笑わない魚[216]嫌われながら好かれる/永吉克之

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「蓼食う虫も好き好き」は認めるが、自分が大嫌いなものを大好きだと言っている人間の心境を理解するのは、なかなか難しい。私は、例の脂ぎった超有名男性司会者、Mのもんたが大嫌いなのだが、ほとんど毎日どこかの番組に出ているということは、彼が大好きな人も世の中にはいるということなのだ。

Mのもんたの、司会者という立場を忘れて自分が番組の主役のように振る舞う、あの不遜な態度を見て、思わずテレビを殴ってしまうのが良識ある大人の感覚というものだが、それを大好きとは、いったいどういう風に育てられたら、そんな奇怪な妄念を抱くようになるのだろう。まったく信じがたいことである。


また最近なにかと話題の、ボクシングのK田三兄弟、まあ親父も入れてK田一家と言った方がいいかもしれないが、親子一丸となってのあの傲慢な態度、あの口のききかた、もう大嫌いだ、ボコボコにパンチを喰らって二度と立ち直れなくなるがいい、と思っている人がけっこういるのではないだろうか。

しかし、その試合は世界タイトルマッチでなくても、プライムタイムにテレビ中継されるし、ファンクラブやオフィシャルサイトまであるのだから、彼らのことが大好きな人たちもいるということだ。

そしてその試合中継を、ファンが豪快なKO勝ちを期待して見るのはもちろんだろうが、普段はボクシングにはさして興味はないものの、K田一家だけは許せない、なんとしてもあのクソ生意気な小僧に天誅が下るところが見たい、という人たちまでが見るだろうから、テレビ局としては、これからも彼らに大口を叩いて世間の反感を買い続けてほしいはずである。

だからK田一家が嫌いな人は、連中、あんな挑発的なこと言ってるけど、その陰で人並はずれた努力をしているのだから、見守ってやらなきゃ、などと共感する努力をしてはならない。あの下品で無礼極まるならず者一家! と非難している方が、マスコミの方々に喜んでいただけることになるのである。

そういえば週刊誌などめったに読まない母親が「週刊女性」なんか買ってくることがあった。そういう場合は必ず、Mのもんたか、Y売ジャイアンツの批判記事がのっていたが、このようにして、人びとの憎しみすらも視聴率や売り上げにつなげられるのであるから世の中うまくできている。

いつの時代も大衆が求めるものはパンとサーカスしかないのだ。自分は安全なところにいて腹一杯喰いながら、アカの他人が命の危険を冒すのを見て、面白いとかつまらないとか、勝手なことを言うのが好きなのである。かくして日本はローマ帝国のように衰退し、東西に分裂し、蒙古に併合されるのだ。

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つまり、Mのもんたも、K田一家も、Y売ジャイアンツもいわゆる「敵も多いが味方も多い」というタイプの人びとなのである。これは、同じ言動でもそれが人によって正反対の捉え方をされることがあるからだ。強引な態度を「たのもしい」と受けとめる人もいるのだ。

エキストラばかりで芽が出ない役者なら、女子寮の風呂場を覗いて逮捕されればしめたものだ。ああ俺は覗いたぞ、それがどうしたと居直っていれば、恥知らずと言われる一方で、出歯亀ってセクシーだワという女性もかならず現れて、『愛の流刑地』のような愛欲ドラマの主役に抜擢される可能性もあるのだ。

やはり大衆の注目を浴びるためには「毒」がなければだめなのだ。そのためには勇気が必要だ。天下に名を知らしめるためなら、ちょっとやそっと破滅してもいいではないか。

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そんなわけで、mixiのなかでマイミク(ミクトモ)諸氏にお願いして、「敵も多いが味方も多そうな有名人」の名前を挙げていただいた。一部の不穏当なものは除いて「原文のまま」紹介する。

石原慎太郎、木村拓哉、スティーブ・ジョブズ、ルー大柴、林家ぺー・パー、ラスク・クライン、ハマコー、小林よしのり、谷(田村)亮子、あかしやさんま、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、えなりかずき、永吉克之、韓流すたあ、雛苺、Vincent Gallo、蘇我蝦夷、ちんぎすは〜ん、ラスプーチン、ジャック・バウアー、交渉人ボラス、モニカ・ルインスキー、火野正平、野原しんのすけ、ジャニス・ジョプリン、古舘伊知郎、桂花ラーメン、曙太郎、ヒラリー・クリントン、マラソンのQちゃん、フレディ・マーキュリーの顔、松田聖子、孫正義、だちょうくらぶ、強力わかもと、納豆

以上である。さすが、私のマイミクのチョイスには豊かなインテリジェンスと誠実さが感じられる。聞いたこともない人物や架空の人物、そもそも人物ではないものまで含まれているが、そんな些事にはこだわらない。私は森を見て木を見ないのが大好きなのである。

ともかく顔ぶれを見るといずれも毒のあるキャラクターばかりだ。誰も彼も骨の髄まで毒まみれである。しかもみな、現在人気炸裂中の有名人ばかりではないか。彼らをテレビで見ない日は一日としてない。谷(田村)亮子の「田村で金、谷で金」という毒舌発言に、はらわたが煮えくり返った人も多いだろう。

ちなみに、このなかの交渉人ボラスだが、誰なのか知らないので検索してみたら、松坂大輔とレッドソックスの間に立つ交渉人らしい。やはりそうだ。昔から「松坂大輔とレッドソックスの間に立つ交渉人ボラス」とは、毒のある人間と相場が決まっているのだ。

最後になるが、「デジタルクリエイターズ」というタイトルを見て、このメルマガを購読しようと決めたということは、その読者は芸能界に憧れてる人しかいないはずだ。だから上に書いたことが、将来タレントとして、俳優として、司会者として、グルメ番組のリポーターとして身を立てようと考えている読者の参考になれば、望外の喜びである。

【ながよしかつゆき/寺社奉行】katz@mvc.biglobe.ne.jp
信じてもらえないかもしれないが、二本の映画に出演した。私が出る映画だからコメディにちがいないと思われるかもしれないが、けっこうシリアスなドラマである。これは、大阪市の映像文化新興事業のひとつとして行われる映画祭に出品されるもので、私が出演しているのは、まず『イエスタディ・ワンス・モア』。血のつながりのない兄妹の父親で頭のいかれた元大学教授の役。もう一本の『フリフリ坊主』では、村の寄り合いで議論する村人のひとりで、けっこう憎々しく演じたつもりだが、こちらは出番が少ないので、よく見ていないと、誰が私かわからないかも。実は両作品とも私自身まだ完成したものを見ていないので、どんな仕上がりになっているのかわからないが、インディーズ系の映画らしく、商業性を度外視したユニークな作品にはなっているだろう。

・CO2映画上映展
< http://www.co2ex.org/co2_no3/co2eiga/sakuhin/syousai.html >
・大阪/2月26(月)27(火)28(水)/梅田HEP HALL
< http://www.co2ex.org/co2_no3/co2eiga/index.html >
・東京/3月13(火)14(水)15(木)/アテネ・フランセ文化センター
< http://www.co2ex.org/co2_no3/co2eiga/tokyo/index.html >
※東京会場での上映スケジュールはまだ未定。

・ちょ〜絵文字< http://emoz.jp >au&Yahoo!ケータイ公式サイト
・無名芸人< http://blog.goo.ne.jp/nagayoshi_katz >
・EPIGONE < http://www2u.biglobe.ne.jp/%7Ework >

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