デジアナ逆十字固め…[36]ビー玉の宇宙
── 上原ゼンジ ──

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光の進み方の完全理解―小学理科3年~6年「光の進み方」陰山英男(学習研究社)という本を買った。著者の陰山さんは立命館小学校の副校長で、任天堂DSのソフトにもなった百ます計算を世に知らしめた人だ。また、ヤンキー先生も参加している教育再生会議のメンバーでもある。

というのは、今ネットで検索して初めて知ったことで、ただ書店でこの本を見かけて何か面白そうだなあと思って買ってきた。小学3〜6年生を対象とした本で、1500円なのだがいろんな実験教材が付いているというのがポイント。実験を通して理解を深めていこうということだ。


とりあえずテキストの指示に従って実験をしてみた。まずは電灯にピンホールをかざして紙に電灯の形を映してみる実験。丸型の蛍光灯であれば、丸い形が映るし、真っ直ぐな蛍光灯であれば、棒状の形が紙に映る。カメラオブスキュラのヒントにもなったような、一番基本的な現象だ。

次にこの附録の一番の売りでもある「レンズ交換式ピンホールカメラ」を使った実験。カメラとはいっても実際に撮影することはできない。ピンホールやレンズを通して入ってきた光がスクリーンに投影され、その像が観察できるような仕組みのものだ。

ピンホールの実験はピンホールの大きさを変えるとどうなるか? 穴の形を変えたら? 穴の数を増やしたら? 穴とスクリーンの距離を変えてみたら? といった実験ができる。自分でもピンホールカメラは作ってみたが、実際に像が映っている状態は確認したことはなかったので、けっこう新鮮。

さらにピンホールをレンズに変えた実験もできる。像は乳白のプラスチック板のスクリーンに映るのだが、ピンホールからレンズに変えると、かなりはっきりと像が浮かび上がってくる。まあ、フォーカシングスクリーンを覗き込んで撮影するタイプのカメラはいくらでもあるが、ボール紙製の単純な構造で、はっきりと像を見ることができるのは、ちょっと感動的。

レンズを使った実験では、スリットを通過した光がレンズを通り、どう屈折するのか? 形を変えたフィルターをかけると何がどう変化するのか? といったようないろんなテストができるようになっている。

まあ、何となく分かっているようなことでも、はっきりと実験で見せて貰えれば理解も深まる。私は写真の学校に通ったことはないのだが、写真学校ではこんな実験をして見せてくれるのだろうか? 小学3年レベルからお勉強するのも悪くないと思った。

この本の冒頭には以下のような言葉がある。
「理科学習を通じて学ぶ大切なもの,それは単なる知識だけではありません。自然の中にある不思議に気がつき,驚くことや感動することです。だからこそ,子どもたちには実験や観察を通じて理科学習をさせてやりたい,それは私が現場にいるときからの切なる願いでした。(後略)」

これは「センス・オブ・ワンダー」ということだね。いまだに小学生のように驚いたり感動したりしているオジサンはどうかと思うけど、こういった驚きこそが大切だと思う。

●「キッチュレンズ工房」コミュも軌道に

昨年の11月末から始めたmixiの「キッチュレンズ工房」コミュは参加者が300人になろうとしている。ちょうど一月に100人ぐらいのペースだ。最初はただただ一人で書き込みをしていたのだが、だんだんと工作に参加してくれる人も増えてきた。

多いのは20代の女性なんだけど、最近書き込みが増えてきたのは30〜60歳ぐらいの男性。やっぱり工作が好きなのはオジサンなのだろうか? まあ、私としては広がりを持たせたいので、なるべく身近なもので簡単に工作できるように、ということを考えてるつもりなんだけどね。

この連載を始めてもうすぐ一年。ない知恵を絞っていろいろやってきたけど、同じような趣味を持っている人が集まって知恵を寄せ合うというのは、なかなかに素晴らしいことだ。自分では絶対に出てこないような発想というのもある。

たとえばビー玉。これもレンズの一種だよなーと思って、買ってはあった。しかし、あまりに焦点距離が短くて一眼レフの場合だとボディの中に入れない限りはピントが合わないので放ってあった。ところがそのビー玉を使って工作した人が現れた。

ビー玉というのは近づけてピントを合わせることもできるが、ちょっと離すと遠くのものにピントが合うようになる。ただし像は天地左右が反対になってしまう。私は天地左右が反対になった時点で工作を諦めてしまったが、その金沢美人はそのまま完成させてしまった。そして撮影する時はカメラを逆さまにするのだそうだ。

まあ、コンパクトデジタルカメラだったら液晶画面を見ながら撮影できなくはないだろうけど、ビー玉が付いたカメラを逆さにして撮影してるのは、不思議の国の人と言ってもいいかもしれない。

ただ、そのレンズを使った写真というのが、ビー玉感に溢れた写真ですごく良かった。カメラを逆さにして撮影するということに対しては大いに疑問があるのだが、ちょっとビー玉の味は欲しいなあと思わせるものだった。

またある人はビー玉万華鏡を一眼レフに取り付けてしまった。ビー玉万華鏡というのは万華鏡の先にビー玉を取り付けたもののことだ。通常の万華鏡では万華鏡の先に色とりどりの「具」を入れて、その「具」を観察するわけだが、ビー玉万華鏡の場合は「世の中」を観察する。

しかし、ただ「世の中」を観察するわけではなく、ビー玉によって歪み、鏡によって曼荼羅化した世界が映し出されることになる。ビー玉万華鏡を紹介してくれた謎のミュージシャンは、鉄塔をビー玉万華鏡レンズで撮影した画像をアップしてくれた。そのチョイスがまたGood。

私もさっそく東急ハンズで「ビー玉万華鏡」のセットを買ってみた。プリンツという会社の製品で、588円。一家に一台あってもいいかも……。
< http://www.prints.co.jp/
>

それにしてもビー玉レンズの逆さ撮り写真もちょっと気になる。逆さの部分さえ修正できれば自分でも試してみたい。で、思いついたのが鏡を使って逆さま画像をさらに反転させる方法だ。

まず通常のレンズの前に鏡を置く。鏡は斜め45度にして上が見えるようにする。そして上の方にはビー玉があり、レンズ、鏡、ビー玉は筒でつなぐようにする。つまり潜望鏡のような感じで鏡の前から上向きの筒だ出ているような感じだ。これはちょっと新しいんじゃないだろうか。

ただ、これだとレンズは上向きになり、空ばかり写すことになる。しかも広角だから自分のオデコも常に写りこんでしまう。これではただの芸術か……。

では、カメラを前に倒して、金属探知器を操るような感じで撮影するというのはどうだろう? 鉄人28号の正太郎君モードと言ったほうが分かりやすいかもしれない。まあカメラを逆さまにするのとあまり変わり映えしない気もするが……。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇キッチュレンズ工房
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/
>

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by G-Tools , 2007/02/22