創作戯れ言[4]創作の目的/青池良輔

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,300文字)


「なぜコンテンツを創るのか?」

楽しいから、好きだから。儲かるから。仕事だから。人それぞれに理由があると思います。しかし、多少なりとも何かを創った経験があると「創れるから創る」という幸せな理由も頭に浮かびます。

自己表現を行っていく上で、僕たちは何かしら表現方法を模索しています。ある人は語り、書き記し、描き、表現したいという欲求を満たそうとします。そしてそれらには多くの洗練された技術や経験を必要とするものも多くあります。今、僕がやっているデジタルコンテンツの分野では、コンピュータやアプリケーションの進化により、少人数で出来る作業の範囲が飛躍的に広くなりました。それに伴い、ある程度それらの知識と技術を習得すれば複雑でクオリティの良い作品を創れるようになりました。少なくとも僕は、「だから創っている」と思うことが少なくありません。


僕が以前勤めていた映画プロダクションではひとつの作品を完成させるのは容易ではありませんでした。一人では作れない、すぐに何とかなる金額では制作できない作品を作る為に、膨大な期間と人員を必要としていました。そこで求められているものは「素晴らしいアイデア」よりも「説得力」でした。なんとか多くの人を説得して参加、協力してもらえない限り「創る」というステップに到達できないのです。

この説得は、制作そのものよりもエネルギーを必要としていたかもしれません。しかし、この期間に作品が熟成され、創りたいという「意志」が明確になっていきます。そして、情熱が高まり作品としての精度が研ぎすまされていっていたように思えます。そのような行程に比べ、今「創ろうと思えば創れてしまう」デジタルコンテンツの制作を行っていると、何となく自分の作品にかける情熱の熟成度が低いような気がするときがあるのです。「どうしてこんな仕事をしているの?」と聞かれて「食うため」と簡単に言い放ってしまう自分がいるのです。

「なぜコンテンツを創り始めたのか?」

という事を考えると、「食うため」ではありませんでした。僕は高校生の時に映画にハマり、「世界の何処かで、誰かが、作品を見た後にちょっと自分を振り返って、新しい行動を起こすような物を作りたい」という青臭い思いを抱いてしまったのが、ターニングポイントでした。「映画を作ろう!」「物語を書こう!」と息巻いていました。その時点では何の知識も技術もなく、何も自分で作った事もないにも関わらす、ただ「創る!」と息巻いていました。

そして、学生映画等を経験していくうちに、「完成の瞬間の喜び」「リアクションのスリル」や「ほめられる快感」を知ってしまい、それらの「作品を作った事がある人にしか分からない快感の優越感」にも酔ってしまいました。そして気がつけば『クリエイトジャンキー』に片足を突っ込んでいました。

一度味をしめてしまうと、人間の自然な欲求として、更なる刺激的と快感を求めるようになってきます。もっと大きな作品を作りたい。より良いものを作りたい。「実生活とのバランス」「収入の確保」「アイデアを生み出す苦悩」「制作環境の保全」「日々の雑多な作業」「市場の動向」「健康の維持」……日常は、甘美な破滅に巻き込まれ、調和を失ってゆくでしょう。

僕は、完全なる創作中毒者にはなれませんでした。「食うため」に麻薬に溺れる人がいないように、ただ情熱だけの作品づくりから卒業する必要がありました。それは突然「今日からやめる!」と決めたものではなく、いつの間にか、本当にいつの間にか自分の創作環境が変化していきました。

悪い事だとは思いません。健康的な創作は信用を生むでしょうし、長くコンスタントな活動が出来るようになるでしょう。仕事の成功は、さらなる設備投資を可能にし、より作品の質を高める結果に繋がっていきます。僕自身、それなりにワガママを言ってもサポートしてくれる人がいたり、作品の形を成せばビジネスへの筋道をつけてくれる人達が周りにいたりする大変恵まれた環境で作品づくりをさせてもらっています。

ただ、ふとした時に漫然とそしてまったりと絡み付くなりふり構わない創作の魔力に後ろ髪を引かれるのです。罪悪感とはまた違う、純粋な創作願望を取り戻したいと願う気持ちは、世の中の事や自分の生活等、何も考えなくてよかった高校生の頃の自分に戻りたいと願っているのかもしれません。「無謀」や「無知」がかっこよかった頃の感覚に再び浸かりたいという欲求なのでしょう。

「なぜコンテンツを創るのか?」

「ドキドキしたいから」

青臭い自分はまだどこかにいるようです。

生意気言いました。

【あおいけ・りょうすけ】your_message@aoike.ca
< http://www.aoike.ca/ >
1972年生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。学生時代に自主映画を制作したのち、カナダ・モントリオールで映画製作会社に勤務する。Flashアニメシリーズ「CATMAN」でWebアニメーションデビューする。芸術監督などを経て独立し、現在はフリーランスとして、アニメーション、Webサイト、TVCMなど主にFlashを使い多方面なコンテンツ制作を行う。

・書籍「Create魂」公式サイト
< http://www.ascii.co.jp/pb/flashbooks/create-damashii/ >

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