創作戯れ言[3]創作魔の誘惑/青池良輔

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,500文字)


コンテンツ制作を行う過程には、様々な誘惑が潜んでいます。

ある企画を引き受けてそれを形にしようとした時に、全ての人がすぐに素晴らしい完成型を思い浮かべられる訳ではありません。ただ漠然と「できる限りいいものを作ろう」とういうところからスタートするのではないでしょうか。この「いいものの誘惑」に捉われてしまうのです。ひと呼吸おいて、なにがいいものかと考えると、「他では見たことのないもの」「クライアントの意図を明確に伝えるもの」などではまだ健康的ですが、「いいと言われているものに類似したもの」「クライアントに受けのいいもの」と考えはじめると、段々となにかどろどろしたものに足下を捉えられていってしまいます。


斬新でかつ素晴らしいといわれるものを作るには、多くの才能やアイデアや推敲を必要とします。複数で行うブレインストーミングのような機会も必要になるでしょう。実際の制作に入ってしまえば、無意識にトライアンドエラーを繰り返しながらより満足のいく結果を求めています。「ここをもう少しいじれば印象が変わる」「自分のきもちいいと思える結果にするために、微調整を繰り返す」というような作業です。

それらが常に順調であれば問題ありませんが、ほとんどの場合壁にぶつかってしまいます。時間的問題、クライアントの意向、仕様の制約云々・・そして、この壁を乗り越えられない時に、『誘惑』はやってきます。

流行のデザインのエッセンスを引用し、話題のコンテンツの要素を部分的に取り入れる。そして、それらをミックスして調和をもたせる。このようなプロセスの末に出てきたコンテンツはおおむね悪くない評価を得ることが多いです。仕事の依頼主にとっても、日々目にしている一流商業コンテンツにひけをとらない見た目のものが手に入る訳ですし、作った本人としても「乗り遅れてない」感じのものが出来上がります。

正直に言えば、世の中の半分以上のコンテンツはこのステップを踏んで産まれているのではないかと感じることがあります。しかし、それが間違いだとは思いません。アイデアがクリエイターの人生経験に基づいているのであるとすれば、デザインにしろ企画にしろ、全ては経験してきたことの再構築とも考えられるからです。そして日常を経験しているからこそ「受け入れられ易いコンテンツのルール」を理解できるからです。

また、統計学、心理学的に分析された色や形が人間に与える影響や、経験学的に蓄積されてきた印象論など、学び取り入れることでコンテンツの指針をきめることもできるでしょう。その先人の知恵を借りながら、現代の流行を取り入れて形にするのは正攻法と言ってもいいと思います。いいと言われるものをサンプリングしてより良いものを生み出すのは、「進化」です。

しかし、どうにもすっきりしないのです。なんというか、心の奥底で偉そうにしている自分が頭を抱えているのです。

「それってパクリじゃない?」

先程の流行の取り入れや、コンテンツの進化を考えてしまうと、その全てが「パクリの歴史」に思えてきます。そして「他人のフンドシの誘惑」に負けてしまいながら作品を作っているのではないかと思えてくるのです。「もっと自分の腹の底から何かをひねり出せる!」といきんでみても、なかなか思いどおりにいくわけではありません。

ぶっちゃけ、すでにあるものをフォローした方が楽です。それが誘惑。どんどん楽になろうとすれば、誘惑に身を任せてしまえばいいと思うこともあります。あ〜、でも・・と。このもやもやを解決するには、今のところ、

「よく噛んで食べる」

のが一番かなと思っています。すぐ吸収せずに咀嚼、消化する。クリエイターとしての自分の体を構成する要素を、ちゃんと内側から作っていくイメージでしょうか。技術やテクニック、引き出しを多くして制作者として大きくなる為には、何かを吸収しないといけないのは間違いないことです。アイデアの借用をしているのではないかと恐れているのは、吸収する前にろくに噛んでいなかった自分の取り組みの甘さがあったからではないかと思います。

見た目のいいものを作りたい誘惑。手っ取り早くメジャー感のあるものを作りたい誘惑。次々と世に現れる様々なコンテンツのいいところを吸収してしまいたいという誘惑。ダメだしされないようにしたい誘惑。いろいろありますが、ガツガツしちゃうと消化不良を起こすようです。何でもかんでも取り入れるというよりは、多少時間はかかっても自分の大切だと思えるものをキチンと吸収してしまう方がいいようです。

「好き」が「真似したい」に噛み砕かれ、「自分ならこうする」、「自分の中にある他のアイデアとの化学反応を起こす」「手を伝わって表現される」「磨きをかける」という行程を踏めれば、結果がどうであれ、自分では納得できるものが作れそうな気がします。

僕は、私生活でも食いしん坊で、美味しいものからものすごくマズいものまで喜んで食べてしまう雑食です。まずは、この性格から見直していかないとクリエイターとしてのバランスの取れた成長も望めないということなのでしょう。

生意気言いました。

【あおいけ・りょうすけ】your_message@aoike.ca
< http://www.aoike.ca/ >
1972年生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。学生時代に自主映画を制作したのち、カナダ・モントリオールで映画製作会社に勤務する。Flashアニメシリーズ「CATMAN」でWebアニメーションデビューする。芸術監督などを経て独立し、現在はフリーランスとして、アニメーション、Webサイト、TVCMなど主にFlashを使い多方面なコンテンツ制作を行う。

・書籍「Create魂」公式サイト
< http://www.ascii.co.jp/pb/flashbooks/create-damashii/ >

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