デジクリトーク アナログっぽい/まつばらあつし

投稿:  著者:  読了時間:8分(本文:約3,500文字)


●タッチはアナログ調で

いやあ、デジクリに書くのは久しぶりなので、少々緊張してはおりますが、どうも、お絵描き屋さん&文字書き屋さんの、まつばらあつしです。普段は雑誌やムック、あるいはWebサイトなどで絵を描いたり文章を書いたりしているわけですが、最近、縁あって、東京は銀座のアップルストア、すなわちMacの日本の総本山みたいなところで、不定期ながら時々「講演」をしております。

まあ、講演っていったところで、ムズカシイ話をしたり、エラそうなウンチクをたれたりするわけではなく、普段自分が使っているソフトでどんなものを描いているのか、どのように使っているのかを紹介したり、実際に描いてみたりそのテクニックを説明したりしている、という案配なのですが、これがまたどういうわけか、それなりに評判がよろしいようで、昨年の春先から2〜3か月に一度のペースで、ココ一年間ほどやらせていただいているワケです。


さて、つい先日も演ってきましたよ銀座、アップルストアで。数えて五回目になるこのたびは「アナログ的+デジタル的Flashお絵描き術」と題して、デジタルな画材である「Adobe Flash」を使って、アナログ調のイラストレーションの描き方などを実演・解説してきたです。

このデジタルな画材を使って、アナログ調のイラストレーションを描く、というのは、実際仕事でも「アナログ調のヤツを、ま、ひとつ」みたいなリクエストが時々あるワケで、正直そんだったら、最初から筆や絵の具などのアナログ画材で描きゃいいじゃん、って思うのだけれども。

その辺はオトナの事情ってヤツですか、アナログ画材で描いちゃうと実際使う段になったら、撮影したりスキャンしたりする必要が生じ、時間も手間もコストもかかってしまう。したがって、データとして納品するデジタルな画材で描かなければならない。しかし、タッチはアナログ調で、みたいな。そんな仕事が増えてきているわけです。

このアナログ調のデジタルイラストレーションといえば、ちょっと詳しい方なら「COREL Painter」とか「Adobe Photoshop」という、ペイント系のツールを使えば簡単ではないか、と思うかもしれませんが、ボクが使うのは「Adobe Flash」です。

まあ、「Painter」や「Photoshop」は確かに優れたツールであり、アナログ画材のシミュレータとして、確かに「リアル」なアナログ調の絵を描くことが可能です。実際に雑誌やWebサイトで見る限り、デジタルで描いたのだかアナログで描いたのだか、見分けがつかないほど「リアル」に。

一方、ボクが使っている「Flash」といえば、Webでのアニメーション、あるいはインターフェイスなど、動的コンテンツをつくるツールとして名高いわけなんですが、もちろんグラフィックツールとしても中々の実力を持っているのです、実は。

もちろん「Painter」や「Photoshop」ほど、リアルなアナログ調のイラストを描く事はムズカシイけれど、それでもちゃんと、クライアントの要望に応えるイラストをモノにすることは、十分可能です。筆やペンで描いたようなタッチのラインを描き、水彩絵の具で塗ったような色を出す。「リアル」ではないけど、なんとなく「アナログっぽい」感じで。

●展示での「見せ方」を考える

その辺の描き方のテクニック、筆っぽいツールの設定や使い方などを、まあ、今回アップルストアで色々話してきたのですが、そうして仕事などでアナログ調のイラストをいろいろ描いているうちに、今度はそのイラストの「見せ方」を、ちょっとじっくり考えるようになったのです。というのも、ボクは年に数回、ギャラリーやイヴェントなどでイラストを展示したりする、すなわち描いたものを直接多くの人に観てもらう、という仕事もあるからなのです。

仕事といっても、これら展示の場合は基本的にはお金が出てゆくだけで、その場で絵が売れるとかそんなことはほとんどありませんが、友だちや仕事関連の方々に、現在の自分のタッチや作風をまとめて観てもらう事ができるショーケースとして、あるいは新しい技法やスタイルへの挑戦として、後々の仕事につながる(んじゃ、ないかな……)と考えているので、やはりこれも大事な仕事のひとつ。そんな展示での「見せ方」のお話でしたね。

