インターネットアニメCMをつくろう 〜スタジオボイラーからの提案〜
── 青木隆志 ──

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こんにちは、スタジオボイラーの青木隆志と申します。昔は「別府鉄輪地獄変」(べっぷかんなわじごくへん)という自主制作アニメで、そこそこ有名でした。

FLASHのおかげで一気にムーブメントになった個人制作のネットアニメ。ファンドの設立やDVD化など、今後に期待を持たせるような話ばかりが伝わってくるので、少し反対意見も。

僕の同年代の人達で、個人制作アニメをやめてる人がチラホラ出てきている。アマチュアってことでなくプロとして。僕は映研OBなのでよくわかるが、自主制作映画を撮りつつ30近くまでバイトしながらグダグダやって、あまりの先の見えなさに「もうボチボチちゃんと会社勤めするべ」みたいな感じの人と、個人制作アニメで飯を食ってるように装って、やってることはDTPであったり、ホームページ制作だったりする人がいる。


僕は後者に分類される。特に地方は顕著。個人制作アニメを売っていくシステムはあまり確立されておらず、そのうえ個人制作アニメの請負案件もまた極端に少ないので、飯の食い上げになる人が出てくる。いつかは状況が改善して、個人制作クリエイターも食うに困らないようになるかもしれないが、僕自身はその「いつか」というセリフを7年ほど待っている状況だ。

そこで、スタジオボイラーからの提案。それがインターネットアニメCMだ。「柱カバーニャン」という、柱機械刑事がアニメで柱カバーニャンを紹介するアニメCMを作りました。
< http://www.kjsystem.net/e-cat/
>

どこにでもあるバイラルCMと言われるかもしれないが、ミソとなる部分はこっち、同時に値段と制作までの手順を公開した。
< http://studio-boiler.hp.infoseek.co.jp/panf.htm
>

これを元にホームページ制作会社を代理店にして、各会社が抱えているクライアントに提案してもらい、このアニメCMの仕事と業界を確立できればな〜とか考えてる。ファンドから200、300万の金ひっぱって来るために必要な書類作りやプロデューサーを捜す作業より、はるかに手っ取り早く、確実なシノギだと思う。

クライアントが見つかった後の折衝手順は、スタジオボイラーが公開したヤツを参考にすればいい。アニメCMの企画をホームページ制作会社に持ち込む際のパンフ作り(スタジオボイラーを、各々の屋号に変えれるように)や、近いうちに絵コンテ用スライドのflaデータもダウンロードできるようにしたい。

値段設定がわからないっていう点も、日本人の平均的な収入である年額400万、月額33万、日当1万5千円を基準に考えて、アニメを作るのに何日かかるかで算出すればいいと思う。スタジオボイラーは、設備と事務所を借りることを前提にしているので、日当2万円と考えており、実際の作業に14営業日かかる計算の元、ストーリーアニメコース30万円(税込)の値段を出した(僕は年収1,00 0万以上になる可能性があるので、残りの2万は消費税分ってことで)。

同業者ならわかると思うが、ここまで販売価格と原価(作業日数)をつまびらかに明かす業者は他にないと思う。大阪商人なら「客によっちゃ、もっとボッタくれるかもしれへんのにアホやな」と言うかもしれない。これへの反論は一点に絞る。

それは、クライアントの支払い能力と説得力ある販売価格の設定理由である。クライアントが欲しいクオリティと、どのくらいまでならお金が出せるかをヒザを付き合わせて相談し、かつ我々が生きていく限りにおいてどうしても必要なコストを、ギリギリまでせめぎ合わせて出した金額だ。

この30万円より安く仕事をする人が出てきてもいいと思うが、それは動画枚数を減らしたり、再生時間を短くしたりして、作業日数を減らして対応することで安くするべきだ。けして自分の身を切って(つまり日当1万5千円以下で働くということ)働くことがないようにしてほしい。自らの人件費を安くするために国民年金払わなかったり、税金を納めなかったりしてはならない。

インターネットアニメCMはかなり脈があると踏んでいる。似たような感じで、求人広告やアニメマニュアルもサンプルを用意する予定だ。とくに地方で店の宣伝などをするときに、こうした2、3分のアニメの制作を、地元のクリエイターに発注するようになれば、地方に住んでてもクリエイティブな仕事ができる。

こうした仕事の機会が増えてその業界が確立し、案件が増えてクリエイター需要が高まったら、事業者組合を作って、クリエイターがSNSで仕事探せるみたいなこともしたい。まあ、それはずっと先のこととして……。

ずいぶん昔からアニメCMの仕事はあるにはあったが、「値段」「発注から完成までの流れ」みたいのは経験を積んで確立しないといけなかった。今回公開した「値段と制作までの手順」を元にすれば、ドンドコ仕事をこなせるようになるだろう。

このアニメCMでボチボチ食いつなぎながら、一発大当たりを狙って自主制作アニメを作り、作家として飯を食うことを目指す。マンガ家もそうだけど、今はいきなり作家しかないから猛烈な弱肉強食の世界になっているにもかかわらず、大学はアニメーション学科とかマンガ学科とか作るから、路頭に迷う若者が増えるのだ。

このアニメCMがネットアニメのリスクヘッジになればと。そんなスタジオボイラーの提案でした。

【青木隆志】t-aoki@d8.dion.ne.jp
Flash制作、スタジオボイラー
< http://www.studio-boiler.com/
>
大学生時代に「別府鉄輪地獄変」という自主制作Flashアニメで注目を浴びる。現在はアニメ・ミニゲーム・ホームページ用のインタラクティブなどFlash制作専門のクリエイターを生業としている。