[2130] 創作魔の誘惑

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<それってパクリじゃない?>

■音喰らう脳髄[21]
 われら確信犯
 モモヨ

■創作戯れ言[3]
 創作魔の誘惑
 青池良輔

■買い物の王子さま[135]
 アナログで実現「おサイフケータイ」
 石原 強

■ブックガイド
 「印刷屋さんのDTP・PDF印刷データ作成マニュアル」

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■音喰らう脳髄[21]
われら確信犯

モモヨ
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先週末、私の過去のステージをドキュメントしたDVDがリリースされた。

DVDの流通がどうなっているのか知らないが、金曜日に届いている人あり、日曜日中に届かなかった人ありで、そうした報告が逐一私のところに集まるので、妙にそのあたりに興味を持ったりしたが、いずれ届くことだろう。

今は、便利な時代である。ネット経由で予約したり注文したりすれば、若干のタイムラグさえ我慢すれば日本全国どこでも希少価値のある商品もゲットできるわけだが、やはり、新製品のリリースについては、差が出るのであろうか?そのあたり、少し掘り下げてみたい。

と、書いたところで何だが、話は我がDVDの話に移る。このDVDに収録された映像について、私、そしてリリース元会社スタッフの間で、確信犯めいた確固たる気持ちがあった。そのことを書いてみたい。

私は、動画編集、ムービー編集について、かなり深いところでソフト開発や、編集、リメイク、オーサリングなどに直接関わってきたが、そんな私がリリースしたDVDが、なんと、できる限り手を加えないドキュメント性を重視したものである。

私が確信犯というのは、このことだ。同じ画像をソースとしていろいろと手を加えたものを私のサイトでも見ることができるが、今回は、ステージ、ツーセットぶんをそのままパッケージした。私のサイトで見られるような演出は一切加えなかった。

私たちは確信をもって、この手法を採用した。今の若き人々、そして、将来、来るべき世代の子らに、このDVDに収録されているようなバンドが活動しうる環境が1980年には存在していたこと、それを知ってもらいたいからだ。

1980年といえば四半世紀昔のことだ。その時代、メジャーデビューし、ファンが支持したバンドのライブがどのようなものか、それを知るよすがとしてもらいたいのである。

これは、オーサリングや動画編集を旨とする人々も多くいるであろう、デジクリの読者に対して一つの裏切りかもしれない。手を加えてオシャレな映像にするのなら私だってできる。その証のサンプルさえある。それをしないのは怠惰ゆえではないか、という声がいかにも聞こえてきそうだ。

しかし、私が思うに、ドキュメントには、そのものずばりを指摘する力があるのだ。現今のCMのようにきれいに映像をまとめることが、そのまま上級なわけではない。私はそれを確信する。

若きクリエイターの方にはぜひこのあたりを考えていただきたい。

そうそう、音楽仲間にしてサイトクリエイターでもあるSpeedIDの優朗君が私とのコラボ、ギガンティックスのライブ告知用にチャカチャカとフラッシュサイトを作ってくれた。前にも一度紹介したことがあるが、ロックアーティスト発のフラッシュサイトの見本がこれだ。
< http://www.xllx.jp/gigas/
>

なお、このサイトにアクセスすると流れ出る音は、三十年前の私のライブ音源『白いドライブ』。まさにギグ-アンティックである。あっ、今週金曜日の夜、お暇な東京圏、とくに池袋周辺の方、是非ライブにいらしてください。ロックの過去と未来が見えますよ。それに、デジクリ的には、理科ちゃんとあえる、これ大きいですよね。

Momoyo The LIZARD
管原保雄
< http://www.babylonic.com/
>

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■創作戯れ言[3]
創作魔の誘惑

青池良輔
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コンテンツ制作を行う過程には、様々な誘惑が潜んでいます。

ある企画を引き受けてそれを形にしようとした時に、全ての人がすぐに素晴らしい完成型を思い浮かべられる訳ではありません。ただ漠然と「できる限りいいものを作ろう」とういうところからスタートするのではないでしょうか。この「いいものの誘惑」に捉われてしまうのです。ひと呼吸おいて、なにがいいものかと考えると、「他では見たことのないもの」「クライアントの意図を明確に伝えるもの」などではまだ健康的ですが、「いいと言われているものに類似したもの」「クライアントに受けのいいもの」と考えはじめると、段々となにかどろどろしたものに足下を捉えられていってしまいます。

