武&山根の展覧会レビュー 本は「挿絵本」→「アーティストブック」と変化する うらわ美術館「ピカソ、マティス、シャガール・・・巨匠が彩る物語」展/武 盾一郎&山根康弘

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武: こんばんは!
山: こんばんはー。いやー今日は眠いので、焼酎を少し。。
武: 飲むんか!…じゃあ俺は日本酒にしようかなー。日本酒は、アルコールの中で唯一、身体を冷やさないらしい。
山: ほんまかいな。
武: 腰痛にアルコールがいけないのは、身体を冷やしてしまうからなのよ。日本酒なら腰痛持ちにもグー(笑
山: 言い訳やろ(笑)ま、飲み過ぎたら一緒やな。
武: 春近し あなた焼酎 俺日本酒 字余り 詠み人知らず
山: しらんわ!
武: これで奥樣方へのつかみはオッケー!
山: このパターンはもう飽きた(笑


●うらわ美術館「ピカソ、マティス、シャガール・・・巨匠が彩る物語」展

武: で今回、なんと! 埼玉県は「うらわ美術館」、「ピカソ、マティス、シャガール・・・巨匠が彩る物語」展に行ってまいりましたっ!
山:「挿絵本」の展示やね。2月18日で終わってしまうねんけど……って、なんで「なんと!」やねんな。
武: 地味だから(笑
山: あー、地味やね(笑
武: まずね、美術館なんですが、見つけにくいんですよ! ホテルについでにくっついてるって感じで。エントランスはこんなだし
  < http://japan.swamp-publication.com/?cid=3073 >
山: 普通の美術館ではこれはないやろな。美術館に見えへん(笑
武: でですね、今回なんでこんなジミーな美術館の展覧会を取り上げるかと言いますと、ちょっと美術館に特色がありまして……
山: 「本をめぐるアート」を収集方針のひとつにしてる。
武: 展覧会レビューなんだけど、どちらかというと「本」にこだわってる美術館として是非とも紹介したい! という感じなんですよね。
山: 日本では他にはないんちゃうかな。
武: あんまし聞かないよね。
山: 僕はついこの間まで浦和に住んでたんで、ちょこちょこ行ってたけどな。というか、実は僕らが参加していたアーティストマガジン「OBSCURE」が収蔵されている。「OBSCURE」を見せたいけど残念ながらWeb上にはない。
武: 旧東京大学駒場寮OBSCURE懐かしいのお。。。俺ら頑張ってたよなぁ。。。てか、浦和ですがな。「鎌倉文士に浦和画家」と言われてて、画家が多く住む街だったのよね。浦和レッズだけじゃないんですよ!
山: そうやな。戦中か戦後あたりか。疎開地やったんやな。
武: で、絵にゆかりのある街の地域美術館が、「本」に着目してる。
山: なんでやろ。
武: で、館側もきっとそこら辺のマイナーさ加減をクリアしたいと一生懸命な感じで、「ピカソ、マティス、シャガール」といった巨匠の名前を出してなんとか集客を増やそう、っていう頑張り感も満載(笑
山: なかなか厳しいんでしょうなあ(笑
武: で、展覧会。好きな作品の下にお気に入りシールを貼れるってのは面白かったね。
山: あ、あれは良かった。かなり真剣に選ぶ(笑
武: 見る側って「理解したかどうか」じゃなくて「好きか嫌いか」で見るから。
山: そうなんやろな。
武: 好きですというのを表明する行為が作品理解にもつながっていきやすくなるしね。
山: テキストも面白いのが多かった。パンタグリュエルとか。
  →Wikipediaで「ガルガンチュワとパンタグリュエル」検索

●「挿絵本」とはなにか?

武: 実は今さらマティス、ピカソとか言われてもなあ、みたいな感じで、あんまり期待してなかったんだけど、「デジクリでレビューを書くのでちょっと解説して頂けるとありがたいんですが。。。」と受付に申し出たら、非常勤学芸員の横井さんがまっこと丁寧に解説して廻ってくれたんすよ。なんだか、嬉しいやら申し訳ないやらで。
山: 親切やな。
武: 手作りで館を支えてる感じなんす。おかげで「挿絵本」という聞いただけじゃイマイチよく分からない世界を知る事が出来た。
山: ふむ。僕も予想以上に楽しめました。
武: そもそも「挿絵本」という単語がパッとしない印象を受ける。
山: 確かにあんまり聞かへんな。
武: 今ね「挿絵本」の定義とはなんなのか調べてたんだけど、ちょっと出て来ないっすね。
山: 出てこーへんな(笑
武: 20世紀中頃。背景としては版画という複製技術がいろいろ発達してるということなんかな。で、画商(プロデューサ)、画家(ディレクター)、版画刷り師(職人)という三者の共同企画による、「テキスト&ビジュアル」の本を100〜300くらいの少部数作った、と。それらを通称「挿絵本」と言う、てな感じなのかの。
山: 参考までに。

