[2138] 命を賭して守るべきもの

投稿:  著者:  読了時間:25分(本文:約12,200文字)


<複素力学系という名の迷宮>

■映画と夜と音楽と…[320]
 命を賭して守るべきもの
 十河 進

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 フィボナッチデイジーの咲かせ方
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■映画と夜と音楽と…[320]
命を賭して守るべきもの

十河 進
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●立て続けに三十年来の昔なじみに再会する

今年に入って、三人も続けて昔なじみに逢った。三十年来の知り合いである。ひとりはイギリス競馬界で知らぬ者のいない調査員シッド・ハレー、ひとりはタフを売り物にしたボストン住まいの私立探偵スペンサー、もうひとりはアル中なのだが、もう何十年も酒を口にしていないニューヨーク住まいのマット・スカダーだ。

昨年暮れにまとまってディック・フランシス「再起」、ロバート・B・パーカー「スクール・デイズ」、ローレンス・ブロック「すべては死にゆく」と、それぞれ新作が出たのだ。年明けから立て続けに読んだ。その間にジャック・ヒギンズの「死にゆく者への祈り」やデズモンド・バグリィの「高い砦」を再読したから、久しぶりにハードボイルド・冒険小説漬けの日々だった。

ロバート・B・パーカーは多作だから、ついこの間、三十二作目の「冷たい銃声」(ホークが撃たれる話だ)を読んだ記憶があるが、ディック・フランシスは六年ぶりの新作で、シッド・ハレーものとしては「大穴」(1965年)「利腕」(1979年)「敵手」(1995年)に続く四作目である。マット・スカダー・シリーズは欠かさず読んでいるが、やはり久しぶりという感じだった。

現在、八十六歳になるディック・フランシスの競馬シリーズは四十年続いており、シッド・ハレーともうひとり二作に登場する障害競馬の騎手を例外として一作ごとに主人公の設定を変えている。牧場主であったり、銀行員であったり、アマチュア写真家であったり、映画監督であったりする。そのつど、よく調べているので感心する。

僕はカメラ雑誌の編集をしていたこともあるので写真についてはそれなりの専門知識を持っているつもりだが、写真が重要なモチーフになる「反射」でも感心したし、映画撮影現場を背景として映画監督の主人公が謎を追う「告解」でも専門的な描写に間違いはなかった(もっとも、僕もそんなに現場に詳しいわけではないけれど)。

ディック・フランシスもロバート・B・パーカーも翻訳はすべて菊池光さんだった。菊池節と言われる翻訳文はファンが多く、今やベストセラー作家になった大沢在昌さんは駆け出しの頃、ギャビン・ライアル作・菊池光訳「深夜プラスワン」の冒頭の部分を書き写して文章修行をしたという。

しかし、「再起」も「スクール・デイズ」も翻訳者は菊池さんではない。それぞれの「あとがき」を読んで、僕は菊池さんが昨年亡くなったことを知った。翻訳はそれぞれ弟子筋の人らしい。それなりに菊池節を意識しているのだろうが、何となく違う感じを受けた。「テイプ」「テイブル」と表記する菊池光さんの文章が懐かしい。

シッド・ハレー、スペンサー、マット・スカダーはどれも新作を待ちかねている読者が多い人気シリーズだが、なぜか映画化作品は少ない。ディック・フランシスの原作でイギリスBBC放送がテレビドラマ化したシリーズは、昔、NHKで放映されたときに見たことがあるが、映画化されたのはトニー・リチャードソン監督の「大本命」(1974年)だけではないだろうか。

スペンサー・シリーズも映画化されたと聞かない。昔、夜遅くにテレビドラマシリーズが民放で放映され、一、二本見たことがあるけれど、スペンサーとホークのイメージが違ったので見るのをやめた。マット・スカダーも映画化されたのは「800万の死にざま」(1986年)だけだと思う。三人とも個性が強すぎて映像化には不向きなのかもしれない。

