デジアナ逆十字固め…[41]環境光を整備する方法/上原ゼンジ

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カラーマネージメントを行うには、作業をするための環境光の整備が重要になってくる。室内照明の光色や明るさによって、ディスプレイや色校正の見え方も影響を受けるので、意識的に整えていかなければならないというわけだ。

印刷学会推奨規格ISO3664では、印刷評価用光源を以下のように定めているが、今回は環境光に関する話をしてみたい。

◇相関色温度(ケルビン):5000K±250K(常用光源CIE D50)
◇平均演色評価数:Ra≧90


●演色性とは?

物は光の反射によって見ることができる。また、光は様々な波長成分により成り立っているが、ある物体がその波長の中の赤色の光だけを反射し、他の光をあまり反射しなければ、その物体は赤く見える。

つまり、元々の光源自体に偏りがあり、赤い波長が含まれていなければ、同じ赤には見えない。色を正確に観察するためには、物体を照らし出す光源が重要になるということだ。

印刷物を評価する際の「常用光源CIE D50」というのは、基準とする光源をCIE(国際照明学会)で定めた5000Kの昼光にするということ。このCIE昼光は自然昼光の分光測定値を元にCIEが定めた分光分布を持つ光のこと。つまり色んな波長成分が平均的に含まれた、色の観察に適した光と言える。

では自然光を使って色校正をすればいいのかと言えば、そういうわけではない。天候や時間帯によって、明るさや波長成分が変化してしまうし、夜は仕事ができなくなってしまうからだ。

そこで、常に一定な人工光源が必要になるわけだが、この場合も太陽光のように人間の目に見える波長を豊富に偏りなく含んでいる必要がある。そしてこの基準となる光源に近い光を「演色性が高い」という言い方をする。

「平均演色評価数」というのは、演色性の高さを数値化したもので、数値が大きいほど演色性は高くなる。実際の製品としては以下のようなものがある。

◇東芝ライテック「色評価純正色蛍光ランプ」
昼白色、演色AAA、色温度:5,000K、平均演色評価数Ra:99

◇ナショナル「高演色性蛍光灯〈リアルクス〉演色AAA」
昼白色、演色AAA、色温度:5,000K、平均演色評価数Ra:99

デザイン事務所などで使われているネジレ管タイプの高価な蛍光管「トルーライト」は、色温度が5500Kで、平均演色評価数がRa:91なので、上記の製品のほうがいいだろう。また、三波長型で昼白色(5000K)の製品もあるが、印刷学会の基準である「Ra:90以上」の色評価専用のタイプのものがいいだろう。

この数値が低いということは、基準となる光源で観察した場合と同じようには見えないということ。ふだん気づくことはないが、一般的な人工光源というのは色評価には適していないということだ。

「色温度」というのは、光源の色味を表す単位(ケルビン)のこと。赤っぽい光や青っぽい光があるが、色校正を観察する際の色温度は5000Kが基準である。「5000Kだと赤すぎる」という人もいるが、主観的評価ではなく、皆が同じ条件で観察するということが大事なのだ。

●環境光の明るさ

環境光の明るさに関しては「2000lx(ルクス)」というのが、従来の基準だった。ただしこれはアナログ時代の基準であり、少し明るすぎるということで、見直しのための実験が印刷学会により行われた。アナログ時代はゴミ・ホコリ、キズを発見するために、明るいところで観察する必要があったのだが、あまり明るすぎるとディスプレイの明るさと釣り合いがとれなくなってしまう。

実験の結果、600〜750lx程度に調整するといいということが分かった。ただし、600〜750lxと言われてもどんな明るさなのか、ちょっと見当がつかない。そこで、写真用の露出計を簡易照度計として利用し、環境光の明るさを測定する方法を考えてみた。

まず、露出計には平面受光板を着けて測定するのがポイント。EV値と照度の換算式は以下のようになる。

(照度[lx])=2.5*2^(EV値)

これは「2をEV乗して2.5を掛ける」という意味。たとえばEV値が8であれば、2の8乗が256。それに2.5を掛けると640lxとなる。

※照度の計算は計算式ソフトにコピペすれば、簡単に行うが可能である。「(EV値)」の部分に測定した値を入れてリターンキーを押せばよい。フリーの計算式ソフトには以下のようなものがある。
◇T'Calc
< http://homepage2.nifty.com/tooshy/calc.html >

つまり「600lx〜750lx」というのは「7.9〜8.2EV」程度ということだ。本当にシビアに色のコントロールをしなければならない仕事でなければ、そんなに厳密に調整をする必要はないだろう。ただし、明るすぎたり、暗すぎたりすれば、やはり問題は出てくる。もし、露出計を持っていれば、とりあえず測定してみることをおすすめする。

また、この際ディスプレイのほうは70〜80cd(カンデラ)に調整しておくとバランスがとれる。最近のディスプレイは明るさを売りにしているが、印刷物の仕上がりをシミュレーションするためには、あまり明るすぎるのはNGだ。

いくら高いディスプレイを買ったり、カラーマネージメントツールを導入したとしても、環境光を疎かにしてしまうと色は合わない。蛍光管は特殊なものだが、電気店で注文をすれば取り寄せることはできるし、そんなに高い物ではない。色にこだわるデジタルクリエイターはぜひ導入のご検討を!

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
関西電塾に参加した翌日、コンパクトデジカメにレンズ一枚プラスして撮影した真四角な写真17点をブログに掲載。やっぱりコンデジは気軽で楽しい。
◇なにわキッチュ
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◇キッチュレンズ工房
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