斬新でかつ素晴らしいといわれるものを作るには、多くの才能やアイデアや推敲を必要とします。複数で行うブレインストーミングのような機会も必要になるでしょう。実際の制作に入ってしまえば、無意識にトライアンドエラーを繰り返しながらより満足のいく結果を求めています。「ここをもう少しいじれば印象が変わる」「自分のきもちいいと思える結果にするために、微調整を繰り返す」というような作業です。

それらが常に順調であれば問題ありませんが、ほとんどの場合壁にぶつかってしまいます。時間的問題、クライアントの意向、仕様の制約云々・・そして、この壁を乗り越えられない時に、『誘惑』はやってきます。

流行のデザインのエッセンスを引用し、話題のコンテンツの要素を部分的に取り入れる。そして、それらをミックスして調和をもたせる。このようなプロセスの末に出てきたコンテンツはおおむね悪くない評価を得ることが多いです。仕事の依頼主にとっても、日々目にしている一流商業コンテンツにひけをとらない見た目のものが手に入る訳ですし、作った本人としても「乗り遅れてない」感じのものが出来上がります。

正直に言えば、世の中の半分以上のコンテンツはこのステップを踏んで産まれているのではないかと感じることがあります。しかし、それが間違いだとは思いません。アイデアがクリエイターの人生経験に基づいているのであるとすれば、デザインにしろ企画にしろ、全ては経験してきたことの再構築とも考えられるからです。そして日常を経験しているからこそ「受け入れられ易いコンテンツのルール」を理解できるからです。

また、統計学、心理学的に分析された色や形が人間に与える影響や、経験学的に蓄積されてきた印象論など、学び取り入れることでコンテンツの指針をきめることもできるでしょう。その先人の知恵を借りながら、現代の流行を取り入れて形にするのは正攻法と言ってもいいと思います。いいと言われるものをサンプリングしてより良いものを生み出すのは、「進化」です。

しかし、どうにもすっきりしないのです。なんというか、心の奥底で偉そうにしている自分が頭を抱えているのです。

「それってパクリじゃない?」

先程の流行の取り入れや、コンテンツの進化を考えてしまうと、その全てが「パクリの歴史」に思えてきます。そして「他人のフンドシの誘惑」に負けてしまいながら作品を作っているのではないかと思えてくるのです。「もっと自分の腹の底から何かをひねり出せる!」といきんでみても、なかなか思いどおりにいくわけではありません。

ぶっちゃけ、すでにあるものをフォローした方が楽です。それが誘惑。どんどん楽になろうとすれば、誘惑に身を任せてしまえばいいと思うこともあります。あ〜、でも・・と。このもやもやを解決するには、今のところ、

「よく噛んで食べる」

のが一番かなと思っています。すぐ吸収せずに咀嚼、消化する。クリエイターとしての自分の体を構成する要素を、ちゃんと内側から作っていくイメージでしょうか。技術やテクニック、引き出しを多くして制作者として大きくなる為には、何かを吸収しないといけないのは間違いないことです。アイデアの借用をしているのではないかと恐れているのは、吸収する前にろくに噛んでいなかった自分の取り組みの甘さがあったからではないかと思います。

見た目のいいものを作りたい誘惑。手っ取り早くメジャー感のあるものを作りたい誘惑。次々と世に現れる様々なコンテンツのいいところを吸収してしまいたいという誘惑。ダメだしされないようにしたい誘惑。いろいろありますが、ガツガツしちゃうと消化不良を起こすようです。何でもかんでも取り入れるというよりは、多少時間はかかっても自分の大切だと思えるものをキチンと吸収してしまう方がいいようです。

「好き」が「真似したい」に噛み砕かれ、「自分ならこうする」、「自分の中にある他のアイデアとの化学反応を起こす」「手を伝わって表現される」「磨きをかける」という行程を踏めれば、結果がどうであれ、自分では納得できるものが作れそうな気がします。

僕は、私生活でも食いしん坊で、美味しいものからものすごくマズいものまで喜んで食べてしまう雑食です。まずは、この性格から見直していかないとクリエイターとしてのバランスの取れた成長も望めないということなのでしょう。

生意気言いました。

【あおいけ・りょうすけ】your_message@aoike.ca
< http://www.aoike.ca/
>
1972年生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。学生時代に自主映画を制作したのち、カナダ・モントリオールで映画製作会社に勤務する。Flashアニメシリーズ「CATMAN」でWebアニメーションデビューする。芸術監督などを経て独立し、現在はフリーランスとして、アニメーション、Webサイト、TVCMなど主にFlashを使い多方面なコンテンツ制作を行う。