●現代の探偵たちは愛する家族を持っている

マット・スカダーは1976年の「過去からの弔鐘」で初めて登場した。それから三十年、彼は現実の時間と共に歳をとっている。警察を辞職し妻子と別れてアルコール漬けになり、その後、禁酒をして元娼婦のエレインと結婚しているが、その間に元妻は死にふたりの息子は育った。「すべては死にゆく」を読むと、その息子に子供が生まれ、マット・スカダーはお祖父さんになった。現在、六十半ばの設定である。

シッド・ハレーが初めて登場したのは1965年の「大穴」であり、そのとき三十一歳だったが、1979年の「利腕」も同じ年の事件として描かれた。1995年「敵手」では三十五歳になっていたが、その中では携帯電話が頻繁に使われるなど、環境はその時代に合わせていた。「再起」は「敵手」の数年後の設定だが、パソコンとインターネットが重要なモチーフになっている。周囲の世界は現実に合わせて進歩するが、登場人物たちの年齢を重ねる速度は異常に遅い。

面白いのはスペンサーである。僕が持っているスペンサーシリーズ第一作「ゴッドウルフの行方」はポケットミステリ版で翻訳は渡辺栄一郎という人である。後に文庫本は菊池光さんの訳で出た。オリジナルは1974年にアメリカで発行された。以来、三十年を越えるが、スペンサーはもちろん、主要な人物である恋人スーザンや相棒のホークは歳をとった印象がない。

もうずいぶん前からスペンサー・シリーズはもういいや、と思いながら、新作が出るたびに僕は読んできた。つい手がのびるのである。腐れ縁のようなものだ。僕が一番好きなのは七作目の「初秋」(1981年)。自閉症ぎみの少年ポールを救いだしスペンサーが鍛える話だが、当時、幼い息子を育てていた僕には印象的な物語だった。

「初秋」の後日談が十八作目の「晩秋」(1991年)である。しかし、現実の十年という歳月は、ポールだけに流れたようだ。ポールは青年になり、新しい事件に巻き込まれる。スペンサーは父親のようにポールを見守り、スーザンは母親のように彼を包み込む。そして、ホークはポールにとって何でも聞いてくれる叔父さんのようである。

マット・スカダーにも少年の頃から面倒を見てきた息子のようなTJという黒人青年がいる。エレインと三人で疑似家庭を築いている。シッド・ハレーにも恋人ができた。離婚した妻ジェニィに皮肉ばかり言われていたシッド・ハレーが本気で結婚を考える相手である。そして、ジェニィの父でシッド・ハレーのよき理解者チャールズも健在だ。

フィリップ・マーロウやサム・スペイドと違って、現在の調査員や探偵は守るべき愛する人々がいるのだ。疑似家族であっても、家族同様の人がいる。それが彼らの弱点になる。マット・スカダーの妻であるエレインは殺人鬼に何度も狙われ、実際に刺されて瀕死の重傷を負ったこともある。不屈の主人公たちも、愛する人を狙われては手も足も出ない。

そして、シッド・ハレーの新作「再起」は、まさに愛する人たちをどのように守るかがテーマになっている。

●自分の守るべきことのために愛する人を犠牲にできるか

ディック・フランシスの競馬シリーズで最も人気が高いのは「利腕」かもしれない。主人公シッド・ハレーは障害競馬の騎手だったが、レース中の事故で左手が使えなくなって引退する。その後、調査員となって競馬界の不正を調べたりしているが、最初の登場作「大穴」で拷問を受け、左手は義手になる。

「利腕」のシッド・ハレーは、またも競馬界の不正を調べることになる。しかし、物語が三分の一ほど進んだところで意外な展開になる。シッド・ハレーはどのような不正が行われているのかわかっていない段階で、黒幕と思われる男にとらわれてしまうのだ。相手は、シッド・ハレーの残った右手にショットガンを押し当てて脅す。「手を引け」と…