【装飾写本】
ソウショクシャホン
Illuminated manuscript
各種の素材の上に書かれた文書に插絵や文様で装飾を施したもの。すでにシュメールの楔形文字を記した円筒印章に象徴的神話モチーフが彫られているが、確実に文章の内容を插絵にしている最古の例は古代エジプト中王朝の『死者の書』のパピルス巻物である。
ギリシアではヘレニズム期にアレクサンドリアに大図書館が設立され、ナイルの豊富なパピルスを利用し、莫大な数の巻子本(かんすぼん)を生産したが、そのなかには多くの插絵つきのものがあったと思われる。2世紀頃からは、より堅牢な羊皮紙の冊子本(コデックス)に次第に取って代り、400年前後には後者が主流となり、同時に写本装飾も芸術的に飛躍的な発展をとげた。
古代末期と中世はこのような羊皮紙あるいは犢皮紙の冊子本装飾の全盛期で、バチカンの『ウェルギリウス写本』(4世紀末)、ウィーンの『創世記』写本(6世紀)、パリの『詩篇』(10世紀)、ウィーンの『戴冠福音書』(9世紀)、バンベルクの『黙示録』(11世紀)<聖ルイ王の『詩篇』(13世紀)など数々の傑作がある。なかでも中世末期の国際ゴシック様式の時代のフランスは『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』(1412〜15、ランブール兄弟作)をはじめとする写本芸術の粋ともいうべき作品を生んだ。
15世紀にはドイツにおける印刷術の発明とともに、木版、銅版を用い紙に印刷した插絵入り本が民間に多数流布するようになった。(Jamming ver 2.8.2 PPC)

武: あー、そもそも本とは「言葉」を伝えるのがメインで、その言葉を装飾したり、補足したりするために「ビジュアル(絵)」が施されて進化していった、という ことかの?
山: 挿し絵は英語で… an illustration …イラストになんのか。
武: 今回のうらわ美術館の展示、20世紀の「挿絵本」は完全に画家が制作の主導権を握っている。
山: そういう感じやったな。
武: あくまでもビジネスベース上ではあるんだけど、画家達は徹底的にこだわってるんだよなぁ。
山: しかもかなり豪華。
武: 具体的なギャラとか、どうだったんだろう。
山: ピカソやシャガールらが手がけた挿絵本は、「リーヴル・ダルティスト(アーティストの本)」と呼ばれ、版型が大きく、オリジナルの版画を収めた豪華なスタイルが特徴です、と解説にある。
武: 「綴じてない」ってのも特徴だよね。装丁は別、という様式だったからかな。
山: ルリユールやな。本を綴じる技術、伝統があったんやね。
武: すると、今回の「挿絵本」というのはルリユールなしの状態だよね。その状態でも「本」と呼ばれたってことかの。
山: もともとフランスでは本は綴じてない状態で売ってたらしい。
武: 面白いよな、それって。
山: で、買った人が、自分でどっかの職人に頼んで「製本」してもらう、と。
武: 売る側は「出来事(ソフト)」を制作し、最終的な「枠(ハード)」は買う側が決めるってことだよね、それって。
山: そうとも言えんのかな。ま、ハードも売ってるんやけど。その家々の伝統の装丁とかあったんちゃうかったかな。確か。
武: 少部数でめちゃくちゃ手間のかかる挿絵本だからさぞかし高いだろうなあ。
山: 高いやろー。
武: 庶民はやっぱ買えんだろう。
山: 買えんやろー(笑

●本は「挿絵本」→「アーティストブック」と変化する

武: 「挿絵本」は「リーヴル・ダルティスト(アーティストの本)」とも言われている、って言ったじゃないですか、けど、最終的な枠=製本(ルリユール)はアーティストは携わらないでしょ。
山: 普通そうなんとちゃうか。
武: 「仮綴じ」と「ルリユール」が分かれてる。
山: そういう風に日本で作ってた人たちの本を見たことある。毎月1頁づつ送られてきて1年間で12頁。それを自分で綴じろ、と。綴じなくてもいいように箱がついてる。それも「本」。プライベートプレス、私家版かな。
武: ふむー。例えば今回の挿絵本展示で言うとね、ピカソはビュフォンという人が書いた「博物誌」の絵を銅版画で描いてる、1942年。マティスの「ジャズ」という挿絵本はビジュアルもテキストもマティスが担当してる、1947年。レジェの「サーカス」もテキスト&ビジュアルだ、1950年。アレクサンダー・コールダー「祝祭」は、コールダーのビジュアルにジャック・プレヴェールという人が詩を捧げたそうです、1971年です。挿絵本の進化(変化)としては、テキストに絵を付ける、から徐々に言葉とビジュアルが逆転して行くんだよね。
山: もう挿絵とちゃうな。
武: うん。挿絵という概念が破綻して「挿絵本」と呼ばれるものも徐々になくなる。で、「アーティストブック」というモノが誕生する、と。そういう流れで考えていいんじゃないのかの。
山: そういうことになるんですかね。
武: 現代美術って「最終的な枠」までもをアーティストが思考する必要性もある気がするんさよ。
山: まあな。
武: それが「アーティストブック」を作って行く鍵かも知れないなあ、と。
山: 沼美術館はそういうこと考えて作ってたりする。
< http://swamp-publication.com/archives/2007/02/_swamp_museum.php >
武: 先人達の「挿絵本」から半世紀、今は「アーティストブック」と呼ばれる本を作ってマス! ってテリアードさんに知らせたい。
山: テリアードって誰?
武: 出版者ですね。シャガールの「ダフニスとクロエ」(1961)なんかはこの人みたいですよ。「挿絵本」を経て、今の俺達がある、と!
山: そうか?

●浦和に来たら「うらわ美術館」と居酒屋「力」

武: 「本」の魅力を瞬時に伝えるって難しいと思う。じわじわと効いて来るものだから。だから一回の展覧会で「本」を特集するんじゃなくて、美術館自体が「本」にこだわって、ずーっと本の魅力を伝えようとし続けるってスタンスは良いなあって思ったんすよ。
山: まあ本って、もちろん見るもんやけど、所有するものやったりもするからな。そういう魅力があるよな。手に取りたいとか、うちの本棚に入れときたいとか。
武: フェティッシュな分野でもあるし。
山: なにかしらの世界が一つの形に収まっている、というのはやっぱり気持ちいい。
武: 文字情報と画像情報はこうして手に取らなくてもパソコンで見れる、けど「触れられる物質」ってこれからますます意味を持ってくると思うんですよ。身体と物質。本というのは非常に不思議なメディアだと思うんだ。
山: 感触やな。五感すべて使うというか。あ、食べへんか(笑
武: 美味しそうなアーティストブックって作ってみたいよな。
山: 美味しそう、っていうのは何でもけっこう大事やね(笑)……腹減ってきたぞ。
武: 是非、浦和に来て「うらわ美術館」に寄って、レッズサポーターのアジト「力」で焼き鳥食べて酒呑んで下さい!
山: あー行きたい! 引っ越してから行ってないなー。
武: じゃあ、今度行きましょー!
山: そうやな! センマイ刺し喰いたい。ほんま腹減った。
武: 次は山根のおごりだから。
山: ……違う人と行きます!(笑

【ピカソ、マティス、シャガール・・・巨匠が彩る物語】
< http://www.uam.urawa.saitama.jp/tenran.htm >
場所:うらわ美術館ギャラリーA・B・C
さいたま市浦和区仲町2-5-1 浦和センチュリーシティ3F TEL.048-827-3215
会期:2006年11月18日(土)〜2007年2月18日(日)
開館時間:火〜金 10:00〜17:00(入場は16:30まで)
     土・日 10:00〜20:00(入場は19:30まで)
観覧料 :500円、大高生300円、中小生150円

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/グラフィックデザイナー兼画家】
・新宿西口地下道段ボールハウス絵画集
< http://cardboard-house-painting.jp/ >
・夢のまほろばユマノ国
< http://uma-kingdom.com/ >
take.junichiro@gmail.com

【山根康弘(やまね やすひろ)/阪神タイガース信者兼画家】
・交換素描
< http://swamp-publication.com/drawing/ >
・SWAMP-PUBLICATION
< http://swamp-publication.com/ >
yamane.yasuhiro@gmail.com