・書籍「Create魂」公式サイト
< http://www.ascii.co.jp/pb/flashbooks/create-damashii/
>

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■買い物の王子さま[135]
アナログで実現「おサイフケータイ」

石原 強
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財布をお尻のポケットに入れると形が崩れるので、いつも鞄に入れています。でも、ウッカリそのまま財布を持たずにランチやコンビニに出かけてしまうことがあります。たいてい途中で気が付いて渋々とりに戻るのですが、先日はお店に入っても気が付かなかったので、席についてからお店の人に謝って出てくる羽目になりました。

財布は忘れても携帯電話は必ず持っているので、これでお金が払えれば便利だと思う。携帯電話はもう二年近く同じものなので、そろそろ最新機種に買い替えてもいい。「おサイフケータイ」にすれば便利だなと思ったけど、お店もまだまだ限られるし、自販機には使えない。

そんな悩みを解決できそうな「クリップオン」という商品をサイトで見つけました。500円玉二枚を収納して1,000円を持ち歩けるという小さな革のコンホルダーです。帆立貝のような変わった形をしています。

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掌で握るとすっぽり隠れるほど小さく、なめらかな雫型の形状。その内側にあ
るスリットにコインを素早く出し入れでき、不意に飛び出す事のない仕様など
すべて500円硬貨に最適化させました。
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このコインホルダーは、携帯電話に取り付けるストラップタイプの他に、リングが着いたキーホルダータイプもあります。両方持っていれば2,000円が常に持ち歩ける! なんて考えたけど、鍵もいつも鞄に入れているので止めました。

カラーは黒と茶の二色。色の変化が楽しめそうな茶に惹かれましたが、携帯電話のカラーにあわせて黒を選択しました。5,880円とちょっと値が張るけど、いざという時の保険になるならと注文。確認のメールに指定された口座に代金を振り込むと、注文から二日後に到着しました。

商品はかわいらいい箱に入っていました。表側が黒で内側がコゲ茶のツートンです。しっとりしたマットな質感が革小物好きにはたまらない。小さいながら丁寧に縫製されていて、コバの仕上げもキレイ。細部まで手を抜かずに作られています。

やわらかい革なので開閉もスムーズ。真ん中から180度に開きます。開くと両側にあるスリット状のホルダーに500円玉を二枚入れます。「最適化」しているというだけに隙間なくぴったりハマります。そのままでも落ちることはなさそうだけど、スナップで止めるから万全です。横から見てもお金が入っているようには見えません。

これで古い携帯電話が最新の「おサイフケータイ」に変身です。でも、使った後のお釣りは入らないし、必ず新しい500円玉を「チャージ」しないと、変わった飾りがついているだけになってしまうので気をつけなければなりません。

コインホルダーを買ったお店「rethink」
< http://www.rethink.jp/
>

【いしはら・つよし】info@muddler.jp
ウェブプロデューサー、ウェブアナリスト
やっぱり同じデザインのキーホルダーも欲しくなってきました。他には最新のiPod nanoに対応した革ケースなどもあって使いやすそうです。色違いで揃えてみようかな。
・ウェブアナ
< http://www.muddler.jp/
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■ブックガイド
「印刷屋さんのDTP・PDF印刷データ作成マニュアル」
< http://www.ddc.co.jp/tokupre/dtp-pdf-book/index.html
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株式会社吉田印刷所、インターネット経由で印刷発注をする場合に適したDTP・PDFデータの解説とPDF変換方法を解説した冊子「印刷屋さんのDTP・PDF印刷データ作成マニュアル」の申し込み受付を1月30日より開始。購入前にFlickrのスライドショー機能を使い、全てのページのサンプルを見ることができる。PDF版の発売はVectorにて。発売日未定。

2001年よりPDFデータ入稿を受け付けている吉田印刷所は、エラーの分析や回避方法の知識の蓄積があり、この書籍も印刷データを受け取る印刷会社の現場オペレーターが作成しているブログの書籍化で、非常に実用的・実践的な内容となっている。