──これまでの人生で経験したあらゆる恐怖も、今この瞬間の全身が溶けるような、精神がバラバラになるような、思考力が崩壊するような恐怖に比べたら物の数ではない。私は意志力がこなごなになってしまった。その破砕した細片の中に埋没した。恐怖の沼にはまり、魂が泣き声を発するような状態にまで落ちた。

残った利腕を撃つと脅されたのだ。シッド・ハレーの恐怖はひしひしと伝わってくる。彼は屈服する。重賞レースが終わるまでイギリスを離れていろ、という相手の言いなりになってパリへいく。「自己憐憫という卑屈な精神状態に陥って、今回は自分は本当に尻尾を巻いて逃げだしたのだ、という事実をかみしめ」るしかない。

脅されてから「自分の体にどのようなことが起きようと、たとえ自分ではなにもできない不具になることすら、耐えられるかもしれない。自分が永遠に対応できない、耐えられないこと……ようやく、鮮明、確実に理解できた。それは自己蔑視である」とシッド・ハレーが悟るまで、なんと「利腕」の三分の一が費やされる。

「利腕」で描かれるのは、脅されて屈服した自分を許せず、利腕を失う恐怖を克服するまでのシッド・ハレーの葛藤である。ミステリ的なストーリーはどうでもいいとまでは言わないが、その葛藤を描くための筋立てでしかない。屈辱、屈服、克服…そして再生、その過程が描かれるのだ。シッド・ハレーが命を賭して守ろうとしたものは、自尊心なのである。

だが、最新作「再起」でシッド・ハレーが脅される対象は残った右腕ではなく、愛する恋人マリーナである。殺人事件を調査するシッド・ハレーに手を引かせるために、相手はマリーナを襲い警告のメッセージを残す。だが、傷ついたマリーナは、こんなことを言う。

──あなたを痛めつけたくらいでは調査を阻止できないことを悪党どもは知っている。むしろ、その逆。あなたを傷つければ、それだけいっそう、調査を続けようというあなたの決心が固くなる。(中略)私も同じ方法で身を守りたがると、どうして考えてくれないの?

男の立場からすれば、理想の女性である。かつての妻ジェニィが常に命の危険がある騎手という職業に馴れることができず、離れていったのとは対照的だ。職業に対する誇り、どんな障害があっても仕事をまっとうしようとする自尊心、シッド・ハレーにとってそれは命を賭けても守るべきものだとマリーナは理解している。だから、自己犠牲とも思える言葉を吐く。

だが、敵は再びマリーナを襲う。シッド・ハレーは迷う。愛する者の命を賭しても守るべきものがあるのかと……

状況は違っても、現実に生きる僕たちにも同じ葛藤は起きる。こと志と異なることをしなければならないことは日常的に起きる。現実の社会を生きていれば、組織の中にいれば、なおさらだ。だが、これだけは守りたいと思うことはある。一寸の虫にも五分の魂という奴だ。命を賭してとまでは言わないが、守るべき自尊心はある。しかし、愛する家族がいれば、ときに彼らを人質(心理的にだが)にとられる。

たとえそうだとしても、命を賭して守るべき自尊心があるだけまし、いつの間にか僕はそんな風に考えるようになった。守りきれなかった様々な思い出を甦らせながら……

【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com
完全版「映画がなければ生きていけない」に日本冒険小説協会会長こと内藤陳さんの推薦コメントがもらえ、版元がPOPを作ってくれました。書店店頭に置くのですが、陳さんにコメントをもらえたのが嬉しい、と思いつつ、少し恥ずかしいですね。

●第1回から305回めまでのコラムをすべてまとめた二巻本
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■Otaku ワールドへようこそ![44]
フィボナッチデイジーの咲かせ方