さて、「見せ方」次第でイラストはだいぶ印象が変わります。雑誌やWebでの作画の場合、描いたデータを渡せばそれでOKなのですが、展示の場合は、その描いたモノをどう見せるかということも考えなければなりません。

プリントして額装するのか、パネルやボードに貼り付けるか。会場に置いたディスプレイで見せるか、プロジェクタで投影するか、などなど考えるべき事はたくさんあります。例えばプリントする場合、出力する紙の質でその色合いや感触の印象が、大きく変わるのは何となくお分りになるでしょう。

で、ボクはアナログ調のイラストを展示するとき、色々工夫をして、より「アナログっぽく」見せる工夫をしています。例えばペン画風の作品の場合は、何年か前に紙問屋で仕入れてきた、古くなって端が黄ばんでいる「わら半紙」にプリントするようにしています。また、筆のタッチの作品の場合は、書道用の画仙紙という、薄い半紙にプリントする、というように。

インクジェットプリンタでは、どちらも基本的に使える紙ではないし、メーカーももちろん推奨していません。が、試してみたらなんとかプリントができたので、まあいいじゃんか、と。実際にはわら半紙も画仙紙もかなり薄いので、プリントしているときに時々「がしゃがしゃがしゃっ」って、プリンタ内でジャミングを起こす事も一度や二度や三度や四度くらいあるんですけど、もちろん上手くいくときもあるので、オイラ的にはオッケーということで。

で、その出来映えというのがね、またイイ感じになるんですよ。わら半紙も画仙紙も薄いがゆえに、インクが少しにじんだりして、けっこうソレっぽい。デジタルデータでにじみを表現するのは大変だけど、紙ひとつ変えれば簡単ににじんでくれます。また、色の感じも、わら半紙はちゃんと古くさい感じに、画仙紙はにじんで水彩っぽく、とてもイイ感じに仕上がります。

こういう風に紙を選んで見せるという事は、普段の仕事ではなかなかできるものではありませんから、展示などに参加したときはいろいろ試すチャンスなワケです。そして、そのチャンスを活かせば、また新しい表現やスタイルを見つける事ができるかもしれない。だから、展示も重要な仕事のひとつ、いろいろ参加するのも悪くはないと考えているのであります。

と、長々と書いてきましたが、正直言えば、ボクは「絵を描く」という仕事に対して、いまさら「アナログ」とか「デジタル」って区別を付ける必要はないと感じています。仕事の内容、描くものの内容によって、描き手が、その表現にあった最適な方法を選べばいいだけでしょう。だってねえ、アナログであれ、デジタルであれ、イイモノはいいし、ショボイものはどこまで行っても、何を使ってもショボイんだもの。

当り前の事ながら、大事なのは「何で描いたか」ではなく「何を描いたか」。だからボクも、もっともっと多くの人たちに喜んでもらえるように、修業をしなければいけませんね。まだまだ、足りないです。

【まつばらあつし】お絵描き屋さん&文字書き屋さん
< http://www.asahi-net.or.jp/%7Etz9a-mtbr/ >

ホント、そんなに出力する紙で印象が変わるのか? とお思いでしたら、こんど展示にでも来てみてください。ちょうど4月11日(水)から16日(月)まで、銀座のミレージャギャラリーというところで開催されるグループ展に参加するです。「ベスト・アーティスト展」詳しくはWebサイトで。
ミレージャギャラリー < http://www.mireyagallery.com/ >

また、5月26日(土)の19時より、いつものアップルストア銀座の3Fシアターで講演をします。内容はアニメーションについて。初心者向けの簡単なアニメーションのお話をするので、時間があれば、ゼヒ!
アップルストア銀座 イベントスケジュール
< http://www.apple.com/jp/retail/ginza/month/200704.html >


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