[2178] クリエイターの体力

投稿:  著者:  読了時間:16分(本文:約7,900文字)


<僕は不健康派>

■創作戯れ言[8]
 クリエイターの体力
 青池良輔

■デジクリトーク
 アナログっぽい
 まつばらあつし


■創作戯れ言[8]
クリエイターの体力

青池良輔
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コンピュータを使いコンテンツ制作をしていると、基本座りっぱなしになっています。当然のように手足は萎え、腰が悲鳴を上げ始めます。僕が今まで出会ったクリエイターやデザイナーの方々は、「健康派」と「不健康派」の大きく二つに分かれるような気がします。

健康派の方は、テニスや水泳をたしなまれ、通勤はウォーキングや自転車等、なんだかキラキラして素敵な生活習慣を持たれています。残念ながら僕はそうではない、不健康派に属しており、運動は年に0.5回ぐらい、歩かない、動かない。食べ物はおいしければ良いと、自ら体を張ってフォアグラになろうとしています。

「健全なクリエイションは、健全な肉体に宿る」とは、誰も言っていないかもしれないけれど、やはりそれなりに気にはなるものです。

健康派の方の意見としては、軽い運動で「すっきり」するから「しゃっきり」して「ばっちり」な仕事ができるそうなのです。また長く仕事をしてゆこうと思えば、基礎体力をつけておかなければとよく言われます。それに対して、不健康派の意見と言えば、「深夜過ぎがピークタイム」「カフェインとニコチンが栄養素」「力仕事は無視して逃げる」ことで仕事が上手く行くと主張します。未来の健康より、今抱えているプロジェクトの方が懸案事項だったりするようです。

僕も、四年ぐらい程前から、ずーっと左足の外側の筋、膝蹴りされると非常に痛いラインが、ピリピリとしびれっぱなしで生活していました。何となく「腰だなぁ」という感覚はあったのですが、痛みが激しい訳でもなく、特にこれといった治療や、改善の為の運動もしていませんでした。たまに、長距離の飛行機に乗ると、しびれが足全体に周りちょっと辛くなることもありました。

しかし最近、ふとした切っ掛けで整体に。

ここ五年ぐらい、ちょっと悪い姿勢で、ずーっと椅子に座っていたのはわかっていましたが、腰の辺りの背骨が、一個だけ「ぽこん」と前にずれているのはもちろん知りませんでした。「これが本来のまっすぐな状態ですよ」と、体の下に小さなクッションのような物を右や左にいくつか挟み込み、「まっすぐ風」に寝てみると、特になにもしていないのに全身にのしかかる、鈍痛、そしてにじみ出る脂汗。ああ、僕はなんてゆがんでしまったのだろうと……

数回の治療で、足のしびれはほぼなくなり、「まっすぐ風」に寝ても、脂汗が出なくなりました。ああ、東洋医学万歳。と喜んでいたのもほぼ数日間で、生粋の不健康派の僕は、徹夜でソファーでごろ寝というような生活に戻ってしまうのです。

クリエイターとして、仕事をしてゆくと、フリーランスであれば自分が社長&社員ですので、意識しない限り健康診断や人間ドックに行く事もないように思います。また、契約で仕事をしていても、健康診断があるのかないのか……メインマシンが壊れても、クリエイターの脳味噌がクラッシュしない限りはコンテンツを作り出してゆく事ができるので、なんとか大切にしていきたいものですし、定期な的なチェックをしてゆきたい所です。本当に体が資本ですから。

とは、言っても……

「命を削るアーティスト」に憧れたことはありませんか?

夜を徹して、食う物も食わず、神経をギラギラに研ぎすまして作品に没頭する。睡眠を削り、24時間のほとんど全てを作品との格闘に費やす……。大変ステレオタイプなイメージなのかもしれませんが、多かれ少なかれ、何か作品を作られたことのある人なら、「創作の快感」に身を委ねて、行くとこまで行ってしまいたい……と感じられたことがあるのではないでしょうか?