GrowHair
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ウェブサイトのアクセスカウンタやミクシィの足跡の数字が30,000とか、77,777とか、12,345のようなきれいな並びになると、ちょっとした幸福感が得られるものである。いわゆる「キリ番」。実際、10,000を越えたあたりからは、無個性な数字がひたすら続くような気がして、たまに見た目のいい数字が来ると、砂漠でオアシスを見つけたように、ほっとする。だけど、見た目はぱっとしなくても、成り立ちが美しい数字というのもあるもので。ミクシィの私のところは、1月31日(水)に17,711を通過し、ひとり祝賀気分に浸っている。よくキリ番を記念して、絵を描いたりする人がいるが、それにならって私もこの数字にちなんだやつを描いてみようかと。

●美しい数列

まず、17,711のどこがそんなにめでたいのか。ポーカーならフルハウスだけど、それだけならまだ大したことはない。実は、この数、フィボナッチ数列の中に出てくる数なのだ。

1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, 1597, 2584, 4181, 6765, 10946, 17711, 28657, 46368, 75025, 121393, 196418, 317811, 514229, 832040, ...

これがそのフィボナッチ数列だが、隣り合う2つの数を足すと、その次の数になっている。1+1=2、1+2=3、2+3=5、……という具合に。先に行けば行くほど疎らになっていき、5桁のフィボナッチ数はたったの5個しかない。今回の17,711の次28,657までないのである。

フィボナッチ数列には驚くべき数理がいろいろと潜んでいて、そういうのを土中に掘り当てて光彩を放つのを見ると、美しさにホレボレする。中でも、「フィボナッチデイジー」と呼ばれる、螺旋形がよい。(図1)
< http://www.geocities.jp/layerphotos/FigDGCR070209/FigDGCR070209.html#Fig1 >

この例は、104個の玉を螺旋状に配置したもので、左右の図は玉の配置が同じで、色の塗り分け方が異なる。左側は、8色の玉がそれぞれ13個ずつあり、右側の図は13色の玉がそれぞれ8個ずつある。この8と13という数字は、フィボナッチ数列の中ではお隣さんどうしである。図2〜4は、それぞれ13:21、21:34、34:55の組合せで描いたものである。

これらの図の左右の絵は、双子の姉妹のようなものである。見方(色のつけ方)を変えるだけで、螺旋の「本数」と「長さ」という2つの概念が対等に入れ替えられることを示している。長方形を寝かしたり起こしたりして「縦×横」を「横×縦」と入れ替えるような感じに似ている。こういうのを「デュアル(dual)」な関係という。「双対(そうつい)」と訳される。

ところで、この配置は「フィボナッチ螺旋」と呼びたくなるが、そう呼ばれている別の図形がすでにある(図5)ので、こっちのは「フィボナッチデイジー」と呼ぶことを推奨したい。ちなみに、フィボナッチ(1170s or 1180s - 1250)は大変美しい顔をしていて、フィボナッチ螺旋で近似できることが知られている(図6)。

●黄金比との深い関係

フィボナッチ数列が美しいとされる別の理由として、黄金比との関係が深いということが挙げられる。1という長さを
  1=0.618033...+0.381966...
のように分割すると、全体と最初の部分との比が、最初の部分と残りの部分との比に等しくなる。
  1:0.618033...=0.618033...:0.381966...
この分割のしかたを「黄金分割」といい、その比率を「黄金比」という(図7)。
ものを2つに分けるなら、この比率で分けるのが最も美しいとされる。1周360°を黄金分割した角度を黄金角という(図8)。

フィボナッチ数列のお隣さんどうしで割り算すると、黄金比に近づいていく。
  1 ÷ 1=1
  1 ÷ 2=0.5
  2 ÷ 3=0.666666...
  3 ÷ 5=0.6
  5 ÷ 8=0.625
  8 ÷13=0.615384...
  13÷21=0.619047...
  21÷34=0.617647...
  34÷55=0.618181...
  55÷89=0.617977...

