な視線を、愛する夫であるハンフリー・ボガートに向ける。

取引を終えたロッコたちはクルーザーでキューバへ向かう。その船の操縦をさせるためにフランクも連行される。「キューバへ着いたらすぐに殺されるわ。いっちゃダメ」とロッコの情婦が耳打ちするが、フランクは黙ってロッコたちに従う。その姿をドアの陰に身を隠してじっと見つめるノーラの表情は、凄い、としか形容できない。

これは演技じゃないぞ、と僕は思う。村上さん的に表現すれば「他の作品には見られない特殊な要素が加わっている」のだ。沈黙のまま見つめる視線が彼女の心を伝えてくる。表情は怖いくらいだが、ジョン・ヒューストンは実に美しく彼女を捉える。

「キー・ラーゴ」の主要人物を単純化すれば、ハンフリー・ボガートが「勇気」、戦友の父親が「寛容」、ロッコが「悪」、ロッコの情婦が「悔恨」と言えるかもしれない。ノーラが象徴するのは間違いなく「愛」だ。

「キー・ラーゴ」のラストシーン。フランクが無事だったと知ったノーラは義父にそのことを告げた後、窓を開け放つ。部屋に陽光があふれ、ノーラを輝かせる。そのノーラの表情は至福の歓喜に充ちている。まさに「愛」そのもののようだった。

それは村上さんが言うように「人間存在を単純化するための寓話性」なのかもしれないけれど、「キー・ラーゴ」のローレン・バコールの特殊性は私的な要素からにじみ出たものではないだろうか。

僕も「キー・ラーゴ」のローレン・バコールが大好きで「キー・ラーゴ」は何度も見てきた。その結果、「脱出」の共演中に恋に落ちたふたりの関係がそのままスクリーンに映し出されたように、「キー・ラーゴ」では新妻が愛する夫に向ける視線がそのまま写しとられているのだと僕は思う。

「キー・ラーゴ」がなぜふたりの最後の共演作になったのか。それは、ローレン・バコールが妊娠していたのが判明し、翌年には長男が生まれたからだ。五十を間近にしてハンフリー・ボガートは初めて子供をもったのである。その三年後には長女が生まれ、ハンフリー・ボガートとローレン・バコールは子どもたちと共に幸せな日々を過ごす。

それは、たった五年間しか続かなかったけれど…

【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com
イギリス留学した娘が少し落ち込んでいるらしいので、激励にカミサンがひとりでイギリスにいくことになった。往復チケットだけ買っていくという度胸に改めて感服。そのカミサンを若葉マークをつけた車で成田まで息子が送るという。まず、息子が無事に帰ってくること、次にカミサンが無事に娘のところにたどりつけること、さらに娘が元気になること…、パスポートもないオヤジはただただ心配するだけだ。

僕の勤め先が11月28日〜29日開催のフォトショップワールドを共催しています。
割引チケット販売 < http://www.genkosha.com/psw2006/ >

デジクリ掲載の旧作が毎週金曜日に更新されています
< http://www.118mitakai.com/2iiwa/2sam007.html >

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■DTPユーザーのためのWeb再入門[9]
ボックスモデルがDTPアプリケーションにも導入されればいいのに……

鷹野雅弘
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ざっくりとWebのスタイルシート(CSS)についてご紹介してきた。今回、ご紹介するのはボックスモデルだ。

●ボックスモデルのパディングと罫線

DTPで段落のマージンを行なうときのことを考えてみると、その文章が入っているボックス(InDesignではフレーム)いっぱいまで、段落の横幅は伸びようとする。そこにマージンを設定すると、ボックス/フレームの内側に余白ができる。

WebのCSSでこれにあたるのが「パディング(padding)」だ。聞き慣れないことばだが、「肩パッド」のように内側に余白を設定するのがパディングだ。

上下方向、DTP的にいうと、段落前/段落後に対して、やはり余白や境界線を設定できるわけだが、DTPでは、段落ひとつひとつに対して、仮想ボックスがあると考える。段落内側の余白はすべて「パディング」であり、これは上下左右、独立して設定できる。さらに罫線も、上下左右独立して設定できるのだ。