健康? 生活? ……創作の前では、生け贄でしかない。

などとかっこ良く言い放ちたい自分。しかし、健康診断を受ける病院の待合室で次の創作のネタを考えるという矛盾。理想と現実の中で「まぁ、自分はこんなものなのかな」という脱力感。理想とするアーティスト像に近づこうと考えても、「のんだくれる」「ひげをはやす」ぐらいしか思いつかず、結局、そんなもの夢物語だと現実と切り離そうとする自分……

どろどろと渦巻くフラストレーションの影には、不健康である事が、自分の才能に化学反応を起こしてくれるのではないかという期待。作品に没頭さえ出来れば自分はもっと突き抜けられるのに、というエクスキューズ。そのような想いが、理想の破滅型アーティストへの壁をどんどん高くしているようにも思えます。

しかしそれは、超えてはいけない壁なのかも知れません。不健康で、破滅型で、日常のもろもろの楽しみを全て切り捨てた上で「人間はどこまでの創作ができるか」という挑戦。あまりにもリスクが高く、そしてどのような結果が出ても満足できない感じがします。なぜなら、健康を消費しながら、創作してゆけば究極は死ぬまでやるしかないのですから。そんなチャレンジは、不可侵なのかもしれません。憧れは、憧れのままでいいのかもしれません。

不健康派の人の中には、この燃焼系アーティストの存在をロザリオのように、胸に抱きながら今日も徹夜してしまっている人も少なくないと思います。

生意気言いました。

【あおいけ・りょうすけ】your_message@aoike.ca
< http://www.aoike.ca/ >
1972年生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。学生時代に自主映画を制作したのち、カナダ・モントリオールで映画製作会社に勤務する。Flashアニメシリーズ「CATMAN」でWebアニメーションデビューする。芸術監督などを経て独立し、現在はフリーランスとして、アニメーション、Webサイト、TVCMなど主にFlashを使い多方面なコンテンツ制作を行う。

・書籍「Create魂」公式サイト
< http://www.ascii.co.jp/pb/flashbooks/create-damashii/ >

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■デジクリトーク
アナログっぽい

まつばらあつし
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●タッチはアナログ調で

いやあ、デジクリに書くのは久しぶりなので、少々緊張してはおりますが、どうも、お絵描き屋さん&文字書き屋さんの、まつばらあつしです。普段は雑誌やムック、あるいはWebサイトなどで絵を描いたり文章を書いたりしているわけですが、最近、縁あって、東京は銀座のアップルストア、すなわちMacの日本の総本山みたいなところで、不定期ながら時々「講演」をしております。

まあ、講演っていったところで、ムズカシイ話をしたり、エラそうなウンチクをたれたりするわけではなく、普段自分が使っているソフトでどんなものを描いているのか、どのように使っているのかを紹介したり、実際に描いてみたりそのテクニックを説明したりしている、という案配なのですが、これがまたどういうわけか、それなりに評判がよろしいようで、昨年の春先から2〜3か月に一度のペースで、ココ一年間ほどやらせていただいているワケです。

さて、つい先日も演ってきましたよ銀座、アップルストアで。数えて五回目になるこのたびは「アナログ的+デジタル的Flashお絵描き術」と題して、デジタルな画材である「Adobe Flash」を使って、アナログ調のイラストレーションの描き方などを実演・解説してきたです。

このデジタルな画材を使って、アナログ調のイラストレーションを描く、というのは、実際仕事でも「アナログ調のヤツを、ま、ひとつ」みたいなリクエストが時々あるワケで、正直そんだったら、最初から筆や絵の具などのアナログ画材で描きゃいいじゃん、って思うのだけれども。

その辺はオトナの事情ってヤツですか、アナログ画材で描いちゃうと実際使う段になったら、撮影したりスキャンしたりする必要が生じ、時間も手間もコストもかかってしまう。したがって、データとして納品するデジタルな画材で描かなければならない。しかし、タッチはアナログ調で、みたいな。そんな仕事が増えてきているわけです。

このアナログ調のデジタルイラストレーションといえば、ちょっと詳しい方なら「COREL Painter」とか「Adobe Photoshop」という、ペイント系のツールを使えば簡単ではないか、と思うかもしれませんが、ボクが使うのは「Adobe Flash」です。

まあ、「Painter」や「Photoshop」は確かに優れたツールであり、アナログ画材のシミュレータとして、確かに「リアル」なアナログ調の絵を描くことが可能です。実際に雑誌やWebサイトで見る限り、デジタルで描いたのだかアナログで描いたのだか、見分けがつかないほど「リアル」に。

一方、ボクが使っている「Flash」といえば、Webでのアニメーション、あるいはインターフェイスなど、動的コンテンツをつくるツールとして名高いわけなんですが、もちろんグラフィックツールとしても中々の実力を持っているのです、実は。

もちろん「Painter」や「Photoshop」ほど、リアルなアナログ調のイラストを描く事はムズカシイけれど、それでもちゃんと、クライアントの要望に応えるイラストをモノにすることは、十分可能です。筆やペンで描いたようなタッチのラインを描き、水彩絵の具で塗ったような色を出す。「リアル」ではないけど、なんとなく「アナログっぽい」感じで。