●デイジーの咲かせ方

さて、以上のことを踏まえた上で、先ほどのフィボナッチデイジーをどうやって咲かせたかをご紹介しておこう。

フィボナッチ数列から、4つ続きの塊を取ってきて、それらをk、l、m、n とする。このmとnが、後でフィボナッチデイジーの巻き数になるので、例えば、8:13のやつを咲かせるには、k=3、l=5、m=8、n=13 としておく。これで種まき完了。

角度θ(ギリシア文字のシータ)と成長比率aを次の式で算出する。

  θ=2π(km+ln)/(m^2+n^2)

  (m^2とは、mの2乗、すなわちm×mのこと。本来はmの右肩に小さく2を書
  くのだが、テキストではこれで代用するのが通例)

  a=e^{2π/(m^2+n^2)}

  (eは自然対数の底(てい)。e=2.718281...)

この角度θは、種のとり方によらず、黄金角に非常に近い値になる。どうしてそうなるのか気になる方のために、ヒントだけ。フィボナッチ数列の第n項をF(n)と表すと、

  F(n)F(n+2)+F(n+1)F(n+3)=F(2n+3)

  F(n)^2+F(n+1)^2=F(2n+5)が成り立つ。あとは自力でどうぞ。

これで成長率を決定する肥料の準備が完了。あとは水をやって成長を見守る。デイジーの中心を定め、そこから右へいくらか行ったところに丸を描く。芽が出た。その丸から角度θ回転し、中心からの距離をa倍に延長したところに2番目の丸を描く(図9)。この調子で続けていき、nm個の丸を描いたら、できあがり。

ところで、このように黄金角ずつ回して位置を順々に決めていく手法は、多くの植物が葉っぱをつけていくときに実践している。こうすることにより、2つの葉っぱが同じ向きに突き出ることはないので、下の葉っぱが上の葉っぱの陰を避けて、日光を効率よく受けることができる。しかも、上から見るとデイジー状に広がっていて、美しい。植物って頭いいなぁ。

●2重にして、立体にすると...

フィボナッチデイジーを形成するひとつひとつの玉を、すべてフィボナッチデイジーで置き換えることにより、2重構造のやつができる(図10、11)。
これは、さらに中へと繰り返すことが可能。このように、全体が、自身と相似な部品で構成されており、その部品ひとつひとつも、自身と相似なさらに小さな部品で構成されており、その部品もまた、...という具合に、自己相似な入れ子構造をもった図形を「フラクタル図形」という。

この、フラクタルなデイジーを立体化した造形があり、「フィボナッチカリフラワー」と呼ばれている(図12)。よくぞこんな面白い造形を考えついたもんだ、と作者に軽く嫉妬と羨望を覚えたのだが、よくよく見れば、ヤキモチを妬いてた相手は神サマだった。「ロマネスク」という種類のカリフラワーで、こんなのが本当に生えてるらしい。しかも食えるらしい。ちっとも食いたくならんけど。で、それをデイジーに配置してみた(図13)。

●複素力学系という名の迷宮

フラクタルなフィボナッチデイジーを描く、別の方法がある。「複素力学系」と呼ばれる数学を使うものである。「複素数」とは、平面上に広がる数である。通常、長さや時間などを表すのに使っている数は「実数」と呼ばれ、一直線上に延びる1次元の数である。これに対して複素数は平面上に広がる2次元の数。この平面を「複素平面」という。複素数は、2つの実数の組として表現することができ、実数と同じように四則演算(足し算、引き算、掛け算、割り算)ができる。