DTPでも、段落(や見出し)の左側だけに罫線をつけたいときがあるが、その場合、段落前/段落後とそのインデントを工夫して疑似的に作るしかない。その点、Webの方ではこんな風にかけば、左側に余白を10ピクセルあけて、左側のみに赤で2ピクセルのラインを描くといったことが可能になる。

p {
border-left: 2px solid red;
padding-left: 10px;
}

●ボックスモデルのマージンと背景色/背景画像

さらにボックスには、パディング、ボーダーのさらに外側に「マージン」があり、こちらも上下左右独立して設定できる。また、ボックス内には背景色、背景画像を設定でき、背景画像はタイリング(繰り返し)したり、またそのボックス内のどこに配置するのかをピクセル指定することができる。

・見出しの背景のみに薄いカラーを設定したい
・上と左、右と下にそれぞれ罫線を設定し、さりげなく立体的な表現をしたい
・引用文の背景に「"」を装飾的に背面に設定したい

など、レイアウトの自由度が広がることが想像できるだろう。

ちなみに、大見出し< h1 >、中見出し< h2 >、小見出し< p3 >、フォーム< form >、テーブル< table >などは、「ブロックレベル要素」と呼ばれ、段落同様、ボックスモデルのもとに設定できる。一方、段落内の文字や画像などは「インライン要素」と呼ばれ、扱いが異なる。

●ボックスモデルがDTPアプリケーションにも導入されればいいのに……

スタイルシートレベルで装飾をコントロールできるようになると、その分、作業が減るし、修正にも強いデータを作成できる。

ちなみに、InDesign CSからGoLive用の書き出しをサポートしており、可能な限り、InDesignでの設定をスタイルシートに変換するようなしくみを持っているが、そもそもスタイルシートの根幹が異なるので、帯に短し……の機能だ。

Webのスタイルシートも生まれて10年近くになるが、DTPのフィールドの開発者もこれを研究してもよいのでは? と残念に思う。

・CSS Nite LP, Disk 2 「Dreamweaver CC」
Dreamweaver使いによるDreamweaver使いのための Dreamweaverに特化したセミナーイベント
< http://lp2.cssnite.jp/info.html >

・CSS Niteの地方版の第二弾「CSS Nite in Osaka」
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【たかのまさひろ】takano@swwwitch.com
トレーナー・テクニカルライター・デザイナー
株式会社スイッチ代表 < http://swwwitch.jp/ >
モスバーガー店員から英会話塾講師、職業作詞家等、100以上の職種を経験後DTPやWebの制作、トレーニング、ライティングは飽きずに10年。

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■展覧会案内
280人のクリエイターによるオリジナル扇子展
< http://www.recruit.co.jp/GG/exhibition/2006/g8_0612.html >
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会期:11月27日(月)〜12月22日(金)11:00〜19:00 日祝休
会場1:クリエイションギャラリーG8(東京都中央区銀座8-4-17リクルートGINZA8ビル 1F TEL.03-3575-6918)
会場2:ガーディアン・ガーデン(東京都中央区銀座7-3-5 リクルートGINZA 7ビル B1F TEL.03-5568-8818)
内容:国内外のクリエイター281名(クエイエイションギャラリーG8/151名、がーディアンガーデン/130名)がデザインした扇子を展示。

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■イベント案内
『猫の恩返し』森田宏幸監督特別講義
〜アニメーター、監督に必要なものは何か〜
< http://www.dhw.co.jp/ikebukuro/special/anime/ >
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<主催者情報>
長編アニメ映画の監督は、ひとつの作品という新大陸に向かって大勢のスタッフとともに大海原を漕ぎ出した船長のような存在でもあります。アニメーターとしてさまざまな作品制作で活躍した後、スタジオジブリ作品『猫の恩返し』の監督をつとめた森田宏幸が、次世代のクリエイターたちに、自身が取り組んできた作品作りのエピソードも交えながら、アニメーターや監督の仕事内容から、どんなスキル、心構えが必要になるのかといったことまで語ります。

日時:2006年12月1日(金)19:30〜20:30
会場:デジタルハリウッド池袋校(JR池袋駅東口3分)
< https://www.dhw.co.jp/school/event/location/ikebukuro/ >
定員:30名
参加:無料(要予約)
予約:< http://www.dhw.co.jp/ikebukuro/special/anime/ >
問合せ:ikebukuro@dhw.co.jp / 0120-296-514(フリーダイヤル)
 
森田宏幸(もりた・ひろゆき/アニメ監督):
福岡大学工学部機械工学科卒業後、アニメーション制作会社シャフトに入社、「陽当たり良好」でアニメーター・デビュー。フリーとなり、「AKIRA」「魔女の宅急便」などで動画、「走れメロス」「MEMORIES」「PERFECT BLUE」など、多数の作品で原画を担当したのち、OVA「ゴールデンボーイ」で演出を担当。スタジオジブリの「猫の恩返し」を初監督。現在、GONZOにて、テレビシリーズを監督中。