特徴
・手順を追った画面構成のカラー印刷
・DTP専門誌「DTP WORLD」(2006年10/11/12月号)で「お役立ちWebサイト」として紹介されたブログの書籍化
・Illustratorデータ作成の基本的な設定・保存方法・エラーをコンパクトに解説
・印刷用原稿として使えるPDF変換、エラーについて解説
・印刷向けPDFの規格であるPDF/Xについての概念や規格内容について掲載
・ファイルの圧縮方法や圧縮用ソフトウェアのインストール方法を掲載
・巻末に書体見本・線幅見本・簡易カラーチャートなどを掲載

A5サイズ・164ページ・全ページカラー印刷・定価4,980円(税込・送料込)
申し込み:< http://www.ddc.co.jp/tokupre/dtp-pdf-book/index.html
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■編集後記(1/30)

・最近では週刊誌を買うことはほとんどないのだが、「週刊現代」は二週続けて求めた。「横綱朝青龍の八百長を告発する」というスクープが非常に興味深い。全勝優勝した昨年の九州場所は全15番中、ガチンコ(真剣勝負)はたったの4番だったという。写真入りでその15番が掲載されている。同様に、今年の初場所14勝1敗の中身は、ガチンコが3番。そのうち出島には一気に押し出され、土俵下まで吹っ飛ばされたのは記憶に新しい。朝青龍は強い。異常に強い。史上最強だと思っていた。だが、それは金で星を買っているからだという。にわかに信じがたいのだが、相撲担当記者のあいだでは以前からよく知られていることだという。角界ぐるみで八百長が行われているのは周知の事実であるらしい。記事によれば、八百長に加担しないガチンコ力士は幕内42人中12人しかいない。なんと2/3は汚染(疑惑)力士である。「週刊現代」の最初の告発は、新聞に朝青龍優勝記事の掲載された日である。すばらしいタイミングだ。相撲協会はあわてて疑惑力士たちにかたちだけの事情聴取をおこなった。今日の新聞には昨日、相撲協会は4大関(白鵬を除く)に疑惑を質したところ全員が否定したという小さな記事があった。それはあたり前で、当事者だけで糾明ができるはずがない。「週刊現代」の、泥棒が泥棒に事情を聴くようなものだ、という表現が正しい。告発第2弾は「黒い横綱朝青龍のカネに群がる大相撲八百長コネクション」で、これまた説得力満点である。ここまで八百長の構造が明らかにされ、疑惑力士が名指しされているのだから、今まで黙認してきた(?)相撲協会も受けて立つしかない。今日は黒い横綱の事情聴取がおこなわれるようだ。横綱がどんなキレ方をするのか、報道が楽しみだな。(柴田)

・eBayでは調べものをするのに使ったりするのだが(ヤフオクも調べものに使う)、買い物をするのははじめて。個人売買は恐いのでやめて、評価欄の高い、ショップが出張販売している即決価格ものにした。落札後に、PayPal経由で送金するのだが、送料がわからない。落札前に見られるeBay標準の送料分もかかるとは思えないので、質問欄から問い合わせしようとしたら、送料込みの価格を聞くフォームがあって、クリックすれば出品者から連絡が来るようになっていた。便利〜。念のため3ドル程度の保険もつけて総額を送金。が、届いたメールを見て「ん?」 何かあったら評価をつける前にメールをくれ、ちゃんとしたものを何度でも送るから。なるほど悪い評価がついていないわけだ。ま、こちらのリスクは少ないかと納得しつつ、次に、出荷しましたメールを見て「ん?」 小包(USPS Global Priority Mail)で送ると当初書いていたはずが、受領印不要の日本でいうエクスパック500のようなもの(USPS Global Priority Mail/ LG Flat Rate Envelope Large)で送ったと書いてある。25ドルほどかかると書いてあったのに、その方式だと10ドル程度じゃないか。軽いよね、あ、封筒の中に入った〜! ってこと? 15ドルも梱包手数料をとるわけ? 5日後、やはりエクスパック方式の「送料に含まれる厚紙封筒」の中にこれまた郵便局でくれる封筒に包んで、送られてきた。送り状には9.5ドルの表示。後記ネタになりそうな予感がするわっ。/韓国で「塊魂」のオンラインゲーム化スタート。日本での展開は未定なんだって。(hammer.mule)
< http://www.4gamer.net/news/history/2007.01/20070129200543detail.html
>  塊魂
< http://www.dgcr.com/present/list.html
>  プレゼント受付中!


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大相撲大変
松田 忠徳
祥伝社 2006-08
おすすめ平均 star
star図星です!
star読むべき一冊
star相撲界へのエール
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by G-Tools , 2007/01/30