グラフィック薄氷大魔王[90]ショートアニメ制作顛末2 アニマティック&モデリング篇/吉井 宏

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三本分のコンテが完成。さっそく3DCGの作業にかかりたいところだけど、その前に、コンテと同時に進めていた作業をさらに詰める。

「30秒間に無理なく収められるか? 流れやタイミング、カットの長さはどうか?」を詰めたり検証するため、絵コンテの絵を切り出して数十枚の画像にし、Photoshopのレイヤー→Illustratorのレイヤー→Flashのタイムラインにインポート。1秒10フレーム(Flash上の1フレームがムービー3コマ分)で各カットの長さを調整していく。これを再生すると、絵は静止画のラクガキ絵だけど構成と時間は本番と同じムービーになる(アニマティックというらしい)。


時間軸に並べてみて初めてわかることも多い。最大20数カットもあるので短いカットはコンマ何秒ってのもあるし、やたら時間を食うカットもある。つながりが変だとか、スピード感を止めてしまうものとかも。で、必ずしも重要でないシチュエーションやカットを削り、3回繰り返すネタは2回にし、分かり切ったリアクションは短く切り、カメラアングルの工夫でワンカットにまとめたりという具合に、調整しなけりゃ1分を超えそうな分量をどうにか押し込んだ。

この推敲作業をやってみて思ったのは、ムービーから贅肉をそぎ落として、見せたいエッセンスに凝縮するのに有効だなあ、と。削らないと30秒をオーバーしてしまうので、ひとつひとつのカットについて本当に必要かどうか検討することになる。時間の制約が少ない自主作品などで、どうにもダラダラした印象を受けるものが多いが、この作業で全体の尺を切り詰めれば、同じ内容でもシャキッとしたムービーにできるような気がする。

あと、キャラクターの特徴をはっきりさせて視認性を良くしておけば、0.5秒のカットでも何が行われているのか把握させられると思う。映画の予告編などで一瞬のカットが連続するものがよくあるけど、ちゃんと何が映ってるのかわかる。っていうか、マンガなら見開きを数秒で読むこともあるのだから、繋ぎ方次第で1カットは相当短くできるんじゃないかな。

完成したアニマティックの各カットから実際のフレーム数を算出。長いカットは数秒百数十フレーム、短いカットは0.4秒12フレームというのもある。すでにこれ以上切り詰めようがないくらいに切り詰めてあるため、各カットはフレーム数を厳密に守ってアニメーションさせないと、全体で数秒くらい簡単にオーバーしてしまう。

これで準備完了、ようやく3DCGの作業にとりかかる。まず、モデリングから。「べークマ」は以前作ったものは体型が細いし、まぶたの構造などがその後慣れた方式とちがうので、新しく作り直した。最近は、ZBrushで基本のローポリモデルを作り、modoでモデリングとUV作成、ZBrushで色塗り、という手順が僕の定番。3ds Maxでフェイシャルアニメーションするため表情を変えた20体のモーフターゲット用モデルも別保存。べークマと小鳥「ピヨッチ」など主要な動物キャラクター3体と、6体の脇役キャラクターを作成。3ds Maxに読み込んでそれぞれボーンを仕込む。

他には、カメラ、双眼鏡などの小道具や切り株、クルマなど。舞台セットの森、崖、地面、山、丘、空のマップなども作成。書き割りにしようと思っていたセットだったけど、カメラの動きなどを考慮するとやはりちゃんと立体で作らないと不自然なので、簡単な構造の木の3Dモデルを10種類作り、インスタンス複製して森を構成。草はHair&Fur(毛の効果)で作成しかけたのだが、きれいなシャドウを落とすのが難しくて断念。フリー素材の草むらを使った。

実は今回、キャラクターアニメーション機能が大幅に進化したCinema4Dでアニメーションするつもりだった。従来のボーンに代わる「ジョイント」という新機能をテストしてみたところ簡単にボーンを仕込めるのだ。また、C4DはLight Waveのように「モーフマップ」という仕組みにより、モーフターゲットをモデルの中に含めておくことができる。つまり、何十個のモーフターゲット用オブジェクトをあらかじめ別に用意しておく必要がなく、「こういう表情をさせたい」と思った時点で顔を編集してモーフマップを追加できる。

そもそもC4Dはけっこう長く使っているソフトだし、モデリングとペイントとアニメーションを一つのソフトの中で完結できるならそれが一番だ。それに、C4D(Mac版)ならMacBook ProをWindows起動に切り替えなくて済む、ということもある。

と思って進めていたのだけど、あと10日以内に完成させなきゃいけないスケジュールの中でC4Dでのアニメーション制作に慣れるのはキツそう。結局、(キャラクターが走るシーンが多いので)走る動作を簡単に設定できる3ds Maxでいくことにした。3ds Maxは使いにくいとか文句言いつつも、けっこう慣れちゃったのだ。まあ、そのうちC4Dだけでアニメーションを作ってみたい。

つづく。

オリンパスわくわくタウン
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【吉井 宏/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com

切り詰めると言えば、YouTubeの「5秒でわかる映画(○○ in 5 seconds)」シリーズ。映画一本を正味5秒(正確に5秒じゃなくて長いのもあるけど)に編集して凝縮。まあ、完全にギャグなのだが、その映画の究極の骨子というかエッセンスが5秒で見事に表現されているものがあっておもしろい。ネタバレ前提なので、未見の映画のものは見ないほうがいいかも。

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吉井宏のPainterアスレティクス
吉井 宏
アゴスト 1999-01
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by G-Tools , 2007/04/18