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■編集後記(11/24)

・「大山倍達正伝」(塚本佳子・小島一志、新潮社)を読む。600ページを超える書籍で、厚さはカバーを含んで40ミリ、重量は700グラム、これを期限内に読み終わらなければならない。図書館で借りた本で、次の予約者が待っているからだ。まとまった読書時間があるわけではないので(ないわけでもないが)、とにかくチョコチョコ読み継いでなんとか読了。第一部が塚本による「人間・崔永宜(大山の韓国名)」で、綿密な取材と資料の読み込みで大山の生涯を鮮明に描き出していて、すばらしい仕事だ。戦後の在日社会の実態の発掘などとくに評価されるべきだろう(悪いけど退屈で斜めに読んでしまったが)。第二部が身近に大山と接していた小島が、格闘家としての大山を検証する「空手家・大山倍達」で、あの梶原一騎の創作した劇画「空手バカ一代」の有名なエピソードである、第一回全国空手道選手権大会、山籠もり、牛との格闘、アメリカ無敵の遠征、力道山との関係、最強の相手・陳老人、などの虚構がひとつひとつはがされていき、このへんは俗っぽくておもしろい。第一部と第二部とはまったく別なテイストの別の作品という印象で、2冊に分けられるくらいのボリュームだが、お互いが補完し合っているので、どちらかが欠けると完全な作品とは言えないだろう。いかに大山が自著で偽りの出自や、事実のすり替え、隠蔽をほどこしても、あきれるほどの杜撰で中途半端な場当たり的なウソの連発で真実の姿が顕れてしまうのは、脇が甘いというか、奔放というか、ご愛敬というか、なかなか魅力的な人物だ。資料500点、証言者300人余、渾身の取材で驚愕の新事実続出! というふれこみも、いちおう納得できる。さあ、引き続いて読み直すか「空手バカ一代」。←ばかだね〜        (柴田)
・格闘家である我がデスクも読んでおいたほうがいいかもしれませんヨ〜

・村上春樹の作品を読んだことがない。何冊か持っているのだが、読もうという決心がつかない。日本の作家は死んでから評価がわかると思っているので、あんまり読まないことにしている。だいたい、その作家の作品全部が名作なわけないよ、とひねくれた考えを持っている。感動した本の作家さんがテレビに出ていて、もう二度と読みたくないと思うことだってあるからだ。宗教的、思想的に、なんていうか、ちょっと違うという話ではなく、強烈な運動や活動までしていたら、その作品に何か洗脳されてしまうような文章が入っていたりして〜と思って避けたくなる。エキセントリックな人なら逆に興味を持っちゃうんだけど、テレビを見ていて「いい内容だと思っていたけど、いわゆる『負け犬の遠吠え』『視野の狭い学者見解』『経験不足の偏見』なんだなぁ、この本は。危ない信じるところだったわ〜」と思うことだってある。村上春樹がそうだと言っているわけではない。毎日同じ時間から決まった時間、決まった枚数を書き続けることができる凄い人だと聞いている。なかなかできることじゃないよなぁ。あと、自殺しちゃった作家の本はあんまり読みたくない。その毒までも飲み込む自信はなく、悪影響されるのがわかっているから。自殺するより、生ききるほうが大変で凄いことだと思っちゃうんだもん。ま、そういう本や世界が好きな時期ってあるけどさ〜。考えてみれば、同世代に生きていられるだけで凄いことであって、会おうと思ったらいつか会えるだろうし、話を聞くことだって可能性はゼロってわけじゃないんだよなぁ。/「ビーバップ!ハイヒール」というテレビ番組。ベストセラー作家がちょくちょく出演し、本をクイズ交えて紹介。昨日は「頭のいい人、悪い人の話し方」の樋口裕一氏がゲスト。過去には「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」の山田真哉氏が出たり。たまに見るけど、本が欲しくなったり、絶対読むもんかと思ったり。/大山氏の嘘は結構有名ですよ〜。芦原氏に習いたがる人多かったそうです。(hammer.mule)
< http://www.asahi.co.jp/be-bop/ >  ビーバップ
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%97%21%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%92%E3%83%BC%E3%83%AB >
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%A6%E5%8E%9F%E4%BC%9A%E9%A4%A8 >
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%A6%E5%8E%9F%E8%8B%B1%E5%B9%B8 >
< http://www.ashihara-karate.com/karate.htm >  芦原氏

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