創作戯れ言[7]自分を売る/青池良輔

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,400文字)


僕はフリーランスでコンテンツ制作をしており、それを仕事として成立させるには、やはりどこかでお客さんを捕まえてこないといけません。どんな職業でもそうなのですが、広告が必要ないぐらい順風満帆な一流どころを除けば、一生懸命営業をがんばる必要があるでしょう。

僕の場合、作品集の体裁のDVDとプロフィールの書類を作って、機会のある毎に未来のクライアントや、プロデューサーに渡し「よろしくお願いします」という挨拶をし、ショートムービー等のオリジナル企画については、機会があれば企画書を送って検討してもらうようにしています。


そのような事を、ばちぼちとやっていると、

「自分のウリ」

に面と向かわざるをえない機会がたびたびあります。これが何とも辛い瞬間です。同じデジタルコンテンツ制作、ショートムービー制作者の溢れる人材リソースの中で、自分の立ち位置がどこにあるのか、冷静な判断を求められます。

コンテンツ制作と一口に言っても、その業務内容を細分化してゆけば、各分野に揺るぎない第一人者の方々がいらっしゃいます。そして、反対に目を向ければ学校に在学中ながらもまぶしい才能の光を放っている人達もいるのです。

「自分がナンボのモンやねん?」

と考え始めると、残念ながらあまり強気ではいられなくなってきます。デザインの才能、絵の技術、アニメーションのテクニック、プログラミングの能力等々、どれをとっても二流なのです。しかし、あまり悲観的になって飢え死にしてしまう訳にもいかないので、そこをなんとか振り絞って「自分のセールスポイント」をひねり出します。

このセールスポイントを考える時に危険なのは、「無理」をしていないかという事です。フリーランスに限らず、プロダクション勤めの方でも、「納期の為の残業量がすごい」とか、「値段を下げて競合相手を出し抜く」とかすでにギリギリと胃が痛くなりそうなセールスポイントの誘惑に惹かれることがあります。しかし、そういうところで自分を売ってゆくと、どんどん価格や納期が破綻してゆくだけで、プラスの方向には向かってゆきそうにありません。

自分を売り込みながら、さらに明るい未来志向で行こうと思えばやはり自分自身の価値を高めてゆくほうが健康的です。一口に自分を磨くといっても現実にはなかなかどこから手を付けていいのか悩みます。

業界を相対的に見回して、自分の個性が発揮できそうな分野、一定の評価を得ている事項があれば、どんな小さな事でも前向きに受け止めその芽を伸ばすようにすれば良いでしょうが、それさえ確信に至らないのであれば、自分自信を悲しくさせる「ちょっと不得意と思われる分野」をひたすらに考えるのも方法の一つだと思います。自分のプロフィールに不足している部分を影のように塗りつぶしてゆく事で、ネガフィルムのように自分自身の陰影が捉えられると思っています。そしてそれを反転する事で、得意分野をあぶり出す事もできるでしょう。

うまく「自分」という商品を売り込む為には、それについて知り尽くし、良いも悪いもわかっているにこした事はないはずです。状況や経験は常に変化するので、僕も、定期的に我が身を振り返るように心がけたいと思っています。

ただ、「売り込み」ということを念頭に置けば、多くの商品がそうであるように、未来のクライアントに対してあえてマイナスポイントをプッシュする必要もないと思っています。隠す訳ではなく、「わざわざ言わない」というのも、セールスとしては間違ってはいないのではないでしょうか。もちろん、関わってゆくプロジェクトにおいて、言わなかったポイントが致命的なトラブルになるかもしれない場合には誠意をもって対応しておいた方が、後々の幸せに繋がるでしょう。

もうひとつ、自分を売り込む時に気にしている事として、「ほんのちょっと背伸びする」という点があります。できない事をできるというのではなく、実現可能な事にほんのちょっと自分が成長できる「のりしろ」を足した状態で提案しています。いくらたくさんの仕事をゲットできても、全てが八割の努力でできてしまう仕事に甘んじてしまうのは怖いのです。願わくば、一割か二割増の努力の要る仕事に出会いたいと思っています。

自分の身の程を計りながら、それでもちょっと成長できそうなプロジェクトを望むというのは単なるワガママかもしれません。「できる事を確実にこなす」方がクライアントにとっては良いクリエイターでしょう。「安心感」はなにものにも代え難いセールスポイントです。ただ、このようにどうやって自分をプロモートしてゆけば良いのだろうかと悩んでいても、いざとなってしまえば、

「まぁセールスも二流だし。なるようになれ」

と割り切ってしまう自分がいます。

生意気言いました。

【あおいけ・りょうすけ】your_message@aoike.ca
< http://www.aoike.ca/ >
1972年生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。学生時代に自主映画を制作したのち、カナダ・モントリオールで映画製作会社に勤務する。Flashアニメシリーズ「CATMAN」でWebアニメーションデビューする。芸術監督などを経て独立し、現在はフリーランスとして、アニメーション、Webサイト、TVCMなど主にFlashを使い多方面なコンテンツ制作を行う。

・書籍「Create魂」公式サイト
< http://www.ascii.co.jp/pb/flashbooks/create-damashii/ >

●青池さんが、今週22日からの東京国際アニメフェア2007「クリエイターズワールド」に出展されます!(濱村)
< http://www.tokyoanime.jp/ja/fourdays/creator_top.html >


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Create魂 Flashクリエイターによるオリジナルアニメ創作論
青池 良輔
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by G-Tools , 2007/03/20