ローマでMANGA[1]イタリアから、マンガ留学生が東京に行ったよ
── midori ──

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初めまして、の方も、お久しぶり、の方もこんにちは!!
ローマのみどりです。

ローマに住んで早27年。フルコースの料理も、大判ピザも平らげることができてしまう半ばイタリア人と化した私ですが、昔から変わらないのはマンガ好き。一時はローマの生活を描いたエッセイマンガを商業誌に掲載したこともありました。。。今は、ローマのマンガ学校で週に一回MANGAの講師をしています。その辺の話をぼちぼちしていこうと思います。今回のお題は「イタリアから、マンガ留学生が東京に行ったよ」


●去年の話

来年の話をすると鬼が笑うと言います。去年の話をすると誰が笑うんでしょう?誰が笑っても無視して去年の話をします。

私が講師をするScuola Internazionale di Comics(スクオラ・インテルナツィオナーレ・ディ・コミックスと読みます)では、三年間最高得点の30点を取った生徒に奨学金を贈与してキューバのアニメ学校へ二週間留学させてます。昨年からこれに日本が加わりました。

日本のマンガ学校と姉妹校提携をして、交換留学をしたい…という学校の意を受けて、候補になる学校を探しました。水道橋にある東京アニメーター学院とするすると話が進んで、二週間の留学生受け入れがあれよあれよと決まって、昨年11月に実施しました。

東京アニメーター学院については、知り合いがいたわけでもなく、サイトであちこち見て回って、好印象を受けてメールを送ってみたのでした。これが大正解。真摯に学生の事を考え、親切丁寧迅速まじめな対応で実に有意義な二週間をウチの学生に提供することができました。

日本行きの奨学金を得たのはティーナという小柄なナポリ出身の26歳。
この出来事でティーナと日本へ同行したのが
1)学校の若き教務課長ジョルジャ。イラストレーター、グラフィックデザイナー、ローマ大学の学生でもあります。
2)学校のグラフィック科の1年生であり、書店さんでもあるバレリオ。留学うんぬんには全く関係なく、日本に興味があるけど一人じゃヤだからの便乗旅行。
3)学校の講師にして通訳の私メ。
の計4人でありました。

●NIPPONでNIPPONNを再確認

UFOロボ グレンダイザー BOX 21970年に初めて日本のアニメ「グレンダイザー」が放映されて以来、イタリアでは日本のアニメ、そしてその後上陸した日本のマンガを見て育つのが当たり前になっています。そんな子達が日本に来ると、アニメで見知った世界がそのまま現実のものとして目の前に現れて、テーマパークの中にいるような、違うな、テーマパークは作り物でこれは現実だもの、なんと言うか夢の世界が現実になったような感じ…を受けるのだそうです。

制服で通学する小中学生、バスや電車の風景、箸を使う食事、コンビニ…どれもこれも「あ、知ってる、知ってる!」と、発見ではなく再認識なんだそうです。

ジョルジャもティーナもバレリオも「あ、知ってる、知ってる!」の口です。UDON、TONKATSU、RAMEN… 食べ物も困らず、箸も躊躇なく、「教えてあげよう!」と気がまえていた通訳・東京案内人の力がふにゃふにゃと抜けてしまったほどです。アニメが日本の文化、風習を世界に伝えている効果は計り知れませんですよ。

学院が用意してくれた授業は一日3時間。ティーナが特に喜んだのはシルクスクリーンの授業でした。イタリアにはもはやシルクスクリーンがないんです。その昔は製図用に売ってましたが、コンピュータ普及と共に消えてしまいました。売ってたときも、一度紙の上に乗せるとくっついてしまうので、使いにくいことこの上ありませんでした。「ウハハ!こうやって雲を作るのか!」と大喜びのティーナ。

ティーナはさすがに優秀生徒。しっかりと絵の基礎ができているので、初めての技術も難なくこなしていきます。いちいち通訳を通すというハンデを超えて、もうずっと学院に通っていたように授業をこなしていきました。

これは先生方が相手がガイジンだから…という差別をせずに、一般生徒と同じように扱ってくれたからでもあります。特にプロ漫画家養成科の中村先生は、ちょうど留学期間に締め切りがあった作品集にティーナの作品も載せるから何か描いてみたら? と言ってくださいました。

ティーナは授業の後に学校に残って、他の生徒と実習室で作品を仕上げ、ちょっとプロの気分を味わって喜んでいました。しかも、その時に通訳なしで身振り手振り絵を交えて生徒達とコミュニケーションをとって大きな思い出を作りました。

そうそう、学院はすべての道具を負担してくれ、動物園でのスケッチ大会には私やジョルジャにもお弁当を用意してくれ、おまけのバレリオもついでに招待してくれて歓送迎会、それにたっぷりのスクリーントーンのお土産を用意してくれて、至れり尽くせりでした。ティーナは歓送迎会で「帰りたくない〜」「来年も自費で来ます!」と騒いでいました。

●MANGAとイタリアコミックスの融合を夢見ていいかな?

イタリアをはじめヨーロッパのコミックスは、シチュエーションを描いていきます。絵で引っ張っていくので、背景まできっちり描いたイラストのような技術を要求されます。読者が主人公に感情移入をして、ストーリーを生きるMANGAと文法が違います。

昔、講談社の「週刊モーニング」で海外作家にMANGA文法で作品を描いてもらうというプロジェクトがありました。その時、ローマで海外支局を担当する幸運を得まして、MANGAとイタリアコミックスを制作側のそばで見ました。

このプロジェクトが中止になってからも、イタリアにMANGA文法を根付けて新しいマンガを誕生させる手助けをする…と夢見てました。MANGA文法こそが絵とセリフで話をすすめるこの表現法には最高のものだと思っていました。

今回、ティーナが自分の作品を生徒や先生方に見せてその反応を見ているうちに、MANGA文法至上主義でなくてもいいかな、と思い始めました。しっかりと遠近法や美術解剖を勉強した上で描く絵は力があって、まじまじと見てしまいます。

日本にイタリア、ヨーロッパのコミックスが入ってこないのは、知らないから。この絵の強さで物語を進めていく読み方に慣れていないから。

日本に絵の強さを紹介する。イタリアにMANGA文法をもっとわかってもらう。これを一人でがんばらないで、組織立てて行ったら、新しいマンガ構築という夢がかなうかな…と思い始めました。

学校に日本の新人賞に応募するコース、というのを提案してみました。これについては次回………

【みどり】midorigo@mac.com
昨年は留学先との話し合い、授業通訳で二回も里帰りができました。その機会にデジクリ縁で、ミクシでオトモダチになっていただいた永吉さん、茂田さん、やましたさん、その他初めて会うマイミクさんと宴会しました。家族が増えたようで嬉しい。

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by G-Tools , 2007/02/16