複素力学系というのは、ひとつの複素数を別の複素数へ移す操作を次々にほどこしていったとき、どんな挙動を示すかを調べる、数学の一分野である(「力学系」といいながら、物理とは関係ない)。この「挙動」を分類すると、
・一目散に遠くへ飛び去っていく
・何回目かにひとつの点に到達したら、そこに永住する
・ひとつの点に引きずり込まれて限りなく近づいていくが、決して到達することはない
・いくつかの点を巡回し続ける
・巡回ルートに限りなく近づいていく
・いつまでもふらふらと放浪し続ける(カオス)
となる。複素平面上の各点を、挙動別に色分けすると、絵が描ける。これが、往々にして、フラクタルな絵になる。

ある数を別の数に移す操作を「関数」と呼ぶが、その関数の例として、
  y=x^2+c
  (ただし、c, x, y は複素数)
というのを考えよう。cは定数(固定した数)。xが与えられれば、このxを上記の式に代入することにより、yが決まる。つまり、xをyに移す操作をしたことになる。

いま、ある適当な地点x0を旅の出発点に定めたとしよう。x0に対して上記の関数をほどこすと、結果として、どこかの地点が得られる。そこをx1とする。つまり、x0の地点からx1の地点へとジャンプした感じ。さて、x1に同じ関数をほどこせば、次の飛び先x2が得られる。これを繰り返して、x3, x4, x5, ... を得る。あっちへこっちへと蚤のようにジャンプして放浪の旅をすることになる。

cの値は固定してあるとして、出発点x0をどこにとるかによって、挙動が変わってくる。x0の複素平面上で挙動を塗り分けた絵をジュリア集合という。一方、x0を(0, 0)に固定したとき、cの複素平面上で挙動を塗り分けることもできる。これをマンデルブロ集合という。自慢だが、マンデルブロ氏が来日したとき、講演を聞きに行ったことがある。

複素力学系によるフラクタル図形を描画するフリーのソフトで "Fractint"というのがある。これを使って、ジュリア集合の中からフィボナッチデイジーを見つけてきた(図14〜17)。見つけ方は次の通り。まずマンデルブロ集合を描画し、その黄金角のところを拡大すると、フィボナッチ数の分岐路がごちゃっと見つかる。8分岐路がくっついている玉の岬に至る道と、13分岐路がくっついている玉の岬に至る道との分岐点のあたりで、それに対応するジュリア集合を描くと、8:13デイジーが現れる(図18、19)。Windows版のFractintでは、右ボタンでマンデルブロ集合とジュリア集合とを往き来できる。

今回のキリ番にちなんで17,711分岐するところを見てみようとしたが、計算精度と表示の限界で、何も現れなかった。細い道がいたるところで17,711個に分岐する迷宮が現れるはずなのだが。144分岐のところで、やっとこんな感じ(図20)。見ることのできない絵ってあるんだね。
しかたがないので。55:89と89:144のデイジー(図21)。玉の総数は55×89+89×144=17,711 いかがでしょ?

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
ぼーっとしている。英語では "away with the fairies" という表現があるけど。「妖精さんたちと、どっか遠くへ行っちゃってる」感じ。/次のキリ番は19,683です。じゃんじゃん踏んで下さいまし〜。
< http://mixi.jp/show_friend.pl?id=152827 >

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■イベント&募集案内
この街のクリエイター博覧会
< http://www.mebic.com/event/konokuri/20070220.html >
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Mebic扇町では「この街のクリエイター」を中心に構成される実行委員会により、クリエイターの交流を促進し、顔の見える関係を深化させることで互いに触発し、モチベーションやスキルの向上、クリエイター同士あるいはクライアント企業との連携促進を目的としたイベント「この街のクリエイター博覧会」を開催します。

日時:2月20日(火)14:00〜21:30(交流会 20:00〜21:30)
場所:Mebic扇町2F(大阪市北区南扇町6-28 水道局扇町庁舎2F)
< http://www.mebic.com/access/ >
参加費:無料(交流会2,000円)

●ポートレイト展示 参加者募集!
この街(天満、扇町、中崎町、南森町界隈)に生息するクリエイターの活動内容を広く知っていただくため、「このクリ大図鑑」と銘打ってこの街のクリエイターの写真とメッセージを展示します。出展ご希望の方は以下の応募方法をご覧ください。