●展示での「見せ方」を考える

その辺の描き方のテクニック、筆っぽいツールの設定や使い方などを、まあ、今回アップルストアで色々話してきたのですが、そうして仕事などでアナログ調のイラストをいろいろ描いているうちに、今度はそのイラストの「見せ方」を、ちょっとじっくり考えるようになったのです。というのも、ボクは年に数回、ギャラリーやイヴェントなどでイラストを展示したりする、すなわち描いたものを直接多くの人に観てもらう、という仕事もあるからなのです。

仕事といっても、これら展示の場合は基本的にはお金が出てゆくだけで、その場で絵が売れるとかそんなことはほとんどありませんが、友だちや仕事関連の方々に、現在の自分のタッチや作風をまとめて観てもらう事ができるショーケースとして、あるいは新しい技法やスタイルへの挑戦として、後々の仕事につながる(んじゃ、ないかな……)と考えているので、やはりこれも大事な仕事のひとつ。そんな展示での「見せ方」のお話でしたね。

さて、「見せ方」次第でイラストはだいぶ印象が変わります。雑誌やWebでの作画の場合、描いたデータを渡せばそれでOKなのですが、展示の場合は、その描いたモノをどう見せるかということも考えなければなりません。

プリントして額装するのか、パネルやボードに貼り付けるか。会場に置いたディスプレイで見せるか、プロジェクタで投影するか、などなど考えるべき事はたくさんあります。例えばプリントする場合、出力する紙の質でその色合いや感触の印象が、大きく変わるのは何となくお分りになるでしょう。

で、ボクはアナログ調のイラストを展示するとき、色々工夫をして、より「アナログっぽく」見せる工夫をしています。例えばペン画風の作品の場合は、何年か前に紙問屋で仕入れてきた、古くなって端が黄ばんでいる「わら半紙」にプリントするようにしています。また、筆のタッチの作品の場合は、書道用の画仙紙という、薄い半紙にプリントする、というように。

インクジェットプリンタでは、どちらも基本的に使える紙ではないし、メーカーももちろん推奨していません。が、試してみたらなんとかプリントができたので、まあいいじゃんか、と。実際にはわら半紙も画仙紙もかなり薄いので、プリントしているときに時々「がしゃがしゃがしゃっ」って、プリンタ内でジャミングを起こす事も一度や二度や三度や四度くらいあるんですけど、もちろん上手くいくときもあるので、オイラ的にはオッケーということで。

で、その出来映えというのがね、またイイ感じになるんですよ。わら半紙も画仙紙も薄いがゆえに、インクが少しにじんだりして、けっこうソレっぽい。デジタルデータでにじみを表現するのは大変だけど、紙ひとつ変えれば簡単ににじんでくれます。また、色の感じも、わら半紙はちゃんと古くさい感じに、画仙紙はにじんで水彩っぽく、とてもイイ感じに仕上がります。

こういう風に紙を選んで見せるという事は、普段の仕事ではなかなかできるものではありませんから、展示などに参加したときはいろいろ試すチャンスなワケです。そして、そのチャンスを活かせば、また新しい表現やスタイルを見つける事ができるかもしれない。だから、展示も重要な仕事のひとつ、いろいろ参加するのも悪くはないと考えているのであります。

と、長々と書いてきましたが、正直言えば、ボクは「絵を描く」という仕事に対して、いまさら「アナログ」とか「デジタル」って区別を付ける必要はないと感じています。仕事の内容、描くものの内容によって、描き手が、その表現にあった最適な方法を選べばいいだけでしょう。だってねえ、アナログであれ、デジタルであれ、イイモノはいいし、ショボイものはどこまで行っても、何を使ってもショボイんだもの。

当り前の事ながら、大事なのは「何で描いたか」ではなく「何を描いたか」。だからボクも、もっともっと多くの人たちに喜んでもらえるように、修業をしなければいけませんね。まだまだ、足りないです。

【まつばらあつし】お絵描き屋さん&文字書き屋さん
< http://www.asahi-net.or.jp/%7Etz9a-mtbr/ >

ホント、そんなに出力する紙で印象が変わるのか? とお思いでしたら、こんど展示にでも来てみてください。ちょうど4月11日(水)から16日(月)まで、銀座のミレージャギャラリーというところで開催されるグループ展に参加するです。「ベスト・アーティスト展」詳しくはWebサイトで。
ミレージャギャラリー < http://www.mireyagallery.com/ >

また、5月26日(土)の19時より、いつものアップルストア銀座の3Fシアターで講演をします。内容はアニメーションについて。初心者向けの簡単なアニメーションのお話をするので、時間があれば、ゼヒ!
アップルストア銀座 イベントスケジュール
< http://www.apple.com/jp/retail/ginza/month/200704.html >

