グラフィック薄氷大魔王[80]キャラクターは見た目が/吉井 宏

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,700文字)


キャラクターに命を吹き込むには……、
一般的には、オリジナルでキャラクターを描いたら、名前をつけ、性格や「世界観」(嫌いな用語だ)を設定して、ちょっとしたストーリーを書く。……というのが、キャラクター作りの基本というか定番の手段ということになっている。

たとえば(テキトーだが)、「黄色と黒の虎縞模様のウサギの男の子」いう外観のカートゥーン的キャラクターを思いつきで描いたとする。こいつを単なる絵名前は「シマぴょん」にする。森の穴に住んでいる。普段は快活でお調子者だが、いざとなると強そうな虎縞と裏腹に極端な臆病者になっておびえて穴に引きこもる。が、仲間の助けをや励ましを受け、勇気を振り絞って問題を解決していく……というような。

そのキャラクターを生き生きさせ、親しみや共感を感じてもらう。つまり、キャラクターに命を与えるには、性格設定や背景・ストーリーは非常に有効な手段だ。そうやってアニメや映画になり、「いつもいっしょにいたい」と大勢の人に思わせることが、キャラクタービジネスとしての成功につながる……らしい。


ところで、「キャラクターの魅力を最大限に活かすために作られたストーリー」と、「ストーリーを最大限に面白くするために作られたキャラクターが登場するストーリー」。どちらがおもしろいか? もちろん後者だ。そもそも、ストーリーの必然からキャラクターの外観や性格が決まってくるのだから。

「キャラクターが魅力的なアニメ」と「めちゃくちゃ面白いアニメ」、どちらが人気が出るかといえば、やはり後者だろう。既存のキャラクターや企業キャラクターなどを主人公にしたアニメなどあるにはあるけど、おもしろさは一段落ちる印象だ。(「Dr.スランプ」はキャラクターの魅力だけで成り立ってる例外かな)

とすればですね、コンテンツ制作において、ストーリーが作られる以前にキャラクターの外観を作るのは順序が逆、ということになる。「宇宙を駆けめぐる無頼の密輸商人の、頼りになる無口で怪力の相棒」というストーリーの必然がなければ、チューバッカのあの外観は生まれないのだ。

悪くて強そうなキャラクターを描いて、「悪役キャラ、凶暴、冷酷、次男なので長男を疎ましく感じている」など相関関係を含めてどう複雑に設定したところで、ストーリーに乗っていなければ机上の空論というかキャラクター設定ごっこにすぎず、何にでも当てはめられるステレオタイプの域を出ない。まず先にストーリーがなければ、何も作り始められないのだ。

その観点からすれば、名前や性格付けもほとんど設定せず、何に使うあてもなく、ただ単に自分がおもしろいから作り続けている僕の3DCGキャラクターは、まったく無意味ということになる。キャラクターとさえ呼べないかもしれない。まあ、僕の場合はキャラクターの外観を作るのが商売の一つなわけで、外観サンプルとしての意味がないわけじゃないけど(仕事で必要なときはちゃんと設定するし、きっちり説明できるようにするけどね)。

で、ですね。ストーリーに乗ってもいず必然もない外観だけのキャラクターは、キャラクターとしてまったく機能しないのか? といえば、ぜんぜん機能してるじゃん! ってことが今回言いたいことなのです。

誰でも、おもしろい外観のキャラクター画像を見れば一瞬のうちに「どんな声」「どんな性格」「どんな動き」や「どんな生活をしているか」などなど、はっきりした形にはならなくてもだいたいの印象を持つでしょ? その瞬間からキャラクターは生きはじめているし、魅力的と感じたのなら何かイマジネーションを想起させる力が働いたということなんじゃないかなと。

海外のカートゥーンなどのキャラクター画像を見て、背景もストーリーも知らなくても魅力的に感じることがある。逆に、魅力的と思っていたのに、ストーリーの中での行動を見て興味を失なうこともある。つまり、イマジネーションをそれぞれ広げてもらうのもいいんじゃないかなと。見る人にイマジネーションを広げさせるだけの魅力があるのなら、適当にでっち上げた体裁だけの設定は有害かもしれない。

っていうか、企業のキャラクター、キャンペーンマスコット、ファンシーキャラクターなどなどの外観を気に入ったとしても、少なくとも僕には彼らの性格などの設定の文章を読んで納得したいとはぜんぜん思わない。知りたいと思うのは外観と目的に明らかな乖離があって、それにどういう意味があるか疑問に思った場合だけ。シンボルマーク的キャラクターなら、説明がなければ納得できないようなものは失敗だ。

キャラクタービジネスの文脈の中で語られるキャラクターは結局「企画書に文章で説明できるもの」でなきゃならないんじゃないかな。「なんかしらんけどコレいいなあ」だけではビジネスに乗りにくいのだろう。だから、必然として「背景やストーリーが必須」みたいに言われてるような気がする。

僕は、「なんかしらんけどコレいいなあ」の部分も仕事にしていきたいなと。

【吉井 宏/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com

今回、よくわからないんじゃないかと思います。僕も何が言いたかったのかよくわかりません。確かなのは「キャラクターで一発当てよう」的キャラクタービジネスなど作り手的には存在しないし、今さらキャラクタービジネス云々を声高に言う人はたぶんあやしいです。

そんな時、純粋に「なんかしらんけどコレいいなあ」ってキャラクターを堂々と仕事にできたらいいんだけどなあ、という希望を無理矢理文章で表現したらこうなった。って感じかなと。絵にも歌にも説明書はついてないのと同じ意味で。あるいは、「いちいち名前性格背景説明なんかつけねーよ」の言い訳とか。ホントの話、セオリー通りにきっちり作るキャラクターでなきゃ意味ないと思う仕事人としての僕と、見た目だけで十分じゃないの? と思う僕のせめぎ合いなわけです。

「なんかいいなあ」だけでいいんじゃないかということを理論付けして説得力を持たせてみようと試みたところ、「なんかいいなあ」には論理的な根拠が何もなかったという、当たり前の結論が出そうになるわけですが。いや実際、海外の知らないキャラクターのフィギュアが魅力的に見えるってことは、説明は必須じゃないってことかなと思うんだけど、このあたり、うまく考えをまとめられない。まあ、キャラクターの外観からイマジネーションを大きく広げてくれた人が企画担当だったりする仕事が一番楽しいんだけど。

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吉井 宏
アゴスト 1999-01
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by G-Tools , 2006/12/13