詳細:< http://www.mebic.com/event/konokuri/portrait.html >
お問合せ:Mebic扇町 TEL.06-6316-8780 E-MAIL:info@mebic.com

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■編集後記(2/9)

・OpenTypeフォントの集大成となる書籍の編集に、ちょっとだけ参加している。いま取り組んでいるのは、20社近いフォント関連会社のサイトを巡り、製品情報を集めて整理するというパートだ。最初は簡単にできると甘く見ていたが、やり始めたら「これはエライことですよ」(ルーキー新一かい?<知ってる人は少ないだろうなあ)と思わず口にするのであった。各社のサイトの見せ方は、バラエティがあっておもしろいと言えなくもないが、ある一定の情報を特急で得たいというときは、ああ統一した見せ方にしてくれんかなもし(今度は「坊ちゃん」かい)とお願いしたくなる。ああ使えんなあこのサイトは、という会社もいくつかある。とにかく全部リンクを開いてみないと肝心の情報が見つからないこともある。字が小さすぎる、文字にアミがかかって読みにくいという、反ユニバーサルデザインのサイトもある。その代表はアドビシステムズかもしれない。サイトはデザインがきれいで、好きなタイプだが、つきあってみると相当扱いにくい。わたしのマシンのせいかもしれないが、反応がかなり遅い。いつ行ってもストアになかなかつながらない。ところで、フォントは各社サイトだけでなくMulti-bitsなどでも扱っている。それをチェックに行ったら、製品のあまりの多さに戦闘意欲を失なう。市販されているOpenTypeフォントは、1,200を軽く超えるのだ。各社のサイトでいろいろなフォントデザインを眺めていると、こんな醜悪な日本の文字を作って売ってどうすると思うことがある。「欧米か!」じゃなくて「反日か!」だよ。(柴田)

・wiiスポーツ毎日30分コースで痩せた人の記事があった。本気でやったら汗
かくもんなぁ。カロリー計算は、「体重×時間×基礎代謝(BM)×基準値
(METS)」。体重にもよるけれど、記事によると15分でテニス92kcal、ボク
シング125kcalだって。摂取カロリーは、「タンパク質と糖質は含有量(g)
に4をかけ、脂質には9をかける」のが目安らしい。何もつけないパン60gだと
60g×4で、240kcalだとか。80kcalを一単位として、食品群から何をいくつと
れば、という考え方もある。距離から消費カロリーを計算してくれるサービスが「キョリ測」。スタート地点を入力し、地図上をクリックして目的地まで導く。曲がり角ごとにクリックしていけば、道路に沿った距離が出る。あとは右にある一覧に体重、年齢を入れれば消費カロリーが出てくるよ。単位をビールに、なんてのもできるので、これだけ歩いてビール0.1杯分かぁ……としみじみしてみよう……。移動距離やカロリーだけでなく、移動所要時間まで出てくるので便利。この速度基準は設定変更できるので、歩くのが遅い人、早い人はカスタマイズすれば正確な時間になる。印刷もできるので、このルートで来てね、という案内にも使えるよ。(hammer.mule)
< http://excite.co.jp/News/odd/00081169485589.html > wiiで痩せました
< http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070127-00000017-gen-ent > 消費
< http://wiinintendo.net/2007/01/15/wii-sports-experiment-results/ >
本人のブログ
< http://shoku365.com/mets/ > METS表
< http://w-21.net/dron/food/callory.htm > 4をかける
< http://www.kenko60.com/koudoku/diet/018.html > 80キロを1単位
< http://www.hanamoku.com/calorie/ > 必要カロリー
< http://www.mapion.co.jp/route/ > キョリ測
< http://www5b.biglobe.ne.jp/%7Eyuustar/sbw_excl.html > 運動ごとに