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■編集後記(4/10)

・朝の「わんぽ」に行くと、全面的に緑色の土手にツクシが無数に立ち上がっているのが見える。車道の向こうなので距離があるが、朝の斜めの光線の中であの小さな個体が異様にくっきり見える。近眼なのによく見える。裸眼立体視をやっているような感覚さえある。不思議だ。/娘のATM体験談。日曜日に家族でドライブに出かけた。昼食の後に財布を開いたら、出がけに寄ったコンビニのATMで下ろしたはずの一万円札がない。落とした確率が高いが、ATMから出てきた一万円札を取らずに店を出てきてしてしまった可能性もある。とにかく、かなりブルーな気分の観光から帰り、件のコンビニに行ってダメモト覚悟で店長に聞いてみると、ATM備え付けの電話を使って銀行と相談して下さいとの指示を受けた。電話で事情を話すと、「お客様は紙幣を受け取らなかったので回収してもとの口座に戻しました」と回答を得、うれしくて涙が出そうになったとのこと。お金を受け取らずに放置すると、自動的にATM内に戻す仕組みになっており、それらプロセスはすべて記録されているそうだ。だが、受け取らないと音声の警告があるはずで、娘はそれさえも聞き逃したらしい。何秒かはそのままになっているので、次の利用者がそれを発見してラッキーと持ち去ることもあろう(バッチリ映像も記録されるだろう)。結果として、よかったねえという話になったが、銀行のATMで下ろしたお金をその場に置き忘れるという人がいるという現場には、何度か立ち会ったことがある。銀行の封筒にいれた分厚いの。ついうっかりというのは歳を重ねるとますます。昨夜、テラス側のガラス戸の鍵がかかっていなかった……。(柴田)

・「拙者は関ジャニ」と大河ドラマで。えっ、関ジャニ? と一瞬思ったら「間者に」であった。/予備知識無しでNEO女子プロを観に行ってきた。男子と比べ迫力は劣るものの、なんだか面白かったし、タッグタイトル戦だったので気合いの入ったものが見られた。「マットの青い薔薇」タムラ様が凛々しかったわ。好きな有名人が成田三樹夫って……。輝優優、元気美佐恵、栗原あゆみ選手が良かったな。あゆみ選手は可愛かったよ。/可愛いと言えば、小学生対対人恐怖症、と聞いた「りほ対真琴戦」。小学生の試合って〜と思ったのだが、これがまぁ動けるわ技知っているわで将来有望そう。真琴ちゃんは最後に近くで見たら、白くて細くてプロレスやれそうに見えなかった。この二人が所属する「アイスリボン」は、代表者とママ以外は平成生まれ……。マスコミよ、小学生プロレス注目しなはれ。/体調が悪くて、遅刻するわ、大事なメインイベントで中座するわでさんざんではあった。体が資本だとつくづく思う。人間ドックに行かないとあかんかなぁ。不調続き。NEO女子の代表、井上京子選手は子宮筋腫でしばらく欠場らしい。偶然見かけた飯島愛さんの特番で、体調が悪いために仕事がまともにできなくて引退したい〜というようなコメントを耳にした。休んだり、責任を果たせなかったりするたびに、心に宿題ためていくみたいな感じだよね。/青池さんのコラムと重なった。私も以前は同じ考えだったなぁ。集中、倒れ込みつつゴールする感じ、達成感が好きだ。でもいまは徹夜はなるべく減らすようにはしている。整体に行こうと思いつつ……。(hammer.mule)
< http://neopro.ne07.jp/ >  NEO女子プロレス
< http://neopro.ne07.jp/vm/senshu_1061.html >  タムラ様
< http://ja.wikipedia.org/wiki/ >  「真琴」で検索
< http://blog.goo.ne.jp/nitimako >  日刊真琴コール!
< http://ice-ribbon.ne07.jp/ >  アイスリボン
< http://homepage2.nifty.com/ayumi-kurihara/ >  栗原あゆみ
< http://item.rakuten.co.jp/ara/c/0000000170/ >  地下鉄ネクタイ


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NEO女子プロレス“NEO 9.18 AT KORAKUEN HALL BRACE UP ’05”
輝優優 下田美馬 吉田万里子
ビデオメーカー 2006-01-27




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NEO女子プロレス 7.3後楽園ホール SUMMER STAMPEDE 05
日向あずみ 井上京子 豊田真奈美
ビデオメーカー 2005-10-07

MID SUMMER TAG TOURNAMENT V~初代タッグ王座決定トーナメント

by G-Tools , 